◇74話◇デート~余韻~
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湯船に張ったお湯が、彼の動きで小さな波を作る。
背中から抱きしめるリヴァイの手が、私の胸に触れた。
私がその手を払い落とせば、波は大きくなって、私の身体を少しだけ揺らした。
身体を洗うだけのつもりなんて全くなかったリヴァイに、好きに抱かれた身体は休憩を欲している。
一緒に湯船に浸かるだけだと言った言葉を心底信じたわけでもないけれど、期待しているわけでもない。
本当に、今はまだ湯船の中で疲れを癒したいのだ。
それなのに、さっきから背中に硬いものがー。
「…当たってる。」
「当ててる。」
当然のように返って来た答え、私は恥ずかしさを隠すようにため息を吐いた。
昨日も身体を重ねているのに、リヴァイはあと何度出来るつもりなのだろう。
初めて、なまえとしてリヴァイに抱かれたときも、一晩中終わることはなかったしー。
こんなに気持ちのいいセックスは初めてだったけれど、さすがに何度もは私は無理だー。
「じゃあ、気を紛らわせるために、話をしよう。」
「落ち着けるために、もう一回ヤルんじゃなくて?」
「じゃなくて。」
「…分かった。」
不貞腐れたような声が、可愛くて私は思わずクスリと笑ってしまう。
無理に抱こうとしないリヴァイは、私の身体がそろそろ限界だと気づいてくれているのだろう。
そういう優しさも含めて、嬉しかった。
あの日、初めて抱かれたとき、私の向こうになまえを必死に探していた彼は、私の身体を壊そうとしていたように見えたからー。
「なら、また、なまえがいた世界の話を聞かせろ。」
「いいけど、面白くないでしょう?」
「興味がある。」
「んー、でも、もうほとんど話したよ?
スマホもテレビも、海も、思いつくことは話したしなァ…。」
他に何か、この世界と向こうの世界の違いはないかー。
私の人生をサッと振り返りながら、リヴァイが興味を持ってくれそうなものは何かないかと記憶を探る。
「向こうのエルヴィン達には会ったことはねぇのか?」
「ないよ。向こうのリヴァイだって、私がこの世界に来た日に
企画調査部の部長に引き抜かれて入ったばっかりで、
会ったこともなか…た…し…。」
言いながら、なんとなく違和感を覚える。
違和感というより、何かに気づきそうなー。
「どうした?やっぱり、エルヴィン達に会ったことがあったのか?」
「…あ!!エルヴィン部長だ!!」
急に他部署の部長の顔を思い出して、思わず声を上げてしまった。
そうだ、変人達のトップに立つ企画調査部の部長は、エルヴィンという名だった。
あまり顔を見たことはないけれど、知らないわけではない。
そう、確かに、彼の顔は、調査兵団の団長をしているエルヴィンと同じだった。
「ぶちょう?」
「仕事の偉い人だよ。兵団が3つに分かれてるみたいに、会社も部署が幾つかに分かれてて
企画調査部の部長が、エルヴィン部長だったの。きっと、エルヴィン団長のもう1人だよ。」
「そうかもしれねぇな。」
「うわぁ~…、変人ばっかりの企画調査部の部長がエルヴィン団長なんだぁ…。」
「変人?」
「そう、変人。企画調査部は変人ばっかりの集まりって言われてるの。
変な研究ばっかりしてお風呂にも入らないでフケを雪みたいに降らせる人とか、
他人の匂いを嗅いでくる大男もいるって噂聞いたことある。」
「…まんまハンジとミケじゃねぇか。」
「…あ!!!」
そう言えば、そうだー。
思わず声を上げた私に、どうして気づかないのだとリヴァイが呆れた様に言う。
だって、元の世界とこの世界は、私の中では別物なのだ。
だから、登場人物を繋げて考えることがなくてー。
「向こうでもこっちでも、エルヴィンの下でリヴァイが働いてるってすごいね。
私もリコ達と一緒の部署で働いてるし、関係性とかも繋がってるのかもね。」
「そうかもな。」
少し感激してしまっていた。
でも、そう考えると、ハンジが、私は向こうの世界のリヴァイを好きになる運命なのだと言われたのも頷ける気がする。
この世界のなまえとリヴァイが恋に落ちた様に、私も向こうの世界のリヴァイに恋に落ちるはずだったのかもしれない。
この世界に来なければ、リヴァイに出逢わなければ、私は向こうの彼を心から愛してー。
「向こうのエルヴィンぶちょうってのが、向こうの俺を引き抜いたって言ってたな。」
「うん、探偵をしてたリヴァイの実力をかって、スカウトしたんだって。」
「…それは、俺だけか?」
リヴァイの緊張に、私は気づけなかった。
私の腹の前にまわる彼の腕に抱きしめられた安心感と程よいお湯の温度に、リラックスしすぎていたせいかもしれない。
「ううん、リヴァイを含めて3人だったはず。」
「…どんな奴か聞いたか?」
「えーっとね…、何て言ってたかな…。男2人と女1人の3人で、
男性陣2人はイケメンで女子社員が喜んでるから
恋人募集中の私も見に行ってこいってリコに言われた。」
「見に行かなかったのか?」
「裏社会の探偵とかなんか怖いもん…っ!
でも、もう1人は、子供みたいな女の子だって言ってたんだよね。」
「…顔は、見てねぇのか?」
どうしてそんなに気にするのだろうー。
そう思わなかったわけじゃない。
でも、向こうの自分と一緒に企画調査部に入った人間にただ興味があるのだろう、と納得していた。
「あぁ…、そういえば、前になまえの部屋の鏡で向こうの世界に繋がったとき、男の人の方は見たよ。」
「お前の部屋に繋がったんだろ?ソイツが、お前の部屋にいたのか?」
「リコと一緒にその元探偵の3人も私の部屋に来て、手がかりを探してたみたい。
リヴァイともう1人の女の子は見てないけど、男の人の方は鏡越しに話したよ。」
「…どんな奴だった?」
「金髪で、少しつり目の綺麗な顔の人かな。背も高くて…、
確か、リコが名前を呼んでたと思うんだけど、思い出せないな…。
えーっと…、ファ…?ファー…?なんだっけ、ファ…?」
「ファーラン、じゃねぇのか。」
「あぁ、そう!!ファーランって言ってた!!
リヴァイの知ってる人?」
「…あぁ、ダチだ。」
「そっか。向こうの世界でもお友達なんだね。」
「あぁ、そうみてぇだな。」
そう言うと、リヴァイは私の腹にまわしている手に力を込めた。
まるで縋るように抱き着いて、目を伏せた彼の顔が私の肩の上に乗る。
濡れた黒髪が私の頬を撫でた。
「どうしたの?」
「…エルヴィンが、俺達を…、俺とファーラン、イザベルを調査兵団に入れたんだ。」
「そうなんだ。人類最強の兵士を見つけちゃうなんて、エルヴィンは凄いね。
今はどこにいるの?兵舎で、ファーランに似た人なんて見たことないよ。
調査兵団、辞めちゃったの?」
気軽に訊いてしまったことを、私はすぐに後悔することになった。
私はまだ、この世界の残酷さを、理解していなかったのだと思う。
分かっているつもりで、頭はまだ、平和な世界でのうのうと暮らしていたのだ。
「…死んだ。」
「へ?」
「初めての壁外調査で、ファーランもイザベルも巨人に殺された。」
あぁー。
どうして、気づいてやれなかったのだろうか、と私は自分を責めた。
壁外調査から無言の帰宅をした調査兵達を私はこの目で嫌という程に見たはずなのにー。
私に縋るように抱き着くリヴァイが、弱々しいことだって、気づいていなかったわけじゃなかった。
だから、敢えて明るくしていれば大丈夫だなんて、浅はかすぎてー。
自分が、嫌になるー。
こんなとき、この世界で強く生きて来たなまえなら、すぐに察してあげられたはずなのにー。
気の利いた言葉だって、言ってあげられたはずだ。
でも、私は分からない。
巨人に大切な人を殺され続けた彼に、かけてあげる言葉を知らないー。
「アイツ等が生きてる世界があるんだな…。」
「…そう、だね。」
「よかった。笑ってるアイツ等がいる世界があるなら、よかった。」
掠れるような声で、リヴァイはそう繰り返した。
それは本心なのだろうか。
それとも、同一人物のはずなのに、この世界の彼らは死ななければならなかったことに、憤りを感じているのだろうか。
この世の理不尽に、彼の綺麗な心を黒い感情が蠢いているのだろうか。
分からない。
私には、分からなくてー。
「会いたい?」
「…向こうのアイツ等にか?」
「もし、何かの拍子で向こうの世界と繋がる鏡が見つかったら、会いたい?」
「そうだな。会ってみてぇな。」
「じゃあ、その時は、私が連れて行ってあげるよ。」
「あぁ、ありがとな。」
リヴァイが私の耳元でクスリと笑った。
背中から抱きしめるリヴァイの手が、私の胸に触れた。
私がその手を払い落とせば、波は大きくなって、私の身体を少しだけ揺らした。
身体を洗うだけのつもりなんて全くなかったリヴァイに、好きに抱かれた身体は休憩を欲している。
一緒に湯船に浸かるだけだと言った言葉を心底信じたわけでもないけれど、期待しているわけでもない。
本当に、今はまだ湯船の中で疲れを癒したいのだ。
それなのに、さっきから背中に硬いものがー。
「…当たってる。」
「当ててる。」
当然のように返って来た答え、私は恥ずかしさを隠すようにため息を吐いた。
昨日も身体を重ねているのに、リヴァイはあと何度出来るつもりなのだろう。
初めて、なまえとしてリヴァイに抱かれたときも、一晩中終わることはなかったしー。
こんなに気持ちのいいセックスは初めてだったけれど、さすがに何度もは私は無理だー。
「じゃあ、気を紛らわせるために、話をしよう。」
「落ち着けるために、もう一回ヤルんじゃなくて?」
「じゃなくて。」
「…分かった。」
不貞腐れたような声が、可愛くて私は思わずクスリと笑ってしまう。
無理に抱こうとしないリヴァイは、私の身体がそろそろ限界だと気づいてくれているのだろう。
そういう優しさも含めて、嬉しかった。
あの日、初めて抱かれたとき、私の向こうになまえを必死に探していた彼は、私の身体を壊そうとしていたように見えたからー。
「なら、また、なまえがいた世界の話を聞かせろ。」
「いいけど、面白くないでしょう?」
「興味がある。」
「んー、でも、もうほとんど話したよ?
スマホもテレビも、海も、思いつくことは話したしなァ…。」
他に何か、この世界と向こうの世界の違いはないかー。
私の人生をサッと振り返りながら、リヴァイが興味を持ってくれそうなものは何かないかと記憶を探る。
「向こうのエルヴィン達には会ったことはねぇのか?」
「ないよ。向こうのリヴァイだって、私がこの世界に来た日に
企画調査部の部長に引き抜かれて入ったばっかりで、
会ったこともなか…た…し…。」
言いながら、なんとなく違和感を覚える。
違和感というより、何かに気づきそうなー。
「どうした?やっぱり、エルヴィン達に会ったことがあったのか?」
「…あ!!エルヴィン部長だ!!」
急に他部署の部長の顔を思い出して、思わず声を上げてしまった。
そうだ、変人達のトップに立つ企画調査部の部長は、エルヴィンという名だった。
あまり顔を見たことはないけれど、知らないわけではない。
そう、確かに、彼の顔は、調査兵団の団長をしているエルヴィンと同じだった。
「ぶちょう?」
「仕事の偉い人だよ。兵団が3つに分かれてるみたいに、会社も部署が幾つかに分かれてて
企画調査部の部長が、エルヴィン部長だったの。きっと、エルヴィン団長のもう1人だよ。」
「そうかもしれねぇな。」
「うわぁ~…、変人ばっかりの企画調査部の部長がエルヴィン団長なんだぁ…。」
「変人?」
「そう、変人。企画調査部は変人ばっかりの集まりって言われてるの。
変な研究ばっかりしてお風呂にも入らないでフケを雪みたいに降らせる人とか、
他人の匂いを嗅いでくる大男もいるって噂聞いたことある。」
「…まんまハンジとミケじゃねぇか。」
「…あ!!!」
そう言えば、そうだー。
思わず声を上げた私に、どうして気づかないのだとリヴァイが呆れた様に言う。
だって、元の世界とこの世界は、私の中では別物なのだ。
だから、登場人物を繋げて考えることがなくてー。
「向こうでもこっちでも、エルヴィンの下でリヴァイが働いてるってすごいね。
私もリコ達と一緒の部署で働いてるし、関係性とかも繋がってるのかもね。」
「そうかもな。」
少し感激してしまっていた。
でも、そう考えると、ハンジが、私は向こうの世界のリヴァイを好きになる運命なのだと言われたのも頷ける気がする。
この世界のなまえとリヴァイが恋に落ちた様に、私も向こうの世界のリヴァイに恋に落ちるはずだったのかもしれない。
この世界に来なければ、リヴァイに出逢わなければ、私は向こうの彼を心から愛してー。
「向こうのエルヴィンぶちょうってのが、向こうの俺を引き抜いたって言ってたな。」
「うん、探偵をしてたリヴァイの実力をかって、スカウトしたんだって。」
「…それは、俺だけか?」
リヴァイの緊張に、私は気づけなかった。
私の腹の前にまわる彼の腕に抱きしめられた安心感と程よいお湯の温度に、リラックスしすぎていたせいかもしれない。
「ううん、リヴァイを含めて3人だったはず。」
「…どんな奴か聞いたか?」
「えーっとね…、何て言ってたかな…。男2人と女1人の3人で、
男性陣2人はイケメンで女子社員が喜んでるから
恋人募集中の私も見に行ってこいってリコに言われた。」
「見に行かなかったのか?」
「裏社会の探偵とかなんか怖いもん…っ!
でも、もう1人は、子供みたいな女の子だって言ってたんだよね。」
「…顔は、見てねぇのか?」
どうしてそんなに気にするのだろうー。
そう思わなかったわけじゃない。
でも、向こうの自分と一緒に企画調査部に入った人間にただ興味があるのだろう、と納得していた。
「あぁ…、そういえば、前になまえの部屋の鏡で向こうの世界に繋がったとき、男の人の方は見たよ。」
「お前の部屋に繋がったんだろ?ソイツが、お前の部屋にいたのか?」
「リコと一緒にその元探偵の3人も私の部屋に来て、手がかりを探してたみたい。
リヴァイともう1人の女の子は見てないけど、男の人の方は鏡越しに話したよ。」
「…どんな奴だった?」
「金髪で、少しつり目の綺麗な顔の人かな。背も高くて…、
確か、リコが名前を呼んでたと思うんだけど、思い出せないな…。
えーっと…、ファ…?ファー…?なんだっけ、ファ…?」
「ファーラン、じゃねぇのか。」
「あぁ、そう!!ファーランって言ってた!!
リヴァイの知ってる人?」
「…あぁ、ダチだ。」
「そっか。向こうの世界でもお友達なんだね。」
「あぁ、そうみてぇだな。」
そう言うと、リヴァイは私の腹にまわしている手に力を込めた。
まるで縋るように抱き着いて、目を伏せた彼の顔が私の肩の上に乗る。
濡れた黒髪が私の頬を撫でた。
「どうしたの?」
「…エルヴィンが、俺達を…、俺とファーラン、イザベルを調査兵団に入れたんだ。」
「そうなんだ。人類最強の兵士を見つけちゃうなんて、エルヴィンは凄いね。
今はどこにいるの?兵舎で、ファーランに似た人なんて見たことないよ。
調査兵団、辞めちゃったの?」
気軽に訊いてしまったことを、私はすぐに後悔することになった。
私はまだ、この世界の残酷さを、理解していなかったのだと思う。
分かっているつもりで、頭はまだ、平和な世界でのうのうと暮らしていたのだ。
「…死んだ。」
「へ?」
「初めての壁外調査で、ファーランもイザベルも巨人に殺された。」
あぁー。
どうして、気づいてやれなかったのだろうか、と私は自分を責めた。
壁外調査から無言の帰宅をした調査兵達を私はこの目で嫌という程に見たはずなのにー。
私に縋るように抱き着くリヴァイが、弱々しいことだって、気づいていなかったわけじゃなかった。
だから、敢えて明るくしていれば大丈夫だなんて、浅はかすぎてー。
自分が、嫌になるー。
こんなとき、この世界で強く生きて来たなまえなら、すぐに察してあげられたはずなのにー。
気の利いた言葉だって、言ってあげられたはずだ。
でも、私は分からない。
巨人に大切な人を殺され続けた彼に、かけてあげる言葉を知らないー。
「アイツ等が生きてる世界があるんだな…。」
「…そう、だね。」
「よかった。笑ってるアイツ等がいる世界があるなら、よかった。」
掠れるような声で、リヴァイはそう繰り返した。
それは本心なのだろうか。
それとも、同一人物のはずなのに、この世界の彼らは死ななければならなかったことに、憤りを感じているのだろうか。
この世の理不尽に、彼の綺麗な心を黒い感情が蠢いているのだろうか。
分からない。
私には、分からなくてー。
「会いたい?」
「…向こうのアイツ等にか?」
「もし、何かの拍子で向こうの世界と繋がる鏡が見つかったら、会いたい?」
「そうだな。会ってみてぇな。」
「じゃあ、その時は、私が連れて行ってあげるよ。」
「あぁ、ありがとな。」
リヴァイが私の耳元でクスリと笑った。