◇56話◇この腕の中に、おかえり
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真夜中、私は部屋を出た。
シンと静まり返る廊下は、明かりもなくて真っ暗だった。
窓からはぼんやりと月の灯りがこぼれているけれど、それでは足元を照らしだすには全然足りない。
壁に手を添えながら、少しずつ歩いて、リヴァイの執務室を目指す。
1人きりで部屋にいたら、頭の中をモブリットに支配されてしまいそうだったからー。
それではダメだ。ダメなのだ。
私はちゃんとなまえでいなければー。
彼女が私をこの世界に呼んだ意味がなくなるし、私はリヴァイを独りにしたくないー。
昼間よりも少し時間をかけて、リヴァイの執務室の前までたどり着いた。
昨夜のことを思い出して、少し怖くなったけれど、一度だけ深呼吸をして扉を開く。
廊下と変わらない真っ暗な部屋は、少し肌寒くて、思わず自分の身体を抱きしめる。
白いロングワンピースのままだし、寝室で暖かい部屋着に着替えよう。
そんなことを思いながら寝室へ向かう。
微かに香る石鹸と紅茶の混ざった匂いは、リヴァイのものだ。
それだけで、胸が苦しいくらいに会いたくなる。
昨日の夜、なまえのフリをすることの酷さを思い知ったはずなのにー。
いっそ、リヴァイを傷つけてもいいと思えるくらいにモブリットを好きになれたらー。
そんなことを思いながら寝室の扉を開いたから、驚きよりも罪悪感に支配されたのだ。
気づいたら抱きしめられていて、微かだった石鹸と紅茶の香りが痛いくらいに私を包んでいた。
「え…?リヴァイ、帰りは明日だってー。」
「会いたくて、早く帰ってきた。」
「嘘…。」
「じゃあ、ここにいる俺は偽物か悪夢だとでも思うか。」
少しだけ腕を緩めて離れて、リヴァイが私の頬を意地悪くつねる。
一瞬、私の方が偽物だと言ったら、彼はどんな顔をするだろうかと思ってしまった。
きっと、私は彼にとって、偽物であって悪夢だ。
「いつ帰ってきたの?」
「ついさっきだ。
帰ったらお前がいねぇから、探しに行こうと思ってたところだった。」
「…ごめんなさい。私ー。」
「いい。帰ってきたなら、それでいい。」
私の声を遮って、リヴァイが抱きしめる。
気にならないのだろうかと思わなかったわけではないけれど、何と言い訳をすればいいか分からなかったから、ホッとした。
少し考えれば、真夜中に帰ってきてなまえがいないと気づいたリヴァイが、兵団服から部屋着に着替えているのはおかしいと分かったはずだった。
彼ならきっと、なまえがいないと気づいた時点で、部屋を飛び出したはずだってー。
でも、私はー。
抱きしめたリヴァイがくれた優しいキスに思考のすべてを奪われていた。
背中に手をまわして抱き着けば、触れるだけだったキスは次第に深くなっていった。
昨日の夜とは違う、あまりにも甘いキスが私の頭をとろけさせていくー。
どうしたんだろう、今日のリヴァイはー。なんて考える余裕は私にはない。
もう何も考えられないくらいに、甘くとろけるキスを体いっぱいに受け止める。
そして、立っていられなくなった頃、漸く唇が離れれば、リヴァイはひどく愛おしそうに私の頬を撫でた。
「おかえり。」
「…それは、私の台詞だと思うよ?」
「いいんだよ。俺が言いたかったんだ。」
「変なの。」
何も知らない私は、クスクスと可笑しそうに笑った。
自分がどれほど彼らを孤独にしているのかなんて知らないで、リヴァイを助けられるのは自分しかいないと、馬鹿みたいに信じていた。
シンと静まり返る廊下は、明かりもなくて真っ暗だった。
窓からはぼんやりと月の灯りがこぼれているけれど、それでは足元を照らしだすには全然足りない。
壁に手を添えながら、少しずつ歩いて、リヴァイの執務室を目指す。
1人きりで部屋にいたら、頭の中をモブリットに支配されてしまいそうだったからー。
それではダメだ。ダメなのだ。
私はちゃんとなまえでいなければー。
彼女が私をこの世界に呼んだ意味がなくなるし、私はリヴァイを独りにしたくないー。
昼間よりも少し時間をかけて、リヴァイの執務室の前までたどり着いた。
昨夜のことを思い出して、少し怖くなったけれど、一度だけ深呼吸をして扉を開く。
廊下と変わらない真っ暗な部屋は、少し肌寒くて、思わず自分の身体を抱きしめる。
白いロングワンピースのままだし、寝室で暖かい部屋着に着替えよう。
そんなことを思いながら寝室へ向かう。
微かに香る石鹸と紅茶の混ざった匂いは、リヴァイのものだ。
それだけで、胸が苦しいくらいに会いたくなる。
昨日の夜、なまえのフリをすることの酷さを思い知ったはずなのにー。
いっそ、リヴァイを傷つけてもいいと思えるくらいにモブリットを好きになれたらー。
そんなことを思いながら寝室の扉を開いたから、驚きよりも罪悪感に支配されたのだ。
気づいたら抱きしめられていて、微かだった石鹸と紅茶の香りが痛いくらいに私を包んでいた。
「え…?リヴァイ、帰りは明日だってー。」
「会いたくて、早く帰ってきた。」
「嘘…。」
「じゃあ、ここにいる俺は偽物か悪夢だとでも思うか。」
少しだけ腕を緩めて離れて、リヴァイが私の頬を意地悪くつねる。
一瞬、私の方が偽物だと言ったら、彼はどんな顔をするだろうかと思ってしまった。
きっと、私は彼にとって、偽物であって悪夢だ。
「いつ帰ってきたの?」
「ついさっきだ。
帰ったらお前がいねぇから、探しに行こうと思ってたところだった。」
「…ごめんなさい。私ー。」
「いい。帰ってきたなら、それでいい。」
私の声を遮って、リヴァイが抱きしめる。
気にならないのだろうかと思わなかったわけではないけれど、何と言い訳をすればいいか分からなかったから、ホッとした。
少し考えれば、真夜中に帰ってきてなまえがいないと気づいたリヴァイが、兵団服から部屋着に着替えているのはおかしいと分かったはずだった。
彼ならきっと、なまえがいないと気づいた時点で、部屋を飛び出したはずだってー。
でも、私はー。
抱きしめたリヴァイがくれた優しいキスに思考のすべてを奪われていた。
背中に手をまわして抱き着けば、触れるだけだったキスは次第に深くなっていった。
昨日の夜とは違う、あまりにも甘いキスが私の頭をとろけさせていくー。
どうしたんだろう、今日のリヴァイはー。なんて考える余裕は私にはない。
もう何も考えられないくらいに、甘くとろけるキスを体いっぱいに受け止める。
そして、立っていられなくなった頃、漸く唇が離れれば、リヴァイはひどく愛おしそうに私の頬を撫でた。
「おかえり。」
「…それは、私の台詞だと思うよ?」
「いいんだよ。俺が言いたかったんだ。」
「変なの。」
何も知らない私は、クスクスと可笑しそうに笑った。
自分がどれほど彼らを孤独にしているのかなんて知らないで、リヴァイを助けられるのは自分しかいないと、馬鹿みたいに信じていた。