◇3話◇混乱
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モブリットとリヴァイ班の精鋭達は、リヴァイの執務室にいた。
ローテーブルを挟み向かい合うように置かれたソファにそれぞれ座り、なんとかこの状況を理解しようと必死に考えを巡らせている。
でも、考えれば考えるほど、頭が狂いそうになるだけだった。
揺すっても反応のないなまえだったけれど、死んでいるわけではなかった。
心臓も動いていたし、身体も温かかった。
そう、彼女は、生きていた。
巨人化出来る人間が現れたと聞いたときみたいに、今まで信じていたものが地面から崩れていくような感覚に襲われ、頭がひどく混乱している。
でも、確かに今、彼女は生きて存在していて、隣の寝室のベッドで眠っている。
ベッド脇に置いた椅子に座って彼女の寝顔をただじっと見ているリヴァイは、とてもホッとしているようだった。
ほらやっぱり、彼女は生きていたー。
リヴァイの背中は、嬉しそうにそう言っているみたいだった。
でも、そんなはずはない。
だって、彼女はー。
まだ起きていないことを確かめたハンジが、寝室から出てきた。
そして、ソファに座って頭を抱えるモブリット達の視線に気づき、小さく首を横に振った。
「遺体は…見たんですよね…?」
躊躇いがちに訊ねたエルドに、ハンジは目を伏せて頷いた。
思い出すのもツラい、惨い遺体を、ハッキリと見たー。
「アレは確かにアサミだった…。
リヴァイ兵長からもらった指輪を…してたから…。」
モブリットは、頭を抱えたまま震える声で言う。
アサミとは、訓練兵時代からの同期だった。
明るくて優しくて、友人もたくさんいた彼女は綺麗で可愛らしい女性だった。
それが、あんな風になるなんてー。
人のカタチをしていなかったアサミの遺体は、その指輪で彼女だと判断されたのだ。
あの日、トロスト区に残った巨人の掃討作戦の後、なまえの死を最初に知らされたのはハンジとモブリットだった。
遺体の惨さから、リヴァイに会わせてもいいものか悩んだなまえの親友であるリコが、相談してきたのだ。
トロスト区奪還作戦時、駐屯兵団の精鋭班として作戦に参加していたなまえは、エレンを守るという任務を全うするために自ら巨人に近づき、何体もの巨人に捕食されて死んだのだそうだ。
ハンジとモブリットは、もうなまえとは言えないソレを見て、リヴァイには見せない方がいいと判断した。
それを後悔したのは、それから数日後のことだ。
調査兵の中には、リヴァイのことを、恋人が巨人に殺されたのに平気でいる冷たい男だと言っている者もいるようだが、実際は全く違う。
遺体を見ることが出来なかったリヴァイは、なまえの死を現実として受け入れられないのだ。
いや、きっと、頭では分かっているはずだ。
そういうことは、今までも何度だってあったし、遺体があろうがなかろうが死亡は死亡だと、リヴァイなら頭で分かっている。
でも、心が追いつかないのだと思う。
遺体も見ていないのに、本当に死んだのだと、認めたくないというのもあるのかもしれない。
付き合いの長いハンジやモブリット、班員として長く一緒にいるリヴァイ班のペトラ達は、リヴァイが壊れていっていることに気づいていた。
心を殺して任務を全うしようとしているリヴァイからは狂気すら感じるのに、時々ふと、なまえの名前を出したりもする。
まるで明日も会えるみたいに、昨日会って来たみたいに、彼女の話をしているときだけ、リヴァイは以前の彼に戻っているように見えた。
なまえに出逢ってから見せるようになっていた柔らかい表情が戻っていて、それが痛々しくて、ハンジ達は必死に涙を堪えて、彼の話を聞いていた。
でも、リヴァイもすぐに思い出すのだ。
残酷な現実をー。
そして、その瞬間、スーッと瞳から色が消える。
その度に、何度でもリヴァイの心が壊れた音が聞こえるようだった。
「それが他の誰かだったってことはないんですか?
似てる指輪で、本当はなまえさんは生きてたとか。」
「なまえとリヴァイ兵長の名前がちゃんと刻まれてたのを確かめた。」
「指だけちぎれたけど、後は大丈夫だったとか…!」
「今そこで寝てるなまえは五体満足だ。
一応医療兵に診てもらって、傷ひとつないことを確かめたじゃないか。」
「じゃあ、どうして…!死んだはずのなまえさんが生きてるんですか!?
空から降ってくるんですか!?」
狂いそうになる状況に耐えられず、オルオが声を荒げた。
それは、寝室にいるリヴァイに聞こえたに違いなくて、モブリットが慌てて静かにするように注意した。
「エレンは一度巨人に食べられた後に、巨人化して生き返ったんですよね?
それなら、なまえさんも同じなんでしょうか?」
ペトラがひとつの可能性を導き出す。
それは、ハンジやモブリットも頭には過った。
だがー。
「エレンは巨人化した後、うなじから出てきたって聞いてる。
でも、なまえは空から降りてきた。まるで…。
まるで、死んだ人間が天使になって戻って来たみたいに。」
ハンジは天井を仰ぐ。
数十分前の出来事、ちゃんとこの目で見たのに、まだ信じられない。
死んだ人間が生き返るーそんなことあるのか。
いや、絶対にない。
そんなことが出来たら、失った調査兵達なんていなかったはずなのだ。
でも、実際、多くの調査兵達の犠牲の上で、この世界はなんとか保たれているのだ。
それは、トロスト区への巨人襲来で多くの犠牲を払った駐屯兵達だって同じこと。
なまえだけ特別なんてことは、ないはずだー。
ローテーブルを挟み向かい合うように置かれたソファにそれぞれ座り、なんとかこの状況を理解しようと必死に考えを巡らせている。
でも、考えれば考えるほど、頭が狂いそうになるだけだった。
揺すっても反応のないなまえだったけれど、死んでいるわけではなかった。
心臓も動いていたし、身体も温かかった。
そう、彼女は、生きていた。
巨人化出来る人間が現れたと聞いたときみたいに、今まで信じていたものが地面から崩れていくような感覚に襲われ、頭がひどく混乱している。
でも、確かに今、彼女は生きて存在していて、隣の寝室のベッドで眠っている。
ベッド脇に置いた椅子に座って彼女の寝顔をただじっと見ているリヴァイは、とてもホッとしているようだった。
ほらやっぱり、彼女は生きていたー。
リヴァイの背中は、嬉しそうにそう言っているみたいだった。
でも、そんなはずはない。
だって、彼女はー。
まだ起きていないことを確かめたハンジが、寝室から出てきた。
そして、ソファに座って頭を抱えるモブリット達の視線に気づき、小さく首を横に振った。
「遺体は…見たんですよね…?」
躊躇いがちに訊ねたエルドに、ハンジは目を伏せて頷いた。
思い出すのもツラい、惨い遺体を、ハッキリと見たー。
「アレは確かにアサミだった…。
リヴァイ兵長からもらった指輪を…してたから…。」
モブリットは、頭を抱えたまま震える声で言う。
アサミとは、訓練兵時代からの同期だった。
明るくて優しくて、友人もたくさんいた彼女は綺麗で可愛らしい女性だった。
それが、あんな風になるなんてー。
人のカタチをしていなかったアサミの遺体は、その指輪で彼女だと判断されたのだ。
あの日、トロスト区に残った巨人の掃討作戦の後、なまえの死を最初に知らされたのはハンジとモブリットだった。
遺体の惨さから、リヴァイに会わせてもいいものか悩んだなまえの親友であるリコが、相談してきたのだ。
トロスト区奪還作戦時、駐屯兵団の精鋭班として作戦に参加していたなまえは、エレンを守るという任務を全うするために自ら巨人に近づき、何体もの巨人に捕食されて死んだのだそうだ。
ハンジとモブリットは、もうなまえとは言えないソレを見て、リヴァイには見せない方がいいと判断した。
それを後悔したのは、それから数日後のことだ。
調査兵の中には、リヴァイのことを、恋人が巨人に殺されたのに平気でいる冷たい男だと言っている者もいるようだが、実際は全く違う。
遺体を見ることが出来なかったリヴァイは、なまえの死を現実として受け入れられないのだ。
いや、きっと、頭では分かっているはずだ。
そういうことは、今までも何度だってあったし、遺体があろうがなかろうが死亡は死亡だと、リヴァイなら頭で分かっている。
でも、心が追いつかないのだと思う。
遺体も見ていないのに、本当に死んだのだと、認めたくないというのもあるのかもしれない。
付き合いの長いハンジやモブリット、班員として長く一緒にいるリヴァイ班のペトラ達は、リヴァイが壊れていっていることに気づいていた。
心を殺して任務を全うしようとしているリヴァイからは狂気すら感じるのに、時々ふと、なまえの名前を出したりもする。
まるで明日も会えるみたいに、昨日会って来たみたいに、彼女の話をしているときだけ、リヴァイは以前の彼に戻っているように見えた。
なまえに出逢ってから見せるようになっていた柔らかい表情が戻っていて、それが痛々しくて、ハンジ達は必死に涙を堪えて、彼の話を聞いていた。
でも、リヴァイもすぐに思い出すのだ。
残酷な現実をー。
そして、その瞬間、スーッと瞳から色が消える。
その度に、何度でもリヴァイの心が壊れた音が聞こえるようだった。
「それが他の誰かだったってことはないんですか?
似てる指輪で、本当はなまえさんは生きてたとか。」
「なまえとリヴァイ兵長の名前がちゃんと刻まれてたのを確かめた。」
「指だけちぎれたけど、後は大丈夫だったとか…!」
「今そこで寝てるなまえは五体満足だ。
一応医療兵に診てもらって、傷ひとつないことを確かめたじゃないか。」
「じゃあ、どうして…!死んだはずのなまえさんが生きてるんですか!?
空から降ってくるんですか!?」
狂いそうになる状況に耐えられず、オルオが声を荒げた。
それは、寝室にいるリヴァイに聞こえたに違いなくて、モブリットが慌てて静かにするように注意した。
「エレンは一度巨人に食べられた後に、巨人化して生き返ったんですよね?
それなら、なまえさんも同じなんでしょうか?」
ペトラがひとつの可能性を導き出す。
それは、ハンジやモブリットも頭には過った。
だがー。
「エレンは巨人化した後、うなじから出てきたって聞いてる。
でも、なまえは空から降りてきた。まるで…。
まるで、死んだ人間が天使になって戻って来たみたいに。」
ハンジは天井を仰ぐ。
数十分前の出来事、ちゃんとこの目で見たのに、まだ信じられない。
死んだ人間が生き返るーそんなことあるのか。
いや、絶対にない。
そんなことが出来たら、失った調査兵達なんていなかったはずなのだ。
でも、実際、多くの調査兵達の犠牲の上で、この世界はなんとか保たれているのだ。
それは、トロスト区への巨人襲来で多くの犠牲を払った駐屯兵達だって同じこと。
なまえだけ特別なんてことは、ないはずだー。