◇24話◇昼間の天使
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被験体である巨人の実験もひと段落つき、ハンジ班は休憩に入っていた。
エレンの様子を見に行くために風の速さでリヴァイ班のいる森へと向かったハンジを見送って、モブリットは巨人研究所の小屋の中で、今回の壁外調査の作戦案を確認する。
入団歴5年未満の兵士には伝えられていない、危険で重要な作戦ー。
次の壁外調査で、一体何人の仲間を失うのだろうー。
また、なまえみたいにー。
小さく頭を振って、モブリットは仕事に集中する。
だが、集中しようと思ってすぐに、ふと気づく。
そういえば、壁外調査の間、リヴァイはなまえをどうするつもりなのだろうか。
まさか、危険な壁外に連れて行くとも思えない。
リヴァイはきっと、もう二度となまえに巨人を見せたくないはずだ。
トロスト区の調査兵団兵舎で待たせておくつもりなのだろうか。
今は、一時たりとも目を離したくないという様子のリヴァイも、任務の時間は、なまえを部屋の中で待たせている。
でもそれはきっと、何かあればすぐに駆け付けられる距離だから出来ていることだろう。
壁外に行けばそうはいかないー。
(俺が考えても仕方ないか。)
小さく息を吐いて、モブリットは立ち上がる。
集中できそうにないから、休憩に入ることにした。
作戦立案書をたたみ、兵団ジャケットの胸ポケットに入れると、モブリットは巨人研究所の小屋を出た。
部下に被験体の見張りを頼むと伝えて、なんとなく足が向かうのは、訓練をしている調査兵達の元だ。
結局、真面目なモブリットには休憩の仕方が分からないのだ。
訓練場へ向かう途中、『休憩場で天使が恵みの雨を降らせている』という不思議な噂も聞いた。
それが気になったというのも、訓練場へ向かうひとつの理由だ。
訓練場手前にある休憩場が見えてくると、噂の真相がすぐにわかった。
あぁ、確かに、天使が恵みの雨を降らせているー。
なまえが、ホースの出口を摘まんで持って上に向ければ、細い線になった幾つもの水飛沫が落ちてくる。
それは確かに、訓練に疲れて水分を欲している調査兵達にとって、恵みの雨に違いなかった。
夜空から降りてきたときの白いレースのロングワンピースを着ているから、なまえのことを調査兵達は『天使』と表現したのだろう。
幾つもの水飛沫が虹まで作り出したおかげで、彼女を包む空気だけがやけにキラキラと輝いて見えた。
とても、幻想的で綺麗でー。
楽しそうに笑いながら恵みの雨を降らせるなまえの周りには、たくさんの調査兵達が集まっていた。
生前のなまえと知り合いだった調査兵から、なまえのことを知らなかった調査兵まで関係なく、慣れ親しんだ名前を呼ぶように彼女に声をかけて、自分に雨を降らせてくれと楽しそうにせがんでいる。
やっぱり、彼女はなまえだ。
訓練兵時代に、なまえの周りに友人達が集まっていた光景が、まるで目の前に蘇ったようだった。
「あ!モブリットもおいでよ!!気持ちいいよ~っ。」
なまえが気づいて、可愛らしい笑顔で手を振る。
少し苦笑して、モブリットは首を横に振った。
「俺は遠慮しとくよ。」
「え~、楽しいのに。」
残念そうにしたなまえだったけれど、また調査兵達にせがまれて、楽しそうに恵みの雨を降らせるのに集中する。
そんな彼女の隣にやってきたモブリットは、身体を気遣った。
「もう背中は大丈夫なの?」
「うん、もうあんまり痛くないよ。心配してくれてありがとう。」
調査兵達に恵みの雨を降らせながら、なまえは答える。
「それならいいけど。
リヴァイ兵長は、なまえが部屋を出てること知ってるの?」
「知ってるよ。昨日で勉強は終わりって言われたときに、私が外に出たいってお願いしたの。
1人でいたら悶々としそうだったから。」
「悶々?何かあったのかい?」
「大したことないの。大丈夫だよ。」
「それならいいけど。それにしても、よく許可が出たね。」
「条件出されたけどね。」
「条件?」
「古城の敷地から出ないことと、絶対に誰か調査兵の目の見えるところにいること。
それから、ソニーとビーンとエレンに会わないこと。」
「そうか。それはちゃんと守った方がいい。」
「そうなんだけど、ソニーとビーンって誰?
ここにはいない?」
なまえに訊かれて、答えに詰まる。
あの巨人達に名前があるなんて、彼女はきっと想像もしていないのだろう。
でも、教えてあげないままだと、また面倒ごとに巻き込まれてしまうかもしれない。
「この前、君が見た巨人の名前だよ。」
「えッ!?…ッ、痛っ!」
驚いた拍子に背中を反ってしまったなまえが痛みに顔を歪めた。
そして、思わず手からホースが離れた反動で、後ろ向きに倒れ込む。
「きゃぁっ。」
「危ない…っ。」
後ろに落ちていくなまえの背中に慌てて手を伸ばす。
思いがけず、片腕を背中にまわした状態で、抱きしめる格好になってしまった。
お互いの驚いたように見開いた目が、至近距離で重なる。
なまえの顔は真っ赤で、たぶん、自分も真っ赤になっているのだろうと一瞬で熱が顔に集まった感覚で分かる。
「ご…っ、ごめんっ!」
「ううんっ、こっちこそっ、ありがとうっ。」
慌てて手を離して謝れば、なまえも恥ずかしそうにしながら感謝を告げた。
まるで、思春期の男女のようなそれが照れ臭くてー。
「…リヴァイ兵長には内緒にしときますよ。モブリットさん。」
「あ!!」
大勢の調査兵達に見られていたことを思い出して、照れ臭さよりも恐怖が勝った瞬間だった。
エレンの様子を見に行くために風の速さでリヴァイ班のいる森へと向かったハンジを見送って、モブリットは巨人研究所の小屋の中で、今回の壁外調査の作戦案を確認する。
入団歴5年未満の兵士には伝えられていない、危険で重要な作戦ー。
次の壁外調査で、一体何人の仲間を失うのだろうー。
また、なまえみたいにー。
小さく頭を振って、モブリットは仕事に集中する。
だが、集中しようと思ってすぐに、ふと気づく。
そういえば、壁外調査の間、リヴァイはなまえをどうするつもりなのだろうか。
まさか、危険な壁外に連れて行くとも思えない。
リヴァイはきっと、もう二度となまえに巨人を見せたくないはずだ。
トロスト区の調査兵団兵舎で待たせておくつもりなのだろうか。
今は、一時たりとも目を離したくないという様子のリヴァイも、任務の時間は、なまえを部屋の中で待たせている。
でもそれはきっと、何かあればすぐに駆け付けられる距離だから出来ていることだろう。
壁外に行けばそうはいかないー。
(俺が考えても仕方ないか。)
小さく息を吐いて、モブリットは立ち上がる。
集中できそうにないから、休憩に入ることにした。
作戦立案書をたたみ、兵団ジャケットの胸ポケットに入れると、モブリットは巨人研究所の小屋を出た。
部下に被験体の見張りを頼むと伝えて、なんとなく足が向かうのは、訓練をしている調査兵達の元だ。
結局、真面目なモブリットには休憩の仕方が分からないのだ。
訓練場へ向かう途中、『休憩場で天使が恵みの雨を降らせている』という不思議な噂も聞いた。
それが気になったというのも、訓練場へ向かうひとつの理由だ。
訓練場手前にある休憩場が見えてくると、噂の真相がすぐにわかった。
あぁ、確かに、天使が恵みの雨を降らせているー。
なまえが、ホースの出口を摘まんで持って上に向ければ、細い線になった幾つもの水飛沫が落ちてくる。
それは確かに、訓練に疲れて水分を欲している調査兵達にとって、恵みの雨に違いなかった。
夜空から降りてきたときの白いレースのロングワンピースを着ているから、なまえのことを調査兵達は『天使』と表現したのだろう。
幾つもの水飛沫が虹まで作り出したおかげで、彼女を包む空気だけがやけにキラキラと輝いて見えた。
とても、幻想的で綺麗でー。
楽しそうに笑いながら恵みの雨を降らせるなまえの周りには、たくさんの調査兵達が集まっていた。
生前のなまえと知り合いだった調査兵から、なまえのことを知らなかった調査兵まで関係なく、慣れ親しんだ名前を呼ぶように彼女に声をかけて、自分に雨を降らせてくれと楽しそうにせがんでいる。
やっぱり、彼女はなまえだ。
訓練兵時代に、なまえの周りに友人達が集まっていた光景が、まるで目の前に蘇ったようだった。
「あ!モブリットもおいでよ!!気持ちいいよ~っ。」
なまえが気づいて、可愛らしい笑顔で手を振る。
少し苦笑して、モブリットは首を横に振った。
「俺は遠慮しとくよ。」
「え~、楽しいのに。」
残念そうにしたなまえだったけれど、また調査兵達にせがまれて、楽しそうに恵みの雨を降らせるのに集中する。
そんな彼女の隣にやってきたモブリットは、身体を気遣った。
「もう背中は大丈夫なの?」
「うん、もうあんまり痛くないよ。心配してくれてありがとう。」
調査兵達に恵みの雨を降らせながら、なまえは答える。
「それならいいけど。
リヴァイ兵長は、なまえが部屋を出てること知ってるの?」
「知ってるよ。昨日で勉強は終わりって言われたときに、私が外に出たいってお願いしたの。
1人でいたら悶々としそうだったから。」
「悶々?何かあったのかい?」
「大したことないの。大丈夫だよ。」
「それならいいけど。それにしても、よく許可が出たね。」
「条件出されたけどね。」
「条件?」
「古城の敷地から出ないことと、絶対に誰か調査兵の目の見えるところにいること。
それから、ソニーとビーンとエレンに会わないこと。」
「そうか。それはちゃんと守った方がいい。」
「そうなんだけど、ソニーとビーンって誰?
ここにはいない?」
なまえに訊かれて、答えに詰まる。
あの巨人達に名前があるなんて、彼女はきっと想像もしていないのだろう。
でも、教えてあげないままだと、また面倒ごとに巻き込まれてしまうかもしれない。
「この前、君が見た巨人の名前だよ。」
「えッ!?…ッ、痛っ!」
驚いた拍子に背中を反ってしまったなまえが痛みに顔を歪めた。
そして、思わず手からホースが離れた反動で、後ろ向きに倒れ込む。
「きゃぁっ。」
「危ない…っ。」
後ろに落ちていくなまえの背中に慌てて手を伸ばす。
思いがけず、片腕を背中にまわした状態で、抱きしめる格好になってしまった。
お互いの驚いたように見開いた目が、至近距離で重なる。
なまえの顔は真っ赤で、たぶん、自分も真っ赤になっているのだろうと一瞬で熱が顔に集まった感覚で分かる。
「ご…っ、ごめんっ!」
「ううんっ、こっちこそっ、ありがとうっ。」
慌てて手を離して謝れば、なまえも恥ずかしそうにしながら感謝を告げた。
まるで、思春期の男女のようなそれが照れ臭くてー。
「…リヴァイ兵長には内緒にしときますよ。モブリットさん。」
「あ!!」
大勢の調査兵達に見られていたことを思い出して、照れ臭さよりも恐怖が勝った瞬間だった。