◇18話◇兵士の記憶(後編)
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井戸の中に入ってもらったものの、エレンは中々自分の意志で巨人化することが出来ないようだった。
巨人化実験を始めて数日、エレンが巨人化したのは、スプーンを拾おうとして無意識に片腕だけを巨人化してしまったあの1回だけだ。
何か目的が無ければ巨人化出来ない、というところまではハンジも分かったのだが、エレンはそれをうまくコントロール出来ないようだった。
自傷行為が巨人化のきっかけになっていることだけは、本人も理解しているから、何度も何度も巨人化を試みる度に、彼の右手は血だらけになっていく。
これ以上続けてもエレンの身体を傷つけるだけだということで、とりあえず、今日のところは巨人化実験は中止とした。
地下にある自分の部屋に戻るように、リヴァイから指示されたエレンは少し前に旧調査兵団本部内へ戻って行った。
ハンジがテーブルについて、今日の実験結果をノートにまとめていると、実験の後片付けをリヴァイ班に命じたリヴァイが、椅子に腰を降ろし、テーブルの上のティーカップに手をかけた。
珍しく疲れた様子で息を吐いているリヴァイを見て、ハンジは何とも言えない気持ちになる。
なまえの死、そして、その最愛の人の死の一因となったエレンを守らなければならないという精神的に過酷な任務。
それに加えて、なぜか目の前に生き返って現れたなまえー。
これまで、眠れない日々が続いていたはずのリヴァイはきっと、心も身体も疲れているのだろう。
だからきっと、記憶を早く取り戻せと強要されて戸惑うなまえの顔が見えていないのだ。
今までなら、なまえの気持ちを誰よりも早く察してやれていたのにー。
それとも、彼女が本物のなまえではないと心のどこかが気づいているとかー。
(まさかね、それはない。
気づいてれば、あんなにツラそうに彼女を見ないか。)
真実を知っているからこそ、ハンジの胸からは痛みと苦しみが抜けない。
大切な友人を亡くしたという悲しみも、まだ癒えない。
だからこそ、恋人だったリヴァイはもっとツラいのだと知っている。
彼女には酷だけれど、もうしばらくなまえを演じてもらうしかない。
後片付けを終えたリヴァイ班とモブリットはすぐに戻ってきた。
全員集まったところで、今後のエレンの巨人化実験についての話し合いを始めた。
話し合いも中盤に差し掛かった頃だった。
旧調査兵団本部内から、眩しい光と共に轟音が響いた。
それからすぐに、まるで地震のような地響きも聞こえてくる。
普段は冷静なリヴァイも目を見開き驚いている様子だった。
思わず、驚きでハンジは立ち上がる。
「何!?今のは何!?」
「わかりませんが、巨人化の光に似ていたような…!」
「なまえさんが現れたときの光にも似てましたよね…っ。」
「なまえ!!」
ハッとした顔をして、リヴァイが走り出した。
その後をハンジやモブリット、リヴァイ班が追いかける。
旧調査兵団本部内で、何かがあったことは確実だ。
それが、エレンの巨人化なのか、なまえが元の世界に戻ったということなのか。それとも、そのどちらでもないのかー。
(もし、ここでなまえが元の世界に戻ってしまったら、おしまいだ…。
この世界も…、リヴァイも…、壊れてしまう…っ。)
焦って唇を噛むハンジは、隣を走るモブリットをチラリと見た。
彼もまた似たような顔をしていた。
訓練兵時代からの友人だったなまえの死は、モブリットにとってもひどくショックなようだった。
リヴァイと恋人になったときもとても喜んでいたし、なまえの恋の相談相手もしていた。ほとんどが、リヴァイへの愚痴の聞き役のようだったけれどー。
そんななまえがリヴァイを残して死ななければならなかった残酷な事実に打ちのめされていたところに、現れた救いが彼女だった。
なまえがまたリヴァイのそばにられるー、それはきっと恋の相談に乗っていたモブリットにとってとても嬉しいことだったに違いない。
たとえ、記憶がなくたって構わないと思うほどにー。
だからこそ、彼女はなまえではないー、その事実にモブリットはひどくショックを受けていたようでー。
「リヴァイ兵長!!エレンが巨人化しました!!」
古城内に入ろうとしたところで、顔面を蒼白させた調査兵が走ってきた。
「こっちです!」と場所を案内する彼を追いかけながら、何があったのかを訊ねる。
そして、最悪なことを聞いてしまうー。
「突如、エレンが巨人化してしまったらしく、
その爆発に巻き込まれたなまえさんが意識不明です!!」
リヴァイの顔が青くなるのを、長い付き合いの中で、ハンジは初めて見た。
光に包まれて空から降りてきたなまえを見たとき、ほんの一瞬だけ、神様はいるんだと思ったのだ。
でも、それは大きな間違いだったらしい。
少なくとも、あぁ、きっと。
この世界には、神様はいないに違いないー。
巨人化実験を始めて数日、エレンが巨人化したのは、スプーンを拾おうとして無意識に片腕だけを巨人化してしまったあの1回だけだ。
何か目的が無ければ巨人化出来ない、というところまではハンジも分かったのだが、エレンはそれをうまくコントロール出来ないようだった。
自傷行為が巨人化のきっかけになっていることだけは、本人も理解しているから、何度も何度も巨人化を試みる度に、彼の右手は血だらけになっていく。
これ以上続けてもエレンの身体を傷つけるだけだということで、とりあえず、今日のところは巨人化実験は中止とした。
地下にある自分の部屋に戻るように、リヴァイから指示されたエレンは少し前に旧調査兵団本部内へ戻って行った。
ハンジがテーブルについて、今日の実験結果をノートにまとめていると、実験の後片付けをリヴァイ班に命じたリヴァイが、椅子に腰を降ろし、テーブルの上のティーカップに手をかけた。
珍しく疲れた様子で息を吐いているリヴァイを見て、ハンジは何とも言えない気持ちになる。
なまえの死、そして、その最愛の人の死の一因となったエレンを守らなければならないという精神的に過酷な任務。
それに加えて、なぜか目の前に生き返って現れたなまえー。
これまで、眠れない日々が続いていたはずのリヴァイはきっと、心も身体も疲れているのだろう。
だからきっと、記憶を早く取り戻せと強要されて戸惑うなまえの顔が見えていないのだ。
今までなら、なまえの気持ちを誰よりも早く察してやれていたのにー。
それとも、彼女が本物のなまえではないと心のどこかが気づいているとかー。
(まさかね、それはない。
気づいてれば、あんなにツラそうに彼女を見ないか。)
真実を知っているからこそ、ハンジの胸からは痛みと苦しみが抜けない。
大切な友人を亡くしたという悲しみも、まだ癒えない。
だからこそ、恋人だったリヴァイはもっとツラいのだと知っている。
彼女には酷だけれど、もうしばらくなまえを演じてもらうしかない。
後片付けを終えたリヴァイ班とモブリットはすぐに戻ってきた。
全員集まったところで、今後のエレンの巨人化実験についての話し合いを始めた。
話し合いも中盤に差し掛かった頃だった。
旧調査兵団本部内から、眩しい光と共に轟音が響いた。
それからすぐに、まるで地震のような地響きも聞こえてくる。
普段は冷静なリヴァイも目を見開き驚いている様子だった。
思わず、驚きでハンジは立ち上がる。
「何!?今のは何!?」
「わかりませんが、巨人化の光に似ていたような…!」
「なまえさんが現れたときの光にも似てましたよね…っ。」
「なまえ!!」
ハッとした顔をして、リヴァイが走り出した。
その後をハンジやモブリット、リヴァイ班が追いかける。
旧調査兵団本部内で、何かがあったことは確実だ。
それが、エレンの巨人化なのか、なまえが元の世界に戻ったということなのか。それとも、そのどちらでもないのかー。
(もし、ここでなまえが元の世界に戻ってしまったら、おしまいだ…。
この世界も…、リヴァイも…、壊れてしまう…っ。)
焦って唇を噛むハンジは、隣を走るモブリットをチラリと見た。
彼もまた似たような顔をしていた。
訓練兵時代からの友人だったなまえの死は、モブリットにとってもひどくショックなようだった。
リヴァイと恋人になったときもとても喜んでいたし、なまえの恋の相談相手もしていた。ほとんどが、リヴァイへの愚痴の聞き役のようだったけれどー。
そんななまえがリヴァイを残して死ななければならなかった残酷な事実に打ちのめされていたところに、現れた救いが彼女だった。
なまえがまたリヴァイのそばにられるー、それはきっと恋の相談に乗っていたモブリットにとってとても嬉しいことだったに違いない。
たとえ、記憶がなくたって構わないと思うほどにー。
だからこそ、彼女はなまえではないー、その事実にモブリットはひどくショックを受けていたようでー。
「リヴァイ兵長!!エレンが巨人化しました!!」
古城内に入ろうとしたところで、顔面を蒼白させた調査兵が走ってきた。
「こっちです!」と場所を案内する彼を追いかけながら、何があったのかを訊ねる。
そして、最悪なことを聞いてしまうー。
「突如、エレンが巨人化してしまったらしく、
その爆発に巻き込まれたなまえさんが意識不明です!!」
リヴァイの顔が青くなるのを、長い付き合いの中で、ハンジは初めて見た。
光に包まれて空から降りてきたなまえを見たとき、ほんの一瞬だけ、神様はいるんだと思ったのだ。
でも、それは大きな間違いだったらしい。
少なくとも、あぁ、きっと。
この世界には、神様はいないに違いないー。