◇14話◇心臓の音がする悲しい嘘
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窓際に立って、空が赤くなるのを待っていた。
でも、まだなんとか空が青いうちに、リヴァイは帰ってきた。
今朝、私が引き留めたりしたから、急いでくれたのかもしれない。
それか、私がまたいなくなってはいないかと、不安だったのかもしれない。
そう考えると、罪悪感が増していく。
「モブリットはどうした。来なかったのか。」
兵団ジャケットを脱ぎながら入ってきたリヴァイは、執務室を見渡した。
「さっき、ハンジに新しい任務を言い渡されたの。」
「そうか。」
リヴァイはクローゼットからハンガーを取り出して、兵団ジャケットをかけた。
その様子を眺めながら、私はひどく緊張していた。
この世界のことを何も知らない私が無事に元の世界に戻るためには、ハンジの協力は必要不可欠だ。
だから、私もちゃんとハンジに協力をしないといけない。
ハンジは本当に、リヴァイのことを大切に思っているようだったからー。
傷つけないようにしないといけないー。
「そんなに難しい顔をしてどうした。クソでもしてぇのか。」
「…違う。」
「そうか。クソがしてぇときはちゃんと言えよ。」
「言わないよっ。」
「だろうな。」
リヴァイは意地悪く口元を歪めると、デスクの椅子を引いて腰を降ろした。
そして、引き出しの中から書類を取り出して確認し始める。
不愛想な印象だったから意外だったけれど、今のは冗談だったらしい。
「ねぇ、リヴァイ。」
「どうした?やっぱり、クソがー。」
「それは違う。」
「分かってる。待て。ちゃんと話を聞く。」
リヴァイは書類を引き出しの中に戻すと、立ち上がった。
そして、ソファに座って話をしようと提案してきた。
私が真剣な話をしようとしていることが分かったのだろう。
まずはリヴァイがソファに腰を降ろした。
その隣に私が座ると、リヴァイは今度こそ驚いた顔をした。
離れて座るか、向かい合うソファに座ると思っていたのだろう。
私だって、本当はそうしたかったー。
「私…、少しだけ、思い出したの。」
リヴァイの方を向いて、目を見て、嘘を吐いた。
少しずつ見開いていくリヴァイの切れ長の瞳を眺めながら、心の中で、自分のことを、最低だと罵った。
自分が助かるために、恋人を心から愛している人を騙そうとしている。
いや、騙してる。
心の傷につけこんで、心の傷に塩をぬろうとしているー。
「本当か…?」
期待よりも、どこか不安を残した目でリヴァイが訊ねる。
私が頷けば、彼はゆっくりと息を吐いた。
でも、抱きしめようと伸びた彼の手を止める。
戸惑う彼に、私は言いたくないことを言う。
「ごめんなさい…。リヴァイのことも、ハンジ達のことも、私は思い出せないと思う。」
「…思い出したんじゃなかったのか。」
「私が思いだしたのは、ここに戻って来た理由なの。」
「…それはお前が生きてたからだろ。死んでねぇからー。」
「違うよ、リヴァイ。」
初めて、私からリヴァイに触れた。
説得するように両腕をそっと握る。
彼は、とても不安そうだった。
「すごく、大切な人がいた。その人は、とても傷つきやすくて
でも、それを隠して強くあろうとしてしまう人。」
「…っ。」
「覚えてないけど、それはあなたでしょう?私、あなたを助けたかったの。
そう願っていたら、気づいたらここにいたの。それが、私が思い出したことだよ。」
思い出を教えてやってもいいが、嘘の記憶を刷り込んだところで、どうせすぐにボロが出るー。
そう言ったハンジが、とりあえず、記憶はないままで天使として戻ってきたことにするのがいい、と提案した。
だから私は、嘘がバレてしまわないように、切ない声が私に教えてくれた真実を交えて、リヴァイに伝えた。
本当は、伝えるべきは彼女なのだろう。
私の口からそれが出た途端、彼女の深い愛が、嘘になってしまう酷い現実。
最低な気分だ。
「死んだみてぇに…、言うんじゃねぇ。」
「リヴァイ、私はー。」
「死んでねぇ!!」
急にリヴァイが大きな声を出すから驚いた。
ビクッとした私に、リヴァイは途端に消え入りそうな声で「すまない」と謝った。
伏せた目の下で長い睫毛が影を作っていて、胸が痛くなった。
「ねぇ、リヴァイ。聞いて。」
「…なんだ。」
リヴァイが僅かに顔を上げた。
不安そうな瞳は、私を見ているようで、見ていない。
いやきっと、真実が怖くて、目を反らしている。
恋人の死を頭では理解しているけれど心が否定しているー、ハンジが言っていたことは本当だった。
「私は、いるよ。ここにいる。」
膝の上で震えていたリヴァイの手を両手で包んだ。
冷たいその手を、私の手が温める。
そんなことが出来るのは生きているからで、本当は彼女がしてあげたかったことー。
リヴァイが私を抱きしめる。彼女だと信じてー。
もう本当に、最低な気分だ。
これで元の世界に戻れなかったら、私は一生、この最低な気分のまま生きていくのだろうか。
「心臓の音、聞こえるでしょう?」
「あぁ、聞こえる…!」
リヴァイが強く強く、私を抱きしめる。
ここに彼女がいることを確かめたくて、心臓の音を重ねたくて、強く、強くー。
どうして、こんなこと言ってしまったのだろう。
これでは、生き返ったみたいじゃないか。
いつか、サヨナラするのにー。
私は元の世界に戻って、リヴァイは恋人が死んだという現実の中を生きていかなきゃいけないのにー。
ただ、ひどくツラそうなリヴァイを見ていられなくてー。
『私の代わりに、あの人を助けてー。』
切ない声が蘇る。
あぁ、だからかー。
彼女の深い愛を知ってしまったから、思わずリヴァイの心を守ろうとしてしまったのだろう。
でも、そんなこといつまでも続けられない。
早く、元の世界に戻れる方法をハンジに見つけてもらわなければー。
でも、まだなんとか空が青いうちに、リヴァイは帰ってきた。
今朝、私が引き留めたりしたから、急いでくれたのかもしれない。
それか、私がまたいなくなってはいないかと、不安だったのかもしれない。
そう考えると、罪悪感が増していく。
「モブリットはどうした。来なかったのか。」
兵団ジャケットを脱ぎながら入ってきたリヴァイは、執務室を見渡した。
「さっき、ハンジに新しい任務を言い渡されたの。」
「そうか。」
リヴァイはクローゼットからハンガーを取り出して、兵団ジャケットをかけた。
その様子を眺めながら、私はひどく緊張していた。
この世界のことを何も知らない私が無事に元の世界に戻るためには、ハンジの協力は必要不可欠だ。
だから、私もちゃんとハンジに協力をしないといけない。
ハンジは本当に、リヴァイのことを大切に思っているようだったからー。
傷つけないようにしないといけないー。
「そんなに難しい顔をしてどうした。クソでもしてぇのか。」
「…違う。」
「そうか。クソがしてぇときはちゃんと言えよ。」
「言わないよっ。」
「だろうな。」
リヴァイは意地悪く口元を歪めると、デスクの椅子を引いて腰を降ろした。
そして、引き出しの中から書類を取り出して確認し始める。
不愛想な印象だったから意外だったけれど、今のは冗談だったらしい。
「ねぇ、リヴァイ。」
「どうした?やっぱり、クソがー。」
「それは違う。」
「分かってる。待て。ちゃんと話を聞く。」
リヴァイは書類を引き出しの中に戻すと、立ち上がった。
そして、ソファに座って話をしようと提案してきた。
私が真剣な話をしようとしていることが分かったのだろう。
まずはリヴァイがソファに腰を降ろした。
その隣に私が座ると、リヴァイは今度こそ驚いた顔をした。
離れて座るか、向かい合うソファに座ると思っていたのだろう。
私だって、本当はそうしたかったー。
「私…、少しだけ、思い出したの。」
リヴァイの方を向いて、目を見て、嘘を吐いた。
少しずつ見開いていくリヴァイの切れ長の瞳を眺めながら、心の中で、自分のことを、最低だと罵った。
自分が助かるために、恋人を心から愛している人を騙そうとしている。
いや、騙してる。
心の傷につけこんで、心の傷に塩をぬろうとしているー。
「本当か…?」
期待よりも、どこか不安を残した目でリヴァイが訊ねる。
私が頷けば、彼はゆっくりと息を吐いた。
でも、抱きしめようと伸びた彼の手を止める。
戸惑う彼に、私は言いたくないことを言う。
「ごめんなさい…。リヴァイのことも、ハンジ達のことも、私は思い出せないと思う。」
「…思い出したんじゃなかったのか。」
「私が思いだしたのは、ここに戻って来た理由なの。」
「…それはお前が生きてたからだろ。死んでねぇからー。」
「違うよ、リヴァイ。」
初めて、私からリヴァイに触れた。
説得するように両腕をそっと握る。
彼は、とても不安そうだった。
「すごく、大切な人がいた。その人は、とても傷つきやすくて
でも、それを隠して強くあろうとしてしまう人。」
「…っ。」
「覚えてないけど、それはあなたでしょう?私、あなたを助けたかったの。
そう願っていたら、気づいたらここにいたの。それが、私が思い出したことだよ。」
思い出を教えてやってもいいが、嘘の記憶を刷り込んだところで、どうせすぐにボロが出るー。
そう言ったハンジが、とりあえず、記憶はないままで天使として戻ってきたことにするのがいい、と提案した。
だから私は、嘘がバレてしまわないように、切ない声が私に教えてくれた真実を交えて、リヴァイに伝えた。
本当は、伝えるべきは彼女なのだろう。
私の口からそれが出た途端、彼女の深い愛が、嘘になってしまう酷い現実。
最低な気分だ。
「死んだみてぇに…、言うんじゃねぇ。」
「リヴァイ、私はー。」
「死んでねぇ!!」
急にリヴァイが大きな声を出すから驚いた。
ビクッとした私に、リヴァイは途端に消え入りそうな声で「すまない」と謝った。
伏せた目の下で長い睫毛が影を作っていて、胸が痛くなった。
「ねぇ、リヴァイ。聞いて。」
「…なんだ。」
リヴァイが僅かに顔を上げた。
不安そうな瞳は、私を見ているようで、見ていない。
いやきっと、真実が怖くて、目を反らしている。
恋人の死を頭では理解しているけれど心が否定しているー、ハンジが言っていたことは本当だった。
「私は、いるよ。ここにいる。」
膝の上で震えていたリヴァイの手を両手で包んだ。
冷たいその手を、私の手が温める。
そんなことが出来るのは生きているからで、本当は彼女がしてあげたかったことー。
リヴァイが私を抱きしめる。彼女だと信じてー。
もう本当に、最低な気分だ。
これで元の世界に戻れなかったら、私は一生、この最低な気分のまま生きていくのだろうか。
「心臓の音、聞こえるでしょう?」
「あぁ、聞こえる…!」
リヴァイが強く強く、私を抱きしめる。
ここに彼女がいることを確かめたくて、心臓の音を重ねたくて、強く、強くー。
どうして、こんなこと言ってしまったのだろう。
これでは、生き返ったみたいじゃないか。
いつか、サヨナラするのにー。
私は元の世界に戻って、リヴァイは恋人が死んだという現実の中を生きていかなきゃいけないのにー。
ただ、ひどくツラそうなリヴァイを見ていられなくてー。
『私の代わりに、あの人を助けてー。』
切ない声が蘇る。
あぁ、だからかー。
彼女の深い愛を知ってしまったから、思わずリヴァイの心を守ろうとしてしまったのだろう。
でも、そんなこといつまでも続けられない。
早く、元の世界に戻れる方法をハンジに見つけてもらわなければー。