◇13話◇パラレルワールド
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「-髪を撫でる彼の手は優しくて、自然と唇が重なっていた。」
私は、相変わらず青いままの窓の外を眺めながら、柔らかい男の人の声で読み聞かせられる物語に適当に耳を傾けていた。
リヴァイが部屋を出てから、それほど待つこともなくモブリットは来てくれた。
暇つぶしの相手だと言っていたけれど、私がもう二度と逃げない為の見張りなのだろう。
とりあえず、今日も本を読んでおけばいいとリヴァイに言われているのだけれど、知らない文字なので、モブリットに読み聞かせをお願いしているところだ。
「…それで?2人はどうなったの?」
続きが聞こえなくなって、私は向かい合うソファに座るモブリットに顔を向けた。
真っ赤になっている顔を見て、なんとなくその続きを察する。
どうやら、漸く心が通じ合った男女が、ラブシーンに突入したらしい。
「ねぇ、続きは?」
「…なまえ、わざと言ってるだろ。」
「さぁ?」
少し意地悪く言って、私はクスリと笑う。
本を閉じてしまったモブリットは、続きはリヴァイに読んでもらえばいいなんて最悪なアドバイスをくれる。
それでその気になってしまったらどうするのだ。
私は、好きでもない男と身体を重ねる趣味はない。
「なまえは記憶がなくても、変わらないね。」
モブリットはどこか懐かしそうな目で私を見た。
私越しに私の知らない誰かを見ているその目に、私は慣れそうにない。
でも、気づいたら、モブリットが知っている私はどんな人間だったのかを訊ねてしまっていた。
なんとなく気になったのか、それとも暇すぎたのかは分からない。
ただほんの少し、興味はあったと思う。
リヴァイがあんなに愛おしそうに見つめる私にそっくりな彼女は、どんな人だったのだろうー。
「俺となまえは訓練兵団の同期だったんだ。」
「訓練兵団?」
「兵士になるための訓練をする兵団だよ。
そこを卒業して漸く兵士になれるんだ。」
モブリットは、簡単に兵団という組織について説明をしてくれた。
正直、本気に受け止めてはいなかったと思う。
巨人という化け物を見てもまだ、私は彼らのことをおかしな妄想をしていると信じていたのだろう。
だって、彼らの話を信じるということは、頭がおかしいのは自分だと認めるということだったからー。
「10位以内には入ってなかったけど、なまえはとても優秀な訓練兵だったよ。」
「モブリットはどうだったの?」
「俺?もちろん、10位以内だよ。」
「そんな感じ。とっても優秀そうだもの。」
クスクスと笑えば、褒められている気がしないとため息を吐かれた。
でも、ハンジの隣で何だか大変そうにしている姿を見ていると、優秀な右腕なのだろうというのは伝わってきていたのは本当だ。
「とにかく、なまえはいつも友人の輪の中心にいるような子だったよ。
今、俺にしたみたいに友人を意地悪くからかって遊んでは無邪気に笑うんだ。
嫌味のない笑顔が見たくて、みんながなまえの周りに集まっていた。」
「なんだかさっきから、第三者みたいな言い方するのね。
私とモブリットは友達じゃなかったの?」
「あぁ、俺となまえは訓練兵時代はあまり関わることはなかったから。」
訓練兵時代、私の周りにいた友達は明るくて元気な男女が多く、どちらかというとおとなしいグループにいたモブリットとはあまり話す機会がなかったらしい。
だから、真面目でがり勉タイプのリコと一番の親友になったときには、みんなが驚いたのだそうだ。
でも、リコは本当に素晴らしい女性だし、優しくて強くて可愛くて尊敬できるところがたくさんある。
それに、絶対に嘘を吐かないから、世界で一番信頼できる友人なのだ。
だから私がそう言えば、同じことを言われたことがあるとモブリットに苦笑されてしまう。
私の知らない私もリコに対して同じことを思っていたようだ。
そもそも、私が会ったリコは私の知っているリコなのだろうか。
ダメだー、頭が痛くなってきた。
私がリコのことを考えて頭が痛くなっている間に、モブリットの話は訓練兵団を卒業した後のことになっていた。
卒業後、調査兵になったモブリットと駐屯兵になった私は会うこともなくなったが、ある日、偶然再会することになった。
そのときが、私とリヴァイとの初めての出逢いなのだと教えてくれた。
「最初は気が合わないみたいでなまえはすごくリヴァイ兵長のことを嫌ってたよ。
今なんかよりもだいぶ尖ってたリヴァイ兵長に真正面から文句言うもんだから
こっちの方がヒヤヒヤしたよ。」
モブリットは胸に手を当てて、大きく息を吐いた。
よくわからないが、私の知らない私は、今のハンジがしているように彼に苦労をかけていたのかもしれない。
「それでよく結婚しようなんてことになったね。」
「だからじゃないかな。」
「だから?」
「きっと、リヴァイ兵長は嬉しかったんだよ。
自分と真正面から向き合ってくれる人が現れて。
付き合うまでは、いつも喧嘩ばかりしてた2人だけど、すごく楽しそうだったから。」
「喧嘩するほど仲がいいってやつかな?」
「あぁ、そうだね。リヴァイ兵長はなまえの邪気のない心に惹かれたんだと思うよ。
いつだって真っすぐで明るくて、すごく素直ななまえのそばはきっと
欺瞞だらけの世界で唯一安らげる場所だったんだ。あの人が結婚を決めたくらいだから。」
「…そう。そんな人が死んでしまって、つらいね。」
「でも、なまえは戻ってきてくれた。よくわからないけど、俺は本当に良かったと思ってる。
リヴァイ兵長は、なまえが死んでから、生きていても、死んでいるみたいだったから…。」
私は、返事が出来なかった。
聞かなければよかったー、と酷く後悔した。
だって、モブリットが想い出を語った彼女が、私ではないことを私が一番知っているから。
でも、それならリコも、私の知っているリコのそっくりさんなのだろうか。
どう説明すればいいか分からない状況で、この世で誰よりもリヴァイを傷つける存在が私だということだけは、今、ハッキリと自覚した。
私は、相変わらず青いままの窓の外を眺めながら、柔らかい男の人の声で読み聞かせられる物語に適当に耳を傾けていた。
リヴァイが部屋を出てから、それほど待つこともなくモブリットは来てくれた。
暇つぶしの相手だと言っていたけれど、私がもう二度と逃げない為の見張りなのだろう。
とりあえず、今日も本を読んでおけばいいとリヴァイに言われているのだけれど、知らない文字なので、モブリットに読み聞かせをお願いしているところだ。
「…それで?2人はどうなったの?」
続きが聞こえなくなって、私は向かい合うソファに座るモブリットに顔を向けた。
真っ赤になっている顔を見て、なんとなくその続きを察する。
どうやら、漸く心が通じ合った男女が、ラブシーンに突入したらしい。
「ねぇ、続きは?」
「…なまえ、わざと言ってるだろ。」
「さぁ?」
少し意地悪く言って、私はクスリと笑う。
本を閉じてしまったモブリットは、続きはリヴァイに読んでもらえばいいなんて最悪なアドバイスをくれる。
それでその気になってしまったらどうするのだ。
私は、好きでもない男と身体を重ねる趣味はない。
「なまえは記憶がなくても、変わらないね。」
モブリットはどこか懐かしそうな目で私を見た。
私越しに私の知らない誰かを見ているその目に、私は慣れそうにない。
でも、気づいたら、モブリットが知っている私はどんな人間だったのかを訊ねてしまっていた。
なんとなく気になったのか、それとも暇すぎたのかは分からない。
ただほんの少し、興味はあったと思う。
リヴァイがあんなに愛おしそうに見つめる私にそっくりな彼女は、どんな人だったのだろうー。
「俺となまえは訓練兵団の同期だったんだ。」
「訓練兵団?」
「兵士になるための訓練をする兵団だよ。
そこを卒業して漸く兵士になれるんだ。」
モブリットは、簡単に兵団という組織について説明をしてくれた。
正直、本気に受け止めてはいなかったと思う。
巨人という化け物を見てもまだ、私は彼らのことをおかしな妄想をしていると信じていたのだろう。
だって、彼らの話を信じるということは、頭がおかしいのは自分だと認めるということだったからー。
「10位以内には入ってなかったけど、なまえはとても優秀な訓練兵だったよ。」
「モブリットはどうだったの?」
「俺?もちろん、10位以内だよ。」
「そんな感じ。とっても優秀そうだもの。」
クスクスと笑えば、褒められている気がしないとため息を吐かれた。
でも、ハンジの隣で何だか大変そうにしている姿を見ていると、優秀な右腕なのだろうというのは伝わってきていたのは本当だ。
「とにかく、なまえはいつも友人の輪の中心にいるような子だったよ。
今、俺にしたみたいに友人を意地悪くからかって遊んでは無邪気に笑うんだ。
嫌味のない笑顔が見たくて、みんながなまえの周りに集まっていた。」
「なんだかさっきから、第三者みたいな言い方するのね。
私とモブリットは友達じゃなかったの?」
「あぁ、俺となまえは訓練兵時代はあまり関わることはなかったから。」
訓練兵時代、私の周りにいた友達は明るくて元気な男女が多く、どちらかというとおとなしいグループにいたモブリットとはあまり話す機会がなかったらしい。
だから、真面目でがり勉タイプのリコと一番の親友になったときには、みんなが驚いたのだそうだ。
でも、リコは本当に素晴らしい女性だし、優しくて強くて可愛くて尊敬できるところがたくさんある。
それに、絶対に嘘を吐かないから、世界で一番信頼できる友人なのだ。
だから私がそう言えば、同じことを言われたことがあるとモブリットに苦笑されてしまう。
私の知らない私もリコに対して同じことを思っていたようだ。
そもそも、私が会ったリコは私の知っているリコなのだろうか。
ダメだー、頭が痛くなってきた。
私がリコのことを考えて頭が痛くなっている間に、モブリットの話は訓練兵団を卒業した後のことになっていた。
卒業後、調査兵になったモブリットと駐屯兵になった私は会うこともなくなったが、ある日、偶然再会することになった。
そのときが、私とリヴァイとの初めての出逢いなのだと教えてくれた。
「最初は気が合わないみたいでなまえはすごくリヴァイ兵長のことを嫌ってたよ。
今なんかよりもだいぶ尖ってたリヴァイ兵長に真正面から文句言うもんだから
こっちの方がヒヤヒヤしたよ。」
モブリットは胸に手を当てて、大きく息を吐いた。
よくわからないが、私の知らない私は、今のハンジがしているように彼に苦労をかけていたのかもしれない。
「それでよく結婚しようなんてことになったね。」
「だからじゃないかな。」
「だから?」
「きっと、リヴァイ兵長は嬉しかったんだよ。
自分と真正面から向き合ってくれる人が現れて。
付き合うまでは、いつも喧嘩ばかりしてた2人だけど、すごく楽しそうだったから。」
「喧嘩するほど仲がいいってやつかな?」
「あぁ、そうだね。リヴァイ兵長はなまえの邪気のない心に惹かれたんだと思うよ。
いつだって真っすぐで明るくて、すごく素直ななまえのそばはきっと
欺瞞だらけの世界で唯一安らげる場所だったんだ。あの人が結婚を決めたくらいだから。」
「…そう。そんな人が死んでしまって、つらいね。」
「でも、なまえは戻ってきてくれた。よくわからないけど、俺は本当に良かったと思ってる。
リヴァイ兵長は、なまえが死んでから、生きていても、死んでいるみたいだったから…。」
私は、返事が出来なかった。
聞かなければよかったー、と酷く後悔した。
だって、モブリットが想い出を語った彼女が、私ではないことを私が一番知っているから。
でも、それならリコも、私の知っているリコのそっくりさんなのだろうか。
どう説明すればいいか分からない状況で、この世で誰よりもリヴァイを傷つける存在が私だということだけは、今、ハッキリと自覚した。