◇第百六十四話から数か月後◇旅立った天使へ、幸せになるよ
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数か月前、人類はウォール・マリアという最大の領土を取り戻した。
超大型巨人と鎧の巨人が待ち構えていると考えられていたから、人類史上最大の決戦とされ、シガンシナ区へ向かった調査兵達のほとんどは帰ってこられないだろうと予想されていた。
だが、犠牲は免れなかったものの、想定よりも遥か多い調査兵達が無事の帰還を果たしている。
その直前には、真の王に冠を預けることにも暗躍していたらしい調査兵団の功績は輝かしく、新聞は彼らを称える記事で持ちきりだ。
そんな中、世間に妙な噂が出回りだした。
この奇跡のような大勝利の背景に、天使の存在があったというものだ。
命を賭して戦っていた勇敢な調査兵達の元へ天使が舞い降り、彼らを救い、人類に勝利をもたらした後、天国へと旅立ったという話だ。
まさか、そんなおとぎ話にもないような馬鹿げた話、信じてはいない。
ただ、確かめてみようと思った。
こんな腐った世界を、間抜けな兵士達を助けた馬鹿な天使が本当に存在したのかどうかを、確かめたくなった。
だから、無数の墓石が並ぶ墓地へやって来た。
新しいものから順に、ひとつひとつ、名前を確認していく。
その中に、知っている名前も幾つかあって、調査兵達の中に、意外と知り合いが多かったのだと知った。
思い浮かべているわけではないのに、生前の彼らの姿が脳裏に過る。
自分が生きているのに、彼らは死んでいるー。
人生というのは、本当に難儀なものだ。
ゆっくりと歩みを進めていると、見覚えのあるティーカップが供えられている墓石を見つけた。
あぁ、あれかー。
見つけてしまったそれに、探していたのは『あったのは馬鹿げた噂話で、馬鹿な天使なんて存在しなかった』という答えだったと思い知る。
緊張しながら少し早足で向かい、ティーカップの前で足を止める。
墓石に彫られている名前を見て、驚いた。
あぁ、そうか。
彼女は結婚していたのか。
とても幸せそうに惚れた男の隣で笑っていた彼女を思い出す。
それならどうしてー。
心底、彼女のことを馬鹿だと思った。
本当にどうしようもない女だと、口には出来ないような汚い言葉で激しく罵った。
彼女のことが、大嫌いだった。
夢や希望ばかりを見て、現実なんて何も知らない。
この汚い世界で、いつも真っ白で、無垢で、苦労も知らない。
だから、大嫌いだったー。
でも、それならどうして、無意識に握った拳は震え、頬が濡れているのかー。
自分でもこの感情が何なのか、分からなかった。
でも確かに、自分が今、ここに生きているのは彼女のおかげだった。
あぁ、そうか。
死んでいてほしくなかったのだ。
だって、文句を言わないといけなかったから。
生き残ってしまったのはお前のせいだと、会って文句を言わないといけなかったから。
生きていて、欲しかったからー。
「やっぱり、来たんだね。」
聞き覚えのある声がして、ハッとする。
思わず振り返れば、あの頃の姿のままで立っている愛おしい人の姿があった。
綺麗な金髪を優しい風が靡かせていて、今日もとても可愛らしい。
この世界で一番大切で、でも、一番会いたくなかったー。
「ユミル、会いたかった…!」
ヒストリアが、ひどくホッとしたように、とても嬉しそうに駆け寄る。
飛びつくようにして抱き着いてきた彼女を、私は抱きしめ返してしまっていた。
だって、本当はずっと。
ずっとー。
「私も、会いたかった。」
素直になったのなんて、たぶん、私の人生史上初めてだった。
照れ臭くて、ヒストリアを強く抱きしめて首元に顔を埋めた。
でも、今、彼女の前で私は嘘をつけなかった。
自分の人生から、想いから、逃げてはいけないと思ったのだ。
だって、私には、彼女が繋いでくれた命を大切に生きる義務がある。
それに、彼女の目の前で意地を張ったところできっと、素直になりなさいとか、そろそろ幸せになりなさいとか、どうせ説教を始めるに決まってる。
そうだろう、なまえ?
超大型巨人と鎧の巨人が待ち構えていると考えられていたから、人類史上最大の決戦とされ、シガンシナ区へ向かった調査兵達のほとんどは帰ってこられないだろうと予想されていた。
だが、犠牲は免れなかったものの、想定よりも遥か多い調査兵達が無事の帰還を果たしている。
その直前には、真の王に冠を預けることにも暗躍していたらしい調査兵団の功績は輝かしく、新聞は彼らを称える記事で持ちきりだ。
そんな中、世間に妙な噂が出回りだした。
この奇跡のような大勝利の背景に、天使の存在があったというものだ。
命を賭して戦っていた勇敢な調査兵達の元へ天使が舞い降り、彼らを救い、人類に勝利をもたらした後、天国へと旅立ったという話だ。
まさか、そんなおとぎ話にもないような馬鹿げた話、信じてはいない。
ただ、確かめてみようと思った。
こんな腐った世界を、間抜けな兵士達を助けた馬鹿な天使が本当に存在したのかどうかを、確かめたくなった。
だから、無数の墓石が並ぶ墓地へやって来た。
新しいものから順に、ひとつひとつ、名前を確認していく。
その中に、知っている名前も幾つかあって、調査兵達の中に、意外と知り合いが多かったのだと知った。
思い浮かべているわけではないのに、生前の彼らの姿が脳裏に過る。
自分が生きているのに、彼らは死んでいるー。
人生というのは、本当に難儀なものだ。
ゆっくりと歩みを進めていると、見覚えのあるティーカップが供えられている墓石を見つけた。
あぁ、あれかー。
見つけてしまったそれに、探していたのは『あったのは馬鹿げた噂話で、馬鹿な天使なんて存在しなかった』という答えだったと思い知る。
緊張しながら少し早足で向かい、ティーカップの前で足を止める。
墓石に彫られている名前を見て、驚いた。
あぁ、そうか。
彼女は結婚していたのか。
とても幸せそうに惚れた男の隣で笑っていた彼女を思い出す。
それならどうしてー。
心底、彼女のことを馬鹿だと思った。
本当にどうしようもない女だと、口には出来ないような汚い言葉で激しく罵った。
彼女のことが、大嫌いだった。
夢や希望ばかりを見て、現実なんて何も知らない。
この汚い世界で、いつも真っ白で、無垢で、苦労も知らない。
だから、大嫌いだったー。
でも、それならどうして、無意識に握った拳は震え、頬が濡れているのかー。
自分でもこの感情が何なのか、分からなかった。
でも確かに、自分が今、ここに生きているのは彼女のおかげだった。
あぁ、そうか。
死んでいてほしくなかったのだ。
だって、文句を言わないといけなかったから。
生き残ってしまったのはお前のせいだと、会って文句を言わないといけなかったから。
生きていて、欲しかったからー。
「やっぱり、来たんだね。」
聞き覚えのある声がして、ハッとする。
思わず振り返れば、あの頃の姿のままで立っている愛おしい人の姿があった。
綺麗な金髪を優しい風が靡かせていて、今日もとても可愛らしい。
この世界で一番大切で、でも、一番会いたくなかったー。
「ユミル、会いたかった…!」
ヒストリアが、ひどくホッとしたように、とても嬉しそうに駆け寄る。
飛びつくようにして抱き着いてきた彼女を、私は抱きしめ返してしまっていた。
だって、本当はずっと。
ずっとー。
「私も、会いたかった。」
素直になったのなんて、たぶん、私の人生史上初めてだった。
照れ臭くて、ヒストリアを強く抱きしめて首元に顔を埋めた。
でも、今、彼女の前で私は嘘をつけなかった。
自分の人生から、想いから、逃げてはいけないと思ったのだ。
だって、私には、彼女が繋いでくれた命を大切に生きる義務がある。
それに、彼女の目の前で意地を張ったところできっと、素直になりなさいとか、そろそろ幸せになりなさいとか、どうせ説教を始めるに決まってる。
そうだろう、なまえ?