ハッピーエンドなんて、クソくらえ
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
日曜の朝、私は、クローゼットから、お気に入りのミニのワンピースを引っ張り出した。
今頃、ジャンは何をしているんだろう———そんなことを考えながら、ドレッサーに座って、出来る限り可愛くなるために、念入りにメイクをする。
ジャンの家族も、楽しい日々を過ごしてくれていればいい———そんなことを考えてしまうのは、日曜になると、彼らがとても恋しくなるからだ。
彼のお母さんが作ってくれた美味しいオムライスと、無口で素っ気ない彼のお父さんが連れて行ってくれたドライブが、とても懐かしい。
でもきっと、ジャンの友達は、彼を独り占めしたがった我儘で自分勝手な私のことを嫌ってる。
私だって、ジャンとなんて出逢わなければよかったと思ってる。
メイクが終わった頃、スマホがバイブを鳴らした。
表示されている名前は【モブリット】だ。
「ごめん、もう着いた?」
急いで応答ボタンを押した私は、耳にスマホを挟むと、ドレッサーの上に散らばっているメイク道具を雑にかき集めて、適当にポーチに入れていく。
≪今ね。マンション前のコンビニに車停めて待ってるから、
急がなくても大丈夫だよ。≫
「わかった、すぐ行く!」
≪クスッ、待ってるね。≫
1か月くらい前から、耳に心地のいいくらいの優しい声が聞こえるようになった電話を切って、スマホをバッグの中に放り投げた。
鏡の前での最終チェックを雑にして、走って家を出る。
最近になって〝いつもの〟になりつつある白い車が停まっていたのは、コンビニではなくてマンションの前だった。
すぐに行くと私が言ったから、移動して待ってくれていたようだ。
既に車から降りて、助手席側の扉の前に立っていたモブリットは、私を見つけると、小さく手をあげて柔らかく微笑んだ。
「急がなくてもよかったのに。」
「そんなわけにはいかないよ。いつも待たせてばかりだもん。」
「気にしなくていいのに。自分のためにデートの準備をしてくれてる君を待てる
この世でたったひとりの贅沢な男を満喫してるから。」
申し訳なさそうに眉尻を下げた私に、モブリットはさらりととても嬉しいことを言ってくれる。
そして「今日も可愛いね。」と巻いたばかりの髪を撫でた後に、助手席の扉を開いてくれた。
私が助手席に座るとすぐに、運転席にモブリットが乗り込む。
「今日は、この前、オープンしたばかりの水族館に行こうと思うんだけど、どうかな?
美味しいカフェも併設してあるらしくて、特にデザートがおすすめらしいよ。」
「わぁ!行きたい!そここの前、テレビでCMしてて、行きたいと思ってたの!」
「そう言うと思った。」
ハシャぐ私を見て、モブリットは満足げにしながら、嬉しそうにクスリと笑った。
運転の荒かったジャンの車とは違って、丁寧にアクセルが踏み込まれた、車が走り出す。
モブリットは、誠実で優しくて、まるで王子様みたいな人だ。
シングルだけではなくて、彼氏持ちの女友達にまで羨ましがられる。
私が聞きたい言葉をすべて言ってくれるし、もうこれ以上、望むことはなにもないくらいに素敵だと思う。
でも、車内に流れているのは、ジャンが好んで聴いていた曲だ。
だから、今日のデートも、途端に帰りたくなるのだ。
今頃、ジャンは何をしているんだろう———そんなことを考えながら、ドレッサーに座って、出来る限り可愛くなるために、念入りにメイクをする。
ジャンの家族も、楽しい日々を過ごしてくれていればいい———そんなことを考えてしまうのは、日曜になると、彼らがとても恋しくなるからだ。
彼のお母さんが作ってくれた美味しいオムライスと、無口で素っ気ない彼のお父さんが連れて行ってくれたドライブが、とても懐かしい。
でもきっと、ジャンの友達は、彼を独り占めしたがった我儘で自分勝手な私のことを嫌ってる。
私だって、ジャンとなんて出逢わなければよかったと思ってる。
メイクが終わった頃、スマホがバイブを鳴らした。
表示されている名前は【モブリット】だ。
「ごめん、もう着いた?」
急いで応答ボタンを押した私は、耳にスマホを挟むと、ドレッサーの上に散らばっているメイク道具を雑にかき集めて、適当にポーチに入れていく。
≪今ね。マンション前のコンビニに車停めて待ってるから、
急がなくても大丈夫だよ。≫
「わかった、すぐ行く!」
≪クスッ、待ってるね。≫
1か月くらい前から、耳に心地のいいくらいの優しい声が聞こえるようになった電話を切って、スマホをバッグの中に放り投げた。
鏡の前での最終チェックを雑にして、走って家を出る。
最近になって〝いつもの〟になりつつある白い車が停まっていたのは、コンビニではなくてマンションの前だった。
すぐに行くと私が言ったから、移動して待ってくれていたようだ。
既に車から降りて、助手席側の扉の前に立っていたモブリットは、私を見つけると、小さく手をあげて柔らかく微笑んだ。
「急がなくてもよかったのに。」
「そんなわけにはいかないよ。いつも待たせてばかりだもん。」
「気にしなくていいのに。自分のためにデートの準備をしてくれてる君を待てる
この世でたったひとりの贅沢な男を満喫してるから。」
申し訳なさそうに眉尻を下げた私に、モブリットはさらりととても嬉しいことを言ってくれる。
そして「今日も可愛いね。」と巻いたばかりの髪を撫でた後に、助手席の扉を開いてくれた。
私が助手席に座るとすぐに、運転席にモブリットが乗り込む。
「今日は、この前、オープンしたばかりの水族館に行こうと思うんだけど、どうかな?
美味しいカフェも併設してあるらしくて、特にデザートがおすすめらしいよ。」
「わぁ!行きたい!そここの前、テレビでCMしてて、行きたいと思ってたの!」
「そう言うと思った。」
ハシャぐ私を見て、モブリットは満足げにしながら、嬉しそうにクスリと笑った。
運転の荒かったジャンの車とは違って、丁寧にアクセルが踏み込まれた、車が走り出す。
モブリットは、誠実で優しくて、まるで王子様みたいな人だ。
シングルだけではなくて、彼氏持ちの女友達にまで羨ましがられる。
私が聞きたい言葉をすべて言ってくれるし、もうこれ以上、望むことはなにもないくらいに素敵だと思う。
でも、車内に流れているのは、ジャンが好んで聴いていた曲だ。
だから、今日のデートも、途端に帰りたくなるのだ。
1/2ページ