We're Up At Night
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朝食をダイニングテーブルに並べ終えた私は、壁掛けの時計を確認した。
早起きしたおかげで、これなら今から電車で自分の家に帰って、着替えてから出勤する時間が十分ある。
昨日、デートの帰りに初めて来たジャンのアパートは、単身者専用の1DKのシンプルなつくりだった。
黒とか青いインテリアでお洒落をしようとした割には、散らかった本棚には、漫画がズラリと並んで、参考書は一番下の端に追いやられている。
どこを見ても、大学生の男の子らしい部屋だ。
寝室の扉を開けて、中に入った。
2人で寝るには狭かったシングルベッドの上で、昨日の夜、私を散々激しく抱いたジャンが、枕を抱きしめてぐっすり眠っている。
(ひとの気も知らないで。)
ベッドの縁に腰かけた私は、起こすのが申し訳ないくらいに気持ちよさそうに眠っているジャンの髪を撫でながら、苦笑を漏らす。
今日は、定時後に大事な会議が入ってるというのに、腰が痛くて、長時間椅子に座っていられるか心配で仕方がない。
若いから———。
なんて思うのもなんだか悲しいけれど、まぁ、実際、若いから、スタミナだって、そういう欲望だって、私と同世代の男達よりも強いのだろう。
「ジャン、もう行きたいんだけど、鍵だけかけてくれる?」
「んー…。」
ジャンは目を瞑ったままで眉をしかめると、枕を抱きしめる腕に力を込めた。
「ん~…、今、何時ですか…?」
「6時だよ。」
「早ぇっすよ…。なまえさんも、まだ寝ましょう。」
ジャンは目を閉じたままで、器用に私の腕を掴まえてシーツの中に引きずり込もうとする。
一緒に寝ることが出来るなら、そんなに嬉しいことはないけれど、社会人の私には、朝の忙しい時間にそんな余裕はない。
「残念だけど、二度寝は今度一緒にさせて。」
私の腕を掴まえたジャンの手を解きながら、前のめりに倒れかけた身体を起こす。
すると、眩しそうに細く目を見開いたジャンが、私を見上げると、これでもかというくらいに眉を顰めた。
「なんで。」
「会社に遅刻しちゃうから、もう行かなくちゃ。」
「え。」
「朝ご飯は、ダイニングに置いてあるから、ちゃんと食べて———。」
「待って、俺も起きるから。」
解かれたばかりの大きな手で、また私の腕を掴んだジャンが、のっそりと身体を起こした。
まだ意識がどこか夢の中の微睡んだ切れ長の目が、やっとちゃんと私を映す。
「おはようございます。」
私の髪を撫でながら言って、ジャンは、薄い唇で小さな笑みを浮かべる。
「おはよう。」
微笑む私に、ジャンはとても幸せそうにキスをした。
私が、大学生と恋をしているなんて、自分が一番、信じられない。
「もう、すぐ行くんですか?」
「二度寝する時間はないけど、一緒に朝ご飯食べる時間ならあるよ。
でも、眠たいならまだ寝てていいんだよ。ただ、無施錠じゃ怖いから、鍵だけ締めてくれれば———。」
「一緒に飯食います。すぐ顔洗って来るから、待ってて。」
私の言葉を遮って答えて、ジャンは気だるげにしながら、反対側からベッドから降りた。
私に背を向けて立ったジャンに、朝の眩しいくらいの光が射す。
ボクサーパンツ一枚の姿は、若い男の子らしくスラリとしていて綺麗だ。
背中には余分な肉はないし、線は細いのに、しっかりついている筋肉と骨格は、正真正銘、男のものだ。
当然だけれど、私とは、全然違う。
それに昨日の夜だって———。
まだ記憶に新しい生々しい情事を思い出してしまって、私はジャンの綺麗な裸体から目を反らした。
でも、昨日の夜のことなんて、もうすっかり忘れているみたいなジャンは、床に散らばるシャツとズボンを拾い上げて、面倒そうに身につけていく。
そのまま、ジャンは洗面所に向かったけれど、私は一緒に寝室を出ずに、ベッド脇に置いているバッグを開いた。
仕事の連絡は来ていないか、スマホのチェックのつもりだった。
でも、バッグの底に転がるお気に入りのコロンを見つけた私は、今時、女子大生だってしないような女々しいことを思いついてしまったのだ。
私は、さっきまで、ジャンが抱きしめて眠っていた枕を手に取ると、膝の上に乗せた。
そして、コロンを軽くひと吹きして、枕に私の香りを沁み込ませる。
こうすれば、ジャンが枕を抱きしめる度に、私がまだ近くにいるみたいに感じてくれるかもしれない。
だから、どうか—————。
(夜、ジャンが寝る前に、私を思い出してくれますように。)
私は、枕に沁み込んだコロンにお願いをする。
こんなことしてるなんて、絶対にジャンに知られたくない。
恥ずかしいし、歳上の女がそんなことするなんて重たくて気持ち悪い。
あぁ、でも———。
たぶん、ううん、本当は、私はジャンと恋人になる前からずっと、不安なのだ。
若い彼が、心変わりしてしまうかもしれないことも、私ばかりがハマって行ってしまっていることも———。
だって、ジャンくらいの歳の男の子っていうのは、歳上の女に興味を持つことはよくあることで、それは一過性のものに過ぎなくて、結局は若い女の子と結ばれるなんてことだって、それ以上によくあることだから。
ベッドのジャンが眠っていたあたりのシーツには、幾つもの皴が寄っている。
その隣には、私のカタチをした皴が寄り添うように残ってる。
私が、家を出たら、ジャンはベッドのシーツを綺麗に整えるのだろうか。
出来ればこのまま、少しだけでもいいから、ジャンのベッドに私のカタチを残していてほしい。
そうすれば、今夜、ジャンは皴が寄ったシーツを見て、1人欠けてしまったことを思い出してくれるだろうか。
私は、今夜、ジャンが眠れない理由になりたい。
枕から香る私のコロンと、ベッドに残る私のカタチをした皴が、ジャンの身体を疼かせて、寝返りを何度も打たせたい。
そして、頭が痛くなるくらい、私のことだけでいっぱいにして、夜も眠れなくなってほしい。
だって、きっと、今夜の私がそうだから————。
早起きしたおかげで、これなら今から電車で自分の家に帰って、着替えてから出勤する時間が十分ある。
昨日、デートの帰りに初めて来たジャンのアパートは、単身者専用の1DKのシンプルなつくりだった。
黒とか青いインテリアでお洒落をしようとした割には、散らかった本棚には、漫画がズラリと並んで、参考書は一番下の端に追いやられている。
どこを見ても、大学生の男の子らしい部屋だ。
寝室の扉を開けて、中に入った。
2人で寝るには狭かったシングルベッドの上で、昨日の夜、私を散々激しく抱いたジャンが、枕を抱きしめてぐっすり眠っている。
(ひとの気も知らないで。)
ベッドの縁に腰かけた私は、起こすのが申し訳ないくらいに気持ちよさそうに眠っているジャンの髪を撫でながら、苦笑を漏らす。
今日は、定時後に大事な会議が入ってるというのに、腰が痛くて、長時間椅子に座っていられるか心配で仕方がない。
若いから———。
なんて思うのもなんだか悲しいけれど、まぁ、実際、若いから、スタミナだって、そういう欲望だって、私と同世代の男達よりも強いのだろう。
「ジャン、もう行きたいんだけど、鍵だけかけてくれる?」
「んー…。」
ジャンは目を瞑ったままで眉をしかめると、枕を抱きしめる腕に力を込めた。
「ん~…、今、何時ですか…?」
「6時だよ。」
「早ぇっすよ…。なまえさんも、まだ寝ましょう。」
ジャンは目を閉じたままで、器用に私の腕を掴まえてシーツの中に引きずり込もうとする。
一緒に寝ることが出来るなら、そんなに嬉しいことはないけれど、社会人の私には、朝の忙しい時間にそんな余裕はない。
「残念だけど、二度寝は今度一緒にさせて。」
私の腕を掴まえたジャンの手を解きながら、前のめりに倒れかけた身体を起こす。
すると、眩しそうに細く目を見開いたジャンが、私を見上げると、これでもかというくらいに眉を顰めた。
「なんで。」
「会社に遅刻しちゃうから、もう行かなくちゃ。」
「え。」
「朝ご飯は、ダイニングに置いてあるから、ちゃんと食べて———。」
「待って、俺も起きるから。」
解かれたばかりの大きな手で、また私の腕を掴んだジャンが、のっそりと身体を起こした。
まだ意識がどこか夢の中の微睡んだ切れ長の目が、やっとちゃんと私を映す。
「おはようございます。」
私の髪を撫でながら言って、ジャンは、薄い唇で小さな笑みを浮かべる。
「おはよう。」
微笑む私に、ジャンはとても幸せそうにキスをした。
私が、大学生と恋をしているなんて、自分が一番、信じられない。
「もう、すぐ行くんですか?」
「二度寝する時間はないけど、一緒に朝ご飯食べる時間ならあるよ。
でも、眠たいならまだ寝てていいんだよ。ただ、無施錠じゃ怖いから、鍵だけ締めてくれれば———。」
「一緒に飯食います。すぐ顔洗って来るから、待ってて。」
私の言葉を遮って答えて、ジャンは気だるげにしながら、反対側からベッドから降りた。
私に背を向けて立ったジャンに、朝の眩しいくらいの光が射す。
ボクサーパンツ一枚の姿は、若い男の子らしくスラリとしていて綺麗だ。
背中には余分な肉はないし、線は細いのに、しっかりついている筋肉と骨格は、正真正銘、男のものだ。
当然だけれど、私とは、全然違う。
それに昨日の夜だって———。
まだ記憶に新しい生々しい情事を思い出してしまって、私はジャンの綺麗な裸体から目を反らした。
でも、昨日の夜のことなんて、もうすっかり忘れているみたいなジャンは、床に散らばるシャツとズボンを拾い上げて、面倒そうに身につけていく。
そのまま、ジャンは洗面所に向かったけれど、私は一緒に寝室を出ずに、ベッド脇に置いているバッグを開いた。
仕事の連絡は来ていないか、スマホのチェックのつもりだった。
でも、バッグの底に転がるお気に入りのコロンを見つけた私は、今時、女子大生だってしないような女々しいことを思いついてしまったのだ。
私は、さっきまで、ジャンが抱きしめて眠っていた枕を手に取ると、膝の上に乗せた。
そして、コロンを軽くひと吹きして、枕に私の香りを沁み込ませる。
こうすれば、ジャンが枕を抱きしめる度に、私がまだ近くにいるみたいに感じてくれるかもしれない。
だから、どうか—————。
(夜、ジャンが寝る前に、私を思い出してくれますように。)
私は、枕に沁み込んだコロンにお願いをする。
こんなことしてるなんて、絶対にジャンに知られたくない。
恥ずかしいし、歳上の女がそんなことするなんて重たくて気持ち悪い。
あぁ、でも———。
たぶん、ううん、本当は、私はジャンと恋人になる前からずっと、不安なのだ。
若い彼が、心変わりしてしまうかもしれないことも、私ばかりがハマって行ってしまっていることも———。
だって、ジャンくらいの歳の男の子っていうのは、歳上の女に興味を持つことはよくあることで、それは一過性のものに過ぎなくて、結局は若い女の子と結ばれるなんてことだって、それ以上によくあることだから。
ベッドのジャンが眠っていたあたりのシーツには、幾つもの皴が寄っている。
その隣には、私のカタチをした皴が寄り添うように残ってる。
私が、家を出たら、ジャンはベッドのシーツを綺麗に整えるのだろうか。
出来ればこのまま、少しだけでもいいから、ジャンのベッドに私のカタチを残していてほしい。
そうすれば、今夜、ジャンは皴が寄ったシーツを見て、1人欠けてしまったことを思い出してくれるだろうか。
私は、今夜、ジャンが眠れない理由になりたい。
枕から香る私のコロンと、ベッドに残る私のカタチをした皴が、ジャンの身体を疼かせて、寝返りを何度も打たせたい。
そして、頭が痛くなるくらい、私のことだけでいっぱいにして、夜も眠れなくなってほしい。
だって、きっと、今夜の私がそうだから————。
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