What if you get scared I'll show you true love
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君が、泣きながら兵舎に戻ってきたのは、数か月前のことだ。
分隊長として部下を叱咤激励し、壁外に出れば、最前列で恐怖に屈せずに戦う強く凛々しい君が、あの日、明るく無邪気で天使のような美しい笑顔をアイツに壊されて帰ってきたのだ。
最愛の恋人の裏切りと呆気ない終わりに絶望した君は、取り繕うことも出来ないほどに傷つき、心配する友人達の声すら聞こえないまま部屋に駆け込んだ。
そんな痛々しい姿を目の当たりにさせられて、俺が平気でいられるわけがない。
俺がどれほど怒り、悲しみ、悔しく思ったか、君は知らないだろう。
あれから俺は、出来る限りの時間を、君のそばで過ごした。
虚ろな瞳で、もう何も信じられないと無言で語る君を、独りになんか出来なかったんだ。
素直じゃない俺には、気の利いた言葉を言ってやれるような器用なところはない。
だから、本当にただ、そばにいただけだった。
でも、君にとっては、今までと何も変わらない日々に思えたことだろう。
無理やり用を作っては君の部屋を訪れて、紅茶を飲みながら時間を潰した。
非番の日には、外へ連れ出した。
欺瞞だらけの世界の空気を、綺麗だなんて言わないさ。
でも、部屋にこもって、アイツとの想い出に浸って泣くよりは、有意義な時間を過ごせたはずだ。
そうしているうちに、君は少しずつ、本来の君らしさを取り戻していった。
アイツに出逢ってから、無理して、背伸びして覚えた言葉遣いだってなくなって、キツいアイメイクもしなくなった。
真っ赤な口紅も、ゴミ箱の中で転がっているのを見つけた。
今の君は、柔らかい表情で俺達調査兵の傷を癒していた頃の君に似ている。
「好きだ。」
君を兵舎の屋上に連れ出した満月の夜、俺は、ずっと心の内に秘めていた気持ちを打ち明けた。
夜の闇を照らし出す淡い月明かりが、今夜は君の為だけに輝いているように見える。
だって、俺を見つめて頬を染める君は、俺が見た中で、一番綺麗だ。
俺は、君が欲しい。
君に、俺だけを見て欲しい。
でも、受け入れてもらえるか、正直、自信はない。
自惚れてもいいような気もするけれど、ひとりで想い続ける月日が長すぎたんだと思う。
でも、そろそろ君も気づいていい頃だ。
まだ新兵に毛の生えた程度の調査兵だった頃、上官に叱られて落ち込む君の愚痴や弱音を夜が明けるまで聞いていたのは、俺だ。
君に嬉しいことがあったとき、一番最初に声をかけていたのだって、俺だったはずだ。
それが俺にとっては耳を塞ぎたいもので、他の男との惚気だって、君のそばにいられるならよかったんだ。
君に悲しいことがあったとき、一番最初に気づいてやれていたのも俺だった自信がある。
毎日、ほんの一瞬の隙すら逃さずに、君を見守っていたのは、俺なんだ。
厳しい訓練についていけずに、これでは仲間の命を守れないと悔しがる君の、訓練よりも厳しい自主練に付き合えるのも、俺くらいだろう。
君が大好物だと友人達に話している紅茶は、俺が淹れたやつなんだろう?
ハンジやエルヴィンから、何度だって聞いたことがあるよ。
それに、気づき始めていたから、最近、君は俺の隣で、らしくない顔をして、逃げようとしたり、俺が不意に背を向ければ追いかけてきて、俺が他の女と話しているのを見ると、泣きそうな顔で目を反らしたりしていたんじゃないのか。
「ごめんなさい…。気持ちは、嬉しいし、リヴァイが悪いわけじゃない。
ただ…。ただ、私はもう、誰の恋人にもならないって決めたの。」
何度か、何かを言いたそうに口を開いたり閉じたりした後、君はひどく悲しそうに目を伏せた。
知っていた。君が、俺を追いかけるような瞳を見せる度に、全てから目を反らすみたいに背を向けていたこと。
それが、また誰かを愛することに怯えているからだということにも、気づいていた。
また傷つくのが怖いんだろう。怖すぎるんだろう。
誰だって、悲しい傷なんて、心に残したいとは思わないものだ。
君だけが特別なわけじゃない。
それに、誰だって、1度や2度は、思ったようにいかずに傷つくことだってあるさ。
でも、アイツは、君には釣り合わなかったんだ。
だって、君がどれほど美しくて、どれほど優しさと愛に溢れて、どれほど貴重な人間なのか、ちっとも理解していなかった。
君に愛してもらえることがどれほど素晴らしいことなのか、自分がどれほど幸運な男か、アイツは気づこうともしなかった。
だから、君の気持ちを蔑ろにして、自分の時間ばかりを優先した挙句に、他の女に心変わりするなんて愚かなことが出来たんだ。
それがどんな女だって、君とは比べものになるはずがないよ。
だって、君はこの世でたったひとりだし、君ほどいい女はいないから。
他の女を選んだことで、アイツは、そろそろ気づき始めてるかもしれないな。
後悔をして、自らの愚かな決断に打ちのめされて、神を恨んでるかもしれない。
でも、俺は、初めて神ってやつに感謝をしたよ。
君に、本当の愛とはどんなものなのかを知ってもらえる機会を与えてくださったのだから。
「俺にチャンスをくれ。」
「…チャンス?」
「もしも、その悲しい決断を今、ここで、俺の為に覆してくれるなら、
俺は、なまえの望む恋人になる。」
「私の、望む…?」
「なまえの願いなら、何だって聞いてやる。
どんな風に、俺にいて欲しいかを言ってくれれば、
俺はそれを必ず叶える。」
「そんな…、私は…。」
君は、苦し気に眉を歪めてしまった。
でも、俺を見る瞳は、反らされない。
今、必死に、恐怖と戦っているのなら、俺は、君がその恐怖に打ち勝つまで、いつまでも待ち続ける。
ひとりじゃ無理だと言うのなら、俺がその手を握って、支える。
そして、アイツが君につけた傷のすべてを、俺が癒してあげるよ。
君が今まで知ることの出来なかった深い愛で、君を包み込んで、守るから———。
俺は、君の為なら、何だって出来る———嘘じゃないんだ。
「リヴァイが、恋人になったら…。」
「なったら?」
「私が落ち込んでるときは、どうするの?
壁外でも壁内にも、悲しいことがたくさんあって、私は立ち上がれなくなるときがある。
そしたら、笑ってない恋人がそばにいたらうんざりするって、面倒くさそうにため息を吐くの?」
「そばにいてやる。なまえが、また笑って立ち上がれるようになるまで、
絶対に1人にはしない。それに、なまえが落ち込んでるとき、
お前が、誰よりもそばにいて欲しいと思う人間が俺になりたい。」
「じゃあ…、もし、私を泣かせてしまったら?
その場凌ぎの優しさで、取り繕って、私を繋ぎ止めようとする?
そして、何度も同じ理由で、私を泣かせるの?」
「俺は、なまえを泣かせない。絶対に。
それでも、お前が泣くことがあれば、俺を叱ってくれていい。言い訳なんかしない。
お前を泣かせたことが事実なら、それを反省して、何度だって謝る。
そして、もう二度と泣かさない。愛想を尽かしたお前に捨てられないよう努力することを忘れない。」
「私が、どうしようもなく甘えたくなって、真夜中に突然会いに行ったら?
優しく笑って、少し呆れながら、温かいベッドの中に私を招き入れてくれる?
それとも…、私に会えない夜には、他の誰かを抱きしめていて、リヴァイのベッドは冷たくなってるの…?」
「俺の部屋の鍵は、お前に渡しておくからいつだって来てくれていい。
仕事で相手が出来ないときもあるかもしれないから、今のうちに謝っておく。
だが、それ以外の俺の時間も、俺の腕の中も、全部お前のものだ。好きに使えばいい。」
「なら私が…、私が…、」
君は、そこまで言って、言葉を切った。
声が詰まって、君はとうとう、泣き出したんだ。
嗚咽を堪えるように、シャツの胸元を握りしめて、君は、唇を噛んだ。
それでも、どうしても、君には俺に伝えたいことがあるみたいだった。
だから、俺は、震える肩に手を添えて、なんとか崩れ落ちないように地面を踏む君を支えた。
少しして、君は、俺に、最後にもうひとつだけ訊ねた。
「私が、もう誰も愛したくなくて、誰かを好きになって、傷つくのが怖くて…、
だから、リヴァイを好きな気持ち、本当は気づいてても、認められなくて…っ、
それでも、リヴァイが他の誰かの恋人になるのも嫌だって…そう言ったら…?
それは勝手だって、私を突き放す?それとも、それとも…っ、」
自分を勝手だと思い込んで、不安に押し潰されそうな君の肩を抱き寄せて、俺は優しく包み込んだ。
細く華奢な君の肩は、小刻みに震えていた。
あぁ、泣かないで。
少し強めに、君を抱きしめた。
君には、俺がついてる。
いつだって、君には俺がいるから———。
「俺は、怯えてるなまえを抱きしめて、離さない。
それに、なまえじゃない誰かの恋人になんかならねぇから、
心配だってしなくていい。」
そして———。
俺は、君の髪を撫でながら続ける。
夜風に靡く柔らかい髪からは、甘くて優しい香りがしていた。
この香りを、俺は覚えたいんだ。
特別でもなんでもなくなって、いつでも周りを包み込むこの香りが俺に沁み込んで、仲間達が、俺と君は同じ匂いがするって笑う。
そんな未来が来たら、どんなにいいだろう。
そしていつまでも、俺にとって特別な君を、こうして抱きしめていたい。
君を抱きしめるのは、俺がいい。
ずっと、ずっと、俺がいい。
「朝も、昼も、夜も、お前に、愛してると言ってやるよ。
なまえが、もう一度、信じられるようになるまで、何度だって、愛を誓う。
お前が、俺を好きだと、認めるしかなくなるまで、お前が、俺を好きだと認めてからも、ずっと。」
優しく包み込む君の震えが、止まった。
しばらく黙り込んだ後、君は顔を上げて、俺を見たんだ。
大きな瞳に涙をいっぱい溜めて、今にも泣いてしまいそうだった。
でも、柔らかい笑みは、出逢った頃の君と同じだった。
君の望む恋人こそが、俺がなりたい男なんだ
もしも、残酷な世界が、君の心を粉々に壊そうとしたのなら、俺は君の為に、君の為だけに、強大な敵に立ち向かおう。
それが、この世で最も恐ろしい地獄で、君が、もう無理だと諦めてしまいそうになっても、俺が怖気づくことはない。
身体が吹っ飛んで、片目を失って、指が欠けたって、そんなことで、俺が立ち止まることはない。
君が、安心して笑える日が来るまで、俺は何度だって立ち上がる。
そして、戦い続けるんだ。
君がいれば、俺はどんなときも世界で最も強い兵士になれる。
もし、君が、命を賭けて戦う俺の背中を見たのなら、覚えておいてくれ。
それは君の為だ。
でも、心配しなくていい。
君が泣くのなら、この命だって、君の為に守り抜こう。
だから君は、いつも、俺のそばにいて、俺の「愛してる」に包まれていて。
君の、この世で最も尊い、その命と共に、俺は生きていきたい———。
分隊長として部下を叱咤激励し、壁外に出れば、最前列で恐怖に屈せずに戦う強く凛々しい君が、あの日、明るく無邪気で天使のような美しい笑顔をアイツに壊されて帰ってきたのだ。
最愛の恋人の裏切りと呆気ない終わりに絶望した君は、取り繕うことも出来ないほどに傷つき、心配する友人達の声すら聞こえないまま部屋に駆け込んだ。
そんな痛々しい姿を目の当たりにさせられて、俺が平気でいられるわけがない。
俺がどれほど怒り、悲しみ、悔しく思ったか、君は知らないだろう。
あれから俺は、出来る限りの時間を、君のそばで過ごした。
虚ろな瞳で、もう何も信じられないと無言で語る君を、独りになんか出来なかったんだ。
素直じゃない俺には、気の利いた言葉を言ってやれるような器用なところはない。
だから、本当にただ、そばにいただけだった。
でも、君にとっては、今までと何も変わらない日々に思えたことだろう。
無理やり用を作っては君の部屋を訪れて、紅茶を飲みながら時間を潰した。
非番の日には、外へ連れ出した。
欺瞞だらけの世界の空気を、綺麗だなんて言わないさ。
でも、部屋にこもって、アイツとの想い出に浸って泣くよりは、有意義な時間を過ごせたはずだ。
そうしているうちに、君は少しずつ、本来の君らしさを取り戻していった。
アイツに出逢ってから、無理して、背伸びして覚えた言葉遣いだってなくなって、キツいアイメイクもしなくなった。
真っ赤な口紅も、ゴミ箱の中で転がっているのを見つけた。
今の君は、柔らかい表情で俺達調査兵の傷を癒していた頃の君に似ている。
「好きだ。」
君を兵舎の屋上に連れ出した満月の夜、俺は、ずっと心の内に秘めていた気持ちを打ち明けた。
夜の闇を照らし出す淡い月明かりが、今夜は君の為だけに輝いているように見える。
だって、俺を見つめて頬を染める君は、俺が見た中で、一番綺麗だ。
俺は、君が欲しい。
君に、俺だけを見て欲しい。
でも、受け入れてもらえるか、正直、自信はない。
自惚れてもいいような気もするけれど、ひとりで想い続ける月日が長すぎたんだと思う。
でも、そろそろ君も気づいていい頃だ。
まだ新兵に毛の生えた程度の調査兵だった頃、上官に叱られて落ち込む君の愚痴や弱音を夜が明けるまで聞いていたのは、俺だ。
君に嬉しいことがあったとき、一番最初に声をかけていたのだって、俺だったはずだ。
それが俺にとっては耳を塞ぎたいもので、他の男との惚気だって、君のそばにいられるならよかったんだ。
君に悲しいことがあったとき、一番最初に気づいてやれていたのも俺だった自信がある。
毎日、ほんの一瞬の隙すら逃さずに、君を見守っていたのは、俺なんだ。
厳しい訓練についていけずに、これでは仲間の命を守れないと悔しがる君の、訓練よりも厳しい自主練に付き合えるのも、俺くらいだろう。
君が大好物だと友人達に話している紅茶は、俺が淹れたやつなんだろう?
ハンジやエルヴィンから、何度だって聞いたことがあるよ。
それに、気づき始めていたから、最近、君は俺の隣で、らしくない顔をして、逃げようとしたり、俺が不意に背を向ければ追いかけてきて、俺が他の女と話しているのを見ると、泣きそうな顔で目を反らしたりしていたんじゃないのか。
「ごめんなさい…。気持ちは、嬉しいし、リヴァイが悪いわけじゃない。
ただ…。ただ、私はもう、誰の恋人にもならないって決めたの。」
何度か、何かを言いたそうに口を開いたり閉じたりした後、君はひどく悲しそうに目を伏せた。
知っていた。君が、俺を追いかけるような瞳を見せる度に、全てから目を反らすみたいに背を向けていたこと。
それが、また誰かを愛することに怯えているからだということにも、気づいていた。
また傷つくのが怖いんだろう。怖すぎるんだろう。
誰だって、悲しい傷なんて、心に残したいとは思わないものだ。
君だけが特別なわけじゃない。
それに、誰だって、1度や2度は、思ったようにいかずに傷つくことだってあるさ。
でも、アイツは、君には釣り合わなかったんだ。
だって、君がどれほど美しくて、どれほど優しさと愛に溢れて、どれほど貴重な人間なのか、ちっとも理解していなかった。
君に愛してもらえることがどれほど素晴らしいことなのか、自分がどれほど幸運な男か、アイツは気づこうともしなかった。
だから、君の気持ちを蔑ろにして、自分の時間ばかりを優先した挙句に、他の女に心変わりするなんて愚かなことが出来たんだ。
それがどんな女だって、君とは比べものになるはずがないよ。
だって、君はこの世でたったひとりだし、君ほどいい女はいないから。
他の女を選んだことで、アイツは、そろそろ気づき始めてるかもしれないな。
後悔をして、自らの愚かな決断に打ちのめされて、神を恨んでるかもしれない。
でも、俺は、初めて神ってやつに感謝をしたよ。
君に、本当の愛とはどんなものなのかを知ってもらえる機会を与えてくださったのだから。
「俺にチャンスをくれ。」
「…チャンス?」
「もしも、その悲しい決断を今、ここで、俺の為に覆してくれるなら、
俺は、なまえの望む恋人になる。」
「私の、望む…?」
「なまえの願いなら、何だって聞いてやる。
どんな風に、俺にいて欲しいかを言ってくれれば、
俺はそれを必ず叶える。」
「そんな…、私は…。」
君は、苦し気に眉を歪めてしまった。
でも、俺を見る瞳は、反らされない。
今、必死に、恐怖と戦っているのなら、俺は、君がその恐怖に打ち勝つまで、いつまでも待ち続ける。
ひとりじゃ無理だと言うのなら、俺がその手を握って、支える。
そして、アイツが君につけた傷のすべてを、俺が癒してあげるよ。
君が今まで知ることの出来なかった深い愛で、君を包み込んで、守るから———。
俺は、君の為なら、何だって出来る———嘘じゃないんだ。
「リヴァイが、恋人になったら…。」
「なったら?」
「私が落ち込んでるときは、どうするの?
壁外でも壁内にも、悲しいことがたくさんあって、私は立ち上がれなくなるときがある。
そしたら、笑ってない恋人がそばにいたらうんざりするって、面倒くさそうにため息を吐くの?」
「そばにいてやる。なまえが、また笑って立ち上がれるようになるまで、
絶対に1人にはしない。それに、なまえが落ち込んでるとき、
お前が、誰よりもそばにいて欲しいと思う人間が俺になりたい。」
「じゃあ…、もし、私を泣かせてしまったら?
その場凌ぎの優しさで、取り繕って、私を繋ぎ止めようとする?
そして、何度も同じ理由で、私を泣かせるの?」
「俺は、なまえを泣かせない。絶対に。
それでも、お前が泣くことがあれば、俺を叱ってくれていい。言い訳なんかしない。
お前を泣かせたことが事実なら、それを反省して、何度だって謝る。
そして、もう二度と泣かさない。愛想を尽かしたお前に捨てられないよう努力することを忘れない。」
「私が、どうしようもなく甘えたくなって、真夜中に突然会いに行ったら?
優しく笑って、少し呆れながら、温かいベッドの中に私を招き入れてくれる?
それとも…、私に会えない夜には、他の誰かを抱きしめていて、リヴァイのベッドは冷たくなってるの…?」
「俺の部屋の鍵は、お前に渡しておくからいつだって来てくれていい。
仕事で相手が出来ないときもあるかもしれないから、今のうちに謝っておく。
だが、それ以外の俺の時間も、俺の腕の中も、全部お前のものだ。好きに使えばいい。」
「なら私が…、私が…、」
君は、そこまで言って、言葉を切った。
声が詰まって、君はとうとう、泣き出したんだ。
嗚咽を堪えるように、シャツの胸元を握りしめて、君は、唇を噛んだ。
それでも、どうしても、君には俺に伝えたいことがあるみたいだった。
だから、俺は、震える肩に手を添えて、なんとか崩れ落ちないように地面を踏む君を支えた。
少しして、君は、俺に、最後にもうひとつだけ訊ねた。
「私が、もう誰も愛したくなくて、誰かを好きになって、傷つくのが怖くて…、
だから、リヴァイを好きな気持ち、本当は気づいてても、認められなくて…っ、
それでも、リヴァイが他の誰かの恋人になるのも嫌だって…そう言ったら…?
それは勝手だって、私を突き放す?それとも、それとも…っ、」
自分を勝手だと思い込んで、不安に押し潰されそうな君の肩を抱き寄せて、俺は優しく包み込んだ。
細く華奢な君の肩は、小刻みに震えていた。
あぁ、泣かないで。
少し強めに、君を抱きしめた。
君には、俺がついてる。
いつだって、君には俺がいるから———。
「俺は、怯えてるなまえを抱きしめて、離さない。
それに、なまえじゃない誰かの恋人になんかならねぇから、
心配だってしなくていい。」
そして———。
俺は、君の髪を撫でながら続ける。
夜風に靡く柔らかい髪からは、甘くて優しい香りがしていた。
この香りを、俺は覚えたいんだ。
特別でもなんでもなくなって、いつでも周りを包み込むこの香りが俺に沁み込んで、仲間達が、俺と君は同じ匂いがするって笑う。
そんな未来が来たら、どんなにいいだろう。
そしていつまでも、俺にとって特別な君を、こうして抱きしめていたい。
君を抱きしめるのは、俺がいい。
ずっと、ずっと、俺がいい。
「朝も、昼も、夜も、お前に、愛してると言ってやるよ。
なまえが、もう一度、信じられるようになるまで、何度だって、愛を誓う。
お前が、俺を好きだと、認めるしかなくなるまで、お前が、俺を好きだと認めてからも、ずっと。」
優しく包み込む君の震えが、止まった。
しばらく黙り込んだ後、君は顔を上げて、俺を見たんだ。
大きな瞳に涙をいっぱい溜めて、今にも泣いてしまいそうだった。
でも、柔らかい笑みは、出逢った頃の君と同じだった。
君の望む恋人こそが、俺がなりたい男なんだ
もしも、残酷な世界が、君の心を粉々に壊そうとしたのなら、俺は君の為に、君の為だけに、強大な敵に立ち向かおう。
それが、この世で最も恐ろしい地獄で、君が、もう無理だと諦めてしまいそうになっても、俺が怖気づくことはない。
身体が吹っ飛んで、片目を失って、指が欠けたって、そんなことで、俺が立ち止まることはない。
君が、安心して笑える日が来るまで、俺は何度だって立ち上がる。
そして、戦い続けるんだ。
君がいれば、俺はどんなときも世界で最も強い兵士になれる。
もし、君が、命を賭けて戦う俺の背中を見たのなら、覚えておいてくれ。
それは君の為だ。
でも、心配しなくていい。
君が泣くのなら、この命だって、君の為に守り抜こう。
だから君は、いつも、俺のそばにいて、俺の「愛してる」に包まれていて。
君の、この世で最も尊い、その命と共に、俺は生きていきたい———。
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