翼を失った小鳥達の愛の歌
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調査兵団兵舎の地下牢、時間関係なく薄暗くじめじめとしてかび臭いここでは、朝と夜を知る術は、ただひとつしかない。
カツン、カツン、と階段を降りてくるブーツの音が遠くから聞こえ始めた。
彼が、来た———。
半日前に出された食事が、朝食だったのか、夕食だったのかはもう覚えていない。
意味も分からずに地下牢に連れて来られて、どれくらいの時が流れたのだろう。
1か月か、半年か、数年か————。
この息苦しい空間は、人間から時間を数える感覚すら奪う。
今ではもう、自分が何を糧に生きているのかすら分からない。
地上にいた頃は、夢と大志を抱き、エルヴィン団長の指揮のもと、空を自由に飛び回る調査兵の一員だったはずなのに———。
手枷、足枷が、私の自由を奪い、空を飛ぶどころか、行きたい場所へ歩くことすら出来ない。
「おはよう、なまえ。」
牢の格子を片手で握り、見下ろすのは、私から、自由の翼をもぎ取った男だ。
「リヴァ、イ…、おはよう…。」
そう言わないとその怪物が怒り狂うことを覚えた私は、震える声で、彼の名前を呼んだ。
その瞳に、以前にはそこに見えていたはずの愛や慈しみ、優しさは、もうない。
愛を囁いてくれていた唇は、不自然に歪み、気味の悪い笑みを浮かべるばかりだ。
羽ばたく為にあった翼を切り落とされた私は、調査兵としてだけではなく、人間の尊厳まで踏みにじられている。
そして、こうして、地下牢で、彼がくれる『おはよう』と『おやすみ』でしか、人間らしさを感じることが出来なくなってしまった。
『ごめんなさい…!リヴァイ、愛してるわ…!あなただけ…!!
もう、別れるなんて言わないから…っ。』
だからここから出して————。
泣きながら、そんなことを懇願したこともあった。
私が心変わりしたとリヴァイに告げた優しくて愛情深い彼は、私が地下牢に幽閉されてすぐの壁外調査で死んだのだそうだ。
どんな風に握り潰され、どんな風に噛み千切られ、最期に彼が、どんな風に私の名前を呼んだのか。
耳を塞ぎたい地獄に泣き喚く私の両手首を掴んだリヴァイが、無理やり、耳元で三日三晩繰り返し話し続けて、教えてくれた。
耳にこびりついてしまったその声に、私が毎晩、悪夢を見せられて苦しんでいることを、そこに立つ男は、知っている。
真夜中、なんとか悪夢から逃げきって目を覚ましたとき、嬉しくて仕方がないという顔をして私を見下ろしているリヴァイと目が合って、悲鳴を上げたことがある。
そして、リヴァイは、その気味の悪い笑みを浮かべて、教えてくれたのだ。
私が、悪夢に苦しみながら呼んでいたのが、リヴァイの名前だったことを———。
もう今さら、ここから出してくれと言ったところで、私を支配するこの状況に満足している男の心には、届かない。
牢の鍵を開けたリヴァイが、格子を開いて中に入ってくる。
そして、牢の隅で、与えられたときのままの状態で放置されている食事をちらりと見てから、私の前で片膝をついてしゃがみ込んだ。
「また飯を食ってねぇのか。
こんなやつれた筋肉もねぇ身体じゃ、もう二度と空を飛べねぇな。」
心配しているようなセリフとは裏腹に、リヴァイは恍惚の表情を浮かべていた。
そして、私の手枷と繋がる鎖に愛おしそうに唇を落とす。
「でも、構わねぇよな。お前には、俺が綺麗なドレスを買ってやる。
白いレースのな。光る鉱石も見つけて来た。あれで指輪を贈ろう。」
リヴァイが、痩せこけた私の頬を撫でる。
鏡がなくても分かる、骸骨のように窪んだ目で、彼を虚ろに映す私のどこに、魅力を感じているのだろう。
たぶん、リヴァイはもう、狂っているのだ。
こんなの、愛じゃない———そう分かっているのは、もう何処にもいない。
そして、リヴァイは、私の耳に口づけを落としながら、まるで呪いのように繰り返す。
「愛してる、なまえ。お前が死ぬときは、最期に俺を映せ。
お前のその綺麗な瞳の最期の記憶は、俺がいい。
————あぁ、なまえが、俺を想って、死ねばいいのに。」
リヴァイが、唇にキスをした。
彼が綺麗だと言った私の瞳から、枯れ果てたはずの涙が、一粒零れ落ちた。
私は、籠に閉じ込められた小鳥だ。
飛び立つ日を夢見ることすら忘れ、死んだ愛に囚われ続ける小鳥なのだ。
カツン、カツン、と階段を降りてくるブーツの音が遠くから聞こえ始めた。
彼が、来た———。
半日前に出された食事が、朝食だったのか、夕食だったのかはもう覚えていない。
意味も分からずに地下牢に連れて来られて、どれくらいの時が流れたのだろう。
1か月か、半年か、数年か————。
この息苦しい空間は、人間から時間を数える感覚すら奪う。
今ではもう、自分が何を糧に生きているのかすら分からない。
地上にいた頃は、夢と大志を抱き、エルヴィン団長の指揮のもと、空を自由に飛び回る調査兵の一員だったはずなのに———。
手枷、足枷が、私の自由を奪い、空を飛ぶどころか、行きたい場所へ歩くことすら出来ない。
「おはよう、なまえ。」
牢の格子を片手で握り、見下ろすのは、私から、自由の翼をもぎ取った男だ。
「リヴァ、イ…、おはよう…。」
そう言わないとその怪物が怒り狂うことを覚えた私は、震える声で、彼の名前を呼んだ。
その瞳に、以前にはそこに見えていたはずの愛や慈しみ、優しさは、もうない。
愛を囁いてくれていた唇は、不自然に歪み、気味の悪い笑みを浮かべるばかりだ。
羽ばたく為にあった翼を切り落とされた私は、調査兵としてだけではなく、人間の尊厳まで踏みにじられている。
そして、こうして、地下牢で、彼がくれる『おはよう』と『おやすみ』でしか、人間らしさを感じることが出来なくなってしまった。
『ごめんなさい…!リヴァイ、愛してるわ…!あなただけ…!!
もう、別れるなんて言わないから…っ。』
だからここから出して————。
泣きながら、そんなことを懇願したこともあった。
私が心変わりしたとリヴァイに告げた優しくて愛情深い彼は、私が地下牢に幽閉されてすぐの壁外調査で死んだのだそうだ。
どんな風に握り潰され、どんな風に噛み千切られ、最期に彼が、どんな風に私の名前を呼んだのか。
耳を塞ぎたい地獄に泣き喚く私の両手首を掴んだリヴァイが、無理やり、耳元で三日三晩繰り返し話し続けて、教えてくれた。
耳にこびりついてしまったその声に、私が毎晩、悪夢を見せられて苦しんでいることを、そこに立つ男は、知っている。
真夜中、なんとか悪夢から逃げきって目を覚ましたとき、嬉しくて仕方がないという顔をして私を見下ろしているリヴァイと目が合って、悲鳴を上げたことがある。
そして、リヴァイは、その気味の悪い笑みを浮かべて、教えてくれたのだ。
私が、悪夢に苦しみながら呼んでいたのが、リヴァイの名前だったことを———。
もう今さら、ここから出してくれと言ったところで、私を支配するこの状況に満足している男の心には、届かない。
牢の鍵を開けたリヴァイが、格子を開いて中に入ってくる。
そして、牢の隅で、与えられたときのままの状態で放置されている食事をちらりと見てから、私の前で片膝をついてしゃがみ込んだ。
「また飯を食ってねぇのか。
こんなやつれた筋肉もねぇ身体じゃ、もう二度と空を飛べねぇな。」
心配しているようなセリフとは裏腹に、リヴァイは恍惚の表情を浮かべていた。
そして、私の手枷と繋がる鎖に愛おしそうに唇を落とす。
「でも、構わねぇよな。お前には、俺が綺麗なドレスを買ってやる。
白いレースのな。光る鉱石も見つけて来た。あれで指輪を贈ろう。」
リヴァイが、痩せこけた私の頬を撫でる。
鏡がなくても分かる、骸骨のように窪んだ目で、彼を虚ろに映す私のどこに、魅力を感じているのだろう。
たぶん、リヴァイはもう、狂っているのだ。
こんなの、愛じゃない———そう分かっているのは、もう何処にもいない。
そして、リヴァイは、私の耳に口づけを落としながら、まるで呪いのように繰り返す。
「愛してる、なまえ。お前が死ぬときは、最期に俺を映せ。
お前のその綺麗な瞳の最期の記憶は、俺がいい。
————あぁ、なまえが、俺を想って、死ねばいいのに。」
リヴァイが、唇にキスをした。
彼が綺麗だと言った私の瞳から、枯れ果てたはずの涙が、一粒零れ落ちた。
私は、籠に閉じ込められた小鳥だ。
飛び立つ日を夢見ることすら忘れ、死んだ愛に囚われ続ける小鳥なのだ。
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