不真面目な上司と部下
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受け取った報告書を簡単に見て、記入漏れがないことを確認する。
問題なさそうなので、受け取って他の書類とまとめた。
「なまえさん、大丈夫ですか?隈が出来てますよ。
また徹夜で書類作成ですか?」
エルドが心配そうに私の顔を覗き込む。
自覚もあった私は、目の下を擦った。
こんなことで隈が消えるわけがないどころか、薄い皮膚への強い摩擦で逆効果だってことも分かってる。
疲れて頭がまわらないだけだ。
「ううん、昨日は書類のチェック。今日までに憲兵団に提出しなきゃいけない書類を
リヴァイさんが真っ白のまま綺麗に引き出しに仕舞ってるのを、
昨日のお昼過ぎに見つけて、それからリヴァイさんの執務室で徹夜。」
「またですか…。せめてデスクの上に置くように言ってもダメなんですか?」
「デスクの上に何か乗ってるのがいやなんだって。
馬鹿みたいな書類の山をデスクの上に作っておいてどの口が言ってんだって思うんだけど。
大切な書類に限って引き出しに仕舞う癖、治してくれないかな。嫌がらせとしか思えない。」
「なんていうか…、ご愁傷さまです。」
哀れみを帯びた視線で見送られて、私はエルドの部屋を後にする。
執務仕事が苦手なリヴァイ兵長が、兵長になってすぐに私は兵長補佐に任命された。
理由は簡単で、私が速記や執務仕事が得意だったことと、そこそこの精鋭で、書類仕事をやり残したまますぐには死なないだろうと判断されてしまったからだ。
そのせいで私は、ここ数年、厳しい特訓に加えて、大量の事務仕事に目がまわりそうな日々を過ごしている。
胸ポケットから懐中時計を出して時間を確認すると、もう昼を過ぎていた。
リヴァイさんは食事に対してだらしがないところがある。
言わないと食べないし、言っても食べない。
きっと今も、朝まで徹夜したというのに朝に少しだけパンを齧ったきりで何も口にしていないのだろう。
(仕方ないか。これも仕事だ…。)
目の前に誰もいないのに、わざとこれ見よがしにため息を吐いて、食堂に食事を貰いに行くことを決めた。
宿舎横にある食堂に入ると、調査兵達が賑やかに食事を楽しんでいた。
もちろんそこに、私の直属の上司であるリヴァイ兵長の姿はない。
「やぁ、なまえ。今日もリヴァイの昼飯を貰いに来たのかい?」
ナナバにからかわれたけれど、反応する力はもう残っていない。
情けない笑みを返せば、また心底哀れそうな目を向けられた。
リヴァイ兵長の食事を乗せたトレイを持って、私は今度こそ執務室へ向かう。
デスクの上の書類の山は相変わらず高いままだし、私が今集めて来たリヴァイ班の壁外調査報告書も確認してもらわないといけない。
さすがに、昨日徹夜する羽目になったことを反省して、今日くらいは真面目に執務室で書類仕事をしてくれていると信じている。
だから、紅茶はいつもよりもいいものを出してやろう。
そんなことを思いながら、漸くリヴァイ兵長の執務室に辿り着いたときには、団長の元へ書類を届けてから3時間以上が経っていた。
最初は手こずっていたけれど、今ではもう、トレイを片手で持って、扉を開くのもお手の物だ。
「書類の提出終わりました。
リヴァイ兵長は今朝、私がお願いしたノルマは終わりましたか?」
とりあえず、最後まで言ってはみたけれど、ソファの上で横になっている不愛想な寝顔が返事しないだろうことはすぐに分かった。
(クソ野郎。)
私が忙しく働いているときに、クソ忙しくさせた張本人が昼寝とはいい度胸だ。
分かる。
眠たいのは分かるのだ。
1週間前に壁外調査から帰って来たばかりで調査兵達はバタバタしていたし、昨日は徹夜だった。
そりゃ疲れているだろう。
私もだけどなー!
ため息を呑み込んで、持ってきたトレイをローテーブルの上に乗せてハンカチをかけた。
ローテーブルの上には、今朝、私がノルマとして渡した書類が開いてあった。
ところどころにリヴァイ兵長の几帳面で小さな字が並んでいて、珍しく努力を感じなくもない。
「寝るならせめてブランケットくらいかけてください。」
ベッドからブランケットを引っ張って持って来て、リヴァイ兵長の肩にかけた。
人類最強の兵士として調査兵団の兵士達をエルヴィン団長と共に牽引しているのだから、重責を背負って疲れているに決まっている。
そこで、徹夜なんてさせられてしまえば、珍しく昼寝をしてしまうのも仕方がない。
それくらい、許してやってもいい。
兵長に心も身体も休ませる。それも、兵長補佐の大事な仕事だと思ってる。
「リヴァイ兵長の寝顔なんて初めて見たな~。
寝てても不愛想で笑える。」
クスッと笑って、綺麗に筋の通った小さな鼻を指でつつくと、リヴァイ兵長の眉間に皴が寄った。
聞こえたのか、睡眠を邪魔されたと思ったのか。
まぁ、少し睡眠の邪魔をするくらい許してもらってもいいはずだ。
私はここ何年もずっと、リヴァイ兵長に尽くし続けてきたのだから。
だから、今なら、日頃の恨みつらみを言ってもいいんじゃないだろうか。
どうせ、眠ってるリヴァイ兵長には聞こえていないのだし。
寝顔がよく見えるように、私は、ソファの前に膝を曲げて腰を降ろした。
すぐ目の前になった不愛想な寝顔に、私は言いたい言葉を考える。
「ばーか、ばーか。紅茶ばーか。人類最強ばーか。」
最初に思いついたのが小さな子供の悪口で、我ながら悲しくなった。
眉間の皴がなくなったものの、リヴァイ兵長は相変わらず不愛想な寝顔だから、怒られているような気分になる。
でも、せっかく寝てるのだ。
今しかチャンスはない。
言いたい文句を、全部言っちゃえー。
「書類の山作るのやめろ~。大切な書類に限って引き出しに隠す嫌がらせやめろ~。
毎回毎回徹夜させられるこっちの身にもなりやがれ~。仕事しろ~、仕事を~。
少しは部下の身体を労わりやがれ~。」
呪文のように言ってみた。
リヴァイ兵長は相変わらず不愛想な寝顔で、全く起きる気配がない。
本当に疲れていたのだろう。熟睡だ。
「寝ちゃうほど疲れてるなら、ちゃんと夜寝ろ~。フラフラ真夜中に談話室で紅茶を飲むな~。
食事もちゃんととれ~。倒れても知らないぞ~。
リヴァイさんが倒れたら、すごく心配しちゃうだろうが~。」
なんか憎たらしくなってきて、鼻をつまんでみた。
ありえないくらいに眉間に深い皴が刻まれたから、すぐに指を離した。
起こしてしまったら最悪だ。
怒られてしまう。
怒られて、しまうよー。
こんな、気持ちー。
「意地悪で、仕事を私に押しつけてばっかりのくせに、辛いときにさりげなくそばにいるとか
カッコいいことするな~。好きになっちゃっただろうが~。
同じ部屋で一緒に徹夜とか拷問かよ、いつもドキドキしてむしろ目が冴えて仕事が捗っちゃうんだよ、ばーか。」
本人が起きていたら絶対に言えない文句を言って、無防備な唇に一瞬触れるだけのキスをした。
直属の上司に恋をしてしまった挙句、寝込みを襲ってしまう不真面目な部下の私は、バレたらきっと怒られてしまう。
兵長補佐という立場も追われてしまうかな。
あぁ、でも、今日くらいは、頑張ったご褒美でキスくらい。
いいですよね。
「好きです。だから、勝手にキスをしても怒られない人を、
どうかずっと、作らないで。」
眠るリヴァイ兵長の頭を優しく撫でると、柔らかい髪がサラリと揺れた。
起きるタイミング、完全に逃しました
ちょっとした悪戯のつもりが、返り討ちに合った。
どうしたものか。
本当は起きてたと言ったら、彼女は怒るだろうか。
それとも、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにするのだろうか。
上手に隠してたその気持ち、勝手に聞いたことは謝るよ。
だから、怒らないでくれ。
勝手にキスをしたことは、怒ったりしないからさ。
問題なさそうなので、受け取って他の書類とまとめた。
「なまえさん、大丈夫ですか?隈が出来てますよ。
また徹夜で書類作成ですか?」
エルドが心配そうに私の顔を覗き込む。
自覚もあった私は、目の下を擦った。
こんなことで隈が消えるわけがないどころか、薄い皮膚への強い摩擦で逆効果だってことも分かってる。
疲れて頭がまわらないだけだ。
「ううん、昨日は書類のチェック。今日までに憲兵団に提出しなきゃいけない書類を
リヴァイさんが真っ白のまま綺麗に引き出しに仕舞ってるのを、
昨日のお昼過ぎに見つけて、それからリヴァイさんの執務室で徹夜。」
「またですか…。せめてデスクの上に置くように言ってもダメなんですか?」
「デスクの上に何か乗ってるのがいやなんだって。
馬鹿みたいな書類の山をデスクの上に作っておいてどの口が言ってんだって思うんだけど。
大切な書類に限って引き出しに仕舞う癖、治してくれないかな。嫌がらせとしか思えない。」
「なんていうか…、ご愁傷さまです。」
哀れみを帯びた視線で見送られて、私はエルドの部屋を後にする。
執務仕事が苦手なリヴァイ兵長が、兵長になってすぐに私は兵長補佐に任命された。
理由は簡単で、私が速記や執務仕事が得意だったことと、そこそこの精鋭で、書類仕事をやり残したまますぐには死なないだろうと判断されてしまったからだ。
そのせいで私は、ここ数年、厳しい特訓に加えて、大量の事務仕事に目がまわりそうな日々を過ごしている。
胸ポケットから懐中時計を出して時間を確認すると、もう昼を過ぎていた。
リヴァイさんは食事に対してだらしがないところがある。
言わないと食べないし、言っても食べない。
きっと今も、朝まで徹夜したというのに朝に少しだけパンを齧ったきりで何も口にしていないのだろう。
(仕方ないか。これも仕事だ…。)
目の前に誰もいないのに、わざとこれ見よがしにため息を吐いて、食堂に食事を貰いに行くことを決めた。
宿舎横にある食堂に入ると、調査兵達が賑やかに食事を楽しんでいた。
もちろんそこに、私の直属の上司であるリヴァイ兵長の姿はない。
「やぁ、なまえ。今日もリヴァイの昼飯を貰いに来たのかい?」
ナナバにからかわれたけれど、反応する力はもう残っていない。
情けない笑みを返せば、また心底哀れそうな目を向けられた。
リヴァイ兵長の食事を乗せたトレイを持って、私は今度こそ執務室へ向かう。
デスクの上の書類の山は相変わらず高いままだし、私が今集めて来たリヴァイ班の壁外調査報告書も確認してもらわないといけない。
さすがに、昨日徹夜する羽目になったことを反省して、今日くらいは真面目に執務室で書類仕事をしてくれていると信じている。
だから、紅茶はいつもよりもいいものを出してやろう。
そんなことを思いながら、漸くリヴァイ兵長の執務室に辿り着いたときには、団長の元へ書類を届けてから3時間以上が経っていた。
最初は手こずっていたけれど、今ではもう、トレイを片手で持って、扉を開くのもお手の物だ。
「書類の提出終わりました。
リヴァイ兵長は今朝、私がお願いしたノルマは終わりましたか?」
とりあえず、最後まで言ってはみたけれど、ソファの上で横になっている不愛想な寝顔が返事しないだろうことはすぐに分かった。
(クソ野郎。)
私が忙しく働いているときに、クソ忙しくさせた張本人が昼寝とはいい度胸だ。
分かる。
眠たいのは分かるのだ。
1週間前に壁外調査から帰って来たばかりで調査兵達はバタバタしていたし、昨日は徹夜だった。
そりゃ疲れているだろう。
私もだけどなー!
ため息を呑み込んで、持ってきたトレイをローテーブルの上に乗せてハンカチをかけた。
ローテーブルの上には、今朝、私がノルマとして渡した書類が開いてあった。
ところどころにリヴァイ兵長の几帳面で小さな字が並んでいて、珍しく努力を感じなくもない。
「寝るならせめてブランケットくらいかけてください。」
ベッドからブランケットを引っ張って持って来て、リヴァイ兵長の肩にかけた。
人類最強の兵士として調査兵団の兵士達をエルヴィン団長と共に牽引しているのだから、重責を背負って疲れているに決まっている。
そこで、徹夜なんてさせられてしまえば、珍しく昼寝をしてしまうのも仕方がない。
それくらい、許してやってもいい。
兵長に心も身体も休ませる。それも、兵長補佐の大事な仕事だと思ってる。
「リヴァイ兵長の寝顔なんて初めて見たな~。
寝てても不愛想で笑える。」
クスッと笑って、綺麗に筋の通った小さな鼻を指でつつくと、リヴァイ兵長の眉間に皴が寄った。
聞こえたのか、睡眠を邪魔されたと思ったのか。
まぁ、少し睡眠の邪魔をするくらい許してもらってもいいはずだ。
私はここ何年もずっと、リヴァイ兵長に尽くし続けてきたのだから。
だから、今なら、日頃の恨みつらみを言ってもいいんじゃないだろうか。
どうせ、眠ってるリヴァイ兵長には聞こえていないのだし。
寝顔がよく見えるように、私は、ソファの前に膝を曲げて腰を降ろした。
すぐ目の前になった不愛想な寝顔に、私は言いたい言葉を考える。
「ばーか、ばーか。紅茶ばーか。人類最強ばーか。」
最初に思いついたのが小さな子供の悪口で、我ながら悲しくなった。
眉間の皴がなくなったものの、リヴァイ兵長は相変わらず不愛想な寝顔だから、怒られているような気分になる。
でも、せっかく寝てるのだ。
今しかチャンスはない。
言いたい文句を、全部言っちゃえー。
「書類の山作るのやめろ~。大切な書類に限って引き出しに隠す嫌がらせやめろ~。
毎回毎回徹夜させられるこっちの身にもなりやがれ~。仕事しろ~、仕事を~。
少しは部下の身体を労わりやがれ~。」
呪文のように言ってみた。
リヴァイ兵長は相変わらず不愛想な寝顔で、全く起きる気配がない。
本当に疲れていたのだろう。熟睡だ。
「寝ちゃうほど疲れてるなら、ちゃんと夜寝ろ~。フラフラ真夜中に談話室で紅茶を飲むな~。
食事もちゃんととれ~。倒れても知らないぞ~。
リヴァイさんが倒れたら、すごく心配しちゃうだろうが~。」
なんか憎たらしくなってきて、鼻をつまんでみた。
ありえないくらいに眉間に深い皴が刻まれたから、すぐに指を離した。
起こしてしまったら最悪だ。
怒られてしまう。
怒られて、しまうよー。
こんな、気持ちー。
「意地悪で、仕事を私に押しつけてばっかりのくせに、辛いときにさりげなくそばにいるとか
カッコいいことするな~。好きになっちゃっただろうが~。
同じ部屋で一緒に徹夜とか拷問かよ、いつもドキドキしてむしろ目が冴えて仕事が捗っちゃうんだよ、ばーか。」
本人が起きていたら絶対に言えない文句を言って、無防備な唇に一瞬触れるだけのキスをした。
直属の上司に恋をしてしまった挙句、寝込みを襲ってしまう不真面目な部下の私は、バレたらきっと怒られてしまう。
兵長補佐という立場も追われてしまうかな。
あぁ、でも、今日くらいは、頑張ったご褒美でキスくらい。
いいですよね。
「好きです。だから、勝手にキスをしても怒られない人を、
どうかずっと、作らないで。」
眠るリヴァイ兵長の頭を優しく撫でると、柔らかい髪がサラリと揺れた。
起きるタイミング、完全に逃しました
ちょっとした悪戯のつもりが、返り討ちに合った。
どうしたものか。
本当は起きてたと言ったら、彼女は怒るだろうか。
それとも、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにするのだろうか。
上手に隠してたその気持ち、勝手に聞いたことは謝るよ。
だから、怒らないでくれ。
勝手にキスをしたことは、怒ったりしないからさ。
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