◇第九十七話◇悪魔との交渉
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高価な装飾品ばかりが溢れ、必要以上に広い部屋。
そこら辺の貴族では着れないようなブランド服を身に着け、ソファに腰を降ろす。
見た目も豪華なソファは、座り心地も完璧だ。
広げた新聞には、今日も、憎い男の嘘か本当かも分からない黒い過去が面白おかしく語られている。
全て、計画通りだ。
それなのに、心は満たされない。
あの日、なまえが突然、調査兵団の兵士になると言い出してからずっと、心に穴があいたみたいに、何をしても空虚でしかなかった。
まさか、そこまで惚れているとも思わず、代わりになるものを探す中、父親に頼まれて仕方なく出た世界最南端のど田舎で開かれるパーティー。
普段なら、なんだかんだと理由をつけて参加しないつまらないパーティーに参加したのは、きっと、どこかでなまえに会えるかもしれないという期待があったからだろう。
そして、期待通り、なまえの姿を見つけた。
その時、世界がまた色づいていくのを感じた。
彼女は自分の運命の相手なのだと、確信した。
それなのにー。
ルーカスは、新聞を握る手に力をこめる。
クシャリと歪んだ新聞記事の中で、リヴァイの似顔絵が一緒に歪んだ。
まるで怒りに顔を歪めるみたいにー。
本当に気に入らない。
「坊ちゃま、なまえ様がいらっしゃいました。
お連れしてもよろしいでしょうか。」
ノックされた扉から入ってきたのは、幼少のころからルーカスについてくれている執事だった。
白髪で細身の彼は、元々は父親の執事だった。
とても仕事が出来る信頼できる男だから、父親は大事な息子の第一執事に彼を選んだ。
どんな汚れ仕事だって、顔色変えずに引き受けてくれる素晴らしい執事なのだ。
「約束通り、1人でだろうな。」
立ち上がったルーカスは、新聞記事をデスクの上に置いた。
「はい、お手紙にあった通り、こちらに来るまでは上官の方と御一緒でしたが
お屋敷前で上官の方には馬車を降りて頂きました。」
「ならいい、連れてきてくれ。」
「かしこまりました。」
頭を下げ、執事が部屋を出て行く。
ルーカスは腕を組むと、自分より大きな窓に背中を預けて立ち、扉を見据えた。
次にその扉が開くとき、そこになまえがいる。
そう思うと、湧きあがってくるのは、喜びか、怒りか、殺意か。
もう自分でも分からない。
ただ、口の端は自然と上がっていく。
会いたいー、そう告げられた手紙が届いたときと似たような感情だ。
会いたい理由が、好意ではないことは分かっていた。
調査兵団が出した報告書からなまえの名前が消えていたこと、まるでリヴァイ1人を悪者に仕立て上げようとしているようなモーリの犯行動機。
それだけ読めば、調査兵団が、いや、リヴァイが、何を守ろうとしているのかくらい嫌でも分かる。
それが気に入らなかった、すごく、死ぬほど、殺したいほどー。
あのとき、モーリが余計なことをしてくれたおかげで、リヴァイが廃工場に来ることになったのは想定外だった。
でも、自分の名前を呼ばなかったなまえをリヴァイごと吹き飛ばす良いチャンスだとも思った。
それがー。
『私を殺してっ!!!!』
廃工場の様子を確認していた執事に聞く必要もなく、馬車の中にいても聞こえてきたなまえの悲痛な声。
自分が殺されてでも守りたいほど、あの男が大切だというのか。
怒りや悔しさが蘇り、ルーカスは爪を噛む。
貴族の中でも特に力の強い家に生まれ、容姿端麗、頭脳明晰、子供の頃から、欲しいものは何でも手に入れてきた。
こんな屈辱、初めてだ。
手に入らないものが、この世に存在しているなんて許せない。
手に入らないのなら、消えてもらうしかない。
絶対に許さない。
いや、許さないこともない。
なまえの、態度次第ではー。
そこら辺の貴族では着れないようなブランド服を身に着け、ソファに腰を降ろす。
見た目も豪華なソファは、座り心地も完璧だ。
広げた新聞には、今日も、憎い男の嘘か本当かも分からない黒い過去が面白おかしく語られている。
全て、計画通りだ。
それなのに、心は満たされない。
あの日、なまえが突然、調査兵団の兵士になると言い出してからずっと、心に穴があいたみたいに、何をしても空虚でしかなかった。
まさか、そこまで惚れているとも思わず、代わりになるものを探す中、父親に頼まれて仕方なく出た世界最南端のど田舎で開かれるパーティー。
普段なら、なんだかんだと理由をつけて参加しないつまらないパーティーに参加したのは、きっと、どこかでなまえに会えるかもしれないという期待があったからだろう。
そして、期待通り、なまえの姿を見つけた。
その時、世界がまた色づいていくのを感じた。
彼女は自分の運命の相手なのだと、確信した。
それなのにー。
ルーカスは、新聞を握る手に力をこめる。
クシャリと歪んだ新聞記事の中で、リヴァイの似顔絵が一緒に歪んだ。
まるで怒りに顔を歪めるみたいにー。
本当に気に入らない。
「坊ちゃま、なまえ様がいらっしゃいました。
お連れしてもよろしいでしょうか。」
ノックされた扉から入ってきたのは、幼少のころからルーカスについてくれている執事だった。
白髪で細身の彼は、元々は父親の執事だった。
とても仕事が出来る信頼できる男だから、父親は大事な息子の第一執事に彼を選んだ。
どんな汚れ仕事だって、顔色変えずに引き受けてくれる素晴らしい執事なのだ。
「約束通り、1人でだろうな。」
立ち上がったルーカスは、新聞記事をデスクの上に置いた。
「はい、お手紙にあった通り、こちらに来るまでは上官の方と御一緒でしたが
お屋敷前で上官の方には馬車を降りて頂きました。」
「ならいい、連れてきてくれ。」
「かしこまりました。」
頭を下げ、執事が部屋を出て行く。
ルーカスは腕を組むと、自分より大きな窓に背中を預けて立ち、扉を見据えた。
次にその扉が開くとき、そこになまえがいる。
そう思うと、湧きあがってくるのは、喜びか、怒りか、殺意か。
もう自分でも分からない。
ただ、口の端は自然と上がっていく。
会いたいー、そう告げられた手紙が届いたときと似たような感情だ。
会いたい理由が、好意ではないことは分かっていた。
調査兵団が出した報告書からなまえの名前が消えていたこと、まるでリヴァイ1人を悪者に仕立て上げようとしているようなモーリの犯行動機。
それだけ読めば、調査兵団が、いや、リヴァイが、何を守ろうとしているのかくらい嫌でも分かる。
それが気に入らなかった、すごく、死ぬほど、殺したいほどー。
あのとき、モーリが余計なことをしてくれたおかげで、リヴァイが廃工場に来ることになったのは想定外だった。
でも、自分の名前を呼ばなかったなまえをリヴァイごと吹き飛ばす良いチャンスだとも思った。
それがー。
『私を殺してっ!!!!』
廃工場の様子を確認していた執事に聞く必要もなく、馬車の中にいても聞こえてきたなまえの悲痛な声。
自分が殺されてでも守りたいほど、あの男が大切だというのか。
怒りや悔しさが蘇り、ルーカスは爪を噛む。
貴族の中でも特に力の強い家に生まれ、容姿端麗、頭脳明晰、子供の頃から、欲しいものは何でも手に入れてきた。
こんな屈辱、初めてだ。
手に入らないものが、この世に存在しているなんて許せない。
手に入らないのなら、消えてもらうしかない。
絶対に許さない。
いや、許さないこともない。
なまえの、態度次第ではー。