◇第八十八話◇ほんのひとときのハッピーエンド
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扉が閉まるような音がして、夢の世界が幕を閉じ始める。
どこまでも続く暗闇を彷徨い続けた。
赤い炎から逃げて、逃げて、辿り着いたのはこの世で最も深い闇の中でー。
漸く、瞼の向こうに光を感じた。
その光を求めるように、私の瞼がゆっくりと上がっていけば、真っ白いシーツが見えた。
いつの間にか、眠っていたようだった。
朝が来たのか、病室が明るくなっている。
目をこすり、起き上がろうとして、ずっと繋いでいたはずのリヴァイ兵長の手がないことに気づく。
途端に、たとえようもない恐怖に襲われて、私は勢いよく身体を起こした。
「起きた途端、元気がいいな。」
リヴァイ兵長と、目が合った。
ベッドの上で上半身を起こして、座っている。
傷だらけの身体を包帯で巻いて、痛々しい姿をしている。
けれど、リヴァイ兵長がー。
信じられなくて、でも、信じたくて、私は自分の頬を思いっきりつねった。
どうしよう、痛い。すごく、痛いー。
泣きそうだ。
「…何やってんだ。」
呆れた顔のリヴァイ兵長が、私の知っているそのままでー。
「夢かと、思って…。」
「バカが。死なねぇと言っただろう。」
リヴァイ兵長の手が、私の頭に触れる。そして、乱暴にクシャクシャと撫でた。
ひどく懐かしく感じるそれに、胸が詰まる。
「死にそうだったんですよ…っ。よく息が出来てたって言われてー。」
「でも、死んでねぇ。俺は、ここにいる。」
私の頭を乱暴に撫でたリヴァイ兵長の手が、私の手に触れた。
そして、まるで、もう二度と解けないように糸をきつく結ぶみたいに、私の指に自分の指を絡めてくる。
私も強く握り返し、その温もりを、感触を確かめる。
「ありがとう…、ございます…。
守ってくれて…、生きて、くれて…。本当に…、ありがとうございます…。」
リヴァイ兵長が起きたら、伝えたかった言葉を、ちゃんと言えた。
私は、絡めたままのリヴァイ兵長の手で、自分の頬にそっと触れた。
私の涙が、ひどく熱いリヴァイ兵長の手を濡らしていく。
あぁ、確かに、ここにいる。リヴァイ兵長は、生きているー。
「それだけでいいのか。」
言葉の意味が分からず、私は首を傾げる。
「俺はもっと、お前と一緒にここに生きてることをちゃんと確かめてぇ。」
リヴァイ兵長はそう言うと、握りしめる手を自分の方へと引っ張った。
指が絡んだままの私は、前のめりに体勢を崩して、リヴァイ兵長の胸板に倒れ込んでしまう。
血が滲む包帯に頬があたり、私は焦って身体を離そうとしたけれど、リヴァイ兵長の腕がそれを許さなかった。
「ごめんなさー。」
「俺の心臓の音は聞こえたか。」
リヴァイ兵長は、私の頭と腰に手を回し、傷だらけの自分の身体に強く抱き寄せた。
規則的な鼓動が、私の耳に響く。
それは、とても優しく、力強く、愛する人が生きていることを私に教えてくれた。
あぁ、生まれてから今まで私が聴いた中で一番感動的で、きっと私がこの世で最も愛おしい音だ。
「聴こえます。」
もっと聴いていたくて、私は、リヴァイ兵長の腰に手を回した。
傷が痛まないように優しく、そっと触れれば、私を抱きしめるリヴァイ兵長の腕の力が強くなった。
「俺にも聞こえる。すげぇ、速ぇ。
お前も熱があるんじゃねぇのか。」
「…違いますよ。
いいじゃないですか。好きだから、ドキドキするんです。」
少しバカにするような言い方に、ムッとした。
そんな感情さえ、すごく嬉しかった。
「あぁ、そうか…!」
「わざとですよね、絶対に。」
「さぁ?」
悪戯な声が笑っているようで、私は自然と笑顔になる。
昨日の夜までは、この世界は地獄だと信じて疑わなかった。
全てのものが色を失って、白黒の世界で、リヴァイ兵長だけが冷たい氷に覆われていて、この世界のすべてが、私がリヴァイ兵長に触れるのを赦さないみたいだった。
でも、私は今、心が温かい。幸せを感じている。
たったひとり、リヴァイ兵長がいるだけで、私の世界はこんなにも色づくのか。
こんなにも、愛おしい世界にー。
どこまでも続く暗闇を彷徨い続けた。
赤い炎から逃げて、逃げて、辿り着いたのはこの世で最も深い闇の中でー。
漸く、瞼の向こうに光を感じた。
その光を求めるように、私の瞼がゆっくりと上がっていけば、真っ白いシーツが見えた。
いつの間にか、眠っていたようだった。
朝が来たのか、病室が明るくなっている。
目をこすり、起き上がろうとして、ずっと繋いでいたはずのリヴァイ兵長の手がないことに気づく。
途端に、たとえようもない恐怖に襲われて、私は勢いよく身体を起こした。
「起きた途端、元気がいいな。」
リヴァイ兵長と、目が合った。
ベッドの上で上半身を起こして、座っている。
傷だらけの身体を包帯で巻いて、痛々しい姿をしている。
けれど、リヴァイ兵長がー。
信じられなくて、でも、信じたくて、私は自分の頬を思いっきりつねった。
どうしよう、痛い。すごく、痛いー。
泣きそうだ。
「…何やってんだ。」
呆れた顔のリヴァイ兵長が、私の知っているそのままでー。
「夢かと、思って…。」
「バカが。死なねぇと言っただろう。」
リヴァイ兵長の手が、私の頭に触れる。そして、乱暴にクシャクシャと撫でた。
ひどく懐かしく感じるそれに、胸が詰まる。
「死にそうだったんですよ…っ。よく息が出来てたって言われてー。」
「でも、死んでねぇ。俺は、ここにいる。」
私の頭を乱暴に撫でたリヴァイ兵長の手が、私の手に触れた。
そして、まるで、もう二度と解けないように糸をきつく結ぶみたいに、私の指に自分の指を絡めてくる。
私も強く握り返し、その温もりを、感触を確かめる。
「ありがとう…、ございます…。
守ってくれて…、生きて、くれて…。本当に…、ありがとうございます…。」
リヴァイ兵長が起きたら、伝えたかった言葉を、ちゃんと言えた。
私は、絡めたままのリヴァイ兵長の手で、自分の頬にそっと触れた。
私の涙が、ひどく熱いリヴァイ兵長の手を濡らしていく。
あぁ、確かに、ここにいる。リヴァイ兵長は、生きているー。
「それだけでいいのか。」
言葉の意味が分からず、私は首を傾げる。
「俺はもっと、お前と一緒にここに生きてることをちゃんと確かめてぇ。」
リヴァイ兵長はそう言うと、握りしめる手を自分の方へと引っ張った。
指が絡んだままの私は、前のめりに体勢を崩して、リヴァイ兵長の胸板に倒れ込んでしまう。
血が滲む包帯に頬があたり、私は焦って身体を離そうとしたけれど、リヴァイ兵長の腕がそれを許さなかった。
「ごめんなさー。」
「俺の心臓の音は聞こえたか。」
リヴァイ兵長は、私の頭と腰に手を回し、傷だらけの自分の身体に強く抱き寄せた。
規則的な鼓動が、私の耳に響く。
それは、とても優しく、力強く、愛する人が生きていることを私に教えてくれた。
あぁ、生まれてから今まで私が聴いた中で一番感動的で、きっと私がこの世で最も愛おしい音だ。
「聴こえます。」
もっと聴いていたくて、私は、リヴァイ兵長の腰に手を回した。
傷が痛まないように優しく、そっと触れれば、私を抱きしめるリヴァイ兵長の腕の力が強くなった。
「俺にも聞こえる。すげぇ、速ぇ。
お前も熱があるんじゃねぇのか。」
「…違いますよ。
いいじゃないですか。好きだから、ドキドキするんです。」
少しバカにするような言い方に、ムッとした。
そんな感情さえ、すごく嬉しかった。
「あぁ、そうか…!」
「わざとですよね、絶対に。」
「さぁ?」
悪戯な声が笑っているようで、私は自然と笑顔になる。
昨日の夜までは、この世界は地獄だと信じて疑わなかった。
全てのものが色を失って、白黒の世界で、リヴァイ兵長だけが冷たい氷に覆われていて、この世界のすべてが、私がリヴァイ兵長に触れるのを赦さないみたいだった。
でも、私は今、心が温かい。幸せを感じている。
たったひとり、リヴァイ兵長がいるだけで、私の世界はこんなにも色づくのか。
こんなにも、愛おしい世界にー。