◇第八十五話◇真実の愛を見た
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ハンジ班が走らせた早馬によって、なまえが無事で見つかったことは早急に全班に報告された。
なまえの捜索を阻むように降り出していた雨も、発見の報告の頃に止んだ。
そんな中、ホッとした顔をした兵士達が続々と兵舎に戻ってくる兵門で、落ち着きなく行ったり来たりしている男が1人ー。
「ジャン、無事だったんだから、とにかく中に入って待とうよ。」
「お前らは入ってろ。俺は自分の目で確かめるまでは、安心できねぇだけだ。」
心配になってアルミンが声をかけても、ジャンは首を縦にはふらなかった。
忙しなく瞳を動かして、帰ってくる兵士達の中からなまえの顔を探しているようだった。
「私だって…!なまえさんが帰ってくるまでここで待ってるっ!」
「そう言うと思ったよ。」
クリスタの横で、ユミルがため息を吐いた。
サシャとコニーも、絶対に兵舎には戻らないと騒いでいるし、ライナーとベルトルトも、兵門から動く様子はない。
アルミンが困ったようにため息を吐いた時、兵舎に戻ってくる兵士の中によく知った顔を見つけた。
「おーいっ!お前らっ!!なまえさん、連れて帰ってきたぞーっ!!」
馬の上で自慢気に手を振っているのは、エレンだった。
その周りには、リヴァイ班の班員達と、1人で捜索に向かってしまったリヴァイに代わって、エレンのお守りをハンジに任されていたミカサもいた。
「はっ!?ハンジ分隊長の班が見つけたんじゃなかったのか!?」
「そう。さっき、ハンジ分隊長の班に会ったの。後ろから来てる。
傷が開くといけないから、今、ゆっくり荷馬車を走らせてこっちに向かってるところ。」
ミカサが馬から降りて、騒がしいジャンに説明をする。
それが、余計にジャンを騒がしくさせた。
「傷っ!?無事だったんじゃねぇのかよっ!?
どういうことだよっ!?」
説明をしたミカサではなくて、ジャンは、馬から降りたエレンの肩を激しく前後に揺さぶった。
「いや…っ、ちが…っ、リヴァ…っ。いし…っ、いし…きっ!」
エレンが何かを言おうとしていたが、ジャンが激しく前後に揺さぶるせいで、全く分からない。
アルミンは、エレン達と一緒にやってきたリヴァイ班に声をかけた。
「あの、なまえさんは無事に発見されたと報告を受けたのですが、
怪我をしてるんですか?」
「大丈夫。なまえは無事だよ。」
続々と馬から降りるリヴァイ班の中、答えてくれたのは、リヴァイ班の紅一点、ペトラだった。
兵門の前に立って動かない彼らも、不安そうに、なまえを乗せているという荷馬車を待っているようだった。
「なまえは…って、誰か怪我をしたんですか?」
「リヴァイ兵長が重傷だ。意識がねぇらしい。
クソ…ッ。俺も一緒について行ってりゃ…っ!」
悔しそうに拳を握ったのは、オルオだった。
その隣で、エルドとグンタも不安そうに頭を掻いたり、組んだ腕の上で指を忙しなく動かしている。
「リヴァイ兵長がっ!?どういうことですか!?」
声を上げたのはコニーだった。
ジャンは、驚きで声も出ないようだった。
いや、ショックでーかもしれないけれど。
「俺達にもよくわからない。ただ、なまえを見つけて助けたのはリヴァイ兵長らしい。
その時に負った傷が原因で、意識不明の重体だそうだ。」
「今、なまえがそばについて声を掛け続けてるが、反応がねぇ…。」
「そんな…。」
エルドとグンタの話を聞いて、絶望に似たような気持ちがアルミンを襲った。
それは、人類の希望を失うかもしれないことからくるものなのか、それとは別なのか、自分でもよく分からなかった。
ただ、ルルを失ったときのなまえの姿が、脳裏に浮かんで消えないことだけは確かだった。
もしかしたら、それは、ここにいるみんな同じだったのかもしれない。
みんな、分かっている。
リヴァイ兵長にもしものことがあったらー。
「来たっ!!」
エレンが叫んだ。
ハンジを先頭に戻ってきた兵士達の後ろに、荷馬車が見えた。
あそこに、意識不明のリヴァイ兵長となまえが乗っている。
待ちきれず、アルミン達は荷馬車へと駆け寄った。
「なまえさんっ、怪我はー。」
足の速いジャンがすぐに荷馬車の元へ駆けつけた。
声を掛けたが、言葉は続かなかったようだった。
それは、リヴァイの容態を心配して、声を掛けようとしていたアルミン達も一緒だった。
荷馬車の上で、リヴァイは仰向けに寝かされていた。
着ていたと思われるタキシードは、ボロボロの状態で荷馬車の隅に置かれていて、防寒のためにかけられた毛布の下から僅かに覗く身体は、肌が見えないくらいに包帯を巻かれていた。
「死なないって、言ったじゃないですか…。
お願い…、私を置いて…、いかないで…。」
血の気のないリヴァイ兵長の頬を、なまえはただひたすら、愛おしそうに、愛おしそうに撫で続けていた。
切なく震える声は、他の誰も触れてはいけない、なまえとリヴァイだけのものでー。
「愛しているの…。
貴方のいない世界では…、生きていけないほど…。」
なまえの頬を流れる涙が、リヴァイ兵長の唇に落ちる。
ただ、それだけだ。唇を重ねたわけではない。
それなのに、とても官能的で、熱い接吻を交わしているようだった。
まるで、彼らにもらたす希望のように雲の切れ間から差す一筋の光が、なまえの涙を宝石のように輝かせる。
雨上がりの白い霧さえ、2人を優しく包み、神様の寵愛を受けているみたいで、とても幻想的だった。
アルミン達は、まだ新兵と呼ばれる歳で、長く生きてきたわけではない。
でも、こんな残酷な世界に産み落とされたせいで、目を背けたくなるような地獄をもう幾つも見てきた。
そして、ここで苦しむなまえもリヴァイも、この残酷な世界の犠牲者に違いなかった。
それでも、それでもー。
2人が見せるその光景は、今まで生きてきて見たどんなものよりも儚く、切なく、美しかったー。
胸が張り裂ける、とはこういうことかと、若い彼らが初めて知るほどにー。
「どうか…、助かってほしい…。リヴァイ兵長も、なまえも…。」
ライナーから零れた言葉、それがアルミンの、そこにいる全ての人の願いだろう。
ライナーの隣で、ベルトルトが流れる涙を必死に腕で拭いながら、首を縦に振っていた。
なまえの捜索を阻むように降り出していた雨も、発見の報告の頃に止んだ。
そんな中、ホッとした顔をした兵士達が続々と兵舎に戻ってくる兵門で、落ち着きなく行ったり来たりしている男が1人ー。
「ジャン、無事だったんだから、とにかく中に入って待とうよ。」
「お前らは入ってろ。俺は自分の目で確かめるまでは、安心できねぇだけだ。」
心配になってアルミンが声をかけても、ジャンは首を縦にはふらなかった。
忙しなく瞳を動かして、帰ってくる兵士達の中からなまえの顔を探しているようだった。
「私だって…!なまえさんが帰ってくるまでここで待ってるっ!」
「そう言うと思ったよ。」
クリスタの横で、ユミルがため息を吐いた。
サシャとコニーも、絶対に兵舎には戻らないと騒いでいるし、ライナーとベルトルトも、兵門から動く様子はない。
アルミンが困ったようにため息を吐いた時、兵舎に戻ってくる兵士の中によく知った顔を見つけた。
「おーいっ!お前らっ!!なまえさん、連れて帰ってきたぞーっ!!」
馬の上で自慢気に手を振っているのは、エレンだった。
その周りには、リヴァイ班の班員達と、1人で捜索に向かってしまったリヴァイに代わって、エレンのお守りをハンジに任されていたミカサもいた。
「はっ!?ハンジ分隊長の班が見つけたんじゃなかったのか!?」
「そう。さっき、ハンジ分隊長の班に会ったの。後ろから来てる。
傷が開くといけないから、今、ゆっくり荷馬車を走らせてこっちに向かってるところ。」
ミカサが馬から降りて、騒がしいジャンに説明をする。
それが、余計にジャンを騒がしくさせた。
「傷っ!?無事だったんじゃねぇのかよっ!?
どういうことだよっ!?」
説明をしたミカサではなくて、ジャンは、馬から降りたエレンの肩を激しく前後に揺さぶった。
「いや…っ、ちが…っ、リヴァ…っ。いし…っ、いし…きっ!」
エレンが何かを言おうとしていたが、ジャンが激しく前後に揺さぶるせいで、全く分からない。
アルミンは、エレン達と一緒にやってきたリヴァイ班に声をかけた。
「あの、なまえさんは無事に発見されたと報告を受けたのですが、
怪我をしてるんですか?」
「大丈夫。なまえは無事だよ。」
続々と馬から降りるリヴァイ班の中、答えてくれたのは、リヴァイ班の紅一点、ペトラだった。
兵門の前に立って動かない彼らも、不安そうに、なまえを乗せているという荷馬車を待っているようだった。
「なまえは…って、誰か怪我をしたんですか?」
「リヴァイ兵長が重傷だ。意識がねぇらしい。
クソ…ッ。俺も一緒について行ってりゃ…っ!」
悔しそうに拳を握ったのは、オルオだった。
その隣で、エルドとグンタも不安そうに頭を掻いたり、組んだ腕の上で指を忙しなく動かしている。
「リヴァイ兵長がっ!?どういうことですか!?」
声を上げたのはコニーだった。
ジャンは、驚きで声も出ないようだった。
いや、ショックでーかもしれないけれど。
「俺達にもよくわからない。ただ、なまえを見つけて助けたのはリヴァイ兵長らしい。
その時に負った傷が原因で、意識不明の重体だそうだ。」
「今、なまえがそばについて声を掛け続けてるが、反応がねぇ…。」
「そんな…。」
エルドとグンタの話を聞いて、絶望に似たような気持ちがアルミンを襲った。
それは、人類の希望を失うかもしれないことからくるものなのか、それとは別なのか、自分でもよく分からなかった。
ただ、ルルを失ったときのなまえの姿が、脳裏に浮かんで消えないことだけは確かだった。
もしかしたら、それは、ここにいるみんな同じだったのかもしれない。
みんな、分かっている。
リヴァイ兵長にもしものことがあったらー。
「来たっ!!」
エレンが叫んだ。
ハンジを先頭に戻ってきた兵士達の後ろに、荷馬車が見えた。
あそこに、意識不明のリヴァイ兵長となまえが乗っている。
待ちきれず、アルミン達は荷馬車へと駆け寄った。
「なまえさんっ、怪我はー。」
足の速いジャンがすぐに荷馬車の元へ駆けつけた。
声を掛けたが、言葉は続かなかったようだった。
それは、リヴァイの容態を心配して、声を掛けようとしていたアルミン達も一緒だった。
荷馬車の上で、リヴァイは仰向けに寝かされていた。
着ていたと思われるタキシードは、ボロボロの状態で荷馬車の隅に置かれていて、防寒のためにかけられた毛布の下から僅かに覗く身体は、肌が見えないくらいに包帯を巻かれていた。
「死なないって、言ったじゃないですか…。
お願い…、私を置いて…、いかないで…。」
血の気のないリヴァイ兵長の頬を、なまえはただひたすら、愛おしそうに、愛おしそうに撫で続けていた。
切なく震える声は、他の誰も触れてはいけない、なまえとリヴァイだけのものでー。
「愛しているの…。
貴方のいない世界では…、生きていけないほど…。」
なまえの頬を流れる涙が、リヴァイ兵長の唇に落ちる。
ただ、それだけだ。唇を重ねたわけではない。
それなのに、とても官能的で、熱い接吻を交わしているようだった。
まるで、彼らにもらたす希望のように雲の切れ間から差す一筋の光が、なまえの涙を宝石のように輝かせる。
雨上がりの白い霧さえ、2人を優しく包み、神様の寵愛を受けているみたいで、とても幻想的だった。
アルミン達は、まだ新兵と呼ばれる歳で、長く生きてきたわけではない。
でも、こんな残酷な世界に産み落とされたせいで、目を背けたくなるような地獄をもう幾つも見てきた。
そして、ここで苦しむなまえもリヴァイも、この残酷な世界の犠牲者に違いなかった。
それでも、それでもー。
2人が見せるその光景は、今まで生きてきて見たどんなものよりも儚く、切なく、美しかったー。
胸が張り裂ける、とはこういうことかと、若い彼らが初めて知るほどにー。
「どうか…、助かってほしい…。リヴァイ兵長も、なまえも…。」
ライナーから零れた言葉、それがアルミンの、そこにいる全ての人の願いだろう。
ライナーの隣で、ベルトルトが流れる涙を必死に腕で拭いながら、首を縦に振っていた。