◇第八十三話◇愛しい騎士を悲劇から救って
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「なまえを放しやがれ。」
黒い人影の低い声が聞こえて、私は息が止まるかと思うほど驚いた。
幻聴かと自分の耳を疑った。
「リヴァイ兵長…!?」
幻じゃないことを確かめたくて、思わず名前を呼んだ。
今度こそ、そこにいるリヴァイ兵長にー。
私を今まさに犯そうとしていた男も驚いたようで、壊れて外れた扉に目を丸くしていた。
だが、モーリにとってはシナリオ通りだったらしい。
私の元へ駆け寄ろうとしたリヴァイ兵長を威嚇するために、拳銃を天井に一発撃った後、モーリは口を開いた。
「思ったより早かったじゃねぇか。
びしょ濡れで登場とは笑わせてくれるぜ、王子様よぉ。
いや、お前は王子様ってガラじゃあねぇな。お姫様を守る騎士って呼んでやろうか。」
モーリはソファから立ち上がると、なんとも嬉しそうに話し出した。
それに怒ったのは、金髪の男だった。
私に触れようとしていた手を離すと、立ち上がってモーリに詰め寄った。
そして、胸ぐらをつかんで声を荒げた。
「てめぇがアイツを呼んだのかっ!?話が違ぇじゃねぇーかっ!!」
「まぁ、落ち着け。大金貰ったんだろ?女なんて、その金でいくらでも抱ける。
それより、今しか出来ねぇ面白ぇことをお前らにやらせてやるっつってんだよ。」
モーリは自分の胸ぐらを掴む金髪の男の手をひねった。
金髪の男が、痛みに顔を顰める。
「クッソッ、放せっ!」
強引に手を振りほどいた金髪の男は、もっと面白いこととは何だと訊ねる。
それに答える代わりに、モーリは私の元へやってきた。
そして、私の左胸に拳銃を押しあてる。
その瞬間、廃工場に猛烈な殺気が走ったのが、身体が痺れそうになるくらいの痛みになって伝わってきた。
それが、リヴァイ兵長から発せられたものだということもー。
「まぁ、落ち着けよ。リヴァイ、まずは久しぶりに話でもしねぇか?」
モーリは、私の胸に拳銃を押しあてたまま、リヴァイ兵長に軽い口調で声をかけた。
「クソが、そんなもん勝手にひとりでやってろ。
俺はなまえを取り返しに来ただけだ。」
「なぁ、子分引き連れて地上に出て、自分だけ生き残って
調査兵団で兵長なんて呼ばれる気分はどうだ。」
「うるせぇ。家畜が喋ってんじゃねぇ。」
「最高かって聞いてんだよっ!!!!!」
モーリが大声を張り上げて、怒鳴った。
廃屋の中に木霊するモーリの怒りで、耳が痛くなる。
「俺に恨みがあるんだろ。なまえは関係ねぇ。今すぐ放せ。
俺がいくらでも相手になってやる。」
最初は相手にするつもりがなさそうだったリヴァイ兵長だったが、何かを感じ取ったのか、ギロリとモーリを睨みつけた。
「それじゃ、意味がねぇ。俺は兄貴を殺したてめぇに復讐がしてぇんだ。
最高にたぎる地獄をな、お前に味わってほしいんだ。」
冷たく言ったモーリは、膝を曲げて屈むと、拳銃の先をドレスの隙間に滑り込ませて、直に胸を強く押した。
思わず、痛みに顔を顰めるとリヴァイ兵長が、焦ったように私の名前を呼んだ。
それを見て、モーリは嬉しそうに口元を歪める。
「なかなかイイ女じゃねぇか。まさか、地上に出るだけに飽き足らず
調査兵団の兵士長様になって、こんないい女も囲えるようになってるなんてなぁ。
抱き心地もさぞかしいいんだろう?俺にも貸してくれよ。」
「気色悪ぃ目でなまえを見るんじゃねぇ。」
「お前の大事なイザベルも、喋るとクソガキだったが、身体は女だったんだぜ?」
イザベルー。
その名前がモーリから発せられた途端、リヴァイ兵長が纏う空気の色が変わったように見えた。
怒りと憎しみ、悲しみ、いろんな感情が混ぜ合わさった炎を瞳の奥に静かに燃やして、怖い顔でモーリを睨みつける。
「黙れ。」
「具合もなかなか良くてよ。
初めてだったのか痛がって大変だったけどな。」
「黙れっつってんのが聞こえねぇのか。」
「数年もすれば、いい女になってたはずなのによ。
どうせなら、あと一回くらいヤらせてもらいたかったのに、
てめぇのせいでくっせぇ巨人の口の中で死んじまうなんて、可哀そうなー。」
「てめぇも殺してやる!!クソ野郎がぁあッ!!!」
リヴァイ兵長は、怒りに我を忘れたように見えた。
初めて見る怖い顔をして、怖い言葉を叫んだと思ったら、あっという間に目の前に来てモーリの顔を殴りつけようとしていた。
でもー。
「いいのか?てめぇが俺を殴れば、俺はこの引き金を引くぜ。」
モーリは自分を殴ろうとしているリヴァイ兵長をまっすぐに見据えた。
彼の瞳にもまた復讐に染まった憎しみの炎が燃えていた。
リヴァイ兵長が殴れば、本当に引き金を引くつもりだろう。
私は、自分の胸に押しあてられている銃を見下ろし、恐怖に震えた。
胸なんて撃たれたら、きっと即死だ。
死にたくないー。
でも、リヴァイ兵長の怒りを煽ったあの男の言葉も、過去の行動も最低で、殴られても当然でー。
私は、恐怖と不安、悲しみで、リヴァイ兵長の顔を見られなかった。
「聞き分けがいいじゃねぇか。そうだ、最初から俺の言う通りにしてりゃぁいいんだ。」
モーリが満足気に言った。
リヴァイ兵長は、最低の鬼畜男を殴ることを止めたー、私のせいでー。
顔を上げると、リヴァイ兵長が悔しそうにモーリを睨みつけていた。
さっきまで上がっていた拳はおろされ、行き場をなくしたまま怒りに震えていた。
「俺達はよ、この女を好きにしていいと許可を貰ってんだよ。
おい、金髪野郎、コイツはチャンスは生かせなかったんだろ?」
「あぁ、馬鹿みてぇにそのチビの名前を呼ぶだけで、全然ダメだった。
だから、俺が今からヤッちまうところだったのによっ。」
「本当だぜ。」
「楽しみにしてたのによ。」
金髪の男は苛立ち気味に言って、ソファにドカッと座った。
その隣に腰を降ろした茶髪の男達も、つまらなそうに文句を口にする。
「なぁ、リヴァイ。お前の言った通り、俺の狙いはお前だけだ。
この女にもここにいる理由はあるにしろ、俺の復讐に利用された不憫な女でもある。
それなのに、ソイツらに好きにされるのは可哀想だと俺も思うんだよ。」
そこで、だー。
モーリは、嫌な笑みを浮かべ、恐ろしい交換条件を出した。
優しいリヴァイ兵長が、きっと、首を横には振れないと知っていてー。
黒い人影の低い声が聞こえて、私は息が止まるかと思うほど驚いた。
幻聴かと自分の耳を疑った。
「リヴァイ兵長…!?」
幻じゃないことを確かめたくて、思わず名前を呼んだ。
今度こそ、そこにいるリヴァイ兵長にー。
私を今まさに犯そうとしていた男も驚いたようで、壊れて外れた扉に目を丸くしていた。
だが、モーリにとってはシナリオ通りだったらしい。
私の元へ駆け寄ろうとしたリヴァイ兵長を威嚇するために、拳銃を天井に一発撃った後、モーリは口を開いた。
「思ったより早かったじゃねぇか。
びしょ濡れで登場とは笑わせてくれるぜ、王子様よぉ。
いや、お前は王子様ってガラじゃあねぇな。お姫様を守る騎士って呼んでやろうか。」
モーリはソファから立ち上がると、なんとも嬉しそうに話し出した。
それに怒ったのは、金髪の男だった。
私に触れようとしていた手を離すと、立ち上がってモーリに詰め寄った。
そして、胸ぐらをつかんで声を荒げた。
「てめぇがアイツを呼んだのかっ!?話が違ぇじゃねぇーかっ!!」
「まぁ、落ち着け。大金貰ったんだろ?女なんて、その金でいくらでも抱ける。
それより、今しか出来ねぇ面白ぇことをお前らにやらせてやるっつってんだよ。」
モーリは自分の胸ぐらを掴む金髪の男の手をひねった。
金髪の男が、痛みに顔を顰める。
「クッソッ、放せっ!」
強引に手を振りほどいた金髪の男は、もっと面白いこととは何だと訊ねる。
それに答える代わりに、モーリは私の元へやってきた。
そして、私の左胸に拳銃を押しあてる。
その瞬間、廃工場に猛烈な殺気が走ったのが、身体が痺れそうになるくらいの痛みになって伝わってきた。
それが、リヴァイ兵長から発せられたものだということもー。
「まぁ、落ち着けよ。リヴァイ、まずは久しぶりに話でもしねぇか?」
モーリは、私の胸に拳銃を押しあてたまま、リヴァイ兵長に軽い口調で声をかけた。
「クソが、そんなもん勝手にひとりでやってろ。
俺はなまえを取り返しに来ただけだ。」
「なぁ、子分引き連れて地上に出て、自分だけ生き残って
調査兵団で兵長なんて呼ばれる気分はどうだ。」
「うるせぇ。家畜が喋ってんじゃねぇ。」
「最高かって聞いてんだよっ!!!!!」
モーリが大声を張り上げて、怒鳴った。
廃屋の中に木霊するモーリの怒りで、耳が痛くなる。
「俺に恨みがあるんだろ。なまえは関係ねぇ。今すぐ放せ。
俺がいくらでも相手になってやる。」
最初は相手にするつもりがなさそうだったリヴァイ兵長だったが、何かを感じ取ったのか、ギロリとモーリを睨みつけた。
「それじゃ、意味がねぇ。俺は兄貴を殺したてめぇに復讐がしてぇんだ。
最高にたぎる地獄をな、お前に味わってほしいんだ。」
冷たく言ったモーリは、膝を曲げて屈むと、拳銃の先をドレスの隙間に滑り込ませて、直に胸を強く押した。
思わず、痛みに顔を顰めるとリヴァイ兵長が、焦ったように私の名前を呼んだ。
それを見て、モーリは嬉しそうに口元を歪める。
「なかなかイイ女じゃねぇか。まさか、地上に出るだけに飽き足らず
調査兵団の兵士長様になって、こんないい女も囲えるようになってるなんてなぁ。
抱き心地もさぞかしいいんだろう?俺にも貸してくれよ。」
「気色悪ぃ目でなまえを見るんじゃねぇ。」
「お前の大事なイザベルも、喋るとクソガキだったが、身体は女だったんだぜ?」
イザベルー。
その名前がモーリから発せられた途端、リヴァイ兵長が纏う空気の色が変わったように見えた。
怒りと憎しみ、悲しみ、いろんな感情が混ぜ合わさった炎を瞳の奥に静かに燃やして、怖い顔でモーリを睨みつける。
「黙れ。」
「具合もなかなか良くてよ。
初めてだったのか痛がって大変だったけどな。」
「黙れっつってんのが聞こえねぇのか。」
「数年もすれば、いい女になってたはずなのによ。
どうせなら、あと一回くらいヤらせてもらいたかったのに、
てめぇのせいでくっせぇ巨人の口の中で死んじまうなんて、可哀そうなー。」
「てめぇも殺してやる!!クソ野郎がぁあッ!!!」
リヴァイ兵長は、怒りに我を忘れたように見えた。
初めて見る怖い顔をして、怖い言葉を叫んだと思ったら、あっという間に目の前に来てモーリの顔を殴りつけようとしていた。
でもー。
「いいのか?てめぇが俺を殴れば、俺はこの引き金を引くぜ。」
モーリは自分を殴ろうとしているリヴァイ兵長をまっすぐに見据えた。
彼の瞳にもまた復讐に染まった憎しみの炎が燃えていた。
リヴァイ兵長が殴れば、本当に引き金を引くつもりだろう。
私は、自分の胸に押しあてられている銃を見下ろし、恐怖に震えた。
胸なんて撃たれたら、きっと即死だ。
死にたくないー。
でも、リヴァイ兵長の怒りを煽ったあの男の言葉も、過去の行動も最低で、殴られても当然でー。
私は、恐怖と不安、悲しみで、リヴァイ兵長の顔を見られなかった。
「聞き分けがいいじゃねぇか。そうだ、最初から俺の言う通りにしてりゃぁいいんだ。」
モーリが満足気に言った。
リヴァイ兵長は、最低の鬼畜男を殴ることを止めたー、私のせいでー。
顔を上げると、リヴァイ兵長が悔しそうにモーリを睨みつけていた。
さっきまで上がっていた拳はおろされ、行き場をなくしたまま怒りに震えていた。
「俺達はよ、この女を好きにしていいと許可を貰ってんだよ。
おい、金髪野郎、コイツはチャンスは生かせなかったんだろ?」
「あぁ、馬鹿みてぇにそのチビの名前を呼ぶだけで、全然ダメだった。
だから、俺が今からヤッちまうところだったのによっ。」
「本当だぜ。」
「楽しみにしてたのによ。」
金髪の男は苛立ち気味に言って、ソファにドカッと座った。
その隣に腰を降ろした茶髪の男達も、つまらなそうに文句を口にする。
「なぁ、リヴァイ。お前の言った通り、俺の狙いはお前だけだ。
この女にもここにいる理由はあるにしろ、俺の復讐に利用された不憫な女でもある。
それなのに、ソイツらに好きにされるのは可哀想だと俺も思うんだよ。」
そこで、だー。
モーリは、嫌な笑みを浮かべ、恐ろしい交換条件を出した。
優しいリヴァイ兵長が、きっと、首を横には振れないと知っていてー。