◇第八十一話◇目撃者
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早馬を連れて急いだリヴァイとゲルガーは、兵舎に戻るなりなまえを探した。
だが、なまえが帰ってきたのを見た兵士もいなければ、兵門前で見張りを担当していた調査兵は、パーティーから誰も帰ってきていないと告げた。
ゲルガーとリヴァイから遅れること数分、到着したミケによって兵舎に残っていた調査兵達はすぐに集められ、爆弾犯になまえが誘拐された可能性が高いことが伝えられた。
驚き騒然とする兵士達は、まずは簡単に捜索組と待機組に分けられ、ハンジが待機組の指揮を執ることにに決まった。
これから、捜索範囲や班編成をミケとハンジが決める。
その指示を待つ間に、私服になっていた兵士達は兵団服に着替えたり、それぞれ準備を始める。
(クソ…ッ。)
精鋭兵と今後の動きを確認し終えたゲルガーは、精鋭フロアの廊下にいた。
悔しさで握った拳で廊下の壁を殴ると、ドンッと大きな音がしたが、兵士達が右へ左へと忙しそうに走り回る慌ただしい廊下ではそれほど響きはしなかった。
ミケから爆弾犯の狙いがなまえである可能性を聞いたのは、爆弾騒ぎが起きた夜の会議の前だった。
それから、自分は会議に参加することもせず、なまえの様子を見ていた。
パーティー会場がパニックに包まれたときだって、なまえだけは視界から消えないように目を凝らしていた。
そのはずだったー。
いきなりしゃがみこんだなまえが視界から消えたわけは、あのときは分からなかったが、恐らく迷子になっていた子供を抱きかかえるためだったのだろう。
それが今さら分かっても、もう遅い。
自分はなまえを見失い、そして、なまえは兵士の格好をした誰かに連れ去られたー。
「どこに連れていきやがった…っ。」
不安と焦り、そこに混じるショックがゲルガーを苦しめていた。
仲間の中に協力者がいるー、そんな想定以上の最悪の事態に頭がおかしくなりそうだった。
ミケは、なまえを連れて行ったのが調査兵とは限らないと言った。
でもどちらにしろ、調査兵団の協力者がいなければ、兵士のフリをしてなまえを攫うことなど出来ない。
親友を巨人に奪われたなまえが屍のようになってしまったとき、先輩として助けてやれなかったことを、ゲルガーは今も心の奥でずっと悔いていた。
『何かあったらいつでもおれ達を頼ってくれ。』
初めて会ったとき、そう言ったのに、ツラいとき、何もしてやれなかった。
今度こそ、怖い思いはさせないと心に誓ったはずだったのにー。
ふがいない自分にため息を吐いたとき、上官のフロアに続く階段をおりてくるジーニーを見つけた。
まだ兵団服に着替えていないようで、私服のままだ。
みんなすぐに捜索に取り掛かかれるように急いでいるというのに、何をのんびりしているのだー。
「おい、ジーニー、そんなとこで何してんだ。」
ゲルガーに声をかけられて、ジーニーは飛び跳ねんばかりの勢いで驚いて目を見開いた。
異様に焦っているように見えるその様子に、普段は鈍感だとナナバにからかわれるゲルガーでさえも不審に思った。
「上のフロアは今、ミケ分隊長達が作戦会議中だろ。」
「あ、あの…っ、リヴァイ兵長が心配でっ。」
「リヴァイ?リヴァイも会議に出てるはずだ。
心配なら、早くなまえを見つけてやることだ。
それが一番、なまえとリヴァイのためだ。」
「…はい。」
ゲルガーの言葉に、ジーニーは不満げに眉を顰めた。
だが、乙女心どころか、不機嫌な雰囲気に気づけるほどの敏感さのないゲルガーがそれに気づくことはなかった。
「すぐに兵団服に着替えて、集合場所で待機だ。
ミケ分隊長達の会議が終わったらすぐに捜索開始だ。」
「はい。」
頭を下げて走って自分の部屋に戻っていくジーニーとすれ違いに、見慣れた顔の精鋭兵が声をかけてきた。
いつもはどちらかというとお茶らけていることの多い男だが、珍しく緊迫した表情をしている。
その後ろには、なまえと一緒にいるのをよく見かける新兵が1人ついてきていた。
「よう、ネス。どうした。」
「それが、うちの班員が少し前に怪しいヤツを見たって教えてくれてな。」
ネスはそう言うと、ついてきた新兵の頭をポンと叩いた。
「104期新兵、アルミン・アルレルトです。」
緊張気味にアルミンが頭を下げた。
「アルミン、早速だが、怪しいヤツってのはどういうことだ?」
「はい、最初の爆弾騒ぎがあった雨の日の夜、
男の人と女の人が裏門でこっそり会っているのを見たんです。」
アルミンが真剣な顔で言った。
まっすぐな無垢な瞳に、ゲルガーは困ったように眉尻を下げた。
「あ~…、お前はまだガキだから分からねぇかもしれねぇがな。
裏門ってのは、男女がこーっそり会うのによく使われてー。」
「それが、俺もそう思ったんだけどよ、違ぇんだよ。」
ゲルガーの言葉を遮ったのはネスだった。
どういうことだと訊ねれば、またアルミンが口を開く。
「ひとりは兵団から支給されたレインコートを着ていたので兵士だと思います。
でも、雨の音が五月蠅くて、どっちが女の人か男の人かまでは分かりませんでした。」
「それで?」
「その兵団のレインコートを着ている方が、もう1人に何かを渡していたんです。」
「何かって、それは分からねぇのか?」
「僕にはー。」
兵団服に見えましたー。
自信なさそうなアルミンだったが、ゲルガーはそれは見間違いでも何でもないのだろう、と心のどこかで確信してしまった。
悔しさに拳を握りながら、ゲルガーはネスとアルミンを連れて、作戦会議室へと急いだ。
だが、なまえが帰ってきたのを見た兵士もいなければ、兵門前で見張りを担当していた調査兵は、パーティーから誰も帰ってきていないと告げた。
ゲルガーとリヴァイから遅れること数分、到着したミケによって兵舎に残っていた調査兵達はすぐに集められ、爆弾犯になまえが誘拐された可能性が高いことが伝えられた。
驚き騒然とする兵士達は、まずは簡単に捜索組と待機組に分けられ、ハンジが待機組の指揮を執ることにに決まった。
これから、捜索範囲や班編成をミケとハンジが決める。
その指示を待つ間に、私服になっていた兵士達は兵団服に着替えたり、それぞれ準備を始める。
(クソ…ッ。)
精鋭兵と今後の動きを確認し終えたゲルガーは、精鋭フロアの廊下にいた。
悔しさで握った拳で廊下の壁を殴ると、ドンッと大きな音がしたが、兵士達が右へ左へと忙しそうに走り回る慌ただしい廊下ではそれほど響きはしなかった。
ミケから爆弾犯の狙いがなまえである可能性を聞いたのは、爆弾騒ぎが起きた夜の会議の前だった。
それから、自分は会議に参加することもせず、なまえの様子を見ていた。
パーティー会場がパニックに包まれたときだって、なまえだけは視界から消えないように目を凝らしていた。
そのはずだったー。
いきなりしゃがみこんだなまえが視界から消えたわけは、あのときは分からなかったが、恐らく迷子になっていた子供を抱きかかえるためだったのだろう。
それが今さら分かっても、もう遅い。
自分はなまえを見失い、そして、なまえは兵士の格好をした誰かに連れ去られたー。
「どこに連れていきやがった…っ。」
不安と焦り、そこに混じるショックがゲルガーを苦しめていた。
仲間の中に協力者がいるー、そんな想定以上の最悪の事態に頭がおかしくなりそうだった。
ミケは、なまえを連れて行ったのが調査兵とは限らないと言った。
でもどちらにしろ、調査兵団の協力者がいなければ、兵士のフリをしてなまえを攫うことなど出来ない。
親友を巨人に奪われたなまえが屍のようになってしまったとき、先輩として助けてやれなかったことを、ゲルガーは今も心の奥でずっと悔いていた。
『何かあったらいつでもおれ達を頼ってくれ。』
初めて会ったとき、そう言ったのに、ツラいとき、何もしてやれなかった。
今度こそ、怖い思いはさせないと心に誓ったはずだったのにー。
ふがいない自分にため息を吐いたとき、上官のフロアに続く階段をおりてくるジーニーを見つけた。
まだ兵団服に着替えていないようで、私服のままだ。
みんなすぐに捜索に取り掛かかれるように急いでいるというのに、何をのんびりしているのだー。
「おい、ジーニー、そんなとこで何してんだ。」
ゲルガーに声をかけられて、ジーニーは飛び跳ねんばかりの勢いで驚いて目を見開いた。
異様に焦っているように見えるその様子に、普段は鈍感だとナナバにからかわれるゲルガーでさえも不審に思った。
「上のフロアは今、ミケ分隊長達が作戦会議中だろ。」
「あ、あの…っ、リヴァイ兵長が心配でっ。」
「リヴァイ?リヴァイも会議に出てるはずだ。
心配なら、早くなまえを見つけてやることだ。
それが一番、なまえとリヴァイのためだ。」
「…はい。」
ゲルガーの言葉に、ジーニーは不満げに眉を顰めた。
だが、乙女心どころか、不機嫌な雰囲気に気づけるほどの敏感さのないゲルガーがそれに気づくことはなかった。
「すぐに兵団服に着替えて、集合場所で待機だ。
ミケ分隊長達の会議が終わったらすぐに捜索開始だ。」
「はい。」
頭を下げて走って自分の部屋に戻っていくジーニーとすれ違いに、見慣れた顔の精鋭兵が声をかけてきた。
いつもはどちらかというとお茶らけていることの多い男だが、珍しく緊迫した表情をしている。
その後ろには、なまえと一緒にいるのをよく見かける新兵が1人ついてきていた。
「よう、ネス。どうした。」
「それが、うちの班員が少し前に怪しいヤツを見たって教えてくれてな。」
ネスはそう言うと、ついてきた新兵の頭をポンと叩いた。
「104期新兵、アルミン・アルレルトです。」
緊張気味にアルミンが頭を下げた。
「アルミン、早速だが、怪しいヤツってのはどういうことだ?」
「はい、最初の爆弾騒ぎがあった雨の日の夜、
男の人と女の人が裏門でこっそり会っているのを見たんです。」
アルミンが真剣な顔で言った。
まっすぐな無垢な瞳に、ゲルガーは困ったように眉尻を下げた。
「あ~…、お前はまだガキだから分からねぇかもしれねぇがな。
裏門ってのは、男女がこーっそり会うのによく使われてー。」
「それが、俺もそう思ったんだけどよ、違ぇんだよ。」
ゲルガーの言葉を遮ったのはネスだった。
どういうことだと訊ねれば、またアルミンが口を開く。
「ひとりは兵団から支給されたレインコートを着ていたので兵士だと思います。
でも、雨の音が五月蠅くて、どっちが女の人か男の人かまでは分かりませんでした。」
「それで?」
「その兵団のレインコートを着ている方が、もう1人に何かを渡していたんです。」
「何かって、それは分からねぇのか?」
「僕にはー。」
兵団服に見えましたー。
自信なさそうなアルミンだったが、ゲルガーはそれは見間違いでも何でもないのだろう、と心のどこかで確信してしまった。
悔しさに拳を握りながら、ゲルガーはネスとアルミンを連れて、作戦会議室へと急いだ。