◇第六十九話◇彼女の王子様は誰?
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空が夜に色づこうとしている頃、調査兵団の兵舎は騒がしくなり始めていた。
その中心人物がハンジだ。
あちこちを走り回っては、探し人の行方を訊ねていて、とうとう食事室から宿舎に戻ろうとしていたペトラの前にも現れた。
「あっ!ペトラ!!なまえ、見てないっ!?」
血相を変えて駆け寄ってきたハンジに、ペトラは驚きつつも、今日は朝から彼女のことは見ていないことを教えてやる。
ハンジはひどく焦っている様子で、ペトラになまえの居場所を聞きながらも、両目は忙しなく左右に動いていた。
「もしかして、まだ帰ってきてないんですか?」
「そうなんだよ。どこかに行くとかも聞いてない!?」
「昨日は、テュランの散歩に行きたいとは言ってましたけど…。」
「それはエルヴィンに禁止されたんだ。トロスト区から出たらダメだって。」
「もうそろそろ帰ってこないと心配ですね…。」
ペトラはチラリと空を見上げた。
そろそろ、夜空という名前で呼んでもよさそうな暗がりが訪れている。
最近は物騒だと聞くし、あまり遅くなると心配になるのは分かる。
それにしても、非番の兵士が1人まだ帰ってきていないだけで慌てすぎのような気もするがー。
確かに、心配ではある。
自分も一緒に探す、と伝え、手分けして探し始めようとしたとき、厩舎の方からナナバが走ってやってきた。
「まさか、と思って見に行ったんだけど…。
マズいよ、テュランもいない。」
ナナバは額に手を触れて、小さく頭を左右に振った。
「じゃあ、テュランと一緒にトロスト区の散歩じゃないですか?」
「誰とっ!?」
「え、1人で…?」
「ダメだよ、そんなのっ!もしなまえが1人のところを見つかったら…っ。」
「やっぱり、本人に正直に忠告しておく方がよかったのかもな。」
慌てているハンジとマズいという顔をしているナナバは、誰に見つかるのを懸念しているのか。
それを訊ねようとしたとき、と食事室の方からアルミンとジャンが並んでやってきた。
それに気づいたハンジが、誰よりも早く彼らに駆け寄っていく。
その後ろをナナバとペトラも追いかけた。
「ねぇっ!なまえを見てない!?」
血相を変えたハンジの様子に、アルミンとジャンは思わず一歩引いた。
そして、お互いに顔を見合わせた後、先に答えてくれたのはアルミンだった。
「午後の授業の前に、髪留めを買いに行くって出かけて行きましたよ。」
「髪留め?」
「テュランと広場で遊んでたら髪留めを壊されてしまったらしくて、
新しいのが欲しいからって。まだ帰ってないんですか?」
アルミンも空を見上げた後、心配そうな顔をする。
「うわぁ…、どうしよう、どうしよう、ナナバっ!!」
ハンジが泣きそうな顔をして、ナナバの両肩を掴んだ。
少し考えるような顔をして、ナナバはアルミンに訊ねる。
「テュランも一緒に買い物に行ったのかい?」
「いえ…、1人だったと思いますけど。」
「じゃあ、なんでテュランがいないんだ?」
ナナバは新たな疑問を持ってしまったようで、しきりに首を傾げだす。
そこに、ジャンが新たな情報をくれた。
「あの、俺、午後の授業の後になまえさんを見ましたよ。
テュランも一緒でした。」
「えっ!?どこでっ!?」
「忘れ物取りに行ったときだったので、宿舎の前です。
テュランも一緒だから、どこに行くんですかって聞いたら、
ウォール・ローゼの草原に散歩に行くって言ってました。」
「ウォール・ローゼ?だって、なまえは許可証持ってないんだろ、ハンジ?」
「あぁ、エルヴィンに禁止令だされたから渡してない。」
「じゃあ、どうしてですかね?」
「あー、それも、俺、聞きましたよ。なんか、一緒に行ってくれる人が
持ってるから自分は要らないんだって言ってました。」
ジャンの話を聞いたハンジとナナバから、サーッと血の気が引いていくのが見ていて分かった。
通行許可証を持ってる人って誰だろうー。
ペトラは首を傾げて、心当たりのある人物を思い浮かべる。
まずは、エルヴィン団長。分隊長クラスも出張が多いから持っているはずだ。
それとー。
「リヴァイ兵長ですかね?」
一番、あり得そうな人物の名前をペトラは口に出した。
その途端に、ハンジとナナバに血の気が戻ってきて、お互いに顔を見合わせた後、ホッと息を吐いた。
「そうだよ、リヴァイが非番だろ。今日。
リヴァイが連れてったんだよ。」
「も~~っ、すっごい焦ったじゃないかぁ~。
報告してから行ってくれよな~っ。」
ハンジとナナバは嬉しそうに笑い合う。
とりあえず、なまえと一緒にいるのがリヴァイなら安心だー。
ペトラもホッ吐息を吐いたのだけれどー。
「リヴァイ兵長じゃないと思いますよ。」
ジャンが言う。まるで確信したような言い方だ。
「なんでそう思うの?誰か聞いたの?」
「いや、俺も急いでて誰かまでは聞けなかったんですけど。
王子様がどうのって言ってたんで。
リヴァイ兵長はその…、王子様って感じではないかなって。」
ジャンは、尻しぼみに言いづらそうにしながら答えた。
でも、言いたいことは分かる気がする。
王子様というのなら、それはリヴァイではないと思うのが自然かもしれない。
でも、なまえにとっては王子様かもしれないしー。
そう思ったのは、ペトラだけではなかったようだった。
「でもさっ!リヴァイだってほら!!王子様っぽいところがあるよ!」
「あるあるっ!よーーっく見たら王子様なところがっ!!」
「あるよなっ!あれとかなっ!」
「そうそう!!それとかっ!!」
ハンジとナナバは、どうにかしてなまえと一緒にいるのはリヴァイにしたいようだった。
リヴァイの王子様っぽいところの具体例がひとつも出てこないところが、残念なところだ。
そこへ、女兵士達の楽しそうな会話が聞こえてきた。
「白馬の王子様なんて初めて見たよ~っ。まだドキドキするっ。」
「金髪がキラキラってして、手足も長くって…、あぁ、いいなぁ~。
私も後ろからギューッてされた~いっ。」
彼女達の黄色い声は、確かに王子様と呼んだ。
それは、ハンジとナナバの耳にも届いていたようで、少しずつ顔色が青くなっていった。
その中心人物がハンジだ。
あちこちを走り回っては、探し人の行方を訊ねていて、とうとう食事室から宿舎に戻ろうとしていたペトラの前にも現れた。
「あっ!ペトラ!!なまえ、見てないっ!?」
血相を変えて駆け寄ってきたハンジに、ペトラは驚きつつも、今日は朝から彼女のことは見ていないことを教えてやる。
ハンジはひどく焦っている様子で、ペトラになまえの居場所を聞きながらも、両目は忙しなく左右に動いていた。
「もしかして、まだ帰ってきてないんですか?」
「そうなんだよ。どこかに行くとかも聞いてない!?」
「昨日は、テュランの散歩に行きたいとは言ってましたけど…。」
「それはエルヴィンに禁止されたんだ。トロスト区から出たらダメだって。」
「もうそろそろ帰ってこないと心配ですね…。」
ペトラはチラリと空を見上げた。
そろそろ、夜空という名前で呼んでもよさそうな暗がりが訪れている。
最近は物騒だと聞くし、あまり遅くなると心配になるのは分かる。
それにしても、非番の兵士が1人まだ帰ってきていないだけで慌てすぎのような気もするがー。
確かに、心配ではある。
自分も一緒に探す、と伝え、手分けして探し始めようとしたとき、厩舎の方からナナバが走ってやってきた。
「まさか、と思って見に行ったんだけど…。
マズいよ、テュランもいない。」
ナナバは額に手を触れて、小さく頭を左右に振った。
「じゃあ、テュランと一緒にトロスト区の散歩じゃないですか?」
「誰とっ!?」
「え、1人で…?」
「ダメだよ、そんなのっ!もしなまえが1人のところを見つかったら…っ。」
「やっぱり、本人に正直に忠告しておく方がよかったのかもな。」
慌てているハンジとマズいという顔をしているナナバは、誰に見つかるのを懸念しているのか。
それを訊ねようとしたとき、と食事室の方からアルミンとジャンが並んでやってきた。
それに気づいたハンジが、誰よりも早く彼らに駆け寄っていく。
その後ろをナナバとペトラも追いかけた。
「ねぇっ!なまえを見てない!?」
血相を変えたハンジの様子に、アルミンとジャンは思わず一歩引いた。
そして、お互いに顔を見合わせた後、先に答えてくれたのはアルミンだった。
「午後の授業の前に、髪留めを買いに行くって出かけて行きましたよ。」
「髪留め?」
「テュランと広場で遊んでたら髪留めを壊されてしまったらしくて、
新しいのが欲しいからって。まだ帰ってないんですか?」
アルミンも空を見上げた後、心配そうな顔をする。
「うわぁ…、どうしよう、どうしよう、ナナバっ!!」
ハンジが泣きそうな顔をして、ナナバの両肩を掴んだ。
少し考えるような顔をして、ナナバはアルミンに訊ねる。
「テュランも一緒に買い物に行ったのかい?」
「いえ…、1人だったと思いますけど。」
「じゃあ、なんでテュランがいないんだ?」
ナナバは新たな疑問を持ってしまったようで、しきりに首を傾げだす。
そこに、ジャンが新たな情報をくれた。
「あの、俺、午後の授業の後になまえさんを見ましたよ。
テュランも一緒でした。」
「えっ!?どこでっ!?」
「忘れ物取りに行ったときだったので、宿舎の前です。
テュランも一緒だから、どこに行くんですかって聞いたら、
ウォール・ローゼの草原に散歩に行くって言ってました。」
「ウォール・ローゼ?だって、なまえは許可証持ってないんだろ、ハンジ?」
「あぁ、エルヴィンに禁止令だされたから渡してない。」
「じゃあ、どうしてですかね?」
「あー、それも、俺、聞きましたよ。なんか、一緒に行ってくれる人が
持ってるから自分は要らないんだって言ってました。」
ジャンの話を聞いたハンジとナナバから、サーッと血の気が引いていくのが見ていて分かった。
通行許可証を持ってる人って誰だろうー。
ペトラは首を傾げて、心当たりのある人物を思い浮かべる。
まずは、エルヴィン団長。分隊長クラスも出張が多いから持っているはずだ。
それとー。
「リヴァイ兵長ですかね?」
一番、あり得そうな人物の名前をペトラは口に出した。
その途端に、ハンジとナナバに血の気が戻ってきて、お互いに顔を見合わせた後、ホッと息を吐いた。
「そうだよ、リヴァイが非番だろ。今日。
リヴァイが連れてったんだよ。」
「も~~っ、すっごい焦ったじゃないかぁ~。
報告してから行ってくれよな~っ。」
ハンジとナナバは嬉しそうに笑い合う。
とりあえず、なまえと一緒にいるのがリヴァイなら安心だー。
ペトラもホッ吐息を吐いたのだけれどー。
「リヴァイ兵長じゃないと思いますよ。」
ジャンが言う。まるで確信したような言い方だ。
「なんでそう思うの?誰か聞いたの?」
「いや、俺も急いでて誰かまでは聞けなかったんですけど。
王子様がどうのって言ってたんで。
リヴァイ兵長はその…、王子様って感じではないかなって。」
ジャンは、尻しぼみに言いづらそうにしながら答えた。
でも、言いたいことは分かる気がする。
王子様というのなら、それはリヴァイではないと思うのが自然かもしれない。
でも、なまえにとっては王子様かもしれないしー。
そう思ったのは、ペトラだけではなかったようだった。
「でもさっ!リヴァイだってほら!!王子様っぽいところがあるよ!」
「あるあるっ!よーーっく見たら王子様なところがっ!!」
「あるよなっ!あれとかなっ!」
「そうそう!!それとかっ!!」
ハンジとナナバは、どうにかしてなまえと一緒にいるのはリヴァイにしたいようだった。
リヴァイの王子様っぽいところの具体例がひとつも出てこないところが、残念なところだ。
そこへ、女兵士達の楽しそうな会話が聞こえてきた。
「白馬の王子様なんて初めて見たよ~っ。まだドキドキするっ。」
「金髪がキラキラってして、手足も長くって…、あぁ、いいなぁ~。
私も後ろからギューッてされた~いっ。」
彼女達の黄色い声は、確かに王子様と呼んだ。
それは、ハンジとナナバの耳にも届いていたようで、少しずつ顔色が青くなっていった。