◇第四十一話◇まだそばにいたい
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大切なことを忘れていたー。
訓練の準備を放り出し、クリスタは兵舎に走りだした。
「あッ!サボるなんてズルいですよ!!」
後ろからサシャの声がしたけれど、言い訳をする暇なんてなかった。
どこから情報を持ってくるのかは知らないが、情報通のユミルが、なまえが兵団を去るのは今日の午前中だと言っていた。
急がないと、手遅れになってしまう。
「おいおいッ!どうしちまったんだよッ!?」
ユミルが追いかけてきて、驚いた顔でクリスタを見やる。
いつだって人一倍真面目なクリスタが、訓練の準備を放り出して走り出すなんてありえないと思っているのだろう。
自分だってそう思っている。
こんなのありえない。ありえないー。
「私、やっぱり、なまえさんには調査兵団にいてほしい…!」
クリスタの必死の思いに、ユミルは僅かに眉を顰める。
非難されているのが、顔を見ていないクリスタにも雰囲気で分かるほどだった。
「あの死んだ目を見ただろ。ありゃもう無理だ。
また地獄に引きずり込もうってんなら、手伝ってやってもいいぜ?
でも、一緒にまた仲良くしてぇってんなら、諦めな。」
隣を走りながらも引き留めはしないユミルは、いつも判断はクリスタに委ねる。
そして、ユミルの言うことはいつも正しい。
分かっている。
でもー。
「わかってる。私にはなまえさんの心は救えない。」
「わかってんなら、諦めて訓練所に戻ろうぜ。
早くしねぇとコニーあたりがチクッて、上官に叱られちまう。」
「ユミルだけ戻って。私は行かなくちゃいけないのっ。」
「だから、どこに行くってんだよ。」
「なまえさんを救ってくれる人、思い出したの!」
「はぁ?そんなのいないんだよ、もう。この世にはな。」
ユミルが僅かに目を伏せていった。
彼女が思い浮かべた人物と、クリスタが信じている人物はきっと同じー。
「私達の声は届かなくても、ルルさんの声ならきっと…!」
クリスタは走った。
出来る以上に速く、速く。
もしかしたら、訓練兵団にいたときの最高記録を更新してるんじゃないかと思うくらいに速く走った。
『私ね、なまえにはずっと笑っていてほしいの。』
壁外調査の前日、クリスタが最後に見たルルはそう言って微笑んだ。
生まれてきてクリスタが見た中で、最も優しい微笑みで、そんな風に想い合える親友を持った彼女達のことを羨ましく思ったくらいだ。
「は?死んだ人間の声をどうやってー。」
言いかけたユミルは、ただまっすぐに前を向いて必死に走るクリスタを見て言葉を切った。
何を考えているのかは分からないけれど、好きにさせよう。
そんなことでも思ったのか、彼女はもう何も言わなかった。
訓練の準備を放り出し、クリスタは兵舎に走りだした。
「あッ!サボるなんてズルいですよ!!」
後ろからサシャの声がしたけれど、言い訳をする暇なんてなかった。
どこから情報を持ってくるのかは知らないが、情報通のユミルが、なまえが兵団を去るのは今日の午前中だと言っていた。
急がないと、手遅れになってしまう。
「おいおいッ!どうしちまったんだよッ!?」
ユミルが追いかけてきて、驚いた顔でクリスタを見やる。
いつだって人一倍真面目なクリスタが、訓練の準備を放り出して走り出すなんてありえないと思っているのだろう。
自分だってそう思っている。
こんなのありえない。ありえないー。
「私、やっぱり、なまえさんには調査兵団にいてほしい…!」
クリスタの必死の思いに、ユミルは僅かに眉を顰める。
非難されているのが、顔を見ていないクリスタにも雰囲気で分かるほどだった。
「あの死んだ目を見ただろ。ありゃもう無理だ。
また地獄に引きずり込もうってんなら、手伝ってやってもいいぜ?
でも、一緒にまた仲良くしてぇってんなら、諦めな。」
隣を走りながらも引き留めはしないユミルは、いつも判断はクリスタに委ねる。
そして、ユミルの言うことはいつも正しい。
分かっている。
でもー。
「わかってる。私にはなまえさんの心は救えない。」
「わかってんなら、諦めて訓練所に戻ろうぜ。
早くしねぇとコニーあたりがチクッて、上官に叱られちまう。」
「ユミルだけ戻って。私は行かなくちゃいけないのっ。」
「だから、どこに行くってんだよ。」
「なまえさんを救ってくれる人、思い出したの!」
「はぁ?そんなのいないんだよ、もう。この世にはな。」
ユミルが僅かに目を伏せていった。
彼女が思い浮かべた人物と、クリスタが信じている人物はきっと同じー。
「私達の声は届かなくても、ルルさんの声ならきっと…!」
クリスタは走った。
出来る以上に速く、速く。
もしかしたら、訓練兵団にいたときの最高記録を更新してるんじゃないかと思うくらいに速く走った。
『私ね、なまえにはずっと笑っていてほしいの。』
壁外調査の前日、クリスタが最後に見たルルはそう言って微笑んだ。
生まれてきてクリスタが見た中で、最も優しい微笑みで、そんな風に想い合える親友を持った彼女達のことを羨ましく思ったくらいだ。
「は?死んだ人間の声をどうやってー。」
言いかけたユミルは、ただまっすぐに前を向いて必死に走るクリスタを見て言葉を切った。
何を考えているのかは分からないけれど、好きにさせよう。
そんなことでも思ったのか、彼女はもう何も言わなかった。