◇第三話◇存在しない兵士
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調査兵団がウォール・ローゼに帰還したときには、既に壁の穴は大きな岩によって塞がれていた。
どうしてそんなことが出来たのか、壁を塞いだ岩の前に倒れる巨人とそこにいる訓練兵は何か関係があるのか、聞きたいことは山ほどあったが、そんな暇も余裕もないことはハンジも承知していた。
今は緊急事態であり、トロスト区内に残った巨人の掃討作戦に、調査兵団の力が必要であることはよく理解している。
「ねぇ、あのコ。」
大きな岩で塞がれた穴のことも気になるが、今、ハンジの視線を独り占めしていたのは、1人の駐屯兵だった。
まだ若い女兵士だ。
男性が多い兵士の中では、女性は体格差などから目立つ存在ではある。だが、それにしても、彼女は他の兵士達と比べて一際華奢に見える。筋肉なんて全くついていないんじゃないだろうか。
立体起動装置や超硬質スチールの技術も、未熟なのがパッと見ただけで分かるほどである。
でも、そんな理由で巨人オタクのハンジの視線を独り占めになんて出来ない。
「あぁ…、心配な戦い方ですよね。」
ハンジの右腕であり、分隊副隊長であるモブリット。彼も彼女の存在に気づいていたようだ。
確かに、心配な戦い方―というのはしっくりくる気がする。
もし、自分の隊の隊員だったら、ハンジは彼女の戦い方を叱るかもしれない。
だって、今の任務はトロスト区内に残る巨人の掃討なのだ。
それなのに、彼女は、巨人を全滅させることではなく、巨人に食われそうになっている兵士達を助けることを任務だと勘違いしているようにしか見えなかった。
その結果として、巨人を討伐してはいるから、任務の役割を担っているからそれでもいいという上官もいるかもしれない。
だが、あれでは、いつ彼女の命が終わってもおかしくない。
任務どうこうとは別として、彼女のそれが、危険な戦い方、思想には違いなかった。
しかも、彼女の戦い方は一貫していて、一気にうなじを切り落とすのみに注視しているように思える。
まるで、その戦い方しか知らないみたいな―。
「まさかね。」
巨人の弱点や戦い方、果ては立体起動装置や超硬質スチールの使い方、特性を理解していない兵士なんて存在するわけがない。
ふと頭に浮かんできたありえない想像に思わず苦笑して、ハンジはまた1体の巨人を討伐する。
討伐補佐をしてくれたモブリットが、すぐに隣に並ぶ。
「後でちょっと話してみたいな~。」
「まさか、調査兵団に誘うつもりじゃないですよね。」
「エヘヘ。」
「彼女が調査兵団に入ったらすぐに死んでしまいます。」
「そこは君がうまく教育してあげてくれるだろう?」
「もう勘弁してくださいよ。そうじゃなくても、あなたのせいで仕事が溜まってー」
「アハハハ~。」
笑いながら、ハンジはアンカーを遠くへ飛ばして巨人の討伐へ向かう。
正しくは、今から自分に説教を始めかねないモブリットから逃げたのだけれど。
後ろから、モブリットの悲痛な怒りが聞こえてきて、ハンジはやっぱり笑った。
どうしてそんなことが出来たのか、壁を塞いだ岩の前に倒れる巨人とそこにいる訓練兵は何か関係があるのか、聞きたいことは山ほどあったが、そんな暇も余裕もないことはハンジも承知していた。
今は緊急事態であり、トロスト区内に残った巨人の掃討作戦に、調査兵団の力が必要であることはよく理解している。
「ねぇ、あのコ。」
大きな岩で塞がれた穴のことも気になるが、今、ハンジの視線を独り占めしていたのは、1人の駐屯兵だった。
まだ若い女兵士だ。
男性が多い兵士の中では、女性は体格差などから目立つ存在ではある。だが、それにしても、彼女は他の兵士達と比べて一際華奢に見える。筋肉なんて全くついていないんじゃないだろうか。
立体起動装置や超硬質スチールの技術も、未熟なのがパッと見ただけで分かるほどである。
でも、そんな理由で巨人オタクのハンジの視線を独り占めになんて出来ない。
「あぁ…、心配な戦い方ですよね。」
ハンジの右腕であり、分隊副隊長であるモブリット。彼も彼女の存在に気づいていたようだ。
確かに、心配な戦い方―というのはしっくりくる気がする。
もし、自分の隊の隊員だったら、ハンジは彼女の戦い方を叱るかもしれない。
だって、今の任務はトロスト区内に残る巨人の掃討なのだ。
それなのに、彼女は、巨人を全滅させることではなく、巨人に食われそうになっている兵士達を助けることを任務だと勘違いしているようにしか見えなかった。
その結果として、巨人を討伐してはいるから、任務の役割を担っているからそれでもいいという上官もいるかもしれない。
だが、あれでは、いつ彼女の命が終わってもおかしくない。
任務どうこうとは別として、彼女のそれが、危険な戦い方、思想には違いなかった。
しかも、彼女の戦い方は一貫していて、一気にうなじを切り落とすのみに注視しているように思える。
まるで、その戦い方しか知らないみたいな―。
「まさかね。」
巨人の弱点や戦い方、果ては立体起動装置や超硬質スチールの使い方、特性を理解していない兵士なんて存在するわけがない。
ふと頭に浮かんできたありえない想像に思わず苦笑して、ハンジはまた1体の巨人を討伐する。
討伐補佐をしてくれたモブリットが、すぐに隣に並ぶ。
「後でちょっと話してみたいな~。」
「まさか、調査兵団に誘うつもりじゃないですよね。」
「エヘヘ。」
「彼女が調査兵団に入ったらすぐに死んでしまいます。」
「そこは君がうまく教育してあげてくれるだろう?」
「もう勘弁してくださいよ。そうじゃなくても、あなたのせいで仕事が溜まってー」
「アハハハ~。」
笑いながら、ハンジはアンカーを遠くへ飛ばして巨人の討伐へ向かう。
正しくは、今から自分に説教を始めかねないモブリットから逃げたのだけれど。
後ろから、モブリットの悲痛な怒りが聞こえてきて、ハンジはやっぱり笑った。