◇第三十五話◇無情にも届かない手
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数日を予定していた大規模な壁外調査も今日の作戦が終われば、残すのは明日の帰還だけだ。
ミケ分隊長の分隊によってシガンシナ区までのルートもおおよその検討がつくようになり、巨人捕獲班もこれまでに2体の巨人捕獲に成功している。
ルート模索班に犠牲が出たのは確かだが、エルヴィン団長の話によれば想定よりも少ないそうだ。
「何かあったんですかね?」
今日も、私とリヴァイ兵長は待機班を残し、巨大樹の森の入口にやってきていた。
巨人も10体ほど集まってきていて、後はハンジさんが撃つ準備完了の煙弾を待ってスタートするだけなのだが、なかなかその合図が来ないのだ。
「チッ、俺が見てくる。お前はここで待ってろ。」
「巨人はどうしたらいいですか?
数体はリヴァイ兵長を追いかけますよ、きっと。」
「好きにさせとけ。おれも好きにする。」
リヴァイ兵長はそれだけ言うと、アンカーを飛ばしてエレン達が待つ広場へ向かった。
予想通り、数体がその後姿を追いかけていったが、姿が見えなくなる前に、あっという間に倒されていた。
さすが、人類最強の兵士だ。
「追いかけっこはもう少ししてからだって。」
木の上で足を投げ出して座り、私は眼下に残った巨人達に向かって言った。
残ったのは4体。
いつもならとっくに煙弾が撃たれている時間だ。きっと、作戦が遂行できないような何かが起きたのだろう。
心配だけれど、勝手な行動をとって迷惑かけるわけにはいかない。
エレン達のことは気になるが、ハンジさんもいるし、リヴァイ班の精鋭達も一緒だ。
それに、リヴァイ兵長が向かった。彼に任せていればきっと大丈夫。
(大丈夫、大丈夫。)
眼下の巨人の動きに注視しながら、そればかりを繰り返していると、後ろから立体起動のガスの音がした。
リヴァイ兵長が戻ってきたのかと思ったが、違った。
「ルル!何かあったの!?」
すぐに立ち上がり、やってきたルルに訊ねた。
「問題発生!!作戦中止!!」
私が立つ木の上に降り立ったルルはそれだけ言うと、木の幹に手を添えて息を整え出す。
かなり急いでやってきたようだ。
少し待つと、ルルが何が起こったのかを教えてくれた。
どうやら、エレンの巨人化に問題が発生したようだ。
ここ連日続いていた巨人化によって、エレンの身体が限界を迎えていたようで、いつもなら15m級の巨人になれるところを7m程にしかなれず、しかも、巨人化したにもかかわらずエレンの下半身がうなじからむき出しになっていたらしい。
なかなか興味深い状態だ。見てみたいと思ってしまったことは、ここは黙っておくことにする。
なんだか、ただ事ではないようだしー。
「そもそもなんでエレンが巨人化したの?
巨人化は私達が来るまでしないって約束だったのに。」
私は、最初に抱いた疑問を訊ねた。
「それが分かんないの。」
「分かんない?」
「たぶん、エレンが意識してないで巨人化したんだろうって、ハンジさんは言ってたよ。
前にも実験のときにこんなことがあったらしい。」
想定外というわけでもなく、ハンジさんも把握していた状況ということのようだ。
それなら、そこまで焦るようなことではないのではないかとも思ったが、それについてもすぐにルルが説明してくれた。
これもおそらく連日続いた巨人化の影響だと思われるが、エレンの身体が巨人化した身体とキツく繋がってしまったらしい。
今、ハンジさんとモブリットさん達が必死に引き剥がしているがなかなか剥がれず、さらにそこに巨人化したエレンに引き寄せられたのか多数の巨人が襲来。
エレンのことはハンジ班に任せ、リヴァイ班が巨人の討伐をしているということだった。
「急にエレンが巨人化して、みんな動揺しちゃって煙弾送れなかったの。
ごめんね。今、リヴァイ兵長も一緒に巨人討伐してくれてる。
私は、なまえへの報告と支援をリヴァイ兵長に指示されて、やって参りました!」
冗談っぽく敬礼ポーズをしたルルが、ニッと笑った。
このまま作戦中止になって、リヴァイ兵長も戻ってこなかったら、4体残った巨人をどうしようか、と心配していたのだ。
ルルが来てくれたのなら心強い。
ミケ分隊長の分隊によってシガンシナ区までのルートもおおよその検討がつくようになり、巨人捕獲班もこれまでに2体の巨人捕獲に成功している。
ルート模索班に犠牲が出たのは確かだが、エルヴィン団長の話によれば想定よりも少ないそうだ。
「何かあったんですかね?」
今日も、私とリヴァイ兵長は待機班を残し、巨大樹の森の入口にやってきていた。
巨人も10体ほど集まってきていて、後はハンジさんが撃つ準備完了の煙弾を待ってスタートするだけなのだが、なかなかその合図が来ないのだ。
「チッ、俺が見てくる。お前はここで待ってろ。」
「巨人はどうしたらいいですか?
数体はリヴァイ兵長を追いかけますよ、きっと。」
「好きにさせとけ。おれも好きにする。」
リヴァイ兵長はそれだけ言うと、アンカーを飛ばしてエレン達が待つ広場へ向かった。
予想通り、数体がその後姿を追いかけていったが、姿が見えなくなる前に、あっという間に倒されていた。
さすが、人類最強の兵士だ。
「追いかけっこはもう少ししてからだって。」
木の上で足を投げ出して座り、私は眼下に残った巨人達に向かって言った。
残ったのは4体。
いつもならとっくに煙弾が撃たれている時間だ。きっと、作戦が遂行できないような何かが起きたのだろう。
心配だけれど、勝手な行動をとって迷惑かけるわけにはいかない。
エレン達のことは気になるが、ハンジさんもいるし、リヴァイ班の精鋭達も一緒だ。
それに、リヴァイ兵長が向かった。彼に任せていればきっと大丈夫。
(大丈夫、大丈夫。)
眼下の巨人の動きに注視しながら、そればかりを繰り返していると、後ろから立体起動のガスの音がした。
リヴァイ兵長が戻ってきたのかと思ったが、違った。
「ルル!何かあったの!?」
すぐに立ち上がり、やってきたルルに訊ねた。
「問題発生!!作戦中止!!」
私が立つ木の上に降り立ったルルはそれだけ言うと、木の幹に手を添えて息を整え出す。
かなり急いでやってきたようだ。
少し待つと、ルルが何が起こったのかを教えてくれた。
どうやら、エレンの巨人化に問題が発生したようだ。
ここ連日続いていた巨人化によって、エレンの身体が限界を迎えていたようで、いつもなら15m級の巨人になれるところを7m程にしかなれず、しかも、巨人化したにもかかわらずエレンの下半身がうなじからむき出しになっていたらしい。
なかなか興味深い状態だ。見てみたいと思ってしまったことは、ここは黙っておくことにする。
なんだか、ただ事ではないようだしー。
「そもそもなんでエレンが巨人化したの?
巨人化は私達が来るまでしないって約束だったのに。」
私は、最初に抱いた疑問を訊ねた。
「それが分かんないの。」
「分かんない?」
「たぶん、エレンが意識してないで巨人化したんだろうって、ハンジさんは言ってたよ。
前にも実験のときにこんなことがあったらしい。」
想定外というわけでもなく、ハンジさんも把握していた状況ということのようだ。
それなら、そこまで焦るようなことではないのではないかとも思ったが、それについてもすぐにルルが説明してくれた。
これもおそらく連日続いた巨人化の影響だと思われるが、エレンの身体が巨人化した身体とキツく繋がってしまったらしい。
今、ハンジさんとモブリットさん達が必死に引き剥がしているがなかなか剥がれず、さらにそこに巨人化したエレンに引き寄せられたのか多数の巨人が襲来。
エレンのことはハンジ班に任せ、リヴァイ班が巨人の討伐をしているということだった。
「急にエレンが巨人化して、みんな動揺しちゃって煙弾送れなかったの。
ごめんね。今、リヴァイ兵長も一緒に巨人討伐してくれてる。
私は、なまえへの報告と支援をリヴァイ兵長に指示されて、やって参りました!」
冗談っぽく敬礼ポーズをしたルルが、ニッと笑った。
このまま作戦中止になって、リヴァイ兵長も戻ってこなかったら、4体残った巨人をどうしようか、と心配していたのだ。
ルルが来てくれたのなら心強い。