◇第三十四話◇友人達の強さ
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
巨大樹の森へ向かう道中、私は巨人捕獲用ネットと一緒に荷馬車の上に乗っていた。
他の兵士と比べて大幅に体力が劣るため、体力温存のために馬上を避けたというのもあるけれど、そもそも私には馬がない。
「テュランも来たがったんじゃないの?」
荷馬車と並走して自分の馬を走らせ、一緒に荷馬車の上に乗っていたペトラが訊ねる。
彼女の場合は、私が勝手な行動をとらないよう見張りをハンジさんに頼まれたのが荷馬車に乗っている理由だ。
「大丈夫。嬉しそうにミケ分隊長についていったから。」
「え!?シガンシナ区ルート模索班についていっちゃったの!?」
ペトラが驚くのも無理はない。
きっと、拠点である大聖堂でお留守番だと思っていたのだろう。
「ハンジさんが、行ってこーい!て豪快に背中押してた。」
「あぁ…、強制的に巨人捕獲作戦から追い出したのね。」
「可哀想に、テュラン…。」
「仕方ないよ…。テュランがいたら、きっとエレンより先に巨人を捕獲しちゃう。」
さすがにそれはないと思うけれど、邪魔はするかもしれない。
でも、どうやらペトラは本気でそう思っているらしい。
私とテュランの付き合いは短いけれど、それなりに長く調査兵団に在籍しているペトラは、テュランの悪名を見てきたのかもしれない。
「緊張する?」
「ふふ、なんか壁外調査の前日みたいだね。」
私が小さく笑うと、ペトラも、そうだねと笑った。
でも、違うのは、私たちが本当に笑い合っていることだ。
仲直り出来て、本当に良かった。
あの日、ペトラのお願いを受け止めてよかったんだ。
本当はリヴァイ兵長への想いを引きずっているのに、ペトラがリヴァイ兵長に告白することを心から応援は出来ないくせに、平気だと嘘を吐いてしまったけれど、結果としてはあれでよかったんだ。
「少しは緊張感残しておかないと、危険な任務である事実は変わらないんだからね。
気を付けて、しっかりリヴァイ兵長の指示に従って。」
「了解です。」
先輩兵士らしいペトラの言葉に、私も真面目に頷いた。
気を抜いたら命を奪われるーそういう任務に、私たちは就いている。
「着いたらすぐに作戦だから、今のうちに言っておいてもいいかな。」
「何?」
遠くに見えてきた巨大樹の森に奪われていた意識をペトラに移した。
彼女もまた、巨大樹の森を見据えていたけれど、その横顔は、とても大切なことを今から話そうとしているような、そんな表情をしていて、私も身構える。
「作戦が開始されたら、私達に命の保障はないの。」
「うん。分かってる。」
「明日の命があるか分からない私達だから、
今の自分に嘘をつきたくない。」
ペトラはそう言うと、私の方を向いた。
大きな真っすぐな瞳に、私はまた、壁外調査前日の夜を思い出していた。
「私、リヴァイ兵長のこと、諦めないから。」
真正面から向けられる彼女の決意。
そう決めるまで、きっとたくさんの葛藤があったのだろうと思えば思うほど、私は何も言えなくなる。
「なまえは?」
「え?」
「応援してくれる?」
私をまっすぐに見る大きくて綺麗な瞳。
その向こう、少し離れたところにリヴァイ兵長の黒馬が見えた。風になびく自由の翼もー。
一瞬、リヴァイ兵長のことを諦めないのかと聞かれたのかと思った。
ペトラは、知るはずないのに。
私が嘘をついているから、知らないのに。
「うん、応援するよ。」
私はまた、嘘を吐いた。
でも、もう少ししたら嘘ではなくなるはずだから。
私は、リヴァイ兵長への気持ちを殺すから。
だから、私は嘘はついてない。
でも、どうして、私はペトラの綺麗な瞳から目を反らしたんだろう。
「そっか。ありがとう。」
耳に届いたペトラの声に、胸が締め付けられた。
分かってる。
友人のためなんて言って、友人のせいにして、私は逃げたんだ。
苦しいから。
誰かを好きでいるのは、届かない誰かに手を伸ばし続けるのはヒドく寂しいから。
だから、苦しい恋に立ち向かおうとするペトラの強さが、私には眩しくて、自分がもっと惨めに見えて、だからー。
「ごめんね。」
誰にも聞こえない小さな謝罪の言葉。
一体、誰に言ったんだろう。
嘘を吐いたペトラかな、それとも、情けない私のせいで苦しみのまま死んでいく恋心にかなー。
他の兵士と比べて大幅に体力が劣るため、体力温存のために馬上を避けたというのもあるけれど、そもそも私には馬がない。
「テュランも来たがったんじゃないの?」
荷馬車と並走して自分の馬を走らせ、一緒に荷馬車の上に乗っていたペトラが訊ねる。
彼女の場合は、私が勝手な行動をとらないよう見張りをハンジさんに頼まれたのが荷馬車に乗っている理由だ。
「大丈夫。嬉しそうにミケ分隊長についていったから。」
「え!?シガンシナ区ルート模索班についていっちゃったの!?」
ペトラが驚くのも無理はない。
きっと、拠点である大聖堂でお留守番だと思っていたのだろう。
「ハンジさんが、行ってこーい!て豪快に背中押してた。」
「あぁ…、強制的に巨人捕獲作戦から追い出したのね。」
「可哀想に、テュラン…。」
「仕方ないよ…。テュランがいたら、きっとエレンより先に巨人を捕獲しちゃう。」
さすがにそれはないと思うけれど、邪魔はするかもしれない。
でも、どうやらペトラは本気でそう思っているらしい。
私とテュランの付き合いは短いけれど、それなりに長く調査兵団に在籍しているペトラは、テュランの悪名を見てきたのかもしれない。
「緊張する?」
「ふふ、なんか壁外調査の前日みたいだね。」
私が小さく笑うと、ペトラも、そうだねと笑った。
でも、違うのは、私たちが本当に笑い合っていることだ。
仲直り出来て、本当に良かった。
あの日、ペトラのお願いを受け止めてよかったんだ。
本当はリヴァイ兵長への想いを引きずっているのに、ペトラがリヴァイ兵長に告白することを心から応援は出来ないくせに、平気だと嘘を吐いてしまったけれど、結果としてはあれでよかったんだ。
「少しは緊張感残しておかないと、危険な任務である事実は変わらないんだからね。
気を付けて、しっかりリヴァイ兵長の指示に従って。」
「了解です。」
先輩兵士らしいペトラの言葉に、私も真面目に頷いた。
気を抜いたら命を奪われるーそういう任務に、私たちは就いている。
「着いたらすぐに作戦だから、今のうちに言っておいてもいいかな。」
「何?」
遠くに見えてきた巨大樹の森に奪われていた意識をペトラに移した。
彼女もまた、巨大樹の森を見据えていたけれど、その横顔は、とても大切なことを今から話そうとしているような、そんな表情をしていて、私も身構える。
「作戦が開始されたら、私達に命の保障はないの。」
「うん。分かってる。」
「明日の命があるか分からない私達だから、
今の自分に嘘をつきたくない。」
ペトラはそう言うと、私の方を向いた。
大きな真っすぐな瞳に、私はまた、壁外調査前日の夜を思い出していた。
「私、リヴァイ兵長のこと、諦めないから。」
真正面から向けられる彼女の決意。
そう決めるまで、きっとたくさんの葛藤があったのだろうと思えば思うほど、私は何も言えなくなる。
「なまえは?」
「え?」
「応援してくれる?」
私をまっすぐに見る大きくて綺麗な瞳。
その向こう、少し離れたところにリヴァイ兵長の黒馬が見えた。風になびく自由の翼もー。
一瞬、リヴァイ兵長のことを諦めないのかと聞かれたのかと思った。
ペトラは、知るはずないのに。
私が嘘をついているから、知らないのに。
「うん、応援するよ。」
私はまた、嘘を吐いた。
でも、もう少ししたら嘘ではなくなるはずだから。
私は、リヴァイ兵長への気持ちを殺すから。
だから、私は嘘はついてない。
でも、どうして、私はペトラの綺麗な瞳から目を反らしたんだろう。
「そっか。ありがとう。」
耳に届いたペトラの声に、胸が締め付けられた。
分かってる。
友人のためなんて言って、友人のせいにして、私は逃げたんだ。
苦しいから。
誰かを好きでいるのは、届かない誰かに手を伸ばし続けるのはヒドく寂しいから。
だから、苦しい恋に立ち向かおうとするペトラの強さが、私には眩しくて、自分がもっと惨めに見えて、だからー。
「ごめんね。」
誰にも聞こえない小さな謝罪の言葉。
一体、誰に言ったんだろう。
嘘を吐いたペトラかな、それとも、情けない私のせいで苦しみのまま死んでいく恋心にかなー。