◇第二十九話◇相応しいパートナー
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壁外調査目前のこの日、旧調査兵団本部の会議室では上官達が集まって作戦会議が開かれていた。
緊急で新兵の参加が中止されたことを受け、各分隊の隊長らの班編成の変更等の報告も含め、会議は粛々と進められていく。
そんな中、私はただひたすら居心地の悪さを感じていた。
(どうして、私が呼ばれてしまったんだろう…。)
何の説明もなく会議室に連れてきて、自分の隣に座らせたハンジさんは、エレンの巨人化実験の報告が楽しー、忙しそうで、チラチラと送る私の視線に全く気付いてくれない。
モブリットさんも、興奮状態のハンジさんを宥めるので精一杯のようだ。
なぜここにいるのかだけでも教えてもらえれば、気持ちは落ち着くのにー。
仕方がなく、私は配られた書類を手に取った。
そこには、当然、今回の壁外調査の作戦内容がびっしりと書かれている。
作戦は2つ。
カラネス区からシガンシナ区までのルートの模索、及びそれに伴う中間拠点の設置。
そして、巨人化したエレンによる巨人捕獲作戦だ。
巨人化したエレンによる巨人捕獲作戦は、リヴァイ班が担当するのだろう。
おそらく、そこにハンジさん達の班もつきっきりになると思われる。
私はきっと、ルート模索か中間拠点の設置だろう。
ルート模索は巨人との遭遇が多くなりそうだし、中間拠点の設置は知識がないので難しそう。
まぁ、どちらになるにしろ、ハンジさんやモブリットさんと同じ班ではなさそうだ。
(あれ?)
各分隊の班編成のページで気になることを見つけた。
兵団の中で一番小規模である調査兵団ではあるが、それにしても班編成に載っている人数が少ない気がする。
それも、すべての分隊が同じように本来の人数よりも少なく記載されている。
だが、そのことについてエルヴィン団長から指摘があることもなく、隊長達が何か言及するわけでもない。
(私が考えても意味ないか。)
文字がたくさん並ぶ書類を見るのは、すぐに面倒になり、私は暇つぶしに会議に参加する面々を眺め始めた。
中央に座るのは、調査兵団の団長エルヴィン・スミス。その脇を固めるのは、リヴァイ兵長と我らが分隊長のハンジ・ゾエ。そこから、ハンジさんの隣に座る私を除き、ミケ分隊長ら分隊の隊長達がズラーッと並んで座る。
ミケ分隊長の両脇には、ナナバさんとゲルガーさんもいる。
こうして眺めてみていると、圧巻だ。
彼らが、調査兵団という組織を育て、守り続けた人達なのか。
(真面目に会議に参加するんだな。)
意外だったのは、リヴァイ兵長だった。
ペトラが、リヴァイ兵長は地下都市出身で、若い頃は有名なゴロツキだったと言っていた。
座って書類を眺めて意見を交わし合う会議をしているイメージなんてなかったが、しっかりと参加している。
書類を眺めるために伏し目がちになる切れ長の目とか、書類を持つ細くて綺麗な手、横顔がすごく魅力的でー。
(別に、私が胸キュンしたわけじゃないのよ。)
小さく頭を振って、余計な思考を吹き飛ばす。
ただ、ペトラはこういう姿のリヴァイ兵長もきっと好きだろうなぁと思っただけ。
それだけだ。
あれから、リヴァイ班との訓練に合流し始めた私は、たぶん、訓練も終わらせた恋もちゃんとやれてると思う。
恋の応援をしたいと言ったものの、それは一体どうしたらいいのか分からず、2人でいるところをもう二度と邪魔しないようにするくらいしか出来ていないけれど。
頼まれていない恋の応援って、何をすればいいんだろう。
ハンジさんは知識が豊富だけど、きっとそういうことは疎そうだから相談できないし。
モブリットさんは、あまり役に立たなそうだ。
だって、ハンジさんに万年片想いってイメージだしー。
(あ。)
リヴァイ兵長と目が合った。
私の手元にある書類の方を見て、何かを訴えている。
何だろう。
首を傾げる私に、リヴァイ兵長の目つきが険しくなる。
マズい。怒っている。
意味が分からないまま、目で訴えられた通りに手元にある書類に視線を落とす。
そういえば、今、どのページについて話してるんだっけ。
ページをめくっていると、背中に大きな衝撃を受けた。
「ということで、なまえ、よろしくねっ。」
突然、私の背中を叩いたハンジさんは、満足気にニシシと笑っている。
その隣で、モブリットさんが心配そうに私を見る。
いや、モブリットさんだけではない。
目が怒っているリヴァイ兵長を除いて、他のメンバーがみんな、不安そうに私を見ているではないか。
(…ハンジさん、あなた一体、私に何をよろしくしたの…。)
マズい。聞いていなかった。
でも、マズいことをよろしくされたのは雰囲気で分かった。
どうしよう。
何を頼まれたのか分からないから、はいとも言えないし、今さら、話を聞いていなかったとも言えないー。
いろいろと、マズい。
「チッ。」
リヴァイ兵長に舌打ちをされて、本当に終わったーと思った。
「おれは反対だ。」
リヴァイ兵長はそう言って、書類をテーブルの上に投げて置いた。
「どうして?なまえの実力なら、リヴァイもよく知ってるだろう?
この子なら絶対にリヴァイと一緒に、エレンに寄ってくる巨人を討伐できるよ。」
「え?!」
私の肩に手を回し、ハンジさんは自信満々に宣言した。
今、何を言われたか。
ミケ分隊長達が不安そうに私を見ている理由とか、なんとなく、状況を理解してきた気がする。
私は慌てて書類のページをめくり始める。
「あぁ、そうだ。なまえは自分に寄ってくる巨人なら討伐出来るだろう。
だが、壁外では想定外が起きる。経験が足りねぇ。」
「最初は誰だって経験はないものだろ?
何より、エレンに巨人捕獲に集中してもらうためには
絶対に巨人をエレンに近づけたくないんだ。」
「それなら、ペトラでもオルオでも他に的確な配置のやつがいるだろ。
なまえは、何より体力がねぇ。
エレンが巨人を捕獲できるまで、なまえの体力が持つとは思えねぇな。」
「それは、すぐにエレンが巨人を捕獲できれば大丈夫だろう?
そうなるように、私たちがしっかりサポートするさ。」
「トロスト区で巨人化したエレンが大岩で穴を塞ぐ間、
巨人が寄って行ったと報告があったんだよな、エルヴィン。」
「あぁ、そうだ。駐屯兵には目もくれずに
巨人化したエレンに多数の巨人が引き寄せられたそうだ。」
「その巨人を倒すのに駐屯兵は何人死んだ。」
「ミカサとアルミン、駐屯兵の精鋭班を数名残し、
ほとんど全員が勇敢な死を迎えたとリコ・ブレツェンスカから報告を受けている。」
「だそうだ。お前は、なまえにもその勇敢な死ってのを迎えさせる気か。」
「そうじゃないよ。そこは私達もサポートするしー。」
書類のページを必死にめくる私の頭上で、聞くのも恐ろしい意見交換が行われている。
ちょっと、待ってほしい。
私は、ルート模索班や拠点設置班に配置されるんじゃなかったのか。
巨人化したエレンによる巨人捕獲作戦に参加するのか。
しかも、話を聞いている限り、私が配置されるのは、リヴァイ兵長と同じ最も危険な役目ー。
(あった…!)
ようやく、書類上に私の名前を見つけた。
リヴァイ兵長の隣に並ぶ私の名前と、そこに記載されている任務内容を読んでー。
驚くとか、ビックリとか、頭真っ白とか、そんなもの通り越して、ただただ、読んでしまったことを後悔した。
「モブリットさんっ!」
泣きそうな顔で、私はモブリットさんに助けを求めた。
でも、無念そうに首を横に振られてしまう。
諦めろと、諦めろと言うのか。
私は命を、諦めろと。
「ね、なまえっ!君なら、大丈夫だよねっ!」
私の肩にポンッと手を乗せて、ハンジさんは無邪気な笑みをくれた。
思い出した。
この人は、巨人オタクの奇行種で悪魔だったー。
緊急で新兵の参加が中止されたことを受け、各分隊の隊長らの班編成の変更等の報告も含め、会議は粛々と進められていく。
そんな中、私はただひたすら居心地の悪さを感じていた。
(どうして、私が呼ばれてしまったんだろう…。)
何の説明もなく会議室に連れてきて、自分の隣に座らせたハンジさんは、エレンの巨人化実験の報告が楽しー、忙しそうで、チラチラと送る私の視線に全く気付いてくれない。
モブリットさんも、興奮状態のハンジさんを宥めるので精一杯のようだ。
なぜここにいるのかだけでも教えてもらえれば、気持ちは落ち着くのにー。
仕方がなく、私は配られた書類を手に取った。
そこには、当然、今回の壁外調査の作戦内容がびっしりと書かれている。
作戦は2つ。
カラネス区からシガンシナ区までのルートの模索、及びそれに伴う中間拠点の設置。
そして、巨人化したエレンによる巨人捕獲作戦だ。
巨人化したエレンによる巨人捕獲作戦は、リヴァイ班が担当するのだろう。
おそらく、そこにハンジさん達の班もつきっきりになると思われる。
私はきっと、ルート模索か中間拠点の設置だろう。
ルート模索は巨人との遭遇が多くなりそうだし、中間拠点の設置は知識がないので難しそう。
まぁ、どちらになるにしろ、ハンジさんやモブリットさんと同じ班ではなさそうだ。
(あれ?)
各分隊の班編成のページで気になることを見つけた。
兵団の中で一番小規模である調査兵団ではあるが、それにしても班編成に載っている人数が少ない気がする。
それも、すべての分隊が同じように本来の人数よりも少なく記載されている。
だが、そのことについてエルヴィン団長から指摘があることもなく、隊長達が何か言及するわけでもない。
(私が考えても意味ないか。)
文字がたくさん並ぶ書類を見るのは、すぐに面倒になり、私は暇つぶしに会議に参加する面々を眺め始めた。
中央に座るのは、調査兵団の団長エルヴィン・スミス。その脇を固めるのは、リヴァイ兵長と我らが分隊長のハンジ・ゾエ。そこから、ハンジさんの隣に座る私を除き、ミケ分隊長ら分隊の隊長達がズラーッと並んで座る。
ミケ分隊長の両脇には、ナナバさんとゲルガーさんもいる。
こうして眺めてみていると、圧巻だ。
彼らが、調査兵団という組織を育て、守り続けた人達なのか。
(真面目に会議に参加するんだな。)
意外だったのは、リヴァイ兵長だった。
ペトラが、リヴァイ兵長は地下都市出身で、若い頃は有名なゴロツキだったと言っていた。
座って書類を眺めて意見を交わし合う会議をしているイメージなんてなかったが、しっかりと参加している。
書類を眺めるために伏し目がちになる切れ長の目とか、書類を持つ細くて綺麗な手、横顔がすごく魅力的でー。
(別に、私が胸キュンしたわけじゃないのよ。)
小さく頭を振って、余計な思考を吹き飛ばす。
ただ、ペトラはこういう姿のリヴァイ兵長もきっと好きだろうなぁと思っただけ。
それだけだ。
あれから、リヴァイ班との訓練に合流し始めた私は、たぶん、訓練も終わらせた恋もちゃんとやれてると思う。
恋の応援をしたいと言ったものの、それは一体どうしたらいいのか分からず、2人でいるところをもう二度と邪魔しないようにするくらいしか出来ていないけれど。
頼まれていない恋の応援って、何をすればいいんだろう。
ハンジさんは知識が豊富だけど、きっとそういうことは疎そうだから相談できないし。
モブリットさんは、あまり役に立たなそうだ。
だって、ハンジさんに万年片想いってイメージだしー。
(あ。)
リヴァイ兵長と目が合った。
私の手元にある書類の方を見て、何かを訴えている。
何だろう。
首を傾げる私に、リヴァイ兵長の目つきが険しくなる。
マズい。怒っている。
意味が分からないまま、目で訴えられた通りに手元にある書類に視線を落とす。
そういえば、今、どのページについて話してるんだっけ。
ページをめくっていると、背中に大きな衝撃を受けた。
「ということで、なまえ、よろしくねっ。」
突然、私の背中を叩いたハンジさんは、満足気にニシシと笑っている。
その隣で、モブリットさんが心配そうに私を見る。
いや、モブリットさんだけではない。
目が怒っているリヴァイ兵長を除いて、他のメンバーがみんな、不安そうに私を見ているではないか。
(…ハンジさん、あなた一体、私に何をよろしくしたの…。)
マズい。聞いていなかった。
でも、マズいことをよろしくされたのは雰囲気で分かった。
どうしよう。
何を頼まれたのか分からないから、はいとも言えないし、今さら、話を聞いていなかったとも言えないー。
いろいろと、マズい。
「チッ。」
リヴァイ兵長に舌打ちをされて、本当に終わったーと思った。
「おれは反対だ。」
リヴァイ兵長はそう言って、書類をテーブルの上に投げて置いた。
「どうして?なまえの実力なら、リヴァイもよく知ってるだろう?
この子なら絶対にリヴァイと一緒に、エレンに寄ってくる巨人を討伐できるよ。」
「え?!」
私の肩に手を回し、ハンジさんは自信満々に宣言した。
今、何を言われたか。
ミケ分隊長達が不安そうに私を見ている理由とか、なんとなく、状況を理解してきた気がする。
私は慌てて書類のページをめくり始める。
「あぁ、そうだ。なまえは自分に寄ってくる巨人なら討伐出来るだろう。
だが、壁外では想定外が起きる。経験が足りねぇ。」
「最初は誰だって経験はないものだろ?
何より、エレンに巨人捕獲に集中してもらうためには
絶対に巨人をエレンに近づけたくないんだ。」
「それなら、ペトラでもオルオでも他に的確な配置のやつがいるだろ。
なまえは、何より体力がねぇ。
エレンが巨人を捕獲できるまで、なまえの体力が持つとは思えねぇな。」
「それは、すぐにエレンが巨人を捕獲できれば大丈夫だろう?
そうなるように、私たちがしっかりサポートするさ。」
「トロスト区で巨人化したエレンが大岩で穴を塞ぐ間、
巨人が寄って行ったと報告があったんだよな、エルヴィン。」
「あぁ、そうだ。駐屯兵には目もくれずに
巨人化したエレンに多数の巨人が引き寄せられたそうだ。」
「その巨人を倒すのに駐屯兵は何人死んだ。」
「ミカサとアルミン、駐屯兵の精鋭班を数名残し、
ほとんど全員が勇敢な死を迎えたとリコ・ブレツェンスカから報告を受けている。」
「だそうだ。お前は、なまえにもその勇敢な死ってのを迎えさせる気か。」
「そうじゃないよ。そこは私達もサポートするしー。」
書類のページを必死にめくる私の頭上で、聞くのも恐ろしい意見交換が行われている。
ちょっと、待ってほしい。
私は、ルート模索班や拠点設置班に配置されるんじゃなかったのか。
巨人化したエレンによる巨人捕獲作戦に参加するのか。
しかも、話を聞いている限り、私が配置されるのは、リヴァイ兵長と同じ最も危険な役目ー。
(あった…!)
ようやく、書類上に私の名前を見つけた。
リヴァイ兵長の隣に並ぶ私の名前と、そこに記載されている任務内容を読んでー。
驚くとか、ビックリとか、頭真っ白とか、そんなもの通り越して、ただただ、読んでしまったことを後悔した。
「モブリットさんっ!」
泣きそうな顔で、私はモブリットさんに助けを求めた。
でも、無念そうに首を横に振られてしまう。
諦めろと、諦めろと言うのか。
私は命を、諦めろと。
「ね、なまえっ!君なら、大丈夫だよねっ!」
私の肩にポンッと手を乗せて、ハンジさんは無邪気な笑みをくれた。
思い出した。
この人は、巨人オタクの奇行種で悪魔だったー。