◇第二十八話◇友人の応援
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パンを4つ入れた紙袋を持って、私は兵舎の門をくぐった。
今日は早めに昼食をとったせいか、お腹がキュルキュルと悲しそうに泣いている。
「あれ、出かけてたの?」
宿舎に入ってすぐに声をかけてきたのはペトラだった。
シャワーを浴びて部屋に戻るところだったようだ。
「散歩から帰ってきたら、私の取り分なくなっててね。
これを買ってきたところ。」
私は紙袋を持つ手を上げて見せた。
サシャへの怒りが込み上げてくる。
確かに、散歩から帰るのが遅くなった。
でも、まだ夜と呼ぶには早い時間だったし、少し食堂に行くのに遅れただけだ。
それなのに、私が行ったときには、もうパンは1つも残っていなかった。
私のために残っていたはずのパンも含め、すべてをサシャがたいらげたせいだ。
ストヘス区へ出向していたことを知っていた新兵達は、まだ私が帰ってきていないと思ったらしい。
悪気はなかったのだろうが、食堂にやってきた私を見た途端に脱兎のごとく逃げ去ったサシャが、どうしても確信犯に思えて仕方がないのだ。
「アハハ、サシャらしい。」
恨み節を聞いて、ペトラがおかしそうに笑う。
談話室へ紅茶を作りに行こうとも思っていたことを話すと、一緒に行くと言うので話しながら向かうことになった。
訓練のことや壁外調査のこと、私がテュランに置いてきぼりにされたこと、オルオがまた舌を噛んだことを面白おかしく話ていれば、あっという間に談話室に着いてしまった。
今夜も日頃の疲れを癒したい調査兵達が、お喋りやちょっとした遊戯を楽しんでいる。
「これ、この前、ティーカップ割って迷惑かけちゃったときのお詫びも込めて。
好きなのをもらってくれるかな?」
淹れたての紅茶をテーブルの上に置いた私は、紙袋を広げて中が見えるようにしてペトラの前に出した。
驚いた後、気を遣わなくていいというペトラに、お詫びをすると約束したからと言えば、嬉しそうにお礼を言われた。
こういう素直なところが、ペトラの可愛いところだと思う。素直に受け止めてくれるから、こっちも嬉しくなる。
「じゃあ~、ん~、どれも美味しそうだなぁ…。
これにしようかなっ。」
「オッケ~。」
ペトラがパンを選んだのを確認してキッチンに入った私は、皿を3枚用意して戻った。
ペトラの前に置いた皿の上にペトラが選んだパンを乗せて、あとの2皿には残りのパンを1つと2つに分けて乗せた。
トレイの上に皿を並べた後、淹れたての紅茶も同じように、1つはペトラの前に置いて、残りの2つはそれぞれのトレイに乗せた。
「もう1つはルル?」
「ううん、リヴァイ兵長に持っていこうと思ってね。」
「兵長に?」
「私のせいでリヴァイ兵長も帰りが遅くなっちゃったから。
それで食事までなかったら、申し訳なくて。」
「リヴァイ兵長も一緒だったの?」
「カラネス区偵察の帰りだったらしくて、偶々会ったの。」
トレイの準備が終わり、慎重に持ち上げようとして、キッチンでの勘違いについて思い出した。
ペトラに話したら、きっと、変な勘違いだと可笑しそうに笑ってくれると思った。
「この前、キッチンでティーカップ割ったとき、実はね。
リヴァイ兵長がペトラにキスしようとしてるのかと思っちゃったの。」
「え?」
驚くペトラが嬉しくて、私は饒舌に口を滑らせ続ける。
「恋人なのかと思って驚いたよ~。
ペトラの目に入ったゴミをとってあげてたんだってね。」
「リヴァイ兵長がそう言ったの?」
「怖い顔で睨まれちゃった。
変な勘違いする暇あるなら、せいぜい死なないように訓練に励めってさ。」
至極楽しそうに笑う私は、ペトラの目が徐々に伏せられていくことに気づかなかった。
この時、ペトラはどんな気持ちで私の話を聞いていたんだろう。
「………じゃないよ。」
「ん?」
「勘違いじゃない。キス、しようとしてたんだよ。」
ペトラは目を伏せていて、いつもよりも少し低めのその声は聞き取りづらかった。
でも、何を言ったのか分からなかったわけじゃない。
「え?」
驚いた顔をした私を見て、ペトラはハッとした様子で、笑って誤魔かした。
「冗談、冗談っ!もう変な勘違いやめてよ~。」
必死に笑うペトラは、泣いているように見えた。
私のものじゃない胸の痛みが、伝染したみたいに私の胸も痛くなってー。
特別、鈍感でもないと思うけど、敏感でもない私でも、気が付いてしまった。
ペトラの気持ちー。
「なんだ、そっか。ビックリしたよ~。」
私は、うまく笑えていただろうか。
私達は、うまく笑えてるように見えていただろうか。
今日は早めに昼食をとったせいか、お腹がキュルキュルと悲しそうに泣いている。
「あれ、出かけてたの?」
宿舎に入ってすぐに声をかけてきたのはペトラだった。
シャワーを浴びて部屋に戻るところだったようだ。
「散歩から帰ってきたら、私の取り分なくなっててね。
これを買ってきたところ。」
私は紙袋を持つ手を上げて見せた。
サシャへの怒りが込み上げてくる。
確かに、散歩から帰るのが遅くなった。
でも、まだ夜と呼ぶには早い時間だったし、少し食堂に行くのに遅れただけだ。
それなのに、私が行ったときには、もうパンは1つも残っていなかった。
私のために残っていたはずのパンも含め、すべてをサシャがたいらげたせいだ。
ストヘス区へ出向していたことを知っていた新兵達は、まだ私が帰ってきていないと思ったらしい。
悪気はなかったのだろうが、食堂にやってきた私を見た途端に脱兎のごとく逃げ去ったサシャが、どうしても確信犯に思えて仕方がないのだ。
「アハハ、サシャらしい。」
恨み節を聞いて、ペトラがおかしそうに笑う。
談話室へ紅茶を作りに行こうとも思っていたことを話すと、一緒に行くと言うので話しながら向かうことになった。
訓練のことや壁外調査のこと、私がテュランに置いてきぼりにされたこと、オルオがまた舌を噛んだことを面白おかしく話ていれば、あっという間に談話室に着いてしまった。
今夜も日頃の疲れを癒したい調査兵達が、お喋りやちょっとした遊戯を楽しんでいる。
「これ、この前、ティーカップ割って迷惑かけちゃったときのお詫びも込めて。
好きなのをもらってくれるかな?」
淹れたての紅茶をテーブルの上に置いた私は、紙袋を広げて中が見えるようにしてペトラの前に出した。
驚いた後、気を遣わなくていいというペトラに、お詫びをすると約束したからと言えば、嬉しそうにお礼を言われた。
こういう素直なところが、ペトラの可愛いところだと思う。素直に受け止めてくれるから、こっちも嬉しくなる。
「じゃあ~、ん~、どれも美味しそうだなぁ…。
これにしようかなっ。」
「オッケ~。」
ペトラがパンを選んだのを確認してキッチンに入った私は、皿を3枚用意して戻った。
ペトラの前に置いた皿の上にペトラが選んだパンを乗せて、あとの2皿には残りのパンを1つと2つに分けて乗せた。
トレイの上に皿を並べた後、淹れたての紅茶も同じように、1つはペトラの前に置いて、残りの2つはそれぞれのトレイに乗せた。
「もう1つはルル?」
「ううん、リヴァイ兵長に持っていこうと思ってね。」
「兵長に?」
「私のせいでリヴァイ兵長も帰りが遅くなっちゃったから。
それで食事までなかったら、申し訳なくて。」
「リヴァイ兵長も一緒だったの?」
「カラネス区偵察の帰りだったらしくて、偶々会ったの。」
トレイの準備が終わり、慎重に持ち上げようとして、キッチンでの勘違いについて思い出した。
ペトラに話したら、きっと、変な勘違いだと可笑しそうに笑ってくれると思った。
「この前、キッチンでティーカップ割ったとき、実はね。
リヴァイ兵長がペトラにキスしようとしてるのかと思っちゃったの。」
「え?」
驚くペトラが嬉しくて、私は饒舌に口を滑らせ続ける。
「恋人なのかと思って驚いたよ~。
ペトラの目に入ったゴミをとってあげてたんだってね。」
「リヴァイ兵長がそう言ったの?」
「怖い顔で睨まれちゃった。
変な勘違いする暇あるなら、せいぜい死なないように訓練に励めってさ。」
至極楽しそうに笑う私は、ペトラの目が徐々に伏せられていくことに気づかなかった。
この時、ペトラはどんな気持ちで私の話を聞いていたんだろう。
「………じゃないよ。」
「ん?」
「勘違いじゃない。キス、しようとしてたんだよ。」
ペトラは目を伏せていて、いつもよりも少し低めのその声は聞き取りづらかった。
でも、何を言ったのか分からなかったわけじゃない。
「え?」
驚いた顔をした私を見て、ペトラはハッとした様子で、笑って誤魔かした。
「冗談、冗談っ!もう変な勘違いやめてよ~。」
必死に笑うペトラは、泣いているように見えた。
私のものじゃない胸の痛みが、伝染したみたいに私の胸も痛くなってー。
特別、鈍感でもないと思うけど、敏感でもない私でも、気が付いてしまった。
ペトラの気持ちー。
「なんだ、そっか。ビックリしたよ~。」
私は、うまく笑えていただろうか。
私達は、うまく笑えてるように見えていただろうか。