◇第百六十五話◇1年の時が変えたものと変わらない想い
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ウォール・マリア内の巨人が掃討され、シガンシナ区を拠点とする住民の入植が許可された頃には、トロスト区襲撃事件から1年が経とうとしていた。
そして、あの日から、ちょうど1年になる今日、調査兵団はついにウォール・マリア外の壁外調査へ向かう。
午後からの出発のために、ハンジは自分の分隊所属の新兵達を座学室に集めて、巨人についての談義をしていた。
恐らく、ウォール・マリア内に残っていた巨人が全てだと思われる。
それでも、万が一、壁の外に巨人がいたときのために、彼らに危険を知っておいてほしかった。
それと、あとは、ただ巨人のことを語りたかったからー。
朝から、エルヴィンはピクシス司令のところに出かけていたし、ミケはナナバとゲルガーと一緒に訓練をしていた。
もう新兵ではなくなった104期の調査兵達も、各々忙しく過ごしているようだった。
たぶん、みんな、何かをしていないと今日の日を過ごすことが出来ないのだと思う。
そうしていないと、どうしても、あの日の胸の痛みと、悲しすぎる別れを思い出してしまうからー。
居眠りを始めた不届き者が出てきたことに気づき、ハンジは休憩を入れることに決めた。
その途端に目を覚ます新兵達に苦笑しつつ、教壇に椅子を持ってきて座る。
今日の予定の書類を確認していると、他の分隊の新兵がやって来た。
彼はどうやらリヴァイを探していたようだった。
「なぁ、リヴァイ兵長、見てないか?
出さなきゃいけない書類があるのに、いつも会えなくてさ。」
「さぁ?また実家に帰ってんじゃねぇの?」
「あの人が非番の度に実家に帰るなんて意外だよなぁ。
孤高の存在って感じだし。」
「分かる!!そこがカッコイイんだよねぇ。
でも、この前、実家に兵団マント忘れたからってお母さんが届けに来ててさ。
すごいほのぼのしてて、ギャップに萌えたわ。」
「あ~、アンタ、最初からリヴァイ兵長目当てで調査兵団選んだんだったもんね。」
「あの人、結婚してんじゃねぇの?左手の薬指に指輪してるの見たぜ?」
「嘘…!?」
「あ~ぁ、失恋決定~。」
「うるさいな!いいの!見てるだけでも!!」
「ねぇ、リヴァイ兵長のお母さんってどんな人だったの?」
「すっごい美人だったよ!優しそうな人。さすが、リヴァイ兵長のお母さんって感じっ。
でも、似てはなかったかなぁ~。」
「お父さん似なのかな?リヴァイ兵長のお父さんとかめっちゃイケメンでしょっ。」
「俺、この間、酒場で親父と飲んでるリヴァイ兵長見たぜ?」
「リヴァイ兵長のお父さん!?似てるの!?眼光鋭い感じ!?」
「渋い感じ?背は高かったけど、顔は似てんじゃねぇの?
2人で黙々と飲んでて、なんかすげぇいい男同士って感じでカッコよかったなぁ。」
「私も見たかったぁ~。」
「それで!リヴァイ兵長はどこ行ったんだよ!?」
「だから、実家でしょ?」
「今日は非番じゃねぇだろ!?」
「あ、そっか。」
ハンジは、今日の予定を確認しているフリをしながら、彼らの話に耳を傾けていた。
とても無邪気な彼らの話がそのまま、あれからリヴァイに流れた時間の温かさを語ってくれているようだった。
彼らの話を聞きながら、ハンジはずっと笑いそうになる口元は書類で隠していた。
あの日から、リヴァイがなまえの実家に顔を出すようになったのは、罪悪感からだったのだろうかー。
そんな風に思っていた時期もあった。
でもきっと、あれはそうじゃない。
お互いが、お互いを必要としたのだ。
だって、彼らは家族だからー。だから、一緒に乗り越えようと共に手を取り合ったのだろう。
彼らのことをすっかり本当の親子だと思っている新兵達の勘違いを訂正する気もなく、ハンジが書類を見ていると新兵のひとりに声をかけられた。
「ハンジ分隊長、リヴァイ兵長は何処に行ってるか知ってますか?
午後から壁外調査なのに、何処にもいなくて…。」
新兵は、心底困ったように眉尻を下げた。
ここ最近のリヴァイは、壁外調査前の会議でストヘス区へ行くことも多かったし、帰ってくればなまえの実家に戻っていたので、全然会えなかったのだろう。
「ベタ惚れの奥さんに会いに行ってるんだよ。」
ハンジは書類から顔を上げて、ここにはいない友人をからかう口調で答えた。
「えッ!奥さんにですか!?」
「ハンジさん、奥さん、見たことあるんすか!?」
「どんな人?!美人!?」
「やっぱ強ぇの!?」
さっきまでの巨人談議ではつまらなそうに眠りかけていた新兵達の目が、キラキラと輝く。
壁外調査前の大事な時に、巨人の話よりも兵士長の奥さんの話の方が大事だなんてー。
1年前と比べて驚くほどに平和な調査兵達に、ハンジは、思わず苦笑してしまう。
「強いよーっ。エルヴィンも一目置いてるし、
人類最強の兵士が、アイツには敵わないって本気で愚痴っちゃうくらい。」
「マジかよっ!喧嘩とかしたら、リヴァイ兵長が負けちまうの!?」
「いやいや、そこは兵士長の威厳で勝つだろ。」
「ていうか、リヴァイ兵長が夫婦喧嘩とかイメージねぇな。」
「ねぇ、リヴァイ兵長って夫婦喧嘩とかするの?」
「そういえば、前に顔面に枕を思いっきり投げつけられてたよ。」
「めっちゃ怒られてんじゃん。」
「喧嘩の仕方、子供かよっ。」
「奥さんって、美人なんですかっ??」
「すっごい美人だよ~。そして、笑ったら可愛いね。」
「おーっ!」
「リヴァイ兵長は美人好きか。」
「性格が顔に出てるとっても良い娘だよ。優しくて、明るくて、
気立ても良くて、気が強くてね。」
「気が強いんだっ!」
「じゃなきゃ、人類最強の兵士の顔面に枕投げられねぇって。」
「それもそうだなっ!」
新兵達は、思いがけず知れた憧れの兵士長のプライベート話で盛り上がりだした。
いつもクールに淡々と任務をこなす兵士長を夢中にさせる女に妄想を膨らませながら騒いでいる。
そんな彼らの話を聞きながら、ハンジは窓の外へ視線を向けた。
壁外調査日和とはこのこと、と胸を張って言えるくらいの青い空が広がっている。
「壁外調査前に会いに行くってなんかいいな。
本当に奥さんのことを愛してらっしゃるんですね。」
リヴァイに憧れて調査兵団に入ったと言われていた新兵は夢見る少女のような瞳をしていた。
彼女にとって、リヴァイへの想いは純粋に憧れなのだろう。
少し染まる頬の向こうで、いつか自分もそんな素敵な人とーなんて夢を見ているようだった。
「そうだね。誰が見ても、2人はお似合いだからね。
今頃、彼女がずっと見たいって言ってた海を見に行くよって、
報告でもしてんじゃないかなぁ。」
窓の外の青い空を眺めながら、ハンジは言う。
どうか、今日の綺麗な日差しが、2人に優しく降り注いでいますようにー。
天使のようだと思っていたなまえが、本当に天使になってから、今日でちょうど1年だ。
相変わらず、ハンジは巨人オタクと呼ばれていて、リヴァイはなまえを心から愛しているよー。
そして、あの日から、ちょうど1年になる今日、調査兵団はついにウォール・マリア外の壁外調査へ向かう。
午後からの出発のために、ハンジは自分の分隊所属の新兵達を座学室に集めて、巨人についての談義をしていた。
恐らく、ウォール・マリア内に残っていた巨人が全てだと思われる。
それでも、万が一、壁の外に巨人がいたときのために、彼らに危険を知っておいてほしかった。
それと、あとは、ただ巨人のことを語りたかったからー。
朝から、エルヴィンはピクシス司令のところに出かけていたし、ミケはナナバとゲルガーと一緒に訓練をしていた。
もう新兵ではなくなった104期の調査兵達も、各々忙しく過ごしているようだった。
たぶん、みんな、何かをしていないと今日の日を過ごすことが出来ないのだと思う。
そうしていないと、どうしても、あの日の胸の痛みと、悲しすぎる別れを思い出してしまうからー。
居眠りを始めた不届き者が出てきたことに気づき、ハンジは休憩を入れることに決めた。
その途端に目を覚ます新兵達に苦笑しつつ、教壇に椅子を持ってきて座る。
今日の予定の書類を確認していると、他の分隊の新兵がやって来た。
彼はどうやらリヴァイを探していたようだった。
「なぁ、リヴァイ兵長、見てないか?
出さなきゃいけない書類があるのに、いつも会えなくてさ。」
「さぁ?また実家に帰ってんじゃねぇの?」
「あの人が非番の度に実家に帰るなんて意外だよなぁ。
孤高の存在って感じだし。」
「分かる!!そこがカッコイイんだよねぇ。
でも、この前、実家に兵団マント忘れたからってお母さんが届けに来ててさ。
すごいほのぼのしてて、ギャップに萌えたわ。」
「あ~、アンタ、最初からリヴァイ兵長目当てで調査兵団選んだんだったもんね。」
「あの人、結婚してんじゃねぇの?左手の薬指に指輪してるの見たぜ?」
「嘘…!?」
「あ~ぁ、失恋決定~。」
「うるさいな!いいの!見てるだけでも!!」
「ねぇ、リヴァイ兵長のお母さんってどんな人だったの?」
「すっごい美人だったよ!優しそうな人。さすが、リヴァイ兵長のお母さんって感じっ。
でも、似てはなかったかなぁ~。」
「お父さん似なのかな?リヴァイ兵長のお父さんとかめっちゃイケメンでしょっ。」
「俺、この間、酒場で親父と飲んでるリヴァイ兵長見たぜ?」
「リヴァイ兵長のお父さん!?似てるの!?眼光鋭い感じ!?」
「渋い感じ?背は高かったけど、顔は似てんじゃねぇの?
2人で黙々と飲んでて、なんかすげぇいい男同士って感じでカッコよかったなぁ。」
「私も見たかったぁ~。」
「それで!リヴァイ兵長はどこ行ったんだよ!?」
「だから、実家でしょ?」
「今日は非番じゃねぇだろ!?」
「あ、そっか。」
ハンジは、今日の予定を確認しているフリをしながら、彼らの話に耳を傾けていた。
とても無邪気な彼らの話がそのまま、あれからリヴァイに流れた時間の温かさを語ってくれているようだった。
彼らの話を聞きながら、ハンジはずっと笑いそうになる口元は書類で隠していた。
あの日から、リヴァイがなまえの実家に顔を出すようになったのは、罪悪感からだったのだろうかー。
そんな風に思っていた時期もあった。
でもきっと、あれはそうじゃない。
お互いが、お互いを必要としたのだ。
だって、彼らは家族だからー。だから、一緒に乗り越えようと共に手を取り合ったのだろう。
彼らのことをすっかり本当の親子だと思っている新兵達の勘違いを訂正する気もなく、ハンジが書類を見ていると新兵のひとりに声をかけられた。
「ハンジ分隊長、リヴァイ兵長は何処に行ってるか知ってますか?
午後から壁外調査なのに、何処にもいなくて…。」
新兵は、心底困ったように眉尻を下げた。
ここ最近のリヴァイは、壁外調査前の会議でストヘス区へ行くことも多かったし、帰ってくればなまえの実家に戻っていたので、全然会えなかったのだろう。
「ベタ惚れの奥さんに会いに行ってるんだよ。」
ハンジは書類から顔を上げて、ここにはいない友人をからかう口調で答えた。
「えッ!奥さんにですか!?」
「ハンジさん、奥さん、見たことあるんすか!?」
「どんな人?!美人!?」
「やっぱ強ぇの!?」
さっきまでの巨人談議ではつまらなそうに眠りかけていた新兵達の目が、キラキラと輝く。
壁外調査前の大事な時に、巨人の話よりも兵士長の奥さんの話の方が大事だなんてー。
1年前と比べて驚くほどに平和な調査兵達に、ハンジは、思わず苦笑してしまう。
「強いよーっ。エルヴィンも一目置いてるし、
人類最強の兵士が、アイツには敵わないって本気で愚痴っちゃうくらい。」
「マジかよっ!喧嘩とかしたら、リヴァイ兵長が負けちまうの!?」
「いやいや、そこは兵士長の威厳で勝つだろ。」
「ていうか、リヴァイ兵長が夫婦喧嘩とかイメージねぇな。」
「ねぇ、リヴァイ兵長って夫婦喧嘩とかするの?」
「そういえば、前に顔面に枕を思いっきり投げつけられてたよ。」
「めっちゃ怒られてんじゃん。」
「喧嘩の仕方、子供かよっ。」
「奥さんって、美人なんですかっ??」
「すっごい美人だよ~。そして、笑ったら可愛いね。」
「おーっ!」
「リヴァイ兵長は美人好きか。」
「性格が顔に出てるとっても良い娘だよ。優しくて、明るくて、
気立ても良くて、気が強くてね。」
「気が強いんだっ!」
「じゃなきゃ、人類最強の兵士の顔面に枕投げられねぇって。」
「それもそうだなっ!」
新兵達は、思いがけず知れた憧れの兵士長のプライベート話で盛り上がりだした。
いつもクールに淡々と任務をこなす兵士長を夢中にさせる女に妄想を膨らませながら騒いでいる。
そんな彼らの話を聞きながら、ハンジは窓の外へ視線を向けた。
壁外調査日和とはこのこと、と胸を張って言えるくらいの青い空が広がっている。
「壁外調査前に会いに行くってなんかいいな。
本当に奥さんのことを愛してらっしゃるんですね。」
リヴァイに憧れて調査兵団に入ったと言われていた新兵は夢見る少女のような瞳をしていた。
彼女にとって、リヴァイへの想いは純粋に憧れなのだろう。
少し染まる頬の向こうで、いつか自分もそんな素敵な人とーなんて夢を見ているようだった。
「そうだね。誰が見ても、2人はお似合いだからね。
今頃、彼女がずっと見たいって言ってた海を見に行くよって、
報告でもしてんじゃないかなぁ。」
窓の外の青い空を眺めながら、ハンジは言う。
どうか、今日の綺麗な日差しが、2人に優しく降り注いでいますようにー。
天使のようだと思っていたなまえが、本当に天使になってから、今日でちょうど1年だ。
相変わらず、ハンジは巨人オタクと呼ばれていて、リヴァイはなまえを心から愛しているよー。