◇第百六十三話◇勝利の女神に敬礼を
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シガンシナ区。
鎧の巨人を追い詰めた後、超大型巨人であるベルトルトが入った樽が投げ込まれた。
彼が巨人化したら、戦況は一気に覆されるー。
そう危惧したハンジ達と同じくして、ベルトルトもまた、覚悟を決めているようだった。
それなのにー。
『ライナー…!ごめん、世界は混乱するし、敵どころか味方にも恨まれるかもしれない…!
それでも僕は、もうこの手を誰かを傷つけるために使いたくない…!
僕はやっぱり…、あの手を掴みたい…!』
鎧の巨人のうなじからボロボロの身体を出したライナーの元へやって来たベルトルトは、一度は巨人化しようとしたものの、子供が母親を求めるような泣き顔で叫んだ。
ハンジには、彼が何を言っているのか分からなかった。
でも、アルミン達は何かに気づいたようだった。
そして、ライナーもまた、ベルトルトの願いは届いたようだった。
瀕死の身体で、なんとか腕を伸ばして親指を立てたのだ。それは、ライナーも同じ気持ちだということを示していた。
そして今ー。
ベルトルトとライナーは、戦いを放棄し、人類に協力することを決めていた。
「ナナバ、彼らの拘束はしなくていい。」
ハンジが止めると、ナナバは心底驚いた顔をしていた。
彼らは戦いをやめてくれたが、それは危険じゃないかとミケやゲルガーは、反対してきた。
確かに、これが敵である自分達を油断させる彼らの作戦ではないとは言い切れない。
それにもし、今は本気で人類の味方になろうと考えていたとしても、いつ裏切るかも分からない。
それでも、ハンジは頑なに首を横に振った。
ベルトルトとライナーの心をとかし、人類の味方にしたのはなまえだ。その彼女は、ユミルを地下牢に閉じ込めようとしたとき、お互いに協力し合うべきだと言って聞かなかった。
疑って、拘束して、憎しみを増やす方法では、未来は開けないのだとー。
結局、ユミルはハンジ達を裏切り、ライナーとベルトルトを逃がしてしまった。
でも、それでもー。
そんななまえの徹底的な優しさが彼らの心をとかしてくれたのなら、それに習うべきだと考えたのだ。
自分達はもう裏切る気はないけれど、心配なら拘束しても構わないというベルトルトとライナーの申し出すらも断って、ハンジは彼らを自由でいさせることを決定した。
理由を聞いたミケ達も、それ以上何かを言うことはなかった。
そこへ、ウォール・ローゼ側で獣の巨人と交戦していたエルヴィン達がやって来た。
エルドとオルオが、縄で拘束された2人の人間を抱えているのも見えた。
ライナーとベルトルトから、獣の巨人はジークという名の戦士長であり、リヴァイが相手ですらとても強い男なのだと聞いていた。
ずっと大きな音も聞こえていたから、とても心配していたのだが、彼らも勝利をしたようだ。
ホッと息を吐き、ハンジは大きく手を振った。
「おーいっ!おっつかれさーんっ!頑張ったみたいだねっ!
こっちは、ライナーとベルトルトが私達側についてくれて、ほぼ不戦勝だったよ~!
なまえのお手柄だ!!帰ったら、何か褒美をやらなきゃな~!」
嬉しそうに声を張り上げたハンジの元へ、戦いを終えた兵士達が集まってくる。
でも、勝利したはずなのに、なぜかみんなどこか浮かない。
地下室に行くのを楽しみにしていたエルヴィンでさえも、とても傷ついた顔をしていた。
ハンジは、その後ろに隠れていたリヴァイを見つけた。
腕に横抱きにして抱えているのは、誰だろうー。
一瞬、誰だか分からなかったのは、きっと、髪型のせいだ。
綺麗な長い髪をどうしてしまったのか、リヴァイに抱きかかえられているなまえは髪が短くなっていた。
「ねぇ、なまえ、寝てるの?せっかくいっぱい褒めてやろうと思ってたのになぁ。
なまえが必死に伸ばした手をさ、ライナーとベルトルトが掴んでくれたんだ。
人類と一緒に生きる道を、なまえとなら探したいってさっ。」
ハンジは、リヴァイに笑顔を向けた。
でも、彼は、ただじっとなまえの寝顔を見下ろしていた。
ペトラはただひたすら泣いていて、よく見てみれば、新兵達の目は真っ赤だ。
でも、ハンジは認めたくなかった。
なにがなんでも、認めたくはなかったー。
「そっちは、犠牲者はいないようだな。」
エルヴィンが、ハンジ達を見渡して言った。
ホッとしたような、でもどこか、とても悲しいような表情をしていた。
返事をしたのはモブリットだった。
「なまえの声がライナーとベルトルトに届いたようで、最後の最後に踏み留まってくれたんです。
これからは、人類と彼らの世界にいる人間との間での共存方法を探したいと。
今はなまえの意思を尊重して、彼らの拘束はしていませんが…。」
「あぁ、構わない。なまえの思うようにやらせよう。」
「分かりました。」
モブリットが視線を送ると、ミケが頷いた。
ミケ班のメンバーは、いつでも鞘から抜けるようにと超硬質スチールの柄頭に触れていた手を離した。
「なまえ、なんで髪切っちゃったの?まぁ、すぐ伸びるからいいか、髪くらいはね。
でも、腕は伸びないよねぇ…。まぁ、仕方ないか。私が右腕になってあげよう。
それで、リヴァイ。なまえは…、いつ起きるのかな…?」
答えに怯えて、ハンジの声は震えていた。
シガンシナ区にいて、何も知らない調査兵達は怯えた目で、返事を待っていた。
でも本当は、エルヴィン達の表情で、嗚咽を漏らす新兵達の泣き顔で、答えなんて分かっていたのにー。
リヴァイは目を伏せ、なまえの顔を見たまま答える。
「なまえはもう、起きねぇ。」
「な…、何言ってんだよ…っ。そりゃさ、なまえは一度寝たらなっかなか起きないけどさっ。
せっかく、ライナーとベルトルトが、なまえが伸ばした手をさっ、掴みたいって…!
褒めてやらなきゃいけないんだよ…!私はさっ、なまえの上司として…、褒めてやりたいんだ…!」
ハンジは抵抗した。必死に現実から抵抗した。
でも、ゆっくりと顔を上げたリヴァイに見えたのは、絶望でも、悲しみでもなく、ただひたすら無表情でー。
きっと、彼は心を殺していた。
そうしないと、現実を口にすることなんて、到底出来なかったのだろう。
そうやって、真っすぐにハンジを見て悲劇を教える。
「…死んでる。」
「…っ!」
なんでだよー、守ってやってくれよー。
すぐそこまで出かかった言葉は、ハンジの喉の奥で消えていった。
そんなこと、リヴァイが一番悔やんでいるに違いなかった。
それくらいわかっている。
分かっていたけれど、でもー。
なぜか信じていた。
なまえだけは絶対に死なないと、なぜか信じていたから、だからー。
「なんでだよ…っ、どうしてなまえさんが…っ!」
「嘘ですよね…っ?ねぇ、冗談ですよね…!?」
「なまえさん…っ、嫌だ…!!」
「起きてくれよ…っ、なまえさんのおかげで俺達…っ」
「一緒に帰ろうって約束したじゃねぇかよ…!」
「…頬を叩いたら、起きるかもしれない。うん、起きる。」
104期の新兵達やミケ班、ハンジ班のみんながなまえの亡骸に駆け寄る。
この決戦で大きな犠牲を払うことになることは、分かっていた。
それでも、誰もこんな悲劇は想像していなかった。
想像もして、いなかったのだー。
だって、なまえの未来はこれからもっともっと輝いて、大好きな人の隣で、誰よりも幸せになるはずでー。
それをみんなで、祝ったばかりじゃないか。
だから、ハンジ達は泣きながら名前を呼んで、リヴァイの腕の中のなまえの身体を揺する。
だって、今すぐにでも目を覚ましてもおかしくないくらいに綺麗な顔で眠っているからー。
なんだかとても安心したような優しい寝顔で、眠っているからー。
でも、冷たくなったなまえの頬に触れたハンジは、これは悪夢でもなんでもなく現実なのだと思い知る。
「なまえ…!」
「なまえさん!」
ライナーとベルトルトが駆け寄ってきた。
そして、彼らが掴みたかったなまえの手に、自分達の手を伸ばそうとしたとき、リヴァイが怒鳴るように叫んだ。
「触るなッ!!!」
誰もが驚いて息を呑む。
一瞬、時が凍り付いて止まったようだった。
ライナーとベルトルトは、手を伸ばした格好で固まる。
「…悪い。なまえの願いだから、俺はお前達を許す…。憎みもしねぇ。
でも…、触らないでくれ…!なまえはこんなかたちでも手を掴んでやりたいんだと思う…。
でも、俺が嫌なんだ…。お願いだ…、触らないでほしい…!」
リヴァイは、腕の中で眠るなまえを身体全体で包み込むように抱きしめた。
それはまるで、小さな子供が自分の宝物を守るために、他人の目から必死に隠すみたいだった。
痛々しいその姿に、ライナーとベルトルトが伸ばした手がゆっくりと落ちていく。
目を伏せた2人の膝も、地面に崩れ落ちた。
もっと早く手を伸ばせば掴めたかもしれなかったなまえの手は、右手は獣の巨人に奪われ、リヴァイの愛の証が輝く左手には触れることを許されなかった。
なまえに触れたかった彼らの手は、自分の頭を抱え、そして悲鳴のように嗚咽を漏らし続けたー。
鎧の巨人を追い詰めた後、超大型巨人であるベルトルトが入った樽が投げ込まれた。
彼が巨人化したら、戦況は一気に覆されるー。
そう危惧したハンジ達と同じくして、ベルトルトもまた、覚悟を決めているようだった。
それなのにー。
『ライナー…!ごめん、世界は混乱するし、敵どころか味方にも恨まれるかもしれない…!
それでも僕は、もうこの手を誰かを傷つけるために使いたくない…!
僕はやっぱり…、あの手を掴みたい…!』
鎧の巨人のうなじからボロボロの身体を出したライナーの元へやって来たベルトルトは、一度は巨人化しようとしたものの、子供が母親を求めるような泣き顔で叫んだ。
ハンジには、彼が何を言っているのか分からなかった。
でも、アルミン達は何かに気づいたようだった。
そして、ライナーもまた、ベルトルトの願いは届いたようだった。
瀕死の身体で、なんとか腕を伸ばして親指を立てたのだ。それは、ライナーも同じ気持ちだということを示していた。
そして今ー。
ベルトルトとライナーは、戦いを放棄し、人類に協力することを決めていた。
「ナナバ、彼らの拘束はしなくていい。」
ハンジが止めると、ナナバは心底驚いた顔をしていた。
彼らは戦いをやめてくれたが、それは危険じゃないかとミケやゲルガーは、反対してきた。
確かに、これが敵である自分達を油断させる彼らの作戦ではないとは言い切れない。
それにもし、今は本気で人類の味方になろうと考えていたとしても、いつ裏切るかも分からない。
それでも、ハンジは頑なに首を横に振った。
ベルトルトとライナーの心をとかし、人類の味方にしたのはなまえだ。その彼女は、ユミルを地下牢に閉じ込めようとしたとき、お互いに協力し合うべきだと言って聞かなかった。
疑って、拘束して、憎しみを増やす方法では、未来は開けないのだとー。
結局、ユミルはハンジ達を裏切り、ライナーとベルトルトを逃がしてしまった。
でも、それでもー。
そんななまえの徹底的な優しさが彼らの心をとかしてくれたのなら、それに習うべきだと考えたのだ。
自分達はもう裏切る気はないけれど、心配なら拘束しても構わないというベルトルトとライナーの申し出すらも断って、ハンジは彼らを自由でいさせることを決定した。
理由を聞いたミケ達も、それ以上何かを言うことはなかった。
そこへ、ウォール・ローゼ側で獣の巨人と交戦していたエルヴィン達がやって来た。
エルドとオルオが、縄で拘束された2人の人間を抱えているのも見えた。
ライナーとベルトルトから、獣の巨人はジークという名の戦士長であり、リヴァイが相手ですらとても強い男なのだと聞いていた。
ずっと大きな音も聞こえていたから、とても心配していたのだが、彼らも勝利をしたようだ。
ホッと息を吐き、ハンジは大きく手を振った。
「おーいっ!おっつかれさーんっ!頑張ったみたいだねっ!
こっちは、ライナーとベルトルトが私達側についてくれて、ほぼ不戦勝だったよ~!
なまえのお手柄だ!!帰ったら、何か褒美をやらなきゃな~!」
嬉しそうに声を張り上げたハンジの元へ、戦いを終えた兵士達が集まってくる。
でも、勝利したはずなのに、なぜかみんなどこか浮かない。
地下室に行くのを楽しみにしていたエルヴィンでさえも、とても傷ついた顔をしていた。
ハンジは、その後ろに隠れていたリヴァイを見つけた。
腕に横抱きにして抱えているのは、誰だろうー。
一瞬、誰だか分からなかったのは、きっと、髪型のせいだ。
綺麗な長い髪をどうしてしまったのか、リヴァイに抱きかかえられているなまえは髪が短くなっていた。
「ねぇ、なまえ、寝てるの?せっかくいっぱい褒めてやろうと思ってたのになぁ。
なまえが必死に伸ばした手をさ、ライナーとベルトルトが掴んでくれたんだ。
人類と一緒に生きる道を、なまえとなら探したいってさっ。」
ハンジは、リヴァイに笑顔を向けた。
でも、彼は、ただじっとなまえの寝顔を見下ろしていた。
ペトラはただひたすら泣いていて、よく見てみれば、新兵達の目は真っ赤だ。
でも、ハンジは認めたくなかった。
なにがなんでも、認めたくはなかったー。
「そっちは、犠牲者はいないようだな。」
エルヴィンが、ハンジ達を見渡して言った。
ホッとしたような、でもどこか、とても悲しいような表情をしていた。
返事をしたのはモブリットだった。
「なまえの声がライナーとベルトルトに届いたようで、最後の最後に踏み留まってくれたんです。
これからは、人類と彼らの世界にいる人間との間での共存方法を探したいと。
今はなまえの意思を尊重して、彼らの拘束はしていませんが…。」
「あぁ、構わない。なまえの思うようにやらせよう。」
「分かりました。」
モブリットが視線を送ると、ミケが頷いた。
ミケ班のメンバーは、いつでも鞘から抜けるようにと超硬質スチールの柄頭に触れていた手を離した。
「なまえ、なんで髪切っちゃったの?まぁ、すぐ伸びるからいいか、髪くらいはね。
でも、腕は伸びないよねぇ…。まぁ、仕方ないか。私が右腕になってあげよう。
それで、リヴァイ。なまえは…、いつ起きるのかな…?」
答えに怯えて、ハンジの声は震えていた。
シガンシナ区にいて、何も知らない調査兵達は怯えた目で、返事を待っていた。
でも本当は、エルヴィン達の表情で、嗚咽を漏らす新兵達の泣き顔で、答えなんて分かっていたのにー。
リヴァイは目を伏せ、なまえの顔を見たまま答える。
「なまえはもう、起きねぇ。」
「な…、何言ってんだよ…っ。そりゃさ、なまえは一度寝たらなっかなか起きないけどさっ。
せっかく、ライナーとベルトルトが、なまえが伸ばした手をさっ、掴みたいって…!
褒めてやらなきゃいけないんだよ…!私はさっ、なまえの上司として…、褒めてやりたいんだ…!」
ハンジは抵抗した。必死に現実から抵抗した。
でも、ゆっくりと顔を上げたリヴァイに見えたのは、絶望でも、悲しみでもなく、ただひたすら無表情でー。
きっと、彼は心を殺していた。
そうしないと、現実を口にすることなんて、到底出来なかったのだろう。
そうやって、真っすぐにハンジを見て悲劇を教える。
「…死んでる。」
「…っ!」
なんでだよー、守ってやってくれよー。
すぐそこまで出かかった言葉は、ハンジの喉の奥で消えていった。
そんなこと、リヴァイが一番悔やんでいるに違いなかった。
それくらいわかっている。
分かっていたけれど、でもー。
なぜか信じていた。
なまえだけは絶対に死なないと、なぜか信じていたから、だからー。
「なんでだよ…っ、どうしてなまえさんが…っ!」
「嘘ですよね…っ?ねぇ、冗談ですよね…!?」
「なまえさん…っ、嫌だ…!!」
「起きてくれよ…っ、なまえさんのおかげで俺達…っ」
「一緒に帰ろうって約束したじゃねぇかよ…!」
「…頬を叩いたら、起きるかもしれない。うん、起きる。」
104期の新兵達やミケ班、ハンジ班のみんながなまえの亡骸に駆け寄る。
この決戦で大きな犠牲を払うことになることは、分かっていた。
それでも、誰もこんな悲劇は想像していなかった。
想像もして、いなかったのだー。
だって、なまえの未来はこれからもっともっと輝いて、大好きな人の隣で、誰よりも幸せになるはずでー。
それをみんなで、祝ったばかりじゃないか。
だから、ハンジ達は泣きながら名前を呼んで、リヴァイの腕の中のなまえの身体を揺する。
だって、今すぐにでも目を覚ましてもおかしくないくらいに綺麗な顔で眠っているからー。
なんだかとても安心したような優しい寝顔で、眠っているからー。
でも、冷たくなったなまえの頬に触れたハンジは、これは悪夢でもなんでもなく現実なのだと思い知る。
「なまえ…!」
「なまえさん!」
ライナーとベルトルトが駆け寄ってきた。
そして、彼らが掴みたかったなまえの手に、自分達の手を伸ばそうとしたとき、リヴァイが怒鳴るように叫んだ。
「触るなッ!!!」
誰もが驚いて息を呑む。
一瞬、時が凍り付いて止まったようだった。
ライナーとベルトルトは、手を伸ばした格好で固まる。
「…悪い。なまえの願いだから、俺はお前達を許す…。憎みもしねぇ。
でも…、触らないでくれ…!なまえはこんなかたちでも手を掴んでやりたいんだと思う…。
でも、俺が嫌なんだ…。お願いだ…、触らないでほしい…!」
リヴァイは、腕の中で眠るなまえを身体全体で包み込むように抱きしめた。
それはまるで、小さな子供が自分の宝物を守るために、他人の目から必死に隠すみたいだった。
痛々しいその姿に、ライナーとベルトルトが伸ばした手がゆっくりと落ちていく。
目を伏せた2人の膝も、地面に崩れ落ちた。
もっと早く手を伸ばせば掴めたかもしれなかったなまえの手は、右手は獣の巨人に奪われ、リヴァイの愛の証が輝く左手には触れることを許されなかった。
なまえに触れたかった彼らの手は、自分の頭を抱え、そして悲鳴のように嗚咽を漏らし続けたー。