◇第百六十二話◇また逢いましょう
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獣の巨人のうなじから引きずり出した人間の両手足を切り落としたリヴァイは、口の中に超硬質スチールの刃を刺した。
巨人化直後、身体を激しく損傷して回復に手一杯なうちは巨人化出来ない。
とりあえずは、作戦通りだー。
「リヴァイ兵長!四足歩行の巨人の中の人間も捕らえました!!」
やってきたのはエルドだった。
オルオが縄で拘束してくれているそうだ。
獣の巨人の中身はエルドに拘束するように指示を出したリヴァイは、獣の巨人の身体から飛び降りて、地面に横たわるなまえの元へ走った。
「なまえ…!しっかりして…!」
なまえのそばにはすでにペトラがいて、彼女の身体を腕の中に抱いて、必死に声をかけているようだった。
「なまえ…!」
リヴァイが叫ぶように名前を呼べば、顔を上げたのはペトラだった。
その腕の中にいるなまえは真っ白い顔で、閉じてしまった目は開きそうにない。
腕を失った右肩からは大量の血が流れ続けていた。
「リヴァイ兵長…!なまえ、まだ生きてます!!
返事はないけど、でも、ちゃんと心臓が動いてる!!あの注射を打ってください…!!!」
「…貸せっ!」
ペトラから奪うように、でも、なまえをこれ以上傷つけないように優しく包むように、リヴァイは自分の腕で抱きしめた。
温かい、まだ、温かいー。
「リヴァイ兵長、早く!あの注射を!!」
「悪い…、アレは打たねぇ…っ。」
「…!?なんでっ!?」
「なまえとの、約束だ…!」
「そんな…っ。」
ペトラは驚愕と悲愴を重ね合わせたみたいな真っ青な顔で、絶望していた。
それを視界の端にとらえていても、リヴァイはただただなまえを腕の中に抱きしめ続けた。
ゆっくりと、命の火を消していこうとしている愛おしい人ー。
彼女を救う手立てを、自分が持っていることは理解していた。
そして、それを使うことを、彼女が良しとしていなかったことにも気づいていた。
なまえは巨人のいない世界を望んでいた。
誰もが平等に夢を見て、笑っている。そんな優しい世界を作りたいと言っていた。
だから、誰にも巨人になってほしくないと思っているようだった。
それで傷つく大切な人を見たせいだろう。
そしてたぶん、なまえは、敵の命さえも見捨てられなかったのだ。
誰も、それが敵でも、巨人に食われてしまうのは、彼女にとってはとても悲しいことなのだろう。
だからきっと、たとえば、それが自分を救うためだとしても、なまえは注射を打たれることを望まない。
だからきっと、彼女はー。
分かっていた。
分かっていたー。
「すまねぇ…!俺は…っ、分かってたのに…っ!」
なまえが死ぬ気だということは気づいていた。
ちゃんと分かっていた。
あれだけ大切にしていた、結婚式のために伸ばしたいと言っていた髪をバッサリ切り落としたその時からー。
ここを最期の場所に決めたのだと、分かっていたのにー。
自分は、彼女の覚悟を受け止めて、背中を押すことしかしてやれなかったー。
地獄へと飛ぶための背中を押すことしかー。
「リヴァ…イ、へい、ちょ…。」
「なまえ…!?」
腕の中から消えてしまいそうな小さな声が聞こえてきた。
慌ててなまえを見れば、いつだって自分だけをまっすぐに映し続けてくれた愛に溢れた瞳が自分を見上げていた。
血の気のない真っ白い顔は相変わらずだったけれど、それでも、なまえはちゃんと自分を見ていてー。
「泣かない、で…。だいじょ、ぶ…。また、会え、るから…。」
力の入らない震える手が伸びて、リヴァイの濡れた瞳を拭った。
その手を力強く握りしめて、リヴァイはただ頷く。それしか出来なかったー。
「う、そ…、ついて、ごめんなさ…。」
「本当だ…っ、なまえ、俺を残して、死なねぇって…言ったじゃねぇか…!
俺は許さねぇぞ…!絶対にお前と生きて帰ってやる!どうにかして、助けてやるから俺を信じてー。」
「リヴァイ…、あいして…、る。」
この期に及んで、リヴァイはそれでも注射をなまえに打ちたい思っていた。
そんなリヴァイの心を分かっているみたいに、なまえはとても愛おしそうに言って、震える左手でリヴァイの頬を撫でた。
血だらけの手は、リヴァイの頬を赤く染める。
あぁ、なんてひどい女なのだろう。
あぁ、なんて愛おしい女なのだろう。
許してやるしか、なくなってしまったじゃないかー。
「あぁ…、仲直りだな。仲直りだ…っ。」
リヴァイが、なまえの手を握りしめる。
すると、なまえはとてもホッとしたような笑みを口元で作った。
いつの間にか周りには彼女に守られた兵士達が集まってきていた。
「リヴァ…イ、兵ちょう…。結婚、式は、やっぱり…海がいい、なぁ…。」
「…っ、あぁ、そうだな。海でしよう…!」
「忘れ、ないでね…。」
「あぁ、忘れねぇよ…!」
「ず、っと…、待ってる、から…。迎え、に…来て、ね…?」
「あぁ、迎えに行く…!俺は必ず、この世から巨人を駆逐する!
誰もが幸せな優しい世界をなまえに見せてやるから、そこでまた逢おう!
何度だって、俺はなまえを愛すると誓う…!愛してる…!永遠に…っ!」
「…兵長、なまえは、もう…。」
ペトラが目を伏せる。
その隣で、エルドは涙をこぼすまいと天を仰いでいた。それでも、片腕で隠したそこから涙が頬を伝って落ちていく。
「…最後まで聞いたのか、なまえは。」
「きっと聞こえてましたよ。
だって、安心したように、眠っている…。」
「そうか…、なら、よかった。よかった…。」
リヴァイは、なまえを腕の中に抱きしめた。
いつものように柔らかくて、温かくて、優しい甘い香りがする。
いつものように、まだ、温かいのにー。
漸く拘束した敵をおとなしく出来たらしく、息を切らして走ってきたオルオは、膝から崩れ落ち、地面を悔しそうに叩いた。
そのそばでは、あれだけ勇敢に敵に立ち向かった兵士達が、まるで子供のように声を上げて泣いていた。
巨人化直後、身体を激しく損傷して回復に手一杯なうちは巨人化出来ない。
とりあえずは、作戦通りだー。
「リヴァイ兵長!四足歩行の巨人の中の人間も捕らえました!!」
やってきたのはエルドだった。
オルオが縄で拘束してくれているそうだ。
獣の巨人の中身はエルドに拘束するように指示を出したリヴァイは、獣の巨人の身体から飛び降りて、地面に横たわるなまえの元へ走った。
「なまえ…!しっかりして…!」
なまえのそばにはすでにペトラがいて、彼女の身体を腕の中に抱いて、必死に声をかけているようだった。
「なまえ…!」
リヴァイが叫ぶように名前を呼べば、顔を上げたのはペトラだった。
その腕の中にいるなまえは真っ白い顔で、閉じてしまった目は開きそうにない。
腕を失った右肩からは大量の血が流れ続けていた。
「リヴァイ兵長…!なまえ、まだ生きてます!!
返事はないけど、でも、ちゃんと心臓が動いてる!!あの注射を打ってください…!!!」
「…貸せっ!」
ペトラから奪うように、でも、なまえをこれ以上傷つけないように優しく包むように、リヴァイは自分の腕で抱きしめた。
温かい、まだ、温かいー。
「リヴァイ兵長、早く!あの注射を!!」
「悪い…、アレは打たねぇ…っ。」
「…!?なんでっ!?」
「なまえとの、約束だ…!」
「そんな…っ。」
ペトラは驚愕と悲愴を重ね合わせたみたいな真っ青な顔で、絶望していた。
それを視界の端にとらえていても、リヴァイはただただなまえを腕の中に抱きしめ続けた。
ゆっくりと、命の火を消していこうとしている愛おしい人ー。
彼女を救う手立てを、自分が持っていることは理解していた。
そして、それを使うことを、彼女が良しとしていなかったことにも気づいていた。
なまえは巨人のいない世界を望んでいた。
誰もが平等に夢を見て、笑っている。そんな優しい世界を作りたいと言っていた。
だから、誰にも巨人になってほしくないと思っているようだった。
それで傷つく大切な人を見たせいだろう。
そしてたぶん、なまえは、敵の命さえも見捨てられなかったのだ。
誰も、それが敵でも、巨人に食われてしまうのは、彼女にとってはとても悲しいことなのだろう。
だからきっと、たとえば、それが自分を救うためだとしても、なまえは注射を打たれることを望まない。
だからきっと、彼女はー。
分かっていた。
分かっていたー。
「すまねぇ…!俺は…っ、分かってたのに…っ!」
なまえが死ぬ気だということは気づいていた。
ちゃんと分かっていた。
あれだけ大切にしていた、結婚式のために伸ばしたいと言っていた髪をバッサリ切り落としたその時からー。
ここを最期の場所に決めたのだと、分かっていたのにー。
自分は、彼女の覚悟を受け止めて、背中を押すことしかしてやれなかったー。
地獄へと飛ぶための背中を押すことしかー。
「リヴァ…イ、へい、ちょ…。」
「なまえ…!?」
腕の中から消えてしまいそうな小さな声が聞こえてきた。
慌ててなまえを見れば、いつだって自分だけをまっすぐに映し続けてくれた愛に溢れた瞳が自分を見上げていた。
血の気のない真っ白い顔は相変わらずだったけれど、それでも、なまえはちゃんと自分を見ていてー。
「泣かない、で…。だいじょ、ぶ…。また、会え、るから…。」
力の入らない震える手が伸びて、リヴァイの濡れた瞳を拭った。
その手を力強く握りしめて、リヴァイはただ頷く。それしか出来なかったー。
「う、そ…、ついて、ごめんなさ…。」
「本当だ…っ、なまえ、俺を残して、死なねぇって…言ったじゃねぇか…!
俺は許さねぇぞ…!絶対にお前と生きて帰ってやる!どうにかして、助けてやるから俺を信じてー。」
「リヴァイ…、あいして…、る。」
この期に及んで、リヴァイはそれでも注射をなまえに打ちたい思っていた。
そんなリヴァイの心を分かっているみたいに、なまえはとても愛おしそうに言って、震える左手でリヴァイの頬を撫でた。
血だらけの手は、リヴァイの頬を赤く染める。
あぁ、なんてひどい女なのだろう。
あぁ、なんて愛おしい女なのだろう。
許してやるしか、なくなってしまったじゃないかー。
「あぁ…、仲直りだな。仲直りだ…っ。」
リヴァイが、なまえの手を握りしめる。
すると、なまえはとてもホッとしたような笑みを口元で作った。
いつの間にか周りには彼女に守られた兵士達が集まってきていた。
「リヴァ…イ、兵ちょう…。結婚、式は、やっぱり…海がいい、なぁ…。」
「…っ、あぁ、そうだな。海でしよう…!」
「忘れ、ないでね…。」
「あぁ、忘れねぇよ…!」
「ず、っと…、待ってる、から…。迎え、に…来て、ね…?」
「あぁ、迎えに行く…!俺は必ず、この世から巨人を駆逐する!
誰もが幸せな優しい世界をなまえに見せてやるから、そこでまた逢おう!
何度だって、俺はなまえを愛すると誓う…!愛してる…!永遠に…っ!」
「…兵長、なまえは、もう…。」
ペトラが目を伏せる。
その隣で、エルドは涙をこぼすまいと天を仰いでいた。それでも、片腕で隠したそこから涙が頬を伝って落ちていく。
「…最後まで聞いたのか、なまえは。」
「きっと聞こえてましたよ。
だって、安心したように、眠っている…。」
「そうか…、なら、よかった。よかった…。」
リヴァイは、なまえを腕の中に抱きしめた。
いつものように柔らかくて、温かくて、優しい甘い香りがする。
いつものように、まだ、温かいのにー。
漸く拘束した敵をおとなしく出来たらしく、息を切らして走ってきたオルオは、膝から崩れ落ち、地面を悔しそうに叩いた。
そのそばでは、あれだけ勇敢に敵に立ち向かった兵士達が、まるで子供のように声を上げて泣いていた。