◇第百五十一話◇未来を憂う月
Name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
鎧の巨人と降って来た巨人によって大損害を受けたストヘス区だったが、幸いと言っていいのか、民間人に犠牲はなかった。
なんとか無事に残っていた憲兵団施設の会議室では、各兵団の幹部が集まり、今回の被害の確認と今後についての話し合いが始まっていた。
そして、アニはまた、地下の部屋に幽閉された。
アルミンに案内されて、私は初めて、透明の石で包まれているアニときちんと再会することが出来た。
聞いていた通り、硬質の石で覆われていて、鎧の巨人の口から落ちたときも割れることはなかった。
破れたドレスの裾を気にしながら、アニと向き合って床に腰を降ろす。
アルミンもその隣に座り、一緒に、何も語ってはくれないアニを見上げる。
「きっとアニもベルトルト達と一緒に故郷に帰りたかったよね。」
「…そうかもしれないですけど、連れて行かせるわけにはいきません。」
「ごめんね。私が兵士としてもっとちゃんとしてたら、
逃げられることもなかったかもしれないのに…。」
膝を抱えて顔を伏せる。
あのとき、私は確実にライナーを追い詰めていた。
なんとか動けるようになったエレンの巨人化の力も借りて、うなじに隠れていたライナーを引きずり出すことにも成功した。
ベルトルトもジャンとコニーが拘束してくれていた。
それなのに、私はまだ、2人を信じたくて、生きたままアニと再会してほしくてー。
『なまえ、お前が何を言ってももう元には戻れない。
俺達が何人殺したと思ってる。もう手遅れなんだ。』
『そうだよ!僕達の手はもう汚れたんだ…!』
『確かに亡くなった命はもう戻らない。あなた達の手は血まみれかもしれない。
でも、一度汚れてしまったら、その手はもう誰かを傷つけることしか出来なくなるの?
違うでしょう?あなた達がその手を伸ばしてくれるなら、私は掴むよ。信じて。』
なんとか分かってもらいたかった。
リヴァイ兵長にはまた怒られてしまうかもしれない。
それでも、やっぱり、人類の未来に必要なのは、憎い敵を殺すことだとはどうしても思えなくてー。
そんな私に苛立った憲兵がライナーを殺そうと超硬質スチールを振り下ろそうとしたとき、巨人化したユミルがライナーを助けた。
そして、ベルトルトと共に咥えて逃げて行ってしまった。
ユミルは最後、ヒストリアに謝ったそうだ。
それは、彼らの味方につくことに決めたことだろうか。他にもなにか理由があったのか。
ヒストリアも分からないと言っていた。
「そもそもなまえさんがいなかったら、アニは連れて行かれてました。
だから、エルヴィン団長達も今回は目的も達成したし大丈夫だって言ってましたし。
って言っても、そういうことじゃないんですよね。」
「私って、なんでいつもこうなんだろう…。」
ため息を吐く。
人類のために心臓を捧げた兵士のはずなのに、私はいつも私のやり方でやってしまう。
そして、結局、何も生まれないー。
「アニから伝言預かってるんです。」
「アニから?」
不意に、アルミンが話を変えた。
そして、ストヘス区での女型の巨人捕獲作戦の時、地下に連れて行く前にアニと交わした会話を教えてくれた。
『あんたなんか大嫌いだから、あたしのことなんか忘れて。
せいぜい幸せになりなよ。なかなかお似合いだったよ。』
アルミンの声に乗せて、アニの素っ気ない顔が頭に浮かんだ。
どうしてアニはいつもそうなのだろう。
そんなこと、ちゃんと私に言って欲しい。
そしたら、私はちゃんと言うのに。
心配しないで、私はアニのこと大好きだよって、ちゃんと言うのにー。
「アニ…っ。」
膝を抱えて、私は泣いた。
この世界の残酷さの真ん中に、アニはいるような気がした。
そこから助け出すチャンスが、私にはあったはずだった。
「なまえさんは、これからもずっとアニが好きななまえさんのままでいればいいと思います。
そしたら、アニが目を覚ましたとき、アニはひとりぼっちじゃないから。」
アルミンが言ったそれは、いつか私がユミルに言った言葉に似ていた。
私が、私のままでいるだけで、アニがひとりにはならないのならー。
私はずっとこのままでいよう。
そして、もっと強くなって、いつか必ず世界を変える。
優しくて、美しい世界にー。
なんとか無事に残っていた憲兵団施設の会議室では、各兵団の幹部が集まり、今回の被害の確認と今後についての話し合いが始まっていた。
そして、アニはまた、地下の部屋に幽閉された。
アルミンに案内されて、私は初めて、透明の石で包まれているアニときちんと再会することが出来た。
聞いていた通り、硬質の石で覆われていて、鎧の巨人の口から落ちたときも割れることはなかった。
破れたドレスの裾を気にしながら、アニと向き合って床に腰を降ろす。
アルミンもその隣に座り、一緒に、何も語ってはくれないアニを見上げる。
「きっとアニもベルトルト達と一緒に故郷に帰りたかったよね。」
「…そうかもしれないですけど、連れて行かせるわけにはいきません。」
「ごめんね。私が兵士としてもっとちゃんとしてたら、
逃げられることもなかったかもしれないのに…。」
膝を抱えて顔を伏せる。
あのとき、私は確実にライナーを追い詰めていた。
なんとか動けるようになったエレンの巨人化の力も借りて、うなじに隠れていたライナーを引きずり出すことにも成功した。
ベルトルトもジャンとコニーが拘束してくれていた。
それなのに、私はまだ、2人を信じたくて、生きたままアニと再会してほしくてー。
『なまえ、お前が何を言ってももう元には戻れない。
俺達が何人殺したと思ってる。もう手遅れなんだ。』
『そうだよ!僕達の手はもう汚れたんだ…!』
『確かに亡くなった命はもう戻らない。あなた達の手は血まみれかもしれない。
でも、一度汚れてしまったら、その手はもう誰かを傷つけることしか出来なくなるの?
違うでしょう?あなた達がその手を伸ばしてくれるなら、私は掴むよ。信じて。』
なんとか分かってもらいたかった。
リヴァイ兵長にはまた怒られてしまうかもしれない。
それでも、やっぱり、人類の未来に必要なのは、憎い敵を殺すことだとはどうしても思えなくてー。
そんな私に苛立った憲兵がライナーを殺そうと超硬質スチールを振り下ろそうとしたとき、巨人化したユミルがライナーを助けた。
そして、ベルトルトと共に咥えて逃げて行ってしまった。
ユミルは最後、ヒストリアに謝ったそうだ。
それは、彼らの味方につくことに決めたことだろうか。他にもなにか理由があったのか。
ヒストリアも分からないと言っていた。
「そもそもなまえさんがいなかったら、アニは連れて行かれてました。
だから、エルヴィン団長達も今回は目的も達成したし大丈夫だって言ってましたし。
って言っても、そういうことじゃないんですよね。」
「私って、なんでいつもこうなんだろう…。」
ため息を吐く。
人類のために心臓を捧げた兵士のはずなのに、私はいつも私のやり方でやってしまう。
そして、結局、何も生まれないー。
「アニから伝言預かってるんです。」
「アニから?」
不意に、アルミンが話を変えた。
そして、ストヘス区での女型の巨人捕獲作戦の時、地下に連れて行く前にアニと交わした会話を教えてくれた。
『あんたなんか大嫌いだから、あたしのことなんか忘れて。
せいぜい幸せになりなよ。なかなかお似合いだったよ。』
アルミンの声に乗せて、アニの素っ気ない顔が頭に浮かんだ。
どうしてアニはいつもそうなのだろう。
そんなこと、ちゃんと私に言って欲しい。
そしたら、私はちゃんと言うのに。
心配しないで、私はアニのこと大好きだよって、ちゃんと言うのにー。
「アニ…っ。」
膝を抱えて、私は泣いた。
この世界の残酷さの真ん中に、アニはいるような気がした。
そこから助け出すチャンスが、私にはあったはずだった。
「なまえさんは、これからもずっとアニが好きななまえさんのままでいればいいと思います。
そしたら、アニが目を覚ましたとき、アニはひとりぼっちじゃないから。」
アルミンが言ったそれは、いつか私がユミルに言った言葉に似ていた。
私が、私のままでいるだけで、アニがひとりにはならないのならー。
私はずっとこのままでいよう。
そして、もっと強くなって、いつか必ず世界を変える。
優しくて、美しい世界にー。