◇第百四十七話◇誓いの言葉を言わせないで
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控室を出て式場へ向かう途中、広い廊下の端で私を待っていたのはピクシス指令だった。
母親に手を引かれる私に気付いた後、少しだけ話をさせてほしいとお願いし、攫いはしないと言うピクシス指令を全く信じていない母親は、彼もまた私が調査兵団に入団するきっかけの中にいた人物だと知っているようだった。
でも、兵団関係者と話せる機会なんてもう二度とないのかもしれない。
そう思った私が懇願すれば、母親も渋々了承した。
結局、見張りの憲兵をつけたままの状態で、私とピクシス指令は、壁沿いに置かれたソファに並んで座って話すことが許された。
「とても綺麗じゃな、こんな美しい花嫁を見たのは初めてじゃ。」
「こんな不幸そうな花嫁を、ではありませんか。ピクシス指令。」
「…まぁ、それもあるな。」
「それしかありません。」
冷たく言葉を返す私に、ピクシス指令はお手上げだという顔をした後に頭を下げた。
驚いた私に、ルーカスに全てを話したのは自分だと教えてくれた。
なまえが両親に嘘をついて調査兵団の兵士をしていることを知ったルーカスは、ありとあらゆる手を使って、トロスト区に巨人襲来した日に存在しない兵士がいたことを突き止めたそうだ。
ピクシス指令はそれ以上は何も言わなかったけれど、きっと、ルーカスに脅されたのだろうと思う。
話すしか、なかったのだと思う。
そもそも、両親に嘘をついていたのは私だ。
こんな事態を招いたのは、私が両親のために出来ることを間違えたからだ。
「いいんです。もう。」
「いい、とはどういうことじゃ。」
「式が始まって、誓いの言葉を交わしたら、私はもう本当に諦めます。
そこまで迎えが来なかったら、それはもうそういうこと。
両親が望む人と結婚することが、みんなが幸せになる道なんです。」
だからもう謝らなくていいー。
そう告げて、私は立ち上がる。
早く行くわよと急かす母親に促され、式場へ歩き出そうとした私の背中に、ピクシス指令が声をかけた。
「お主は本当にそれでいいのか?」
いいわけないー!!
心の叫びをずっとずっと奥に押し込んで、私は笑顔をまとって振り返る。
「だって、これが私の運命なら、受け入れるしかないから。」
「そうか。では、個人的な意見として聞き流してくれ。
出来ればわしは、幸せな花嫁を見たかった。」
「…リヴァイ兵長に伝えてください。
あなたのおかげで、私は世界一幸せでしたって。」
「あぁ。覚えておくよ。」
頭を下げた私は、ルーカスが待ちくたびれていると呼びに来た白髪の執事に連れられて、今度こそ本当に式場に向かった。
母親に手を引かれる私に気付いた後、少しだけ話をさせてほしいとお願いし、攫いはしないと言うピクシス指令を全く信じていない母親は、彼もまた私が調査兵団に入団するきっかけの中にいた人物だと知っているようだった。
でも、兵団関係者と話せる機会なんてもう二度とないのかもしれない。
そう思った私が懇願すれば、母親も渋々了承した。
結局、見張りの憲兵をつけたままの状態で、私とピクシス指令は、壁沿いに置かれたソファに並んで座って話すことが許された。
「とても綺麗じゃな、こんな美しい花嫁を見たのは初めてじゃ。」
「こんな不幸そうな花嫁を、ではありませんか。ピクシス指令。」
「…まぁ、それもあるな。」
「それしかありません。」
冷たく言葉を返す私に、ピクシス指令はお手上げだという顔をした後に頭を下げた。
驚いた私に、ルーカスに全てを話したのは自分だと教えてくれた。
なまえが両親に嘘をついて調査兵団の兵士をしていることを知ったルーカスは、ありとあらゆる手を使って、トロスト区に巨人襲来した日に存在しない兵士がいたことを突き止めたそうだ。
ピクシス指令はそれ以上は何も言わなかったけれど、きっと、ルーカスに脅されたのだろうと思う。
話すしか、なかったのだと思う。
そもそも、両親に嘘をついていたのは私だ。
こんな事態を招いたのは、私が両親のために出来ることを間違えたからだ。
「いいんです。もう。」
「いい、とはどういうことじゃ。」
「式が始まって、誓いの言葉を交わしたら、私はもう本当に諦めます。
そこまで迎えが来なかったら、それはもうそういうこと。
両親が望む人と結婚することが、みんなが幸せになる道なんです。」
だからもう謝らなくていいー。
そう告げて、私は立ち上がる。
早く行くわよと急かす母親に促され、式場へ歩き出そうとした私の背中に、ピクシス指令が声をかけた。
「お主は本当にそれでいいのか?」
いいわけないー!!
心の叫びをずっとずっと奥に押し込んで、私は笑顔をまとって振り返る。
「だって、これが私の運命なら、受け入れるしかないから。」
「そうか。では、個人的な意見として聞き流してくれ。
出来ればわしは、幸せな花嫁を見たかった。」
「…リヴァイ兵長に伝えてください。
あなたのおかげで、私は世界一幸せでしたって。」
「あぁ。覚えておくよ。」
頭を下げた私は、ルーカスが待ちくたびれていると呼びに来た白髪の執事に連れられて、今度こそ本当に式場に向かった。