◇第百三十六話◇逃げていく背中
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視力の回復した女型の巨人は、立ち上がるとすぐにエレンを追いかけだした。
私から、逃げたー。
腕の筋肉を削いだからか、口の筋肉を削いだからか、自分は攻撃が出来ないから逃げるしかないと思ったのか。
立体起動装置からワイヤーを飛ばし、猛スピードで彼女を追いかける。
少し離れたところに逃げていくエレンの姿がずっと見えている。
このままでは、エレンを奪われてしまう。
「待ちなさいって言ってるでしょう!?」
とにかく、こっちを向かせたかった私は、女型の巨人の足首まで急降下した。
アキレス腱を切ってしまえば、さすがに走れないだろう。
回転しながら、左の足首から太ももまで一気に飛び上がる。
それでもなんとか進み続けようとする女型の巨人だったが、右足も同じようにしてやれば、前のめりに倒れて漸く動きが止まった。
「やった!!なまえ、すげぇぞ!!これならいける!!」
「いいから逃げなさいっ!!」
「は…、はい!!」
エレンが逃げたのを確認してから、ワイヤーを飛ばす。
女型の巨人の頭の上に乗って、これからどうしようかと考える。
口の筋肉は回復したようだったが、両腕の筋肉はまだ十分に回復していないようで、ぶら下がっているだけの腕では立ち上がれないようだった。
それでも、脚を使ってもがいているものの、アキレス腱をやられていてうまくいかない。
「私は、何としてでもあなたをここから先に行かすわけにはいかないの。
分かるでしょう?大切な友人が、仲間が、命を賭して守ったエレンをあなたに奪われでもしたら、
彼らの死を無駄死にしてしまうことになる。理解してくれるよね?」
ガスを吹かして飛び上がる。
まずは、脚だ。脚を削いでしまおう。
そうすれば、エレンを追いかけることは出来ない。
逃がしはしない、絶対にー。
そして、ちゃんと確かめなければ。
そのうなじの中にいるのは、人類の敵だということを確かめなければ。
殺したいくらいに憎い最低最悪の殺人鬼だと、この目で確かめなければー。
それなのにー。
脚の筋肉を削ごうとした私の超硬質スチールの刃が、硬質化した皮膚にあたって割れた。
すぐに替刃をとりつけようとしたものの、女型の巨人捕獲作戦の後、補充しておかなかったせいで、もう替刃がなかった。
マズいと思ったときには、立体起動装置のガスも切れ、私は地面に落ちる。
悪いことは重なるようで、とうとう戦う矛も盾も失った私とは反対に、女型の巨人の腕の筋肉もアキレス腱も回復したようだった。
女型の巨人が立ち上がる。
そして、地面に座り込む私を見下ろした。
目が合った。
それは、女型の巨人とか。それとも、うなじの中にいる人間か。
殺される
でも、すぐに彼女は、私に背を向けた。
私を殺そうとはせず、エレンが逃げた方向へと走っていく。
戦えない私は殺す必要もないとでも思ったのか。
あれだけ、大勢の調査兵を殺しておいて、なぜ私だけー。
「どうして…っ。」
女型の巨人は終始、私に牙を向けなかった。
ここで、私が殺されていれば、私は信じることが出来ただろうか。
赤いブレスレットを揺らす手首がチラリと見えたと思った瞬間、小柄な調査兵の後ろ姿は消えて、光と共に女型の巨人が現れた。
それでもー。
女型の巨人は、アニじゃない。
違う、違うー。
信じていた。
でも、私は気づいていた。
女型の巨人は絶対に、私を殺そうとしないと自信があった。
だってー。
≪行かないでほしい。≫
アニから届いた手紙、短いメッセージは、一体何を思って綴られたものだったのだろう。
私から、逃げたー。
腕の筋肉を削いだからか、口の筋肉を削いだからか、自分は攻撃が出来ないから逃げるしかないと思ったのか。
立体起動装置からワイヤーを飛ばし、猛スピードで彼女を追いかける。
少し離れたところに逃げていくエレンの姿がずっと見えている。
このままでは、エレンを奪われてしまう。
「待ちなさいって言ってるでしょう!?」
とにかく、こっちを向かせたかった私は、女型の巨人の足首まで急降下した。
アキレス腱を切ってしまえば、さすがに走れないだろう。
回転しながら、左の足首から太ももまで一気に飛び上がる。
それでもなんとか進み続けようとする女型の巨人だったが、右足も同じようにしてやれば、前のめりに倒れて漸く動きが止まった。
「やった!!なまえ、すげぇぞ!!これならいける!!」
「いいから逃げなさいっ!!」
「は…、はい!!」
エレンが逃げたのを確認してから、ワイヤーを飛ばす。
女型の巨人の頭の上に乗って、これからどうしようかと考える。
口の筋肉は回復したようだったが、両腕の筋肉はまだ十分に回復していないようで、ぶら下がっているだけの腕では立ち上がれないようだった。
それでも、脚を使ってもがいているものの、アキレス腱をやられていてうまくいかない。
「私は、何としてでもあなたをここから先に行かすわけにはいかないの。
分かるでしょう?大切な友人が、仲間が、命を賭して守ったエレンをあなたに奪われでもしたら、
彼らの死を無駄死にしてしまうことになる。理解してくれるよね?」
ガスを吹かして飛び上がる。
まずは、脚だ。脚を削いでしまおう。
そうすれば、エレンを追いかけることは出来ない。
逃がしはしない、絶対にー。
そして、ちゃんと確かめなければ。
そのうなじの中にいるのは、人類の敵だということを確かめなければ。
殺したいくらいに憎い最低最悪の殺人鬼だと、この目で確かめなければー。
それなのにー。
脚の筋肉を削ごうとした私の超硬質スチールの刃が、硬質化した皮膚にあたって割れた。
すぐに替刃をとりつけようとしたものの、女型の巨人捕獲作戦の後、補充しておかなかったせいで、もう替刃がなかった。
マズいと思ったときには、立体起動装置のガスも切れ、私は地面に落ちる。
悪いことは重なるようで、とうとう戦う矛も盾も失った私とは反対に、女型の巨人の腕の筋肉もアキレス腱も回復したようだった。
女型の巨人が立ち上がる。
そして、地面に座り込む私を見下ろした。
目が合った。
それは、女型の巨人とか。それとも、うなじの中にいる人間か。
殺される
でも、すぐに彼女は、私に背を向けた。
私を殺そうとはせず、エレンが逃げた方向へと走っていく。
戦えない私は殺す必要もないとでも思ったのか。
あれだけ、大勢の調査兵を殺しておいて、なぜ私だけー。
「どうして…っ。」
女型の巨人は終始、私に牙を向けなかった。
ここで、私が殺されていれば、私は信じることが出来ただろうか。
赤いブレスレットを揺らす手首がチラリと見えたと思った瞬間、小柄な調査兵の後ろ姿は消えて、光と共に女型の巨人が現れた。
それでもー。
女型の巨人は、アニじゃない。
違う、違うー。
信じていた。
でも、私は気づいていた。
女型の巨人は絶対に、私を殺そうとしないと自信があった。
だってー。
≪行かないでほしい。≫
アニから届いた手紙、短いメッセージは、一体何を思って綴られたものだったのだろう。