◇第九十九話◇お土産をどうぞ
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「わっ!?」
リヴァイ兵長の執務室兼自室の扉をノックしながら名前を告げた途端、本当にその途端、扉が爆発したみたいに勢いよく開いた。
でも、さすがなのは、私の額に扉の角が当たる寸前で止めたリヴァイ兵長の反射神経だ。
「悪ぃ…。」
「いえ、大丈夫です。」
本当に申し訳なさそうに眉尻を下げたリヴァイ兵長に、私は苦笑気味で答える。
きっと、帰ってくるまで心配してくれていたのだろう。
ずっと、帰ってくるのを待ってくれていたのだと分かるから、嬉しかった。
リヴァイ兵長は、私の手を握って部屋に引き入れると、扉を閉めた途端に強く抱きしめた。
本当に、抱きしめるのが好きな人だなー。
そんなことを思いながら、私も、紅茶の苦くて甘い香りのする愛おしい人を抱きしめ返す。
「ただいまです。」
「あぁ。おかえり。」
なんだか、くすぐったくて、照れ臭くて、私はリヴァイ兵長の肩に顔を埋めた。
いつか、こんな言葉を交わしたことがある。
調査兵団を去った私が、本当の調査兵になると覚悟を決めて戻ってきたときだ。
壁の上で『おかえり。』と抱きしめてもらったとき、あのときの私は、こんな日が来るなんて夢にも思っていなかった。
本当に、夢のように、幸せだ。
そんな私をもっと幸せにしてくれるリヴァイ兵長は、優しく私の髪を撫でると、キスをひとつくれた。
そっと触れるだけのキスが、心と身体の疲労をあっという間に忘れさせてくれる。
「お土産買ってきましたよっ。」
スキップでもしそうな勢いでリヴァイ兵長の手を引いてソファに向かった私は、並んで座ると早速、紙袋の中からお土産をひとつずつ取り出す。
「まずは、リクエスト頂いた紅茶の葉ですっ。
ウォール・ローゼ特産の珍しいなんとかっていう葉らしくて、
試飲させてもらったんですけど、なんか、とても美味しかったですっ。」
「ひたすらふわっとしてんな。」
「でも、味はしっかりしてましたっ!」
自信満々に紅茶の葉を差し出す私から、リヴァイ兵長は躊躇いがちに受け取った。
でも、小さな袋に入っている紅茶の葉を覗いている横顔は、とても興味津々のように見える。
とりあえず、紅茶の葉のお土産は成功のようだ。
「次はー。」
「まだあんのか?」
「はいっ!次は、じゃじゃーんっ。」
紙袋の中から、私が自慢気に取り出したのは木箱だった。
訝し気にするリヴァイ兵長に強引に渡して、開けてみてくれと、ウキウキドキドキしながら催促する。
私の視線を気にしつつ、リヴァイ兵長は躊躇いがちに木箱の蓋を開く。
「ティーカップか。」
「はいっ!しかもこれ、すごいんですっ!!
黒い翼がついてるんですっ!!」
「あぁ、そうみてぇだな。」
リヴァイ兵長は、取り出したティーカップを顔の前に持ってきてじっくりと眺め出す。
そして、私の顔を見て、とても不機嫌そうに口を開いた。
「俺を悪魔かなんかだと思ってんのか。」
まずい。
このお土産は失敗したみたいだ。
今、悪魔を連想する黒い翼は、タイミングが悪かったかもしれない。
でも、きっと、ちゃんと理由を話せば分かってくれる。
「あっ!おい、逃げんなっ!!」
リヴァイ兵長の部屋に設置されている給湯室に走った。
後ろから聞こえた怒っている声は、無視した。
そして、少し前からお邪魔させてもらっている自分のティーカップを持って戻った。
ソファでは、リヴァイ兵長が、不機嫌そうにしつつも、私が渡したティーカップを観察していた。
その隣に座って、私は自分のティーカップを見せる。
「ほら、リヴァイ兵長がくれたこのティーカップの白い翼と
その黒い翼を合わせたら、あら不思議っ!調査兵団の自由の翼にっ!!」
私のお給料で買えるものだから、リヴァイ兵長がくれたティーカップよりもチープだ。
でも、リヴァイ兵長ならきっと喜んでくれると思っていたから、私はとても嬉しそうに言った。そして、誇らし気にー。
でも、リヴァイ兵長は少し驚いた顔をした後、納得したように頷いて、そしてー。
「そんなくだらねぇ冗談を言うために、わざわざティーカップを買ったのか。」
「…喜んでもらえると思って、買ったんですよ…。」
「分かってる。冗談だ。ありがとうな。」
リヴァイ兵長が私の髪をクシャリと撫でる。
いつものクールな表情で、本当に冗談なのか、本当にありがとうなのか分からない。
「俺が悪かった。冗談だ。」
「…もういいです。エルヴィン団長にあげます。」
「ダメだ。これは俺のだ。」
取り返そうと伸ばした私の手を避けて、リヴァイ兵長は木箱にティーカップを戻す。
その仕草がとても丁寧で、慎重で、大切に思ってくれていることが分かる。
それが嬉しくて、ふふと笑うと、リヴァイ兵長が私の方を見た。
「…怒ってないのか。」
「あ、忘れてました。」
「そのまま忘れとけ。」
リヴァイ兵長は、ティーカップを仕舞った木箱をそーっとローテーブルの上に置く。
大切に扱ってくれるのはとても嬉しい。
嬉しいのだけれど、もしかして、そのティーカップは木箱から一生出ることがなく大切に大切に仕舞われ続けるのではないだろうかという、予感が過る。
「一緒にそのティーカップで紅茶飲みましょうね。」
普通のことを言っただけなのに、リヴァイ兵長が勢いよく私を見た。
そして、驚きを隠せない様子で、ゆっくりと、でも、ハッキリと告げる。
「割れちまったらどうすんだ。」
信じられないーという様子のリヴァイ兵長が、私は信じられない。
バカですか、と口に出かけて、慌てて胸の内に閉じ込める。
(明日の朝、そのティーカップで紅茶を出そう。)
明日の予定を立て、とりあえず、意味不明なリヴァイ兵長はスルーすることにした。
お土産はまだこれで終わりではない。
まだ目玉が残っているのだからー。
「次のお土産はっ!これですっ!!」
そう言って、私が紙袋の中から取り出して、天に掲げたのは、ニファから貰って来た新聞だ。
リヴァイ兵長の英雄っぷりがデカデカと、そして、たっぷりと語られている。
「あぁ…、今朝、ゲルガーが持ってきたやつがデスクの上にある。」
私が誇らしげに天井に伸ばした新聞紙をリヴァイ兵長が取り上げる。
そして、あまり興味なさげに新聞を広げた。
見開き一面には、調査兵団の誇る兵士長の勇姿が語られている。
「えー、そうなんですか?
さっき、ニファからその新聞見せてもらって嬉しくって。
リヴァイ兵長には私が最初に見せたかったのになぁ。」
少し頬を膨らました私だけれど、嬉しい気持ちが変わるわけはなく、頬は緩んでいた。
ルーカスがこんなにも早く願いを叶えてくれるとは思っていなかった。
きっと、私が屋敷を出た後、すぐに新聞社に指示を出してくれたのだろう。
さすが、黒幕だっただけあって、事件の詳細についても詳しく知っているから、記事の内容も完璧だった。
この記事がきっと、リヴァイ兵長を救ってくれる。
「私が帰ってきたときも兵門にたくさんの新聞記者の人達がいて、
英雄の話が聞きたいって騒いでましたよっ。さすがリヴァイ兵長ですねっ。」
ニコリと笑顔を向ける私を、リヴァイ兵長は何かを探るようにジーッと見つめた。
そしてー。
「お前が、何かやったんじゃねぇのか。」
疑い深い目は、決して、怒っているようではなかった。
ただ、真実を知りたくて、そして、不安そうでー。
「まさか、調査兵の下っ端が何をしたらそんなすごい記事出せるんですか。
そりゃ、確かに私はリヴァイ兵長が大好きですけど、すっごく好きですけど、
愛のパワーだってそんなの無理ですよ~。」
アハハー。
笑いながら、私はリヴァイ兵長が持っている新聞記事を手に取った。
こちらを睨むようなリヴァイ兵長の似顔絵が可笑しくて、本当に笑える。
笑いが止まらない。
嬉しくて、ホッとして、リヴァイ兵長が隣にいると、何だって楽しい。
「リヴァイ兵長は、やっぱり凄いですねっ。」
だって、心からそう思うのだ。
リヴァイ兵長のためなら、何だって出来るという人が、この世界に何人いると思っているのだろう。
きっと、この人は、そんなこと知りもしないでー。
自然と零れた笑顔に、リヴァイ兵長が瞳に揺らす疑いの色が次第に消えていくー。
「お前には敵わねぇよ。」
苦笑気味の声を、耳元で聞く。
やっぱり、リヴァイ兵長は、抱きしめるのが好きだ。
私も、リヴァイ兵長に抱きしめられるのが、大好きだ。
リヴァイ兵長の執務室兼自室の扉をノックしながら名前を告げた途端、本当にその途端、扉が爆発したみたいに勢いよく開いた。
でも、さすがなのは、私の額に扉の角が当たる寸前で止めたリヴァイ兵長の反射神経だ。
「悪ぃ…。」
「いえ、大丈夫です。」
本当に申し訳なさそうに眉尻を下げたリヴァイ兵長に、私は苦笑気味で答える。
きっと、帰ってくるまで心配してくれていたのだろう。
ずっと、帰ってくるのを待ってくれていたのだと分かるから、嬉しかった。
リヴァイ兵長は、私の手を握って部屋に引き入れると、扉を閉めた途端に強く抱きしめた。
本当に、抱きしめるのが好きな人だなー。
そんなことを思いながら、私も、紅茶の苦くて甘い香りのする愛おしい人を抱きしめ返す。
「ただいまです。」
「あぁ。おかえり。」
なんだか、くすぐったくて、照れ臭くて、私はリヴァイ兵長の肩に顔を埋めた。
いつか、こんな言葉を交わしたことがある。
調査兵団を去った私が、本当の調査兵になると覚悟を決めて戻ってきたときだ。
壁の上で『おかえり。』と抱きしめてもらったとき、あのときの私は、こんな日が来るなんて夢にも思っていなかった。
本当に、夢のように、幸せだ。
そんな私をもっと幸せにしてくれるリヴァイ兵長は、優しく私の髪を撫でると、キスをひとつくれた。
そっと触れるだけのキスが、心と身体の疲労をあっという間に忘れさせてくれる。
「お土産買ってきましたよっ。」
スキップでもしそうな勢いでリヴァイ兵長の手を引いてソファに向かった私は、並んで座ると早速、紙袋の中からお土産をひとつずつ取り出す。
「まずは、リクエスト頂いた紅茶の葉ですっ。
ウォール・ローゼ特産の珍しいなんとかっていう葉らしくて、
試飲させてもらったんですけど、なんか、とても美味しかったですっ。」
「ひたすらふわっとしてんな。」
「でも、味はしっかりしてましたっ!」
自信満々に紅茶の葉を差し出す私から、リヴァイ兵長は躊躇いがちに受け取った。
でも、小さな袋に入っている紅茶の葉を覗いている横顔は、とても興味津々のように見える。
とりあえず、紅茶の葉のお土産は成功のようだ。
「次はー。」
「まだあんのか?」
「はいっ!次は、じゃじゃーんっ。」
紙袋の中から、私が自慢気に取り出したのは木箱だった。
訝し気にするリヴァイ兵長に強引に渡して、開けてみてくれと、ウキウキドキドキしながら催促する。
私の視線を気にしつつ、リヴァイ兵長は躊躇いがちに木箱の蓋を開く。
「ティーカップか。」
「はいっ!しかもこれ、すごいんですっ!!
黒い翼がついてるんですっ!!」
「あぁ、そうみてぇだな。」
リヴァイ兵長は、取り出したティーカップを顔の前に持ってきてじっくりと眺め出す。
そして、私の顔を見て、とても不機嫌そうに口を開いた。
「俺を悪魔かなんかだと思ってんのか。」
まずい。
このお土産は失敗したみたいだ。
今、悪魔を連想する黒い翼は、タイミングが悪かったかもしれない。
でも、きっと、ちゃんと理由を話せば分かってくれる。
「あっ!おい、逃げんなっ!!」
リヴァイ兵長の部屋に設置されている給湯室に走った。
後ろから聞こえた怒っている声は、無視した。
そして、少し前からお邪魔させてもらっている自分のティーカップを持って戻った。
ソファでは、リヴァイ兵長が、不機嫌そうにしつつも、私が渡したティーカップを観察していた。
その隣に座って、私は自分のティーカップを見せる。
「ほら、リヴァイ兵長がくれたこのティーカップの白い翼と
その黒い翼を合わせたら、あら不思議っ!調査兵団の自由の翼にっ!!」
私のお給料で買えるものだから、リヴァイ兵長がくれたティーカップよりもチープだ。
でも、リヴァイ兵長ならきっと喜んでくれると思っていたから、私はとても嬉しそうに言った。そして、誇らし気にー。
でも、リヴァイ兵長は少し驚いた顔をした後、納得したように頷いて、そしてー。
「そんなくだらねぇ冗談を言うために、わざわざティーカップを買ったのか。」
「…喜んでもらえると思って、買ったんですよ…。」
「分かってる。冗談だ。ありがとうな。」
リヴァイ兵長が私の髪をクシャリと撫でる。
いつものクールな表情で、本当に冗談なのか、本当にありがとうなのか分からない。
「俺が悪かった。冗談だ。」
「…もういいです。エルヴィン団長にあげます。」
「ダメだ。これは俺のだ。」
取り返そうと伸ばした私の手を避けて、リヴァイ兵長は木箱にティーカップを戻す。
その仕草がとても丁寧で、慎重で、大切に思ってくれていることが分かる。
それが嬉しくて、ふふと笑うと、リヴァイ兵長が私の方を見た。
「…怒ってないのか。」
「あ、忘れてました。」
「そのまま忘れとけ。」
リヴァイ兵長は、ティーカップを仕舞った木箱をそーっとローテーブルの上に置く。
大切に扱ってくれるのはとても嬉しい。
嬉しいのだけれど、もしかして、そのティーカップは木箱から一生出ることがなく大切に大切に仕舞われ続けるのではないだろうかという、予感が過る。
「一緒にそのティーカップで紅茶飲みましょうね。」
普通のことを言っただけなのに、リヴァイ兵長が勢いよく私を見た。
そして、驚きを隠せない様子で、ゆっくりと、でも、ハッキリと告げる。
「割れちまったらどうすんだ。」
信じられないーという様子のリヴァイ兵長が、私は信じられない。
バカですか、と口に出かけて、慌てて胸の内に閉じ込める。
(明日の朝、そのティーカップで紅茶を出そう。)
明日の予定を立て、とりあえず、意味不明なリヴァイ兵長はスルーすることにした。
お土産はまだこれで終わりではない。
まだ目玉が残っているのだからー。
「次のお土産はっ!これですっ!!」
そう言って、私が紙袋の中から取り出して、天に掲げたのは、ニファから貰って来た新聞だ。
リヴァイ兵長の英雄っぷりがデカデカと、そして、たっぷりと語られている。
「あぁ…、今朝、ゲルガーが持ってきたやつがデスクの上にある。」
私が誇らしげに天井に伸ばした新聞紙をリヴァイ兵長が取り上げる。
そして、あまり興味なさげに新聞を広げた。
見開き一面には、調査兵団の誇る兵士長の勇姿が語られている。
「えー、そうなんですか?
さっき、ニファからその新聞見せてもらって嬉しくって。
リヴァイ兵長には私が最初に見せたかったのになぁ。」
少し頬を膨らました私だけれど、嬉しい気持ちが変わるわけはなく、頬は緩んでいた。
ルーカスがこんなにも早く願いを叶えてくれるとは思っていなかった。
きっと、私が屋敷を出た後、すぐに新聞社に指示を出してくれたのだろう。
さすが、黒幕だっただけあって、事件の詳細についても詳しく知っているから、記事の内容も完璧だった。
この記事がきっと、リヴァイ兵長を救ってくれる。
「私が帰ってきたときも兵門にたくさんの新聞記者の人達がいて、
英雄の話が聞きたいって騒いでましたよっ。さすがリヴァイ兵長ですねっ。」
ニコリと笑顔を向ける私を、リヴァイ兵長は何かを探るようにジーッと見つめた。
そしてー。
「お前が、何かやったんじゃねぇのか。」
疑い深い目は、決して、怒っているようではなかった。
ただ、真実を知りたくて、そして、不安そうでー。
「まさか、調査兵の下っ端が何をしたらそんなすごい記事出せるんですか。
そりゃ、確かに私はリヴァイ兵長が大好きですけど、すっごく好きですけど、
愛のパワーだってそんなの無理ですよ~。」
アハハー。
笑いながら、私はリヴァイ兵長が持っている新聞記事を手に取った。
こちらを睨むようなリヴァイ兵長の似顔絵が可笑しくて、本当に笑える。
笑いが止まらない。
嬉しくて、ホッとして、リヴァイ兵長が隣にいると、何だって楽しい。
「リヴァイ兵長は、やっぱり凄いですねっ。」
だって、心からそう思うのだ。
リヴァイ兵長のためなら、何だって出来るという人が、この世界に何人いると思っているのだろう。
きっと、この人は、そんなこと知りもしないでー。
自然と零れた笑顔に、リヴァイ兵長が瞳に揺らす疑いの色が次第に消えていくー。
「お前には敵わねぇよ。」
苦笑気味の声を、耳元で聞く。
やっぱり、リヴァイ兵長は、抱きしめるのが好きだ。
私も、リヴァイ兵長に抱きしめられるのが、大好きだ。