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はじめての七夕

「アズっ!」


パタパタと可愛らしい足音を響かせて現れたのはニナだった。カフェフォルトナの2階に住み込みをしている少女で、色々理由わけあって雇うことになり面倒をみている。


「どうした?今日は休みだぞ」


不思議に思いながら首を傾げていると、ニナが雑誌をつきだす。そこには七夕特集が大きく紹介されていた。織姫と彦星のコスプレのできる場所や七夕スイーツが堪能できるカフェ、季節のイベントでよくある割引サービスが受けられる施設。七夕メニューとして青い紅茶と青いケーキを店でも出しているものの、行事に対してそんなに熱がないため反応は薄い。




――なるほど。



「なぁなぁ、明日お店休んで七夕まつりいこうよ。出店もいっぱいでるんだって」


瞳を輝かせながら語るニナ――しかし、一刀両断。そんなことのために店を空けるわけにはいかない。



「休めるはずないだろう、無理だ」


するとニナはぷくーっと頬を膨らませ雑誌を投げつけてきた。


「アズのバカバーカ! もういいよセトといくから!!」



今度こそ言葉を失う。


――なぜ。そこでセトなんだ。


しかもライバル店の男。少しお高い店で、かなり調度品にもこだわっていると聞く。興味などないためあえてスルーしていたのだが、まさかここで聞くことになるとは。



立ち尽くしている間にもニナは立ち去り、ひとり残されため息をつく。そして付箋が貼られていることに気づき――思わず笑みが零れてしまう。


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