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ー2章ー

「永く生きすぎるのも、良いことばかりじゃぁない。特にこんな世で、忍として生きていればな。」

「……。」

「多くの人の最期を見てきた。
戦で親を亡くし、友を亡くし、師を亡くし、挙句の果てには弟子をも亡くす。
自分は生き長らえているからこそ、また新たな友ができ、弟子ができる。
しかしまた、私より先に逝ってしまう。」

作った鹿の氷像を指で弄びながら淡々と話すが、その言葉の重みというのは俺なんかでは想像もつかないものだと言うことだけは、頭が理解した。

「何度経験しようとも慣れるものじゃぁない。
しかしその度に涙を流し憂いている暇さえ私には無かった。
時間は膨大にあるというのに、それを許されはしない。
忍として生きるというのはそういう事だとわかっちゃァいるが、どうにもね。」

お茶を啜るとまたタバコに火をつけた。
己で撒いた話題だと言うのに想像を絶する重い話に俺はどんどん黙り込む事しか出来なかった。

「まぁ、そう暗い顔をするな。
お前たちの世代はきっとまだ、恵まれている。
そうならないように過ごしていけばいいだけだ。」
「そうは言っても、今でもどこかしらで戦はあって、その度に俺たちは駆り出される。
まぁ、忍として生きるって決めた運命ってやつなんですかね。」

どんな答えを俺は望んでいるのだろうか。
分からなかった。

「いつか、平和が訪れると信じていればいい。
お前たちの代でダメだったなら、また次の世代へ託すんだ。
人の生は有限。手の届くところには限りがある。
が、その手の届く範囲のものだけはしっかり守り通せばいいんだよ。」

伏し目がちに語る彼女の言葉はどこか虚ろで、まるで自分はそう出来ないと言っているように感じられた。
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