一瞬で空気が冷える。

まるで氷を吐き出しているかのように冷たい声が後ろから響き、柄にもなくゾワリと鳥肌が立った。

恐る恐る振り向くとそこには昨日みた、例の忍が先程の話に出た真っ黒なタバコを咥えながらこちらに向かって歩いてきていた。


「あっ、昨日の……」

俺が話し始めるや否や目の前にいたカカシ先生が俺をすり抜けその忍にすごい速度で近づいて行く。

「#名前#！お前、帰ってきてたなら連絡くらい寄こしたらどうなんだ？！」

何やらワケありなのは俺でもわかった。物凄い迫力でカカシ先生に迫られても相変わらず空気一つ揺らがせず、ふーっと紫煙を燻らせる。


「悪い、昨日帰ってきたんだ。久しいなカカシ。」
「ったく、あんたは。いつもそうだ。勝手にフラッと姿を消したと思ったら突然現れる。」
「おぉ。そりゃめっぽう忍らしいじゃないか。」


クククッと笑っているのか喉をただ鳴らしただけなのか、分からない笑い声を発する。
俺はひたすら状況についていけず2人を交互に見ているとカカシ先生の前からひょっこりとソイツが顔を出す。

「ところで、その後ろの坊主は？」
「あ？あぁ。シカマルだ。奈良シカマル。」
「奈良……？あぁ。シカクんとこの倅か。へぇ〜。」

相変わらず淡々とした口調で話しつつ近づいてくるソイツに少し身構えた。
親父の名前まで知ってる……どういうことだ。

「まぁ、そう構えないでくれよ。取って食いやしないんだから。」


初めてしっかりと顔を見合わせる。#名前#と呼ばれたその忍は、背丈は俺より少し低いくらいで、顔の真ん中に古傷がある。それに加え左の頬になにやら氷のようなものが付着している。いや、付着していると言うよりは例えるなら霜が降りているような。

「は、初めまして……。どうも。」

俺は当たり障りのない挨拶をする。露草色の双眸が冷たく俺を見る。相変わらず甘い香りが辺りに充満しているが、どうやら、匂いの正体はタバコのようだ。

お互い顔を突き合わせ、しばらく沈黙が続くが、不意にカカシ先生がその沈黙を破った。