幼なじみの特権
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翌朝、彩夏が部屋を出ると目の前に昨日話していたマネージャーが寝ぼけ眼で立っていた。
「あ、藍野さん…」
彩夏の声に気付いたのか、少しだけ顔を彩夏の方に向けて軽く手を振った。
「あー…おはよー…えっと…辻本さん…?」
「そうです!辻本彩夏です!」
「あー、そうね。そうね。あのさ、今何時かわかる?」
藍野は自分の左の手首を指さしながらそう問いかけた。
どうやら時計をなくしたらしい。
彩夏は慌てて自分の腕時計を見た。
「今…6:45ですね。」
「えっ?!やば!!もう朝のミーティング始まるじゃん!急がなきゃ!」
思っていたより時間が進んでいたのか、半分閉じていた目が一気に見開かれて自分の部屋に戻って行った。
ロッジのリビングには彩夏だけが残されたのだった。
「よし、朝のミーティングを始めるぞ。」
彩夏が食堂へ行き、昨日と同じ場所に座ると跡部がそう言った。
「観月、作業の振り分けは出来てるだろうな?」
「んふっ…もちろんですよ。作業表をこちらに張り出しておきますから、皆さん各々で確認してくださいね。」
「よし、なら朝のミーティングはこれで終わりだ。解散。」
彩夏はそっと作業表を見た。
跡部から自分は好きなところを手伝っていいと許可をもらっていた。
「宍戸さんの作業場所は……」
「俺がなんだって?」
予想外の声に思わず体が跳ねた。
今のが聞かれたか、と思わずばっと顔が赤くなる。
「しししし宍戸さん?!」
「朝から元気だな、辻本は。」
宍戸はそう言って可笑しそうに笑う。
どうやら宍戸は、自分の名前に反応しただけのようだ。
彩夏は思わずほっと胸をなでおろした。
「そうだ、あのな。」
宍戸は用件を思い出したようにそう話し始めた。
「はい?なんでしょう?」
「恵理見なかったか?あいつ、朝のミーティングの時いなかったからさ。」
「恵理さん…あ、マネージャーさんですね。えっと、朝見かけたんですけど…そこからは見てないですね。」
彩夏の返事に宍戸は呆れたようにため息をついた。
「ったく、ってことはまた二度寝してやがるな……朝飯抜きになっても知らねぇぞ。」
「あ、わたし起こしてきましょうか??」
「頼みてぇところだけど…あいつ寝起きの機嫌悪いからな…。俺が行くぜ。サンキューな。」
彩夏は思わずチクリと胸がいたんだ。
彼の言葉の節々に幼なじみを思う気持ちが垣間見えるのを、ひしひしと感じてしまったからだ。
しかも、言葉だけでなく視界の端に見えてしまったのだ。
宍戸の席にまだ手をつけていない料理が並んでいるのを。
その横に同じく手をつけていない料理がもう一通りあることを。
彩夏は彼の背中を見送り、踵を返して他の人が作業している場所へと向かった。