ラバ♡ラバ
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「千歳くん。」
思い思いに好きなことを始める授業と授業の合間の十分休憩。
クラスで特に目立っている(悪い意味ではなく身長が高い為)千歳 千里に、一人の女生徒が声をかけた。
「ん?なんね?」
「あのね…これ渡邉先生が千歳くんに渡してって…。」
そう言って差し出したのはA4サイズの茶封筒だった。
「オサムちゃんが?ありがとな。」
「ううん。ついでだったから。」
千歳は訝しげに書類を見ながら、自分に届けてくれた女生徒にお礼を言うと、女生徒は少し頬を赤らめながら自分の席へと戻って行った。
「さて…。」
自分の周りに人がいなくなったのを確認して、千歳は茶封筒を開いた。
中の書類を要約すると、夏休みの終盤、東京で氷帝の跡部が主催するテニス部の学園祭があり、それに四天宝寺代表でレギュラー陣が参加して欲しいというものだ。
「千歳!!」
最後まで読むか否かのところで、自分の背中に衝撃が走る。
どうやら誰かが自分に体当たりをしてきたようだ。
「どぎゃんしたと?恵理?」
千歳には体当たりしてきた相手に心当たりがあった。いや、心当たりしかなかった。
千歳が書類を机に置いて振り返ると、涙目で立っている女生徒がいた。
「千歳!!学園祭行くん?!あたしのこと捨てるんやな?!」
クラス中に響く声でそう言う。
藍野恵理、千歳がこの四天宝寺に転校してきた時に一番最初に友達になった女生徒だ。
千歳は二年の時にこの四天宝寺に転校してきた。その時、隣の席になったのがこの恵理だった。
三年になってからはクラスが離れてしまったが、こうやってよく千歳の様子を見にくる。
そして今回はどうやらこの学園祭の話を誰かに聞いたらしい。
「(相変わらず情報が早いたい。ま、謙也辺りが話したとね。)」
「千歳!嫌やで!あたし以外に彼女作るなんて!ここは大阪や!一夫多妻制は許可されてへんねんから!」
「いや大阪じゃなくても許可されてへんやろ。」
「うっさいねん!痴話喧嘩に口出すな!」
近くの男子のツッコミにしっかり反応を返すところがさすがは関西人、と千歳は感心する。
「俺が恵理以外を選ぶわけなかとよ?そぎゃんヤキモチ妬いてくれるなんて…むぞらしかねぇ。」
「千歳…!やっぱ千歳はほかの男子とちゃうわ!ほら!聞いたかお前ら!」
恵理の表情がばぁっと明るくなり、近くにいる男子達を指さしながらそう言って回る。調子のいい所も、関西人、ひいては彼女のいいところだ。
しかし、先に断っておくがこの二人は付き合っていない。
「千歳ー。こいつに付き合ってたら一生彼女できひんでー!」
「なんやて!どつく!」
「やめろや!」
恵理が自分を貶す男子生徒を引っ捕まえて首を絞めてる光景を、千歳は頬杖をつきながら眺めていたが、ふと男子生徒の問いかけに返事を返し始める。
「…今は彼女とか欲しくなかとよ。テニスが一番たい。」
「そうやそうや!千歳はテニス一番なんや!だいたい、サッカー部入ったくせにレギュラーなれんかったからって理由で野球部に行ったアンタにはわからんやろな!」
「うっさいわ!なんで俺の事そんな知ってんねん!ストーカーかお前は!」
「なんであんたみたいな男のストーカーせなあかんねん!千歳以外に興味無いわ!」
「恵理…俺以外の男追いかけとっと?…俺はちょっと寂しかね〜。」
「千歳…!あたしがこんんんんな!ちんちくりんをストーカーするわけないやろ!千歳一筋やで!愛してる!」
「ありがとな〜。」
「オレをかませにすんなや!バカップルが!」
すっかり踏み台にされた男子生徒の言葉は騒がしい教室のざわめき声にかき消された。
恵理は馬鹿にしたような顔で男子生徒を見ていたが、くるっと千歳に向き直してばんっと机を叩く。
「とにかく千歳!学園祭なんて!きっと東京の女子がこぞって千歳に告白するに違いないんや!」
「そぎゃんこつなかよ。それに…俺だけやなくて、白石達も行くとよ?」
「関係ない!こうなったらお小遣い前借りしてあたしも学園祭に……。」
親指の爪を噛みながらブツブツと一人で何かを呟いていたが、無常にも次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響き、恵理は慌てて教室を後にして行った。
千歳は嵐のように現れて嵐のように去っていった恵理の姿が見えなくなったあと、大きくため息をついた。
「はぁぁ……むぞらしかぁ…。」
「早く告白すりゃええのに…千歳も変わりもんやなぁ…。」
「なんとでも言えばよか……。」
千歳は思わずそう言って顔を伏せる。
そう、千歳は二年生の頃からずっと彼女に惹かれていた。
が、普段の関係からなかなか言い出せず、今日に至る。
もちろん、このクラスの男子全員がこの状況を知っており、今日もなんの進展もなかった二人に心中ため息をついているのだ。
「いや、これは俺の勘やけどな?千歳、お前はあいつに好かれとる!絶対や!だって、毎日千歳に会いに来るんやで?嫌いなわけあるかいな!」
先程、恵理をからかっていた男子がそう自信満々に話す。何故ここまで自信満々に言うかと言うと…
「俺とあいつは小学校から一緒やったんや!間違いない!間違いないぞ!千歳!」
ということだ。
しかし、千歳は以前顔を伏せたままだ。
「はぁ…今の俺は、おまんが俺よりあいつのこと知ってるこつにも腹立つくらい余裕なかけんね。」
「なんでやねん!」
「冗談たい。」
「千歳の冗談は冗談に聞こえんから嫌なんや!」
「それは悪かね。」
全く悪びれた様子もなくそう言う千歳に被せて、クラスの女子が先生が来たことをクラス中に知らせてこの話は終わりとなった。
放課後、ふらりふらりと校内を散歩している千歳がいた。
テニス部は今日も誠意練習中であるが、彼はよくふらりと姿を消すことがある。
そして今日の千歳は屋上にいた。
特に何をするでもないが、なんとなく今日は屋上に行きたくなった。
「気持ちよかね〜。」
屋上を吹き抜ける風が心地よい。
千歳は目を細めて風を体で感じる。
これだから散歩は辞められない、と心の中で思いながらふとグラウンドを見下ろしてみる。
グラウンドではサッカー部が一生懸命にボールを追いかけており、陸上部が様々な陸上競技の練習をしている。
千歳は走り高跳びの用意が置いてある場所に目をやる。
練習は既に始まっているが、千歳が探している人物は見当たらない。
恵理は陸上部で、走り高跳びの選手でもある。
「ちーとせ!」
休憩でもしてるのだろうと視線を外した瞬間、後ろから自分を呼ぶ声に思わず肩を震わせる。
「あっはは!びっくりした?ごめんやー!」
「恵理…練習はどげんしたと?」
「今から行こかなーって。で、千歳見つけたから追っかけてきてん!何してんの?千歳こそ練習は?」
「俺はちょっと散歩しとったんよ。まさかこんこつところで恵理に会うとは思わんかったばい。」
「あはは!千歳の背中見たら足が勝手に追いかけるねん!千歳大好きやから!」
そう言って恵理はにっと笑みを浮かべる。
「(なんで…こん子はこうも…)」
千歳は恵理の言葉に反応するように恵理に歩み寄り、そっと頬に触れる。
「ち…とせ……?」
「そぎゃんこと言われたら…本気にしてしまうとよ?」
「え……?」
「俺は本気で…恵理のこと好いとうよ。」
「へ…?え?」
見る見る顔が赤くなっていく。
「い…いや…千歳…彼女なんかいらんって…」
「…恵理以外の彼女なんて欲しくなかと。俺は…二年で転校してきた時からずっと恵理だけ見とった。」
「う…嘘……」
「嘘なんかじゃなかとよ。」
「……。」
恵理が俯く。心做しか肩が震えている。
千歳は後悔の念に駆られた。
調子に乗ってしまった。きっと彼女にとっては冗談でずっと自分のことを好きだと言ってくれていたのだと…
しかし、そんな千歳の心配は一気に吹っ飛ぶ。
千歳の顔を見上げた恵理の表情がとても明るく輝いていたからだ。
「もっっとはよ言うてくれたらよかったのに!!千歳のあほー!あたしはずっとずっとずーーーっと大好きやった!!というか、転校してきたあの日ぃから一目惚れしとったんよな。だって千歳めちゃくちゃかっこええんやもん!今までの言葉に何一つ嘘はないで!というか、ぶっちゃけ半分彼女や思うてたしな!あはは!」
恵理は顎に手を当てて首を傾げてみたり、両手を広げて見たりとくるくるポーズや表情が変化していく。
「千歳!うちも千歳のこと大好きやで!」
そして、改めて千歳に向き直り、そう言った恵理の表情は嬉しさと恥ずかしさが入り交じったような顔をしていた。
その顔を隠すように、ぎゅっと千歳の体を抱きしめる。
「恵理…ありがとな……。」
恵理の気持ちに答えるように千歳もまた恵理の体を優しく抱きしめた。
「千歳!!!やっぱり学園祭行くなんて聞いてへんで!!」
次の日、千歳のクラスはいつもの通り騒がしい。
「これはテニス部の決まりやけんね…俺一人で断ったりできんとよ。すまんね。」
「そんなん!全国の女子が千歳を好きになってまうやん!かくなる上はあたしがテニスバックに入って!!」
「いやお前はエスパー伊東か!!」
「うっさいねん!夫婦喧嘩に口挟むな!!」
いつもと変わらぬ日常に千歳は思わず苦笑いを浮べる。
「(そぎゃん心配されるとは…嬉しかね……。)」
心の中で一人そう呟き、千歳はすっと恵理の肩に手を伸ばし、抱き寄せる。
「心配してくれるんは嬉しか…でも、俺は恵理しか見とらんから…安心してよかよ。」
口付けを交わすのかと見間違えるくらい顔を近づけ、そう耳打ちをするとクラス中から黄色い声が溢れた。
「ち…千歳〜っ!」
顔を真っ赤にする恵理よりも早く、クラス中の男子と女子が千歳を囲む。
心做しか全員の目がハートになっている(気がする)
「千歳!俺にもそれやってくれ!」
「うちにも!耳がとろけてまうかと思った!」
「俺にもやってくれ!千歳!」
どうやら千歳は男女問わず虜にするようだ。
「お…お前らー!千歳はあたしの彼氏なんやでーーーー!!!」
両手を震わせ、恵理は涙目でそう叫んだ。クラス中に響く程の大声で。
思い思いに好きなことを始める授業と授業の合間の十分休憩。
クラスで特に目立っている(悪い意味ではなく身長が高い為)千歳 千里に、一人の女生徒が声をかけた。
「ん?なんね?」
「あのね…これ渡邉先生が千歳くんに渡してって…。」
そう言って差し出したのはA4サイズの茶封筒だった。
「オサムちゃんが?ありがとな。」
「ううん。ついでだったから。」
千歳は訝しげに書類を見ながら、自分に届けてくれた女生徒にお礼を言うと、女生徒は少し頬を赤らめながら自分の席へと戻って行った。
「さて…。」
自分の周りに人がいなくなったのを確認して、千歳は茶封筒を開いた。
中の書類を要約すると、夏休みの終盤、東京で氷帝の跡部が主催するテニス部の学園祭があり、それに四天宝寺代表でレギュラー陣が参加して欲しいというものだ。
「千歳!!」
最後まで読むか否かのところで、自分の背中に衝撃が走る。
どうやら誰かが自分に体当たりをしてきたようだ。
「どぎゃんしたと?恵理?」
千歳には体当たりしてきた相手に心当たりがあった。いや、心当たりしかなかった。
千歳が書類を机に置いて振り返ると、涙目で立っている女生徒がいた。
「千歳!!学園祭行くん?!あたしのこと捨てるんやな?!」
クラス中に響く声でそう言う。
藍野恵理、千歳がこの四天宝寺に転校してきた時に一番最初に友達になった女生徒だ。
千歳は二年の時にこの四天宝寺に転校してきた。その時、隣の席になったのがこの恵理だった。
三年になってからはクラスが離れてしまったが、こうやってよく千歳の様子を見にくる。
そして今回はどうやらこの学園祭の話を誰かに聞いたらしい。
「(相変わらず情報が早いたい。ま、謙也辺りが話したとね。)」
「千歳!嫌やで!あたし以外に彼女作るなんて!ここは大阪や!一夫多妻制は許可されてへんねんから!」
「いや大阪じゃなくても許可されてへんやろ。」
「うっさいねん!痴話喧嘩に口出すな!」
近くの男子のツッコミにしっかり反応を返すところがさすがは関西人、と千歳は感心する。
「俺が恵理以外を選ぶわけなかとよ?そぎゃんヤキモチ妬いてくれるなんて…むぞらしかねぇ。」
「千歳…!やっぱ千歳はほかの男子とちゃうわ!ほら!聞いたかお前ら!」
恵理の表情がばぁっと明るくなり、近くにいる男子達を指さしながらそう言って回る。調子のいい所も、関西人、ひいては彼女のいいところだ。
しかし、先に断っておくがこの二人は付き合っていない。
「千歳ー。こいつに付き合ってたら一生彼女できひんでー!」
「なんやて!どつく!」
「やめろや!」
恵理が自分を貶す男子生徒を引っ捕まえて首を絞めてる光景を、千歳は頬杖をつきながら眺めていたが、ふと男子生徒の問いかけに返事を返し始める。
「…今は彼女とか欲しくなかとよ。テニスが一番たい。」
「そうやそうや!千歳はテニス一番なんや!だいたい、サッカー部入ったくせにレギュラーなれんかったからって理由で野球部に行ったアンタにはわからんやろな!」
「うっさいわ!なんで俺の事そんな知ってんねん!ストーカーかお前は!」
「なんであんたみたいな男のストーカーせなあかんねん!千歳以外に興味無いわ!」
「恵理…俺以外の男追いかけとっと?…俺はちょっと寂しかね〜。」
「千歳…!あたしがこんんんんな!ちんちくりんをストーカーするわけないやろ!千歳一筋やで!愛してる!」
「ありがとな〜。」
「オレをかませにすんなや!バカップルが!」
すっかり踏み台にされた男子生徒の言葉は騒がしい教室のざわめき声にかき消された。
恵理は馬鹿にしたような顔で男子生徒を見ていたが、くるっと千歳に向き直してばんっと机を叩く。
「とにかく千歳!学園祭なんて!きっと東京の女子がこぞって千歳に告白するに違いないんや!」
「そぎゃんこつなかよ。それに…俺だけやなくて、白石達も行くとよ?」
「関係ない!こうなったらお小遣い前借りしてあたしも学園祭に……。」
親指の爪を噛みながらブツブツと一人で何かを呟いていたが、無常にも次の授業の始まりを告げるチャイムが鳴り響き、恵理は慌てて教室を後にして行った。
千歳は嵐のように現れて嵐のように去っていった恵理の姿が見えなくなったあと、大きくため息をついた。
「はぁぁ……むぞらしかぁ…。」
「早く告白すりゃええのに…千歳も変わりもんやなぁ…。」
「なんとでも言えばよか……。」
千歳は思わずそう言って顔を伏せる。
そう、千歳は二年生の頃からずっと彼女に惹かれていた。
が、普段の関係からなかなか言い出せず、今日に至る。
もちろん、このクラスの男子全員がこの状況を知っており、今日もなんの進展もなかった二人に心中ため息をついているのだ。
「いや、これは俺の勘やけどな?千歳、お前はあいつに好かれとる!絶対や!だって、毎日千歳に会いに来るんやで?嫌いなわけあるかいな!」
先程、恵理をからかっていた男子がそう自信満々に話す。何故ここまで自信満々に言うかと言うと…
「俺とあいつは小学校から一緒やったんや!間違いない!間違いないぞ!千歳!」
ということだ。
しかし、千歳は以前顔を伏せたままだ。
「はぁ…今の俺は、おまんが俺よりあいつのこと知ってるこつにも腹立つくらい余裕なかけんね。」
「なんでやねん!」
「冗談たい。」
「千歳の冗談は冗談に聞こえんから嫌なんや!」
「それは悪かね。」
全く悪びれた様子もなくそう言う千歳に被せて、クラスの女子が先生が来たことをクラス中に知らせてこの話は終わりとなった。
放課後、ふらりふらりと校内を散歩している千歳がいた。
テニス部は今日も誠意練習中であるが、彼はよくふらりと姿を消すことがある。
そして今日の千歳は屋上にいた。
特に何をするでもないが、なんとなく今日は屋上に行きたくなった。
「気持ちよかね〜。」
屋上を吹き抜ける風が心地よい。
千歳は目を細めて風を体で感じる。
これだから散歩は辞められない、と心の中で思いながらふとグラウンドを見下ろしてみる。
グラウンドではサッカー部が一生懸命にボールを追いかけており、陸上部が様々な陸上競技の練習をしている。
千歳は走り高跳びの用意が置いてある場所に目をやる。
練習は既に始まっているが、千歳が探している人物は見当たらない。
恵理は陸上部で、走り高跳びの選手でもある。
「ちーとせ!」
休憩でもしてるのだろうと視線を外した瞬間、後ろから自分を呼ぶ声に思わず肩を震わせる。
「あっはは!びっくりした?ごめんやー!」
「恵理…練習はどげんしたと?」
「今から行こかなーって。で、千歳見つけたから追っかけてきてん!何してんの?千歳こそ練習は?」
「俺はちょっと散歩しとったんよ。まさかこんこつところで恵理に会うとは思わんかったばい。」
「あはは!千歳の背中見たら足が勝手に追いかけるねん!千歳大好きやから!」
そう言って恵理はにっと笑みを浮かべる。
「(なんで…こん子はこうも…)」
千歳は恵理の言葉に反応するように恵理に歩み寄り、そっと頬に触れる。
「ち…とせ……?」
「そぎゃんこと言われたら…本気にしてしまうとよ?」
「え……?」
「俺は本気で…恵理のこと好いとうよ。」
「へ…?え?」
見る見る顔が赤くなっていく。
「い…いや…千歳…彼女なんかいらんって…」
「…恵理以外の彼女なんて欲しくなかと。俺は…二年で転校してきた時からずっと恵理だけ見とった。」
「う…嘘……」
「嘘なんかじゃなかとよ。」
「……。」
恵理が俯く。心做しか肩が震えている。
千歳は後悔の念に駆られた。
調子に乗ってしまった。きっと彼女にとっては冗談でずっと自分のことを好きだと言ってくれていたのだと…
しかし、そんな千歳の心配は一気に吹っ飛ぶ。
千歳の顔を見上げた恵理の表情がとても明るく輝いていたからだ。
「もっっとはよ言うてくれたらよかったのに!!千歳のあほー!あたしはずっとずっとずーーーっと大好きやった!!というか、転校してきたあの日ぃから一目惚れしとったんよな。だって千歳めちゃくちゃかっこええんやもん!今までの言葉に何一つ嘘はないで!というか、ぶっちゃけ半分彼女や思うてたしな!あはは!」
恵理は顎に手を当てて首を傾げてみたり、両手を広げて見たりとくるくるポーズや表情が変化していく。
「千歳!うちも千歳のこと大好きやで!」
そして、改めて千歳に向き直り、そう言った恵理の表情は嬉しさと恥ずかしさが入り交じったような顔をしていた。
その顔を隠すように、ぎゅっと千歳の体を抱きしめる。
「恵理…ありがとな……。」
恵理の気持ちに答えるように千歳もまた恵理の体を優しく抱きしめた。
「千歳!!!やっぱり学園祭行くなんて聞いてへんで!!」
次の日、千歳のクラスはいつもの通り騒がしい。
「これはテニス部の決まりやけんね…俺一人で断ったりできんとよ。すまんね。」
「そんなん!全国の女子が千歳を好きになってまうやん!かくなる上はあたしがテニスバックに入って!!」
「いやお前はエスパー伊東か!!」
「うっさいねん!夫婦喧嘩に口挟むな!!」
いつもと変わらぬ日常に千歳は思わず苦笑いを浮べる。
「(そぎゃん心配されるとは…嬉しかね……。)」
心の中で一人そう呟き、千歳はすっと恵理の肩に手を伸ばし、抱き寄せる。
「心配してくれるんは嬉しか…でも、俺は恵理しか見とらんから…安心してよかよ。」
口付けを交わすのかと見間違えるくらい顔を近づけ、そう耳打ちをするとクラス中から黄色い声が溢れた。
「ち…千歳〜っ!」
顔を真っ赤にする恵理よりも早く、クラス中の男子と女子が千歳を囲む。
心做しか全員の目がハートになっている(気がする)
「千歳!俺にもそれやってくれ!」
「うちにも!耳がとろけてまうかと思った!」
「俺にもやってくれ!千歳!」
どうやら千歳は男女問わず虜にするようだ。
「お…お前らー!千歳はあたしの彼氏なんやでーーーー!!!」
両手を震わせ、恵理は涙目でそう叫んだ。クラス中に響く程の大声で。
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