大きな背中
あなたの名前を教えてください
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
誰かこの状況を説明してくれ…
あたしは自分の横に座る半裸の男を視線だけでちらっと見つめた。
横では呑気に「雨止まないね…」なんて呟きながら空を見上げている。
というか服を着ろ。
あ、無理だ。びちょ濡れなんだった。
あたし達は薬草積みに出かけている途中、にわか雨に降られてこの洞窟で雨宿りをしている。
割とひどい雨だったから上着を脱いで絞り今後ろで干しているのだけれど…。
あたしとこの男、善法寺伊作はもう6年目の付き合いだ。
6年の付き合いなのだから今更下着1枚になっても特に気にはしない。
の…はずだったのに。
久しぶりに見た伊作の体は男らしい体つきに変わっていた。
ぷにぷにだった腕周りなどはしっかり筋肉がついている。
いつの間にこんなに…
「男らしくなったんだよ…。」
「え……?何か言った?」
「なんにもないよ…。」
「そっか。恵理、寒くない?大丈夫?」
「うん…とりあえずはいける。伊作は大丈夫?」
「大丈夫だよ。よく降るね…ちゃんと止むといいんだけど。」
「いつまでもここにいる訳にもいかないしなぁ…。」
「ごめんね、僕の不運のせいで。」
「何言ってんの。天気なんて気まぐれでしょ。伊作の不運は関係ないって。」
「…恵理はいつも優しいよね。」
「あたしが?なんで?」
「だって、いつも僕が謝っても僕のせいじゃないよって言ってくれるじゃない。」
「…あたしは目に見えないものは信用しないタイプなのよ。不運が目に見えたなら信じるけどね。」
「恵理らしいね。」
「ところで…いつの間にそんなに…その…鍛えたの?」
「え……?僕が?」
「昔はあんなにひょろひょろだったくせに。」
「そりゃあ僕だって忍術学園の最上級生なんだから。」
「まぁ…授業自体結構厳しいしね。」
「うん。まぁ、お陰様で体力もついたし!」
にこっと人懐こい笑顔でそう言って伊作はまた空を見上げた。
あたしは顔を逸らしながら、そっと視線のみで伊作の体を見る。
10歳のあの頃、あたし達の体はそんなに変わらなかった。
身長もあたしの方が高かったし、力も強かった。
留三郎と喧嘩したって勝つこともあった。
なのに今はどうだろう。
自分の体をそっと見下ろして、あたしは自分の体つきと遺作の体つきの違いにむしゃくしゃしてしまった。
膨らんだ胸、筋肉をつけたつもりでもやはりどこか柔らかい体。
身長も平均よりかは高いものの、ついに去年伊作にも追い抜かれた。
ムカつく…無性に…。
あたしは思わずグーで伊作の横腹を殴った。
「いたっ?!え?なに?」
伊作は驚いたように視線をあたしに戻した。
あたしはまるで子供みたいに頬を膨らませ、伊作を睨んだ。
「あたしを置いてくなよ。伊作。」
「え?僕が?恵理を?置いていくわけないでしょ?」
多分思ってる言葉の意味が違うんだろうな。
それでもあたしは伊作のその言葉が嬉しかった。
絶対言ってやんねーけどね。
あたしは返事の代わりにぽすっと伊作と肩に頭を乗せた。
1/1ページ