違和感の答え
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「恵理!」
しばらく町を探し歩いていると、ようやく探し人を見つけることが出来た。
名前を呼ばれた女性は驚いたように振り返って利吉を見た。
「利吉……?」
「何やってるんだ……しかも…」
利吉はちらっと隣に立つ自分と同じ顔を見る。
相変わらずよく出来た顔だ、利吉は思わず感心してしまった。
「鉢屋君まで巻き込んで…。」
「利吉さん、こんにちは。」
あっさりと変装を見破られたものの(変装している本人に面と向かっているから当然ではあるが)、鉢屋はにこにこと笑いながらそう挨拶を交した。
「悪かったね、鉢屋くん。またつまらないことに付き合わされたんだろ?」
「いいえ。私も興味あったことですから。」
「で?今度は何を企んでたんだ?」
「失礼ね。企んでなんてないわよ。ただのお出かけよ!お出かけ!」
「はぁ?」
「こないだ話してたでしょ?南蛮から珍しい動物とか食べ物とかがやってくるお祭りがあるって話。」
利吉は自分の記憶を必死に辿る。
言われてみれば…そんなことを言われてた気がする。
「行きたいって話したら興味無さそうにしてたじゃない。その話をしたら鉢屋くんが行きたいって言ってくれたの。で…ちょーっとお願いをしただけ。」
「恵理さん、利吉さんの顔で来てって言ったんですよ。」
「は?私の?」
「鉢屋くん!いらない事言わなくていいから!」
「でももうバレてますし、大人しく言ったほうがいいと思いますよ。」
「いいから!とにかく!今日は鉢屋くんとお出かけなんだから。あんたはさっさと家に帰ってなさい!」
「そんな訳にはいかないだろ。鉢屋くんに迷惑かけて…」
利吉と恵理のやり取りを見ていた鉢屋は少し考えて1歩後ろに下がった。
顔が心做しかニヤついている気がする。
「恵理さん、すみません。私、雷蔵に買い物頼まれていたのを思い出したので…申し訳ないですけど、利吉さんと行ってきてください!」
「ちょ!ちょっと鉢屋くん!」
「利吉さん、よろしくお願いします!では!」
「待ちなさい!って…もう行っちゃってるし…んもう!利吉が邪魔するからよ!私とても楽しみにしてたのに!」
「私のせいなのか?」
「あんたのせいよ!ったく…仕方ないわね。1人で行ってくるわ。」
「待て待て。」
頬を膨らませながら、一人で行こうとする恵理の肩をガシッと掴み、歩みを止める。
振り返った恵理の顔はとても機嫌が悪そうだ。
無理もない、恵理は予定をめちゃくちゃにされるのを死ぬほど嫌うのだから。
「なに?」
「悪かった…、その…楽しみを奪っちゃって…。」
「全くだわ。でももういいわよ。言ってたって仕方ないもの。」
「その代わりに…付き合うよ。そのお祭り。」
「え……?ほんと?」
「あぁ…。どこに行けばい…」
利吉の言葉を最後まで待たず、恵理は利吉の腕をまるで抱きつくように掴み利吉の顔を見上げた。
「ありがとう!利吉!大好きよ!さぁ!行きましょう!」
利吉は思わず息を飲んだ。
結婚して早数ヶ月。まだまだ恵理という存在は利吉にとってよく効く毒のようだ。
「(さり気なく見せるその顔…反則だろ…。)」
「なによ?文句があるなら聞いてあげるわよ?」
ったく…人がせっかく見惚れてるというのに可愛げがないな、なんて思いながら、利吉は思わず鼻で笑う。
利吉のこの思いに気付くことは二度とないのだろう。
「文句なんてないさ。ほら、案内してくれ。じゃないと私はわからないんだから。」
「そうね!行くわよ!利吉ー!」
(そういえば、なんで鉢屋くんに私の顔を希望したんだ?)
(っ!べ!別にいいじゃない!何ででも!)
(なんで顔を赤くするんだ…言いたくないなら構わないけど。)
("せっかくなら利吉と一緒がよかった"なんて…口が裂けても言えないわよ…!)
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