今日もいい天気だ。
藤色の着物の袖がパタパタはためいてる。
両手で洗濯するための桶と板を抱き締めながら、器用に風になびいている長い髪をそっと耳にかける。
「今日も…洗濯物がすぐに乾いてしまいそうね。」
そう呟き、ふわっと優しげな笑みを浮かべる。
「(あなたと出会ったのも…こんないい天気でしたね。)」
思い出すのは大切なあの人との大切な思い出の数々だ。
「さて！今日は忙しいのよ。見守っててね。あなた。」
青く澄み渡った空を見上げ、彼女はふんっと鼻を鳴らしながらそう呟いた。
「あのぉ……。」
ふと後ろから控えめな声が聞こえる。
くるっと振り返ると、茶髪の髪を一つにまとめた若者が声と同じくらい控えめにこちらに歩いてきていた。
「…すみません、遅くなりました…途中で転んでしまって…」
たしかによく見ると服の所々に泥がついている。
怪我はしていなさそうだ、そう安堵のため息をついて小走りで若者へと駆け寄って、洗濯桶を片手で支えながら頬についていた泥を持っていた手ぬぐいで拭ってやる。
「怪我はなさそうね。ふふふ。おかえりなさい。伊作くん。」
「…ただいま……恵理さん…。」

藍野恵理
25歳
既婚だが夫とは死別している。
最近の楽しみは…

-目の前の若者、善法寺伊作を可愛がること-