お題
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目の前に血の海が広がっている。
真ん中にはいつも私に軽口を叩きながら背中を押してくれていた恵理がまるで死んだように沈んでいた。
なんでだ?なんでこうなった…?
「なんで逃げなかったんだ…」
私は思わず心の内を吐露してしまう。
パシャッパシャッと音を立てながら私は彼女へと歩み寄る。
血の海は恵理から広がっている。わかりきってはいたが近付いてみるとその現実を突きつけられ、血の気が引いていくのを感じた。
上半身を抱き起こし、顔を自分の方へ向ける。
綺麗だ。
昔から…。
左手に握られた苦無を手の中から引き抜き、代わりに自分の右手をするりと絡ませる。
ぽたぽたと恵理の顔に涙がこぼれ落ちる。
顔を濡らす血と混ざり合い、顔に沿って落ちていく。
起きてくれ。もうすぐ夕方なんだ。ご飯の時間だろ。今日は私が作るから。今日くらい…
「ゆっくりしてていいから……起きてくれ…。」
強く、強く手を握り、左手でたった一人の大切な人を抱きよせる。
「…痛いわ…利吉……。」
耳元で…微かに声が聞こえ、私は慌てて顔を上げる。
目の前にはうっすらと開いた目がこちらを見ている。
自分の右手が緩くではあるが握り返される。
「……恵理…。」
「……ひどい顔…」
恵理に言われて私はハッとして自分が今どんな顔をしているのかと恥ずかしくなった。
「…心配したんだ…そんな顔にもなるだろ…。」
「ふふふ……。」
私が握っている手とは反対の左手をしんどそうに持ち上げ、私の頬にそっと触れる。
普段なら気持ち悪く感じる血液の湿った感触も、ヒヤッとした恵理の手の感触も、今はただ愛しく感じる。
「私は死なないわ……あなたを置いて逝けないでしょ…。だから…安心しなさい…。」
こんな時だけ歳上ぶって…そんなことを思いながらも私は、精一杯の強がりを見せてやろうと思った。
「そうだな…ははは。」
もう一度、今度は優しく恵理を抱きしめながら少し無理やりに声を出して笑いながら泣いた。
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