存在価値
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「はぁ……。」
小さな部屋に大きなため息が響く。
私は作業机に肘を置き、だらんと頬杖をついた。
他の先生に見られると注意されそうな態度だが、ラッキーなことに今は私一人だ。
私がここ忍術学園に赴任したのはつい先週の事。
人を殺す仕事ではなく、人を育てる仕事をしたいと思い転職活動をしていたらここに辿り着いた。
が…とにかく学園長含め個性が強すぎて、私にはとても馴染める環境ではなかった。
「あー…面接の時はあんまり感じなかったんだけどなぁ…。」
頬杖は崩さず、私は手元にあるテストに丸つけをしていく。
まだ新任なので、担当は持たされていないが、いずれこの個性溢れる忍たまを持つことになると思うと、胃が痛くなる。
あと、忘れていたけれど…私は子どもが嫌いだ。
「藍野先生?おられますか?」
私がだらだらとテストの丸つけをしていると、商事の向こうに人影が見え続いて優しい声色がこちらに声をかけてきた。
私は慌てて姿勢を正し、少し咳払いをして元気よく返事をした。
障子を開いて部屋に姿を表したのは、先輩教員の土井先生だった。
「テストの採点お願いしちゃってすみません…。」
「お気になさらずに。土井先生もお忙しいの知っていますから。私に出来ることならいつでもお手伝いしますよ!」
なんて言いながら、私はぐっと胸の前で拳を作った。
「ありがとうございます。」
土井先生は申し訳なさそうにしながら、そうお礼を言ってくれた。
この人は何故か新任の私にもこんなに低姿勢だ。
いい人なんだろうな。
「あ、そうだ。今日の午後はたしか空いていましたよね?」
「え…えぇっと…そうですね…今日は空いています。どうかされました?」
「えぇ…実は今日山田先生が出張で外に出られていて…ぜひ、藍野先生に実技の授業を担当して貰えないかと……。」
「私が……?私、まだ来たばかりですし…何を教えれば……。」
というか、やりたくない。
実技なんて汗かくし、 ましてやこの人の担当は一年生。しかも問題児が多い一年は組…子ども嫌いに拍車がかかってしまう。
「大丈夫。うちはまだ一年生ですので、そんな本格的なことはしていません。是非よろしくお願いします!」
土井先生の明るい笑顔で頼まれると私は、無理ですなんて言うことは出来なかった。
はぁ…めんどくさいなぁ……。
「わかりました……、やります…。」
私はにっこりと笑ってそう答えた、つもりだ。
上手く笑えているだろうか。
教師も楽じゃないな。
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