瞳に映った君の色 前編
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「恵理おはよう!相変わらず朝からラブラブねー。」
「ほんとほんと!潮江先輩、わざわざ恵理の部屋まで来たんでしょ?聞こえてたわよ。」
「……なら助けに来てくれたらいいじゃない。」
同級生の中でも特に私に絡んでくるこの二人、カエデとミキは、にやにやと楽しそうに笑いながら、ランニングを終えてぐったりとしていた私のところにやってきてそう声をかけた。
この2人は同室で、私の部屋のすぐ近くに部屋を持つ。
だからきっと今朝の騒動も聞いていたのだろう。
「できないよー!私たちには!」
「そうそう!」
一々癇に障る言い方をする。私はイラつきながらにんたまの友を机に叩き置いた。
二人は可愛らしい悲鳴をあげながら自分の席に戻って行った。
その日の授業は特に何事もなく、昼休みには同じ委員会の富松作兵衛が私に伝言を伝えに来たくらいで、平和に過ごすことが出来た。
放課後、今日は用具倉庫にある忍具の個数チェックを行うと伝言を受けていたので、鐘の音すぐに教室を飛び出した。
「こんにちはー。恵理来ましたー。」
「おう。一番乗りだな。」
用具倉庫には、用具委員会委員長の食満留三郎先輩が忍具の箱を棚から下ろしていた。
「はい。走ってきましたから。とめさぶ先輩、手伝いますよ。」
「悪いな。じゃあこれ頼む。」
とめさぶ先輩は持っていた忍具の箱を私に手渡した。
「そういや、今朝会計委員と一緒に走ってたらしいな。」
「え…まぁ……好きで走ってたわけじゃないですけど……。」
とめさぶ先輩は私が他の委員会と一緒にいた事を特に咎めるでも、嫌な顔をするわけでもなく笑った。
私は思わずむっとしてしまう。
なんで妬いてくれないんだ、この人。
「とめさぶ先輩、私が潮江先輩に取られちゃうとか思わないんですか?」
「ん?まぁ、それは無いだろ。」
私の質問にとめさぶ先輩はあっさりそう答えた。
私がその答えの真意を知ろうと振り返るが、とめさぶ先輩は気にした様子もなく忍具の箱を探している。
「お前は用具委員会が好きだろ。」
とめさぶ先輩の返答は思ったのとは少し違い、私は思わず脳天気なその後頭部に1発ゲンコツを入れたくなった。
「(好きなのは!!あんただよ!!とめさぶ先輩!!)」
この先輩は、私の気持ちなど一切気付くことなく呑気に棚の箱達とにらめっこをしている。
ここには二人きり、私は小さく息を吐き気持ちを落ち着かせた。
「とっ…とめさぶ先輩!」
私がとめさぶ先輩に声をかけようとした時後ろから別の声が聞こえてきた。
「入るぞ。会計委員だ。」
「ん?なんだ文次郎か。」
とめさぶ先輩は私の肩に手を乗せて少し横にずらす。
言ってくれたら退くのに。
「留三郎、先日お前が上げた予算だが……予算を出すのは無理だ。」
「なに?」
「お前達に回す予算はない。」
「なんだとぉ?!真っ当な予算しか出してねぇだろ!」
「やかましい!どこの予算もギリギリなんだ!考えてやっただけありがたいと思え!」
「コノヤロウ!なんだその言い方は!やるかこら!」
「上等だ!表出ろ!」
潮江先輩に掴みかかる勢いで外に転がり出ていく二人と交代で、用具委員会の富松作兵衛と浜守一郎が用具室の敷居をまたいで入ってきた。
「なんだぁ?」
作兵衛は外で殴り合いの喧嘩をしている二人を見て、今度はなんの喧嘩かと言わんばかりに声を上げるが、私はもう呆れ返って物も言えず、ただひたすら用具を片付けていた。
「もうほっときなよ。あんなおバカ2人。」
一瞬でも愛の告白をしようとした自分がバカバカしくなった。
なんでこうなったんだろう…これも全部潮江先輩のせいだ……。
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