輝かしい未来
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雨は止むどころか勢いを増している。
私はここまで思い出して、改めて自分がここに倒れている原因に思い当たる節があった。
私はタソガレドキ忍者を辞めるつもりだった。
元々、伊作の家族が私が危ない仕事を多く受けるタソガレドキの忍であることをとても心配してくれていたし、伊作や伊作の家族にこれ以上不安要素を増やしたり、心配をかける訳にも行かなかったからだ。
城主である黄昏甚兵衛に辞職願と次期くの一隊組頭の推薦状、そして大切なこんぷらいあんす誓約書等等とにかくたくさんの書類を持って頭を下げに行った。
黄昏様も最初は難色を示した。当たり前と言っては当たり前だ。
自分の城の軍備、火薬や武器事情、領主や領土の問題、なにもかもを知り尽くした忍があろう事か別の忍者に嫁ぐために仕事を辞めるというのだから。
しかし、それは私もわかっていたし、そのためのこんぷらいあんす誓約書だった。
私にとってタソガレドキは自分の親のような存在であることは変わらない、だからこそ私はたとえ伊作にであってもここの機密を漏らすつもりなどなかった。
黄昏様はしばらくした後、全ての書類を受け取り私の辞職を認めた。
「しかし、今来ている仕事だけはこなしてもらうぞ。そのあとは好きにすればいい。」
私はそれを快諾し、今回で袖を通すのは最後であろうタソガレドキくの一隊の忍者服に袖を通した。
今回の仕事は、合戦場の兵力を調べること。
いつもの様に闇に紛れて仕事を行っていた。
敵に見つかるなんてヘマはしていないはずだ、しかし聞き覚えのある銃声の後、腹部に鈍い痛みが走って立っていた木から落ちたのだ。
そして今
私は消えそうな命の灯の中ひとつの結論に至った。
「なんだ…仲間に撃たれたのか……。」
もう喉が掠れてろくに声も出ないが、ただ一言そう呟いた。
聞き覚えのある銃声は我々タソガレドキ鉄砲隊の銃声。
そして私の仕事場所など、仕事を依頼した黄昏甚兵衛なら知っている。
私は思わず自分の愚かさに笑いがこみあげてきた。
「だから行くなと言ったんだ。」
1人で力なく笑っていると、視界の端から組頭の顔が見えた。
包帯と覆面に覆われていてあまり表情は見えていないが、心做しか眉を顰めて苦しげな表情をしている気がする。
「組…頭……?すみません……」
組頭の顔を見てわたしはどこかほっとしてしまった。
1人で死ぬもんだと鷹を括っていたものの、やはり一人は寂しいものだ。
私は出ない声を絞り出して、もう一度組頭を呼んだ。
組頭の返事を待たず、いや待つことが出来なかった。
「組頭…お願いが…い…さくに……」
言葉が出てこない。私の瞳からはあの時のような大粒の涙がこぼれ落ちてきた。
「私は…元気でいると…伝えて…くださ…」
組頭は唯一見えている片目で私を見下ろしている。
「伊作が…泣かないように…嘘…ついてもらえませんか……わ…わたし…伊作に…嘘つい…たこと…ないから……」
体の感覚が無くなってきた。
意識も朦朧とし、組頭の顔も見えなくなってきていた。
「私の言うこと…なんでも…信じるんです…組頭…お願い…伊作が…悲しまないように…お願いします…くみ…が……」
そこまで言って、私の意識は途切れた。
組頭からの返事を聞くことも無く。
ドンドン
「はい…あっ…雑渡昆奈門さん?!ずっと探していたのです!あの!恵理がもう1週間戻ってなくて…たしかに…彼女は腕の立つくの一ですけど…さすがに心配で……!」
「…伊作君、君に伝えておかないといけないことがあるんだ。」
「えっ…………?」
完