輝かしい未来
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これが私と伊作の出会い。
あれから何度か合戦場で、町で、…何も無いところで顔を合わせ、そして私は伊作の人柄にだんだん惹かれていった。
仕事のない日に、二人で出掛けたりする回数も月日を追う事に増えていった。
彼が忍術学園を卒業して、しばらくした頃、私はタソガレドキ忍軍の新設くの一隊の組頭に任命された。
組頭は私が適任だと推薦してくれたが、私は突然何十人の部下を持つことになって、精神的にかなり追い込まれていた。
自分の一言で仲間が死ぬことも少なくない。
そんな私を支えてくれたのも伊作だった。
「無理しなくてもいいんだよ。泣きたい時は僕がそばに居てあげるから。」
そう言って何も聞かずに私を抱きしめてくれていた。
この頃から私と伊作は友達の関係から恋人の関係へと変わっていた。
私の成長ぶりは、城主である黄昏甚兵衛をも唸らせた。
タソガレドキ忍軍は徐々に人数を増やし、気がついたら私は数百人を束ねる組頭になっていた。
一方で伊作も、向いていないと思っていた忍者の仕事にも慣れてきたのか、割と様になってきていた。
仕事も軌道に乗り、落ち着いた頃を見計らって、私達は小さな屋敷を二人で借り、細々と生活を始めた。
自分の部下がだいぶ成長し、組頭の座を譲ろうか、などと考えていた時、私達はたまたま休みが重なって二人で出掛けることになった。
「いい天気だね…。」
伊作は左手にお弁当、右手に私の手を握って気持ちよさそうにそう呟いた。
「ほんとだね…久しぶりだもの。こんなゆっくり出来るの。」
私は繋がれた自分の左手をちらっと見つめて、少し嬉しくなって笑みをこぼした。
伊作は何となくどこか緊張しているような雰囲気だった。
久しぶりに二人で出掛けているからだろうか?
ちらほらと野花が咲く野原に二人並んで座り、弁当を開けた。
私は昨日夜遅くまで仕事があった為、今日の弁当は全て伊作が作ってくれていた。
朝起きれなかった自分を責めたが、伊作はまったく気にした様子もなくケロッとした顔で「楽しかったよ?久しぶりにお弁当作るのも。」と遠回しに私を気遣ってくれた。
「伊作。何から何までやらせてごめんね。」
「いいんだ。昨日も夜遅くまで頑張ってたの知ってるし…僕にできることならやるよ。」
「でも、伊作も仕事してるのには変わらないでしょ。それなのに私だけ…。」
いつもならありがとう、で済ませていたがあまりにも自分の不甲斐なさに思わず弱音をこぼしてしまった。
そのことに対して、伊作は少し面食らったように動きを止めた。
そして意を決したのか、かたんとお箸をお重の上に置いて私の手を取った。
私は突然のことに言葉を失って、ぽかんとした情けない顔で伊作の顔を見る。
伊作は、真剣な顔で私のことを見つめている。
「あのね…聞いて欲しいことがあるんだ。」
「は…はい……。」
私は耐えきれぬ緊張感に意味もなく敬語になってしまう。
伊作はすっと私の手を取り、優しく握りしめ
「……僕と…夫婦になってくれませんか…?」
と真っ直ぐに私を見つめて、そう言ってくれた。
私は思わず顔を真っ赤にして、それと同時に瞳からポロポロと涙がこぼれ出した。
止めよう止めようと必死に呼吸を整えようとしたが、まるで自分の体ではないかのように涙が止まらなかった。
伊作はとても慌ててオロオロとしていた。
何故か「ごめんね、本当にごめん」と謝っている。
私はふるふると首を横に振って、涙でぐちゃぐちゃになった不細工な顔でへらっと笑って一言「なります。」と呟いた。
今度は伊作が驚き、顔を真っ赤にして、涙を流す番だった。
その日の弁当はいつもより塩味がしたけれど、いつもより幸せな気持ちで食べることが出来た。