snow!
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「雪」
不意に窓の外を見つめたアイルがそう呟いた。
彼に向き合っていたジェドも、その声に導かれるように窓に目をやる。
室内のぬくもりとは真逆に、しんしんと降り続ける粉雪。
「どうりで…寒いと思った」
その雪はまだ降り始めたばかりのようで。
地面に舞い降りては儚く消えていった。
その儚い情景が今日の出来事に重なり、ジェドは唇を噛み締めた。
戦闘中、ちょっとした不注意でアイルが負傷してしまった。
初歩的なミスだった。
一瞬、他の敵に気を取られたばっかりに彼の援護に遅れてしまった。
急いで援護に回った時には、アイルは敵の斬撃を受け、地面に倒れ込んでいて。
痛みに顔を歪める彼のその姿が、目に焼き付いて離れない。
幾度となく戦闘に参加していたはずなのに、初めて感じた躯の底から湧き上がるような恐怖感。
今でもまだ手が震える。
怖かった。
彼を失うことが…
ジェドはアイルに向き直り、ベッドに座るその躯を抱き締めた。
「…どした、ジェド…」
「なんでもない。ただ、こうしたかった」
「ヘンなの」
優しく微笑んでジェドの頭をポンポンと撫でた。
顔や腕など至る所に巻いてある包帯が痛々しい。
しかしアイルは、いつもと変わらぬ笑顔だった。
「ゴメンな、守り切れなくて。元々お前はこの戦争に参加する意志がなかったのに」
「仕方ないよ、こんな時代だもん。国から召集が来た時点で覚悟はしてたさ」
逃げられない、世界を巻き込む大きな戦い。
戦場に赴く度、悲しい程それを痛感する。
アイルは悲観する[#dn=12]の大きな手を握り締めた。
「まぁいいじゃない。こうしてちゃんと生きてるんだから」
「…あぁ、そうだな。本当に…そうだ…」
それを確かめるように、ジェドは傷付いたその頬をそっと撫でた。
そこにある、確かなぬくもり。
少し乾いたピンク色の唇を親指でなぞる。
「俺は大丈夫だよ」
そして紡がれる、芯のある言葉。
それに安堵するように、そのままジェドは、優しく口付けした。
「ん…」
ただ、重ねるだけの口付け。
すぐ近くで感じる吐息に、ジェドの表情がようやく和らいだ。
強い彼だからこそ、内側はこんなにも脆く壊れやすくて。
「俺もいつまでも…昔みたいに守られてばっかりじゃいられないね」
アイルの言葉に、ジェドは笑いながら頷く。
窓の外では雪が、大地を覆い尽くすよう降り続けていた。
END
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