日記
開廷
2019/10/20 05:50感想
映画版ソロモンの偽証観ました。
前・後編の2部構成。宮部みゆき原作です。
小説未読なんですが前編のレビューがめっちゃ良さげだったのでつい。
とりあえず岡田斗司夫が良いって言ったもんは気になるので観ます。
中学生が学校で裁判ひらく話ですね。
クラスメイトが屋上から飛び降りて自殺した。
その死の真相を、学生主体で探っていく。
こう書くと最近ドラマでやってた「3年A組」思い出しますね。
この映画、学生を演じてる子役の子たちがほぼ無名の新人さんっていうのがすごいんですよ。
教師・保護者勢は結構豪華な顔ぶれで、名前存じてる俳優さんばかりなんだけど、子役は初出演な子がほとんど。なのに残念感が無い。特に主役の女の子が良い。凛々しい。泣きの演技が全然わざとらしくないから毎度つられて泣く。無理に泣こうとしてるように見えないんだよ。ほんとに、多感な時期の子って感じで、感情を揺さぶられて自然と涙がこぼれてくる、みたいな演技がめちゃくちゃ上手い。
主役だけじゃない。脇役の子もすごいの。
いじめに遭ってた女の子2人が泣き叫ぶシーンは圧巻。
まじで観てるだけで辛い。
松子ちゃんっていう、肥満体型だけど優しくて友達思いの子がいるんだけどあの子の死をどう処理していいか分からない。つらい。
この子は飛び降りた男の子じゃなくて何かとばっちりというか、別件で死んじゃうんだけど、すごくいい子だし両親とも仲良しだし部活にも一生懸命取り組む頑張り屋さんなのに、なんであんな…。
この映画、前編の評判はすごく良いけど後編はダメ出しが多いみたいです。
というのも、前編で謎だった部分が解明されていくたびに、「そのエピソード、自殺の件とは無関係じゃん」って発覚するからなんですね。
でも無関係なように見えるちっちゃい事件がちょっとずつちょっとずつ絡み合った結果の事件だってことをいってるんだと思うんだよな、この作品は。
「誰々のせいで死んだ」って断定できない。
誰かひとりが裁かれるのではなく、誰もがこの事件に関与してるんだぞってことなんだと思う。
さて見せ場である校内裁判。
前編で、主人公が生徒だけで裁判をやりますって決意するあたりはめちゃくちゃカッコイイ。
でもその準備してる間は、主人公とその取り巻き以外の生徒はなんか、学園祭期間ですか?ってぐらいお気楽。このあたりは狙ってそういう演出にしてるんだろうな、たぶん。原作ではどうなってんのか知らんけど。
でもそうだよな。事件から半年経ってるし、当事者じゃない生徒にしてみれば「裁判ごっこ」だもんな。裁判初日の体育館はまさに「学園祭」そのもの。演劇部の出し物を見に来た生徒とその保護者たちって感じ。真剣みゼロ。最終日もそう。真実が明らかになって、判事の判決が出た。体育館から出ていく生徒・保護者の顔は、まるで演劇を見終わったあとの観客のよう。
そうなんだよ、演劇なんだよ。
裁判所に見立ててはいるけど、結局ここは学校の体育館だし、傍聴席はパイプ椅子。判事も検事も弁護士もみんな学生。観ている者にとっては「お芝居」。
このあたりにね、小説を映像化する意味みたいなものを感じますよね。
結局さ、映画観てるのと同じってことですよ。
裁判傍聴してる間はいろんな感情をいだく。
「なんてひどい」「いじめは良くない」「苦しんでいる人間を助けられなかったのはつらい」。
でもこの裁判が終わったらそんなのすぐに忘れてしまう。
非現実的だった体育館から一歩出れば、またいつもの日常が待っている。映画館と同じですよ。
で、その日常に戻ってへらへら生きてく事が悪いのかって言うと、そうではないんだな。
忘れていい。蓋をしてもいいから、生きていくことが大事なんだってことがこの映画のテーマなんだと思う。
そうしないと生きられないよねっていう、諦めみたいなものも感じるけど。
ラストのシーンで現校長先生があれからこの学校では自殺もいじめも無いんですよって言い切ってたのがまさにそれって感じ。
学校からいじめが無くなるなんてことあるわけないじゃんね。
これはもうさ、見たいものだけ見てるってことだよな。そうしないと教職なんて務まりませんっていう、割り切った大人の考えなんですな。まさに社会。「学校は社会の縮図」を丁寧に見せられた感じです。そこに正しい正しくないを求めるのは困難。
ともかく、かなり刺激的な作品であったことだけは確かです。