小話
贈り物を貰うということは、嬉しいことだ。だって少なからず相手のことを考えているから。どんなにどうもいい相手だってある程度は考える筈だ。つまり、贈り物には相手からの想いが詰まっている。
時々、その価値や金額しか見ない人がいる。なんて心が貧しいのだろうかと僕は思うのだ。僕はダイヤモンドで粧された金属のアクセサリーや薔薇の花束だって素敵だとは思うけれど、四つ葉のクローバーやスーパーの特売のプリンだって同等の価値があるだろう。
だって相手は僕を喜ばせてくれようとしているから。価値は変わるんだ、時間や時代と同じで。
「ご婚約ですか?」
「…ええ」
ショーウィンドウの中には未来と希望が詰まっている。酷く眩しいものに見えるが、僕は今から未来を買うのだ。彼女を僕に一生縛るための銀のリングを。
彼女は9月生まれだからサファイアにしよう、小柄で控えめな彼女にぴったりの小さなサファイアがいい。僕?僕はいいんだ、彼女が喜んでくれればそれで。だから僕も彼女とお揃いがいいのだ。
ところで贈り物というものはサプライズだと更に喜びが増すと思わないか。僕は嬉しくなるから、僕の証をあげるのは秘密にしようと思う。次のデートで突然渡すんだ、そして彼女は喜びで泣いてくれる。僕は泣いた彼女を見て泣くのだ。
僕宛てのプレゼントがあると聞いたのは彼女のお母さんからだった。僕はスマホを放り投げて、家を飛び出す。サプライズだった。
彼女の家に行くと大きな大きな箱が置いてあり、彼女の母が顔を覆いながらこちらへと向かってくる。
「貴方に蓋を開けて欲しくて」
震える手で蓋に手を掛ける。ゆっくりと蓋を開けると、そこに彼女は居た。いつもの優しくて、少し大人しくて、笑顔が世界一可愛い彼女が。
おかしいな、僕に笑顔を見せてよ。いつもみたいに控えめに手を振ってくれよ。僕の視界はぐにゃりと歪んで、世界は色を失った。
僕は正装をする。新郎らしい黒いスーツに、右手には青いベロア生地の小箱を持って。彼女の左手の薬指にサファイアを嵌めて、僕は微笑んだ。縛られるのは彼女じゃない、僕が彼女に縛られるのだ。
こんなサプライズは要らない。そうだ、贈り物を突き返そう。送り返したものは灰になってもう二度と戻ってくることはなかった。
時々、その価値や金額しか見ない人がいる。なんて心が貧しいのだろうかと僕は思うのだ。僕はダイヤモンドで粧された金属のアクセサリーや薔薇の花束だって素敵だとは思うけれど、四つ葉のクローバーやスーパーの特売のプリンだって同等の価値があるだろう。
だって相手は僕を喜ばせてくれようとしているから。価値は変わるんだ、時間や時代と同じで。
「ご婚約ですか?」
「…ええ」
ショーウィンドウの中には未来と希望が詰まっている。酷く眩しいものに見えるが、僕は今から未来を買うのだ。彼女を僕に一生縛るための銀のリングを。
彼女は9月生まれだからサファイアにしよう、小柄で控えめな彼女にぴったりの小さなサファイアがいい。僕?僕はいいんだ、彼女が喜んでくれればそれで。だから僕も彼女とお揃いがいいのだ。
ところで贈り物というものはサプライズだと更に喜びが増すと思わないか。僕は嬉しくなるから、僕の証をあげるのは秘密にしようと思う。次のデートで突然渡すんだ、そして彼女は喜びで泣いてくれる。僕は泣いた彼女を見て泣くのだ。
僕宛てのプレゼントがあると聞いたのは彼女のお母さんからだった。僕はスマホを放り投げて、家を飛び出す。サプライズだった。
彼女の家に行くと大きな大きな箱が置いてあり、彼女の母が顔を覆いながらこちらへと向かってくる。
「貴方に蓋を開けて欲しくて」
震える手で蓋に手を掛ける。ゆっくりと蓋を開けると、そこに彼女は居た。いつもの優しくて、少し大人しくて、笑顔が世界一可愛い彼女が。
おかしいな、僕に笑顔を見せてよ。いつもみたいに控えめに手を振ってくれよ。僕の視界はぐにゃりと歪んで、世界は色を失った。
僕は正装をする。新郎らしい黒いスーツに、右手には青いベロア生地の小箱を持って。彼女の左手の薬指にサファイアを嵌めて、僕は微笑んだ。縛られるのは彼女じゃない、僕が彼女に縛られるのだ。
こんなサプライズは要らない。そうだ、贈り物を突き返そう。送り返したものは灰になってもう二度と戻ってくることはなかった。
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