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6章 緑に燃える

子供を迎えるというのは働き手を増やすことであって、養う者を増やすことではない。そう言われて緑色の目に大粒の涙を称えながら働きに出たのは9つのころ。そこでは多くの子供がパンの欠片1つで2日は働かされていた。信じられないことではない。たとえ給料がでても、ほぼ全てを実家に送る。
僕ら緑目の双子はその中で何とか食いつないで行こうと思っていた。けれどそれは容易ではなく、さらには2人とも瓜二つだったことが災いする
「お前達は2人で1つでいいな。どうせ入れ替わったってわからねぇ」
そうここを仕切る筋肉の塊が言ったのだ。どんなに働いていようと1人分。2人とも違う仕事で稼げばよかったのだが、年端も行かないうちに縋れるものから離れる訳にはいかなかった。
そんな中、僕らに救いの拾い手がついた


「坊ちゃん、今日はどこへ?」
あくる日、今から4年ほど前だろうか。まだフィルマー坊ちゃんが路上で狙われることも無く、時折侵入者がいる程度の頃
瓜二つの顔2つがフィルマーにむけられた。頬に一本の白線を引いた赤髪の使用人が馬車に荷物を詰めながら問うと、二本線を引いた方が申し訳なさそうな顔をする
「視察だよ。珍しく僕がいってもいいそうだ。あんなにも目立って狙われでもしたらなんて言うくせに、少し遠出は僕に任せるんだ」
「よかったですね!」
使用人らしくない気の知れた物言いをするこれらをフィルマーは窘めなかった。フィルマーが唯一雇を許可された使用人であり、彼専用の従者でもある。これほどのことを父親から許されるなど滅多にない。それを双子もよくわかっていた
「お気をつけて!」
「君達2人も行くんだよ?」
何を言っているんだという顔を3人揃ってしたことがおかしかったのか、坊ちゃんが笑い出す
「僕らもですか?」
「緑目のもの達がしまい込んだ財を買い取ろうって話だ。君達がいた方がいくらか都合がいい」
「僕らはいるだけになりますよ」
「構わないよ。僕らが親しげにしている姿を見せるだけでいい。君らも覚えがあるだろ?」
貴族が下のもの達と親しくしている姿を見れば信じる。確かに覚えがあった。それに坊ちゃんが望むのはいつだって正しいに決まっていた
「まぁ、僕とこいつだけでもいいんだけど……ほら、こいつは人相がね」
くすんだ赤いコートを着て馬車の外後方に座る青年が失礼なと言っていたように思ったけれど、坊ちゃんが咎めないのなら僕らには関係がなかった。大人しく馬車に乗り込んで
「あいつ…ルフスは人相も口も悪いから他の奴がいいって言ったのに、お父様は変えてくれないんだよ。一番自分を顧みないで盾となるからとか。そんなの窮地にならないとわからないじゃん」
僕らも内心とても強く同意した。僕ら兄弟の方が絶対に坊ちゃんを裏切らないし、頬に一本線のを引いた一号は毒入りスープを坊ちゃんと共にしたこともある。二本線の二号だって侵入者をいち早く見つけたし
「ご安心ください。僕らがいますから」
自惚れじゃない。そうしたいという気持ちと覚悟で誓って言うのだ。あの時拾って貰い、使用人として十分すぎる生き方をくれたこの人のために
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