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5章 紫の外套

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当主の話が一段落すると同時に深い溜息が手元に積み重なった紙をほんの少し掠める。ヴェルは拳の中の紙がまた皺を増やすのを感じた。それは禁忌を犯すそれを理解できると言いながらも懐にこれ以上不安要素を増やしたくないと言葉だけの懺悔だった。3人を何れオークションの商品としようとしていたこと、それをフィルマーに話ていたこと。その秘密を守るという信用など無いはずの契にいくらでも仕事に命をかけるようになっていったジェイデンはとても使い勝手がよかっただろう。

鞭を振るっていた青年が一礼をして離れた
フィルマーに気がついても尚直立している大男が首を横に振る。
「へぇ、もう何日目?君の話じゃ一日ともたないだろうってことじゃなかった?ヴェル」
「そのはずです。」
「あんまり時間がかかるようなら.......どうなるかわかるよね。なるべく多くを裁きたい。君だってその加護をうけたいでしょ?」
ゆっくりと頷いた大男を鼻で笑う。赤錆た鎖と分厚い革ベルトで吊るされた者の惨状、ヴェルには耐えがたいのだろうとフィルマーはわかっていた。そして、自分の本当の家族がそうならないようにただただ奥歯を噛み締めていることも
「へぇ、彼はまだあんな顔するんだ。安心してよ。アレはもう水に浮いたのを多くの人が見たし、使い魔で間違いないんだ 」
「ルフスは.......」
ずっと何も起きないように彼が制御し守ってきた。
「でも切り捨てた。覚悟を決めたんでしょヴェル?このままだと僕の家の財政難は続くし踏み潰されるよ。そうなれば君の一族も消えてしまう。派手にやらなきゃ」
派手にやって僕らは英雄にならなければならない
青年にまた続けるように伝え、ヴェルと酸素を取り込みに地上に出る
「火炙りの許可は出てるんだ。久しぶりの事で教会は快諾してくれたよ。最近は教会側も資金ぶりがよくないみたいだし、僕にツキがきているのかもしれない」
「ええ、そうなのでしょう。アンドレアの消息もわかりました。」
僕は今、どんな顔をしているのだろう。フィルはヴェルの遅い報告に満足気に頷き、追い込むように指示を出した。あと残すはサファを見つけ出し、契りを結んだと吐かせればいい。上手く行けばアンドレアがリカルドの事も吐くだろう。
「一族から出た裏切り者には償いを」

何者かに追われる気配を数日前からアンドレアは感じ取っていた。傭兵として長すぎたのか、それとも.......先日掲示板に見覚えがありすぎる家の名前をみたことが原因だろうかと思考を巡らせる。マクラフリンは表面的には温和な者が多いが中身は渦巻く烈火がある。そこに嫌気がさし、ある女性と駆け落ちをしようとして嵌められた。逃れることは出来ないと。しかし、生贄さえ差し出せば裏切り行為への温情として救いを与えると言われてすがった。彼女に悟られぬように子を救ってくれと口にしていたのだ。結果、息子は言葉も知らぬ間にも彼女に似て行く。罰だったのか彼が無意識に母親譲りの髪を伸ばし始めた頃、俺はシュバリィの一族から逃げ出していた
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